消費税の原則課税と簡易課税制度の相違

◆簡易課税制度とは?

 消費税の原則課税計算は、売上げに係る消費税額(預かった消費税)から、「実際に計算した」仕入れに係る消費税額(支払った消費税)を控除した残額を、納付する消費税額とします。

 但し、中小企業等の事務処理の煩雑さを考慮して、仕入れに係る消費税額を、「実際に計算したもの」ではなく、売上げに係る消費税額に、一定割合(みなし仕入率)を乗じて計算した額を、仕入に係る消費税額とする制度が設けられています。これが、簡易課税制度というものです。商品の仕入や販売費、一般管理費、固定資産の取得等、「支払った消費税」は種種雑多であるため、集計の煩雑さがあります。簡易課税制度では、これを、みなし仕入率を用いて、一括して計算してしまいます。
原則課税と簡易課税制度の相違点
簡易課税制度の事業区分
簡易課税制度の注意点



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原則課税と簡易課税制度の相違点

原則課税制度 相違点 簡易課税制度
基準期間における課税売上高が1000万円を超える事業者
対象者 基準期間における課税売上高が5000万円以下である事業者
(@)課税事業者届出書を提出していること。
A基準期間における課税売上高が1000万円を超えていること。
適用要件 @簡易課税制度選択届出書を提出していること。
A基準期間における課税売上高が5000万円以下であること。(届出書提出以後は、基準期間における課税売上高が、5000万円以下になった際には必ず適用)

課税事業者届出書
提出届出書 簡易課税制度選択届出書
提出期限はありません。(しかし、申告書が送られてこないので、速やかに提出したほうが望ましい)
届出書の提出時期 適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに提出する。
消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書を提出するまでは効力が存続。 届出書の効力 簡易課税制度選択不適用届出書を提出するまでは効力が存続。
適用時期 簡易課税制度選択届出書を提出した日の属する課税期間の翌期間以後の課税期間
課税標準額に対する消費税額△仕入れに係る消費税額 計算方法 課税標準に対する消費税額△仕入れに係る消費税額★

★(課税標準額に対する消費税額+貸倒れの回収に係る消費税額△返還等対価に係る税額)×みなし仕入率◎
仕入れに係る消費税額が売上げに係る消費税額を上回った場合には、消費税の還付を受けることが出来る。
長所 仕入れ税額控除の計算をしないので、計算が簡便。
仕入れに係る消費税額の計算が煩雑となる。
短所 実際の仕入れに係る消費税額が売上げに対する消費税額を上回った場合においても、消費税の還付を受けることが出来ない。
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簡易課税制度の事業区分
簡易課税制度の事業区分 みなし仕入率 事業の範囲
第一種事業 90% 卸売り業 (他の者から購入した商品を、性質、形状を変えないで、他の事業者に販売する事業)
第二種事業 80% 小売業 (他の者から購入した商品を、性質、形状を変えないで、卸売業以外の者(消費者)に販売する事業)
第三種事業 70% 農業、林業、漁業、建設業、製造業等
第五種事業 50% 不動産業、情報通信業、サービス業、運送業
第四種事業 60% 第一種から第三種事業、第五種事業以外の事業(飲食店業、金融業、保険業等)
 なお第一種から第五種までの分類については、統計庁の「日本標準産業分類」を基準に判定します。


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簡易課税制度の注意点
 簡易課税制度は、計算についての簡便性という利点はありますが、やはり、簡易課税制度の最大の注意点は、場合によっては原則課税の方が納める税金が少なくなるケースが生じる点、また還付を受けられない点でしょう。

 これにつき、実際に支払った消費税の合計額が、みなし仕入率で計算した消費税額の合計額に比べ、多い時には原則課税の方が有利となってしまいます。例えば、

 また、原則課税計算によった場合、自動的に還付となるわけですが、簡易課税制度を採用した場合には、実際の課税仕入れ等の税額を無視して、仕入れに係る消費税額を計算するため、多額の設備投資をしたことにより、仕入れに係る消費税額が、売上げに係る消費税額を超えたとしても、還付を受けることは出来ません。還付を受けるためには、「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出して、簡易課税制度から原則課税に移行しなければならないのです。


 現在、簡易課税制度の採用をお考えの場合、又、今後、設備投資をお考えの場合には、注意が必要となります。というのは、還付を受けるためには、上記のように、「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があるのですが、この「簡易課税制度選択不適用届出書」は、新たに簡易課税制度を採用した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降でなければ、提出することが出来ないからです。すなわち、簡易課税制度を、一度採用したら、その翌年も簡易課税制度が強制されるので注意して下さい。

 今現在、簡易課税制度を継続適用されている場合には、還付を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに、「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し、更に、その設備投資をした課税期間に、簡易課税制度選択届出書を提出すれば、還付を受けた翌年からは、再び、簡易課税制度適用事業者となります。
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