こヽ数年のうちに 浮ぶ都市即ち”海上都市“について多くの人々によって討論され新聞、雑誌その他の紙上にて様々の提案が発表されていることは 私達のよく知るところであります。
しかしながら数ある素晴らしい提案もいざ実現の段階になると様々の問題を生じ、そのまヽにしておけばただ単なる夢物語りに終止してしまうことになりかねないのであります。
今までの様々の提案はそのほとんどのものが海上都市計画を主体としたものであり他の面よりも具体的なアプローチを試みているものが見当りません。
今日に到って海上都市の実現可能性を考える場合に、構造面からも具体的な計画を進めて行く必要があります。
海上都市を構造主体に考えることは、あまりにも多くの要素を含んでいることにより、これもまた非常にむづかしい問題であります。
限られた時間にすべての問題を検討することは不可能であります。
そこで私達はまず海上都市の計画が提案されている東京湾を対象に考えることにします。
それは海上都市の実現性が一番大きいということ それから地上の建物と異なり外力として波その他の影響を考えなくてはならないということから、大海と東京湾のような入江とは海象が全く違う故にその地域を限定せねばならないからであります。
そして構造面からのアプローチの第一歩として 来たるべき都市時代に対応する都市空間の構造とシステムの確立の解決の一つの方向として海上都市の構成要素である“浮基盤”を採りあげます。
この“浮基盤”の構造とシステムによれば都市の必要な空間の転換性が建設・移動・消去にも容易であり、したがって新しい都市計画に際しての住居・工業用地・交易築・港湾施設等の建設は勿論、将来の発展にも効果的に活用されるなど新しいコントロールの出来る都市空間の実現が海上都市における“浮基盤”によって可能となるからであります。
この海上都市の構成単位である“浮基盤”についてはその規模は都市計画的 構造的 外的条件に規制されるが 一応その寸法を200m×200m×10mと定めます。
この規模は現在の建築技術的にこの程度であると考えられますが 波浪 浮力 潮流その他の外的条件に対して未知であります。
そこでもう一度この問題を検討し この“浮基盤”の架構の設計を行い合理的な形を提案します。
それと同時に実現するまでの諸問題について検討し海上都市の構造面からの考察が海上都市計画全体にどのような影響をあたえるかという問題にもふれることになります。
この論文は例えば波浪、浮力、潮流その他の外力の理論というある構造力学の理論に焦点をあてた論文ではなく 広義の意味において海上都市計画全般に通じているということより“海上都市の構造的研究”と題したのであります。
論文の内容
東京湾の海象条件(気象庁・海上保安庁・都道府県港湾局) 浮体の単位 ・200m×200m×10m の一単位設定 グリッドとしての都市計画の単位 曳航の可否 浮体の考察
・東京大学地球物理学研究所 ・フランスの固定浮ドックの波による外力(論文) ・波の外力の計算(波動モーメント)
・浮体の構造設計 ・浮体の積算 ・東京圏の地価との比較 ・東京湾上の配置計画
結 論
東京湾での最大波を浮体の長さ200mで波の外力を吸収出来る。
(波の外力を受ける長さ) 浮体の単位(200m ×200m ×10m)は波の外力の影響等を受ける部分は
トラス構造、内側の浮体はラーメン構造とする。 地価 浮体単位を配列して出来た造成床の価格はu当たり27.67円程度で、
多摩田園都市の市街地の土地価格である。 また浮体の地下に二層の無償床が出来、副次的な有効利用が出来る。 今後のリアリティのある海上都市への役割
この浮体による人工土地は陸地の地価と同等であると考えられ、浮体の 上部構造として建物を建設することにより、採算性に合った海上都市の
実現に一歩近づけたことを示す。
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