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高度生殖医療を受ける人のために![]()
高度生殖医療とは女性の卵巣内から卵子を体の外に取り出し、受精させる技術をさしています。そして、人工授精など精子を操作する(いきのよい精子を回収したり、濃縮したりする技術)ことは高度の範囲外のこととされています。しかし、最近は未熟な精子を取り出し、シャーレの中で成育させることなども行われていますので、どこからが「高度」なのかの線引きは曖昧になってきています。
高度生殖医療が、それまで妊娠が不可能であった女性の何割かにおいて、妊娠を可能にしたことは間違いありません。例えば両方の卵管が閉塞していたり、外科的に切除してしまった女性において、高度生殖医療なしには妊娠はありえませんでした。さらに、顕微授精の登場は「男性不妊」のかなりの方の妊娠を可能にしました。
体外受精は女性の卵管に問題があり、卵子が子宮にたどりつくことができない患者さんに対して、そのプロセスをバイパスする治療としてスタートしました。すなわち、卵子を卵巣の中から直接取り出し、シャーレの中で受精させて子宮に戻すわけですから、仮に両方の卵管が閉塞していたとしても妊娠は可能です。その後、この治療法は卵管因子にとどまらず、重症の子宮内膜症の患者さんや、男性側に乏精子症があり、人工授精を繰り返しても妊娠に至らない症例などに適応範囲を広げていきました。さらに機能性不妊(原因不明不妊)におけるタイミング法→人工授精の次のステップに位置づけられています。
しかしながら、この治療にはさまざまな問題があるのも事実です。この治療を受ける患者さんに大きくのしかかってくるのは、「肉体的負担」、「経済的負担」、「心理的負担」です。
「肉体的負担」については、『はからめ通信8号 体外受精の実際』に詳しく書きましたので、そちらを参照してください。
「経済的負担」と「心理的負担」とは分けて考えることができないと思います。不妊治療はステップアップすると、医療費もステップアップします。人工授精では1回あたり、1〜3万ですが、体外受精となると1回あたり30〜70万という高額の医療費が重くのしかかります。それでいて体外受精1回あたりの妊娠率は20〜30%程度です。4人の女性が体外受精をおこなっても妊娠するのは1人ということです。「このままどんどんお金がかさんで、年をとっていくのかと思うと、いてもたってもいられない」いうメールをもらったりすると、こちらも本当に気の毒な気持ちになります。体外受精をおこなう医師には、患者の精神的なフォローをおこなう責任があると私は思います。しかしながら、体外受精が現在健康保険適応外にあるため、おざなりにするドクターも多くいるのが現状です。
不妊治療医が書いた本や、インターネットのホームページには、体外受精についてバラ色のことが書いてあるのを目にすることがありますが、体外受精1回あたりの妊娠率は20〜30%です。インターネットのホームページで極端に高い妊娠率を表示している医療機関は、その分母と分子を疑ってみる必要があります。これには、なにをもって「妊娠」と判定するかということが絡んできます。この妊娠率20〜30%という数字の意味するものはなんでしょうか?不妊に該当する問題のないカップルが、1回の排卵周期で自然に妊娠する確率は15〜30%です。これは、体外受精の妊娠率とほぼ同じです。このことは、体内においても、途中で卵子を体の外に出すというプロセスを経ても、妊娠しやすさは同じだということを意味しているのかもしれません。そう考えると、この数字が飛躍的に向上することは、画期的な治療法でも登場しない限り、現状ではあまり考えられないと思います。体外受精を受けるかどうするかは、こうした現実を冷静に受け止めたうえで、夫婦でよく話し合って結論を出すべきだと私は思います。
私は体外受精を何回も受けている患者さんのカウンセリングを、度々経験しています。そうした方とお話をして痛感するのは、非常に頭が固くなって、柔軟性を欠きやすいということです。これは、患者さんが元々頭が固いのでは決してなく、状況がそのように追いやってしまっているのです。ですから、これから体外受精に挑戦しようと思っている方は、少し大げさにいえば、不妊治療というものを、自分の人生の中でどのように位置づけるか、真剣に考えていただきたいと思います。
しかし、これまで述べてきたように、体外受精は、「肉体的負担」、「経済的負担」、「心理的負担」のいずれも大きい治療法です。医師から体外受精をすすめられたら、何らかの方法で別の医師のセカンドオピニオンを求めることをすすめたいと思います。高額にして、成功率の決して高くないこの治療をおこなったあとで、後悔しないためにも必要なことです。
最近、体外受精で第1子を出産した女性の20%が、第2子を自然妊娠で出産していることがわかり、問題になっています。この事実は、第1子の妊娠に本当に体外受精が必要だったのかという疑問を投げかけます。こうした現実を受けて、産婦人科の医師の集まりである日本産婦人科学会では、現在体外受精のための新たなガイドライン(診療指針)の作成を準備しています。これは一部の不妊治療医が、不妊治療の順当なステップを踏まずに、体外受精をすすめている現実があるためです。
また、体外受精には、多胎という問題があります。通常の自然妊娠でも80組に一組の割合で、双子が誕生します。三つ子以上はきわめてまれです。しかし、体外受精の場合は、複数の受精卵を移植する場合が多いので、20%の確率で双子が誕生します。
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