日本の幻想文学を書影で紹介します。


美しい学校 稲垣足穂 北宋社 昭和53年7月20日発行 装画 稲垣足穂
美しき学校、童心とゼンマイ(西脇順三郎)、あとがきにかえて(随筆 ヰタ・マキニカリスの一部)
美しい町(佐藤春夫)、美しい家(堀切直人)
「美しい町」は足穂が書き改めて「蝗の大旅行」に収められたもの。(同書はほるぷから復刻あり)
事情も真偽も全くわからないのだが、これは回収本だそうで、かなり高い金額を払わされた。
幻想文学別冊の「タルホ☆スペシャル」にも一切触れられておらず、詳細は不明である。
(ただし本書の紹介はある)
ご存知の方、教えてください。

殺生関白行状記 松崎實 日本評論社 昭和5年1月10日発行
凝った装丁でちょっと見ただけでは良くわからないが、副題に伴天連見聞録とある。
内容はというと、実はまだ読んでいないのであるが、「幻想文学」5号によれば、
摂政関白秀次の悪行をエログロに描いたもののようである。
詳しくは同誌を参照してください。
本書はたまに目録等でもみかけます。


富ノ澤麟太郎集 横光利一編集 沙羅書店 昭和11年11月15日発行(画像は中扉)

「あめんちあ」「木馬の馭車」「奇怪なる實在物」「ムハメットと煙草」「セレナアド」「朱夏日語」「ニ狂人」「一世」「流星」
「青柳正一の自畫像」「夢と眞實」所収
早逝の幻想派の作品集で横光利一の編集で死後に刊行されたもの。


河童曼荼羅 火野葦平 四季社 昭和32年5月10日発行 1200部限定中1030番
署名落款入り、背革装、天金
作者の河童小説を43編集大成した本。各編の扉には
当時の作家たちの河童の絵が付されていてまことに楽しい。
たとえば小林秀雄、梅崎春生、井伏鱒二、伊藤整、折口信夫・・・。
値段も頒価弐千円で、当時としては破格でしょうが、それだけの価値があると思います。
最近復刻版の新装版が出ましたが、値段も結構するのに中の印刷はともかく
全体的な印象は元版の面影はありません。残念なことです。

家畜小屋 池田得太郎 中央公論社 昭和34年2月20日発行

奇作と呼ぶにふさわしい。家畜小屋、鶏の足、女神像の三篇を収録しています。
昭和49年頃に深夜叢書社から新装版が出版されましたが、その際は鶏の足が省かれています。
どちらもあまり見かけることがありません。
また作者は「ノアの箱舟殺人事件」とういうミステリーも書いています。

黒蜥蜴 三島由紀夫 牧羊社 昭和44年7月20日発行の二版(初版は不明)
江戸川乱歩へのオマージュとも言える戯曲。
限定番もあるらしいが、二版だったため、安価で購入。三島由紀夫が行った装丁が大変美しい。

イメージの文学誌 全5巻 北宋社 画像は「動物たちの謝肉祭」
堀切直人編集の幻想文学アンソロジー。
各巻監修として一人文学者がついていて、編集者の名前は奥付にしか出てこない。
まさに縁の下の力持ちというところか。
収録作品リストは後日掲載予定。
なおばらではたまに見かけるし、安価でころがっていることもある。
出版目録
1紅い花、青い花 吉行淳之介監修
2水底の女 島尾敏雄監修
3物食う女 武田百合子監修
4幻想飛行記 埴谷雄高監修
5動物たちの謝肉祭 澁澤龍彦監修

魂の飛ぶ男 朝倉稔 パトリア書店 1959年12月15日 所蔵は献呈署名本
特異な幻想小説集。幻想文学3号でその存在を知りました。
見たのはこれを入手した1回きりです
「朱の紋章」という作品集もあるらしいが、未見。

LEOの魔法 武井武雄 刊本作品NO601965年10月29日刊
1冊だけ所蔵している刊本作品。
自分の生涯の夢として刊本作品の完全収集があります。
まあ、無理でしょうが。なお刊本作品のテキストだけなら筑摩書房の「武井武雄作品集」第3巻にあります。
講談社文庫で再刊された「お噺の卵」はお薦め文庫だが、入手はやや難しい。


飛ぶ男 真鍋呉夫 東京新聞出版局 昭和54年2月25日発行 所蔵は献呈署名本
戦争が影を落とす幻想小説集。所蔵の作品では「天命」「虫の勇気」があり、沖積舎から作品集も出版されている。
最近では俳人としても活躍中。

闇の古代史 ヒの民の誕生 上野凌弘 富士見書房 昭和55年9月1日発行
幻想文学5号で倉阪鬼一郎氏が「知られざる奇書」として紹介している、まあ今でいうトンデモ本か。


妖花譚 荒木良一 毎日新聞社 昭和46年9月12日発行
これも幻想文学で存在を知った植物怪談集。
他に植物怪談というと岡本好古の「草木の精」が思い浮かぶ。