-------- (9)基礎体温表は本当に大切! ---------
最近「不妊ルーム」へのメール相談や、カウンセリングに来られる方で、不妊治療に通っている方の中に、先生が基礎体温表をチェックしてくれない、見向きもしてくれないという訴えが、多く聞かれるようになりました。私はたとえ先生が基礎体温表を見てくれない場合であっても、基礎体温表がとても大切だというお話しをしたいと思います。「不妊ルーム」で妊娠された方の基礎体温表を示しながら、基礎体温表の重要性について説明したいと思います。
Mさんから、だいぶ前に下記のような内容のメールをいただきました。
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ホームページを拝見して、初めてメールします。
○○と申します。よろしくお願いします。
子どもが欲しいと思って1年、働いており、今年30才になります。
不妊専門の外来を受診し、治療をしていく予定です。
この前提で、カウンセリングを受けることは可能でしょうか。
カウンセリングがどのようなものかもわからず、申し訳ない限りなのですが、
私自身、自分が妊娠しないのは身体的な理由もあるのかもしれないけれど、
心の持ちようというか、「不妊かもしれない」と思い続けているせいなのではとも考
えています。
そのため、どこかで心の相談に乗っていただけないかなと思っている次第です。
現在の私の状況ですが、
生理前の1週間くらい、体温のことばかり考えてしまい、日に何度も体温を計ってし
まうため、
ここ数ヶ月は、基礎体温はつけておりません。(まさに体温に一喜一憂してしまう感
じです・・・)
過去の基礎体温から、およそ排卵日を予測した上で、LH検査薬を使用しておりま
す。
(先月は朝夕と日に2回も検査薬を使ってしまいました・・・・・)
仕事はため息が多いです。(内容、環境ともに。→こんなことではだめですかね〜)
質問一つなのに、随分長くなってしまい申し訳ありません。
お返事頂ければ幸いです。
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私は、「もちろんよろしいですよ。」と、メールしました。Mさんはその後、不妊クリニックを受診し、通院していました。しかしながら、医師との信頼関係も築けず、時間がたつにつれてストレスが高じてきたようです。私がメールを受け取ってから3カ月後、彼女は「不妊ルーム」へカウンセリングにこられました。そして、今後は私の方でのフォローアップを希望されました。
基礎体温表の(1)はMさんが持参したものです。これは彼女のコンピューターのフォーマットで打ち出したものですが、最近こういう基礎体温表を見る機会が増えてきました。正直なことを言いますと、私はこういう基礎体温表を見ると、少し頭が痛くなってきます。なぜなら、そこから得られる情報があまりにも少ないからです。それで彼女に基礎体温表を渡し、翌日から新しい基礎体温表につけてもらうことにいたしました。それが基礎体温表の(2)です。この基礎体温表(2)のお話しを詳しくしましょう。
(1)

(2)

私はルーチン検査の中で、高温期中期のプロゲステロンの値を測定します。「A」のPがその値です。プロゲステロンの値は、大まかにいうと10以上がいちおう正常、20以上が良好と考えて結構です。Mさんは4.7という数値を示しています。これは黄体機能不全の可能性を示す所見です。さらに生理期間中の採血をすると、LHの値が6.0、FSHが1.1で、LH>FSH(通常はLH<FSH)となっており、これは排卵障害を示しています。以上のことから、彼女には排卵障害、もしくは卵の成熟障害があり、その結果、黄体機能不全になっていると考えられました。そこで、Mさんにはウンケイトウという漢方薬を服用してもらうこととしました。黄色のラインマーカーがウンケイトウを服用している期間を示しています。
ウンケイトウの効果を確かめるため、次の周期でも高温期中期にプロゲステロンの値を測定いたしました。「B」のPがその値です。今度はその値が14.6と跳ね上がっています。そうして基礎体温のカーブが前回より良くなっているのがわかっていただけると思います。さらに、次の生理期間中の採血をすると、LHの値が1.4、FSHが7.5で、LH<FSHとなっており、これは排卵障害が、改善されてきていることを示しています。このように基礎体温表の中に、検査の数字や、服用している薬を書き込んでいくと、治療がうまくいっているのか、そうでないのかということが、自分でも分かるようになってきます。
また、基礎体温表をつけていると、ほかにも得られる情報があります。それは、非常に有効に排卵日判定薬を使用することができるということです。私はタイミング指導において、排卵日判定薬の使い方を指導しているのですが、青いまるで囲ったところの数字が、生理開始からの排卵日と思われる日数です。治療前は20日です。漢方薬の周期では、16、17日となっています。クロミッドを併用したら、14日になりました。一般に、低温期が長いと、いい卵が育たないと言われています。ですから、Mさんは振り返れば、治療が順調だったわけです。このような排卵までの日数の変化も、基礎体温表を丁寧につけていれば知ることができます。
私がここで強調したかったことは、基礎体温表をつけていると、自分自身で治療の経過がわかるということです。もしあなたが不妊治療に通っていて、基礎体温表がかえって悪くなってくるようであれば、その先生はあなたに合っていないかもしれないし、あるいは治療がうまくいっていないかもしれないという判断材料になります。こうしたことから、先生から教えてもらった検査値や、現在服用している薬なども帯グラフのように基礎体温表に書き込んでいくことを私はおすすめいたします。
最後に、基礎体温表をつける際の留意点を、記しておきます。
1)測定時間をあまり気にしない、起床前なら良い。(とにかくつけることが重要!)
2)デジタルより、水銀柱の婦人体温計を使用する。(水銀柱のほうが正確)
3)一枚の紙に長い期間書き込める基礎体温表(一覧性のあるもの)を使用する。
(H14年3月13日記)
バックナンバー
(3)海外からのメール(2001/4/27)
(4)妊娠しやすい人、しにくい人(2001/5/17)
(5)不妊治療シンドローム(2001/6/28)
(6)アムステルダムからのメール(2001/9/3)
(7) 妊娠の季節(2001/10/15)
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