エンジニアの技能レベル 〜ドレイファスモデル〜
書籍「リファクタリング・ウェットウェア」から
1970年代のドレイファス兄弟による人間の技能の習得・極める過程についての研究結果
研究対象は、民間航空会社のパイロット、チェスの名人などのある分野の技術にきわめて高いレベルの習熟度を示した人々
技能ごとに評価するので、個人の生来持つ特性・才能ではない
5段階でモデル化
段階 | 一言 | 内容 | 備考 |
第1段階 初心者 | レシピが必要 | 経験をほとんど持たない コンテクストに左右されないルールが与えられれば仕事を遂行できる 学びたい意欲はそれほどない |
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第2段階 中級者 | 全体像を見たがらない | 独力で仕事に当たれるが問題処理に手こずる ほんの少しだけ決まったルールから離れられる 情報を手早く入手したがるが、理論・原則は望まない(私には関係ない) |
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第3段階 上級者 | 問題解決ができる | 問題を探し出し解決する、但し細部のどの部分に焦点を合わせるべきかの決定にはさらなる経験が必要 チームの指導者的役割、初心者への助言、達人のサポート |
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第4段階 熟練者 | 自己補正が可能 | 十分な経験と判断力を備える 自己改善、他人の経験から学ぶ、格言を理解しうまく適用する能力を備える(例:パターンを効果的に適用) 何が失敗につながるか分かる |
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第5段階 達人 | 直感で動く | 膨大な経験があり、上手に引き出しぴったりの状況で応用できる 理由があってそうするのではなく、直感に従って行う(「正しいと感じた」) 本質に関係のない部分と重要な部分の区別が無意識下でできる |
10年の経験も、1年の経験を単にあと9回繰り返しただけでは、経験の積み重ねにはならない
達人でも間違える、達人同士でも意見が食い違うこともある
達人にルールを強制すれば、達人の能力を削ぎ落とす
例)航空会社のベテランパイロットに自らの知識に基づくベストプラクティスを初心者向けルールにするよう依頼した。そのルールに基づいて初心者はパフォーマンスを改善することができた。しかし、達人にこのルールに従わせたところ、達人たちのパフォーマンスは著しく低下した。
未熟な人が「実は自分はかなりのエキスパートである」と思い込む傾向がある
「二次無能力」 未熟でありながらそれに気づいていないこと
初心者から達人へと技能レベルが上がるにつれ変化する特性のうち重要な3つ
「システム思考」が説くことと同じ
現実は、大半が中級者から上へ上がれていない
達人は先生には不向き
指導ということ自体が専門技能であり、他人にうまく教えられるとは限らない。
達人は往々にして自ら結論に達した道筋を理路整然と表現できない。上級者レベルの方が初心者の教育係には向いている。ペアプログラミングや指導の際は、指導される側に近いレベルの教育係を割り当てるのもよい
達人になるには、最低10年は努力する覚悟が必要、チェス・絵画・作曲・ピアノ演奏・水泳・テニス・・・
生半可ではない本気の努力が必要で、ただ取り組むだけでは不十分