だれも知らない牛の話








牛の話なんて
だれも聞きたくないかも
しれないけど
牛もたまには
だれかと話したくって
いい相手はいないかな、て
さがしてたみたいだった
そういうとき
ぼくはたまたま
タイミングよく
草っぱらに寝そべってるから
それでとなりから
ため息がして
目を開けてみたら
牛がこっちみてるから
聞いてみたら
してくれたのが
こんな話

牛には
だれにもないしょに
してないのに
だれにもきかれないから
だれも知らない
あるひみつがある
んだそう

雨がわかる
かえるさんはいるね
地震がわかる
なまずさんはいるね
津波がわかる
とりさんはいるね
でもでもでもね
虹がわかるなんてね
牛しかいないんじゃ
ないかって
牛はおもうんです

虹がわかる、て何
ぼくがそうきく前に
牛はぼくにありが
とうをいう
きいてくれてあり
がとう
そう

それはほんとは
七色なだけじゃ
ないんです
音がするんです
それが空じゅう
なりひびくんです
牛はそういって
ちょっとわらった
みたいだった
もうもうそれはもう
すごくきれい
もうもうそれはもう

牛はそれから一時間
ぐらいその虹の音が
どれぐらいきれいか
ぜんぜん聞いていても
イメージがわかない
じぶんだけの言葉で
もうもうと話し続ける

ごめん
ぼくねちゃってた
とぼくがいうと
でも牛は気がつかなくて
ああ
牛はいう
なりひびいてきました
ほらどうですか
きれいでないですか
牛はそういって
草っぱらのうえの
空のあるところを
指さした
でもそこにはなにも
ない
ようにしかみえなくて
もうもう
と牛がなきだしたのに
まだぼくにはなにも
みえなくて
ごめんぼく
もうちょっとねるね
とぼくはいって
牛が空へむかい
もうもう
もうもうもう
もうもうもうもうもう
なきつづけるとなりで
ねむってしまった

虹が空じゅうに
なりひびかせる
その音がわかる牛が
ぼくはうらやましかったの
かもしれない

もうもうもうもうもう
もうもうもう
もうもう
牛はいまも
だれかとなにか
話したがってる
かもしれない

もうもう
もうもうもう
もうもうもうもうもう
いま虹がなりひびいて
いるのかもしれない