モーツァルトはとても人間が好きな人だったようだ。人間観察に優れた人といった
ほうがいいのかな?
興味深い人に出会うとそれを音楽にして、相手をからかったりしていたらしい。
もちろんそれはその人に対する、愛情の念から出ていたことは言うまでもないだろう。
そのためかモーツァルトが最もモーツァルトらしいのはオペラの世界だろう。

オペラ「魔笛」

カール・ベーム/ベルリンフィル

なんと言ってもこのCDに止めを刺す。聴いていてオケの音に張りと
瑞々しさがあり、ベームの引き締まった音楽作りにベストマッチと言った
印象だ。
確かに「魔笛」は歌芝居の形式を取っていて、ストーリーも芸術と言うより娯楽といった
趣の強いものだ。
それだけにこれだけきちんと引き締まった演奏をされると、落語家がタキシードを着て
語っているような違和感があると言った考えが出てくるのも当然だろうと思う。

しかしベームの緊張感が漲る演奏は、この他のどの演奏よりもモーツァルトの
音楽が持っている天才性や魅力と言ったものを的確に表現しているように思う。

そうだ。誰がなんと言ってもこれがモーツァルトの書いた最も気高い音楽なのだ!!


カール・ベーム/ウィーンフィル

ベルリンフィル盤のきりりと引き締まった演奏に比べると随分と柔らかい響きだ。
もちろんこれはオケの違いによるところが大きいのだけれど指揮もそれにあわせてか肩にあまり力が入ってないよう
に思う。
それだけにこの作品の美しさをダイレクトに享受出来るのが嬉しい。
台詞がカットされているのも繰り返し聴くには好都合。
音もステレオ最初期のもとは思えない生々しさだ。
やはり「魔笛」のスタンダードとしてかけがいの無いCD。


オトマール・スイトナー/ドレスデンシュターツカペレ

古楽器による演奏に人気が出ているようで、どうもこのCDは忘れられているようだ。
その証拠にCDショップではなんと2枚組¥990で販売されていた。
自分自身スイトナーと言う指揮者の演奏はあまりにのっぺりしていて退屈とうのが印象で、よほどのことが
無い限りこの指揮者の演奏したCDを選ぶことはない。
がしかしこの「魔笛」を聴いて自分の認識不足を改めた。
確かに劇音楽としての起伏と言った点では他のものに一歩も二歩も譲ってしまうだろう。しかしこの音の美しさ
と透明感は一体なんだ・・・・と思うほどだ。
「魔笛」の音楽としての美しさを純粋に楽しみたい人にはお勧めだ。



ロジャー・ノリントン/ロンドン・クラシカルプレイヤーズ

夙に評判の良いCD。確かに劇音楽として魔笛を楽しむ時には最高のものだろう。
さまざまな擬音効果も、耳を楽しませてくれる。
演奏自体もさまざまに音色に変化し、この作品のファンタジー性を際立たせているように思う。
ただ古楽器によるものなのが自分はどうも苦手・・・・・。
聴き込めばこのCDは自分にとって限りなくかけがいのないものになる予感はするのだが・・。

トーマス・ビーチャム/ベルリンフィル

名盤の廉価販売で評判のナクソスレーベルから出ているもの。
1937年録音のSP復刻。音は良好で大変聴き易い。
ごくごく普通の演奏だけれど、考えてみるとモ−ツァルトの音楽はあまり脚色しないほうが美しい場合が多い。
話によるとビーチャムという人はえらくお金持ちで、ある意味あまり欲がなかったのだろう・・・??

それにしても不思議なくらい飽きのこない演奏だ!!

アルトゥーロ・トスカニーニ/ウィーンフィル(1937年ザルツブルグ音楽祭ライブ)

1937年ザルツブルグ音楽祭。「フィガロ」「ドンジョバンニ」はワルターが指揮。「魔笛」はトスカニーニ。
全く同じ時期にこれだけ違った解釈のモーツァルトを演奏するウィーンフィルも凄いと思う。まさに絶好調、絶頂期を
極めていたのだろう。これも録音状態は決して良くはない。でもそんな貧弱な音質の中から聴こえて来るのは、まさに
奇跡的な水と油のスリリングな調和!!   




オペラ「フィガロの結婚」


ブルーノ・ワルター/ウィーンフィル(1937年ザルツブルグ音楽祭)

これは普段聴くには向かないかも知れない。ANDANTEのリマスターで音質が見違えるほど改善されたとはいえ
やはり音は決していいとはいえないからだ。でもこのコンビのフィガロが「どんなに素晴らしかったか?」と言うことが
想像から現実のものとして耳に飛び込んでくるのも間違いないのだ。

CD=ANDANTE 3981

カール・ベーム/ウィーンフィル

DVD。ベームがまだまだ元気だったころのもので、まあ安心して「フィガロ」が楽しめるといったところか。
それに、やはりウィーンフィルの柔らかく明るい音色はこの作品の為にあるとさえ思えるほどだ!!
自分としてはスザンナがフレーニなのが嬉しい。やはりこの役は美人過ぎず機智に富んだ頭の回転の速い
イメージなのがいい。他の歌手も「世紀の」と形容詞を付けたくなるほどのオールスターキャストでいうことなし。

カール・ベーム/ウィーンフィル

DVD。2003年の暮れに突然発売された1966年ザルツブルグ音楽祭のもの。
これを実演で見た人の話ではベーム生涯最高のパフォーマンスの一つと絶賛する人もいたようだが、まさかそれが
DVDと言う形で楽しむことが出来るようになるとは夢のようだ。
演奏はそんな期待を裏切ることは無かった。まずオケの音色はやはり最高の美しさ、ベームもあまりオケを厳しく
統率している雰囲気はなく聴くほうも肩の力を抜くことが出来る。
ここでスザンナを歌っているのがレリ・グリスト。自分はこの黒人歌手の声が大好き。



エーリッヒ・クライバー/ウィーンフィル

一番の魅力はやはりウィーンフィルの貴族的とも言える美しい音色で、それをクライバーの軽快な指揮ぶりが盛り立てている。
どちらかと言うとウィーンフィル主導の演奏なのが実は大成功の要因になっているように思う。
「どんな指揮者が優れていると思いますか?私達の音楽を壊さない人」この有名な言葉を地でいった演奏だと思う。

オットー・クレンペラー/ニュ−フィルハーモニア管弦楽団

あまりに遅いテンポがこのデスクの人気を落としてしまっているのは事実だろう。自分もいくらなんでも・・・思う。
しかしこれだけフィガロを堪能させてくれる演奏もなく、またその美しさの秘密を垣間見るような面白さを味わえるのもこの
盤だろう。モーツァルトの音楽もバッハと同じく多様な解釈に応え得る器を持った音楽であると実感出来る。


オペラ「ドン・ジョバンニ」


カルロ・マリア・ジュリーニ/フィルハーニア管弦楽団

「ドンジョバンニ」を理想的に演奏するなんていうのは、もうこれは不可能なことなのだろう。
それだけ起伏のある複雑な音楽だと思う。
だからあまり感銘を受けるCDが少ないのも事実。どうしても物足りなさが残ってしまう。
そんな中まず「ドンジョバンニ」と言う作品を掛け値なしで楽しませてくれるのが、この演奏だと思う。
同じころに録音された「フィガロ」は自分は決してよいとは思えないのだけれど、これは大成功だと思う。

CD= EMI 7243 5 67873 2 2


カール・ベーム/ウィーンフィル

やはりこの指揮者はなんだかんだ言っても偉大な人なんだな・・・と思う。
このCDも巷ではあまり評判が良くないけれど自分は大好き。
確かにこの演奏からベームの年齢的なものから来る衰えを聴くことは容易ではあるけれど、
やはりモーツァルトの音楽のカリスマ性を引き出すと言う意味では、これだけの指揮者はいなかったのだ。

ブルーノ・ワルター/メトロポリタンオペラ

それはワルターのモーツァルトだ!!悪いはずがない!!
音質が良ければ、最高の「ドンジョバンニ」と絶賛したい。モノラルとは言え聴き易い音だ。
なぜ他の演奏が「こう演奏出来ないの・・・」と疑問に思えてしまうほどドラマチックに進められている。
オケも歌手ももう言うこと無い。

CD=NAXOS 8.110013-4


ブルーノ・ワルター/ウィーンフィル(1937ザルツブルグ音楽祭)

1937年全盛期のこのコンビによるライブ。この時の「フィガロ」のライブがあると言うことはワルター
はこの年一人で二つのオペラを指揮したと言うことだ。そして「魔笛」はトスカニーニ。ウィーンフィル
はいろいろな意味で忙しかった!??。どこの世界でも音楽家はタフでなくてはならない!!
これは1942年のメトがある限り存在価値は薄いものになってしまっているけれど、この記録が
不快にならない程度の状態で残されていることに感謝したい。もちろんメト盤よりも素晴らしいところは
数え切れないほどある。

CD=URANIA URN22.231

ヨーゼフ・クリップス/ウィーンフィル