海外の翻訳幻想文学の書影の部屋です。

ラブ アンジェラ・カーター 伊藤欣二訳 講談社 1974年2月24日発行
「魔法の玩具店」(河出書房新社)や「血染めの部屋」(筑摩書房)、「ワイズ・チルドレン」(早川書房)等で日本でも知られている作者の長編小説。
なお翻訳は結局されなかったが、別の作品がサンリオSF文庫の刊行予定にもあがっていたこともある。
あまり知られていないのではないかと思い、ここにとりあげた。

妖精文庫 月刊ペン社
画像は第五巻「ケンタウロス」アルジャーノン・ブラックウッド 八十島薫訳 昭和51年10月25日発行。

昭和50年頃から10年余りの間に別巻3冊と合わせて34冊が刊行された。3冊は未完に終わっているが
その後別の出版社から無事刊行されている。(下記リスト参照)
各巻に一色刷りではあったが月報がついており、妖精画の紹介等を行っていた。古書店ではこれが無くなっている場合が多いので注意。本自体はまとまっては出ることは少ないが、ばらでは良く見かける。
キキメもあるのだろうが良くわからない。
なお本叢書は荒俣宏氏が全面的にかんでいて、昭和50年代を代表するファンタジー叢書であると言えよう。
刊行目録(括弧内は再刊等)
第一期
1リリス(上) Jマクドナルド (ちくま文庫)
2リリス(下)
3心地よく秘密めいたところ(上) PSビークル (合本・創元推理文庫)
4心地よく秘密めいたところ(下)
5ケンタウロス Aブラックウッド
6エルフランドの王女 Lダンセイニ (沖積舎)
7ゴッケル物語 Gブレンターノ (別版・岩波文庫)
8黄金の鍵 Jマクドナルド (ちくま文庫)
9ケルト幻想物語集(T) WBイエイツ (ちくま文庫)
10ケルト幻想物語集(U)
11ケルト幻想物語集(V)
12サンダリングフラット Wモリス (平凡社)
(別巻)別世界通信 荒俣宏 (ちくま文庫で再刊)
第二期
13邪龍ウロボロス(上) ERエディスン (合本・創元推理文庫)
14邪龍ウロボロス(下)未刊
15ナイトランド(上)WHホジスン
16ナイトランド(下)
17耳らっぱ Lカリントン
18輝く世界 Aグリーン (沖積舎)
19マルペルチュイ Jレイ
20妖精たちの王国 STウォーナー
21エドワルドの夢 Wブッシュ
22影の谷年代記 Lダンセイニ(ちくま文庫)
23ジンボー Aブラックウッド
(別巻)妖精画廊T (光風社出版からUと合わせ増補再刊)
第三期
24火山を運ぶ男 Jシュペルヴィエル
25牧神の祝福 Lダンセイニ
26師匠たちと弟子たち Vカヴェーリン
27マギノビオン ウェールズ神話 未刊 (王国社)
28「美妙な死体」の物語 Lカリントン
29より大きな希望 Iアイシンガー
30フォカス氏 Jロラン
31ケルト民話集 Fマクラウド (ちくま文庫)
32妖精卿の囚われ人(上)Aブラックウッド
33妖精卿の囚われ人(下)
34モーウィン JCポーウィス 未刊(創元推理文庫)
(別巻)妖精画廊U(光風社出版からTと合わせ増補再刊)

下記はちくま文庫「妖精詩集」の阿見政史氏の解説からの情報
挿絵入り妖精文庫
別世界 JJグランヴィル
ゴブリンマーケット Cロセッティ・Rハウスマン
ファンタスマゴリー Lキャロル・ABフロスト
妖精図鑑 荒俣宏
ダウンアダウンデリー Wデラメア・Dラスロップ (ちくま文庫)

戀を覗く少年 L・P・ハートレイ 藤澤忠枝訳 新潮社 昭和30年6月30日発行
イギリスの怪奇小説作家の長編小説。純粋な怪奇幻想小説では無論ないのだけれど、
そういった要素を含むものとしてここにあげておきます。



マゾヒストたち ローラン・トポール 澁澤龍彦編 薔薇十字社 1972年8月10日発行
漫画本である。マゾヒストたちとトポール傑作選の2部にわかれている。前者は澁澤龍彦全集に再録。
序文はSF作家のジャック・ステルンヴェール。トポールは日本では小説ばかり訳されているが、
本来は漫画家のようで、ブラックな魅力あふれる作品集となっている。
ただし老婆心ながらいっておくと、これは日本で言うところの一こま漫画である。


いまひとたびの春 R・ネイサン 龍口直太郎訳 岩波書店 1951年4月15日発行(所蔵は5月30日発行の再版)
アメリカ大恐慌時代を舞台とした一種のファンタジー。
作者の作品は早川書房から「ジェニーの肖像」「夢の国を行く帆船」「タピオラの冒険」(これは嫌い)が出ているほか
矢野徹氏が惚れ込んでいて、文化出版局から何冊も翻訳を出している。(これはファンタジーではない)


おかしな世界 植草甚一・木島始編 全集・現代世界文学の発見12 學藝書林 昭和45年10月31日発行
全集としては破格な現代文学の発見の外国文学編の1冊。割合と昔から良く知られている。
内容的には幻想よりナンセンスが強いようである。
刊行予定で別@「夢と超現実」別A「言葉と想像力」という面白そうな巻があがっているのだが、実際に出版されたかどうか
不明。というのはこのころ出版社が傾いて白井喬二全集も途中で中絶しているからだ。
識者の方、教えてください。
収録作品
ふしぎの国からの手紙(キャロル)、はなくらべ(E・リア)、起死(魯迅)、番い(アレイヘム)、最後の審判(チャペック)
ゴーゴリの妻/大いなる調和についての対話(ランドルフィ)、不在の騎士(カルヴィーノ)、天使(金史良)
世界の果まで眠り過した男(ナディール)、そんなこたないす(ヒューズ)、おかしな出来事(ゾシチェンコ)、電話救急本部(ステリック)
ニューヨーク(タリーズ)、カモメ先生(ミッチェル)、解説 万物の霊長だから、おかしい(木島始)
解説 おかしな世界には、おかしな人物が、かならずいる(植草甚一)

山彦の家 T・F・ポイス 龍口直太郎訳 筑摩書房 昭和28年8月20日発行 (所蔵はカバー欠)
山彦の家、寓話、白い主の祈りから選んだ短編に1編を加えた訳者編の短編集。
後書きによると昭和10年刊の健文社版の新装版だそうである。
なお作者のお兄さんは「モーウィン」その他短編が訳されているジョン・クーパー・ポイス。




第三の警官 フラン・オブライエン 筑摩書房
スコットランドの前衛作家の実験小説。本作品は長く入手困難であったが、最近完結した世界文学大系の最終巻として
本邦初訳の「スィム・トゥ・バーズにて」とともに収録された。(本当はこの本、高かったので少し悔しいのである)
文学大系は部数が少ないと思うので買い逃すと大変かも。
国書刊行会の文学の冒険の続巻にも作品がラインナップされている。
なお筑摩の同じ装丁のシリーズには他にロレンス・ダレルの「トゥンク」「ヌンクァム」がある。


テスケレ L・チェーヴァ 河出書房新社
イタリアの作家の奇妙な味の短編集。マイナーではあるが稀に紹介されことがある。
何年か前にミステリマガジンの奇妙な味特集でもとりあげられていた覚えがある。
他の邦訳は同じ出版社から「枢軸万歳」が出版されている。こちらはIFの世界を描いた奇想小説。
このシリーズは結構幻想文学系の作品が多くてあなどれない。他の作品はまた別のところで。