前回は三岐鉄道の西野尻駅で切り上げましたので、今回はここから再スタートして三重県民の森を目指します。
しばらくは藤原岳を見上げながらのルートになります。藤原岳は標高1120mの鈴鹿山脈の明峰です。
登山道の途中にはお花畑が開け、四季折々に登山者の目を楽しませてくれます。
全山が石灰岩により出来ているため、セメントの原料の産地としてこの近郊の産業発展にも貢献してきました。
石榑地区はお茶の産地。製茶工場やお茶畑が見受けられます。
石部神社を経て宇賀川を溯れば宇賀渓に出ます。しかし、ルートは渓谷の入り口をかすめる様にして通り過ぎてしまいます。
竜ヶ岳から流れ出る宇賀川が形作った鈴鹿山脈随一と言われる渓谷美を誇る宇賀渓はキャンプ場も整備され、竜ヶ岳登山の入り口にもなっています。
長さ10mの魚止滝をはじめ、ツバメ滝、長尾滝などの清涼な滝も楽しめます。
長尾滝から左へ尾根伝いに行けば花崗岩が風化した独特の姿の砂山に出ます。
福王神社は大和の信貴山とともに聖徳太子に縁のある毘沙門天の霊場です。
本尊である毘沙門天は古く百済の国の仏工・安阿弥敕によって彫られて聖徳太子の手によってこの地の安置されたと言われています。
境内には巨大な杉が並び、毎月3日、13日、23日の縁日には参詣客で賑わいます。
背後の福王山は天狗信仰の厚いところで、山頂は「天狗の踊り場」と呼ばれています。
八風大石はこの上でむらの寄り合いをしたと言われるほどの大きい石で、現在は石の上に祠が奉ってあります。
尾高観音は、釈迦ヶ岳麓に広がる尾高高原の一角にあり、聖徳太子作と言われる千手観音像を六角堂に安置しています。
参道は桧の巨木が美しく並んでいます。
三重県民の森は昭和55年の第31回全国植樹際を記念して作られた公園です。45haの敷地の中にはバードウォッチング・ハイキング・屋外学習の施設が整っています。
また、自然学習展示館は入場無料で鈴鹿の自然を紹介しています。
今回は約23km8間の道のりです。
前回はちょっと頑張って西野尻まで足を伸ばしました。そのお陰で、今回は湯の山温泉の手前まで足を伸ばす予定が立てられました。
名古屋から近鉄で冨田乗り換え、一月ぶりに三岐鉄道でうつらうつらしながら西野尻へ。
沿線には進学校があるらしく、賢そうな学生諸君と途中まで一緒でした。
西野尻の駅のベンチで朝ご飯。頭上を引っ切り無しに飛行機が飛んでいきます。
音はさほどしないのですが、とにかくあっちゃこっちゃから飛んできます。
僕が育った江ノ島の辺りでも、旅客機が頻繁に飛んできますし、横須賀と厚木の間にあるからでしょう米軍機が爆音を轟かせて飛んでいくこともしばしばです。
しかし、ここほど多くはありません。
見上げるたびに新しい飛行機雲が引かれていくのです。
考えてみればここは羽田から伊丹や関空に至るルートなのかも知れません。
ということはこの上空は日本の空の交差点のようなものです。
真っ青な空と飛行機雲を見上げながら腹ごしらえを終えました。
8:25、登りの列車をやり過ごして今回の行程に出発です。
まずは集落の中のルートに復帰、南下をはじめます。
集落を抜け田んぼに出たところに標識。
立っている石像を横目にみながら標識に従って進みます。
が、少し進んで疑問が湧きました。
田んぼの道は見通しが利くのですが、この先に標識は見えず、どうやらルートはもう一本左手の道のような気がするのです。
先ほどの標識通りに進んできたはずですが、ここで地図を広げて確認します。
三重県森林協会発行のガイドマップは曲がり角などの情報に詳しく、こんな時に便利です。
地図を見た結論はもう一本左手の道を進むべし!
ということで、恐る恐る道を変えました。
しばらくして標識が出てきてほっと一息です。
再び集落に入ります。
お寺(妙宗寺)の前まで来て、標識に何やら書いてあります。
東海自然歩道迂回路と書いているのです。
こんな所に迂回路があるなんて聞いてないヨー、とおもいつつい、現地優先の法則で標識に沿って進みます。
砂川に出てきました。
この川を渡る橋のたもとに標識。
ここから眺める藤原岳は素晴らしい!
でも斜面にセメントの採掘のために削られた跡も見えて、そこだけ痛々しい感じです。
砂川の橋を渡ってすぐに左折。
が、ここの先は工事中です。
通れるとも何とも書いてないので、前進あるのみで進みます。
工事中で道はかなり狭くなっているのですが、なんとか通れるようにしてあります。
しかし、員弁川を目前にして、道をシャベルカーとダンプカーが一杯一杯に塞いでいます。
何とか左手の畦道に避難、事無きを得ました。土方のおじさんが片手を立てて"ゴメン"のポーズ。
笑顔で応えます。
前川橋で員弁川を渡ります。
この橋はダンプがブンブン通ります。
地図によれば渡りきったところに標識があるはずなのですが、影も形もありません。
直進するか、川に沿って歩くか迷ったのですが、地図からの判断とこれまでの経験とダンプの通る道を歩きたくないとの基準で川沿いに進み道を選びました。
これは正解。
工場前の千才橋で再び員弁川を渡り返しました。
ここは歩行者専用の橋。
橋の真ん中で堂々と荷を下ろして休憩を取りました。
坂を登り集落に入ります。
真新しい住宅の前で犬が遊んでいます。足にじゃれついてきてとっても可愛い。
飼い主の方とも笑顔で挨拶を交わしました。
つづら折れの道を繰り返して南下します。三岐鉄道線路沿いに出てきてトンネルでくぐります。
車道に出て直ぐを左へ。
ここからずっと舗装道路になります。
工場前で一服。
奥村に出てきます。
天理教の教会前を通り青川を渡ります。この辺り、お茶畑が多く見受けられます。
静岡県ではさすがに多く見受けられたお茶畑ですが、ここまで歩いてくるうちに本当に多くの地域でお茶が栽培されていることを知りました。
山梨県の上佐野でも、岐阜県の池田町でも、愛知県の足助近郊でも見ることが出来ました。
これから先も宇治などでは大々的にお茶を栽培しているはずです。
お茶畑と言うのは日本を代表する風景なのだなぁと改めて実感させられたこれまでの行程です。
黄金橋で青川を渡ります。
石榑北で民家脇の細い舗装路から田んぼ脇の地道に入ります。畦で一休み。
すぐに森の中の道に入ります。やはり地道が歩きやすい。
森を抜けると田んぼの中の集落です。
しばらく歩くと国道421号にぶつかり、これに沿って歩きます。
石部神社は参道からしてなかなかいい雰囲気の社です。この前で休憩。11:25。
この辺りは石榑茶の産地とのこと。
そういえば、石榑茶の大きな看板もありました。
近江八幡員弁線に出ました。
この道を真っ直ぐに進めば永源寺・八日市・近江八幡と懐かしい町へ行くのだと思うと、このまま直進したい気持ちになってきます。
いかんいかんと宇賀川を溯ります。
落合橋のたもとから地道に入ります。
国民宿舎登竜荘には12時ジャストにつきました。
板場に断って水をもらい、さてどこで昼飯を食べようかしばし思案します。
折角だから、少し戻るけれども鈴鹿一と言われる宇賀渓に寄っていくことにしました。
車道を歩いて宇賀渓の入り口を目指します。
少し下ると宇賀渓の入り口のゲートが見えてきました。
駐車場の隅っこにあった案内所で宇賀渓の案内をしてもらいます。
「ここをズーッと真っ直ぐ行けばいい。」
2,3件のお土産屋を抜けて進むと渓谷らしくなってきました。
吊り橋を横目で見ながら進むと川原に出ます。
若人が大勢でバーベキューをしています。
僕も川原に下りて昼食の蕎麦を作りました。
お日様が暖かい!
東海自然歩道のガイドブックには宇賀渓の奥にいくつかの滝があるとかいてあります。
蕎麦を食べ終えて、滝に行ってみようと直ぐに荷物をまとめました。
吊り橋を渡ったところにあったベンチに荷を置いて、軽装で足早に上流へ歩いていきます。
なかなか着かないなぁと思い始めた頃に橋を渡り滝らしい雰囲気が漂ってきました。
結局30分ほどかかって着いた魚止の滝はこじんまりしたものでした。
宇賀渓をでたのは14:00.国民宿舎まで車道で戻りルートに復帰しました。
少し先からまた山道に入ります。
すぐに水晶橋を渡ります。
ガイドブックには大袈裟に取り上げられていますが、たいしたことない吊り橋に思えました。
それよりも素晴らしかったのは、アップダウンを経て出てきた道です。
下が草地で道幅が広く、心までウキウキしてくるようないい道です。
どこまでも続くといいなあと思いましたが、大きな石のたもとから再びもとの細い山道に戻ってしまいました。
浄水場の横を通り山肌に沿った道に入ります。
福王山の山肌の道でしょう。
この道もなかなかいい。
思わず鼻歌がでてきます。
とそこへ、いきなり大きな犬が飛び出してきました。
一瞬ビビリましたが、すぐに飼い主のおじさんが出てきて引き綱を持ってくれました。
福王神社まで散歩に行った帰りだとのこと。
こんないい道を散歩コースに出来るなんて羨ましい。
ルートと福王神社への道の分岐点に出ました。
前方から賑やかな声が聞こえます。
先行していた女性ハイカー二人連れの声です。
福王神社は大きなお宮だと聞いています。
少し寄っていくことにしました。
女性ハイカーに続いて福王神社への道を進みます。
駐車場の手前で女性ハイカーに追いつきました。
挨拶を交わして一緒に福王神社に入りました。
参道は大樹に囲まれて薄暗く、階段も立派です。
おしゃべりをしながら階段を登り、お社に着きました。
このお社も立派な構えで、いい神社だと思いました。
手を合わせて道中安全を祈願します。
そして、女性ハイカーと一緒に写真に写りました。
お二人は四日市から来た方とのことで、お二人仲良しで県内のウォーキングを楽しんでいらっしゃるとのこと。
「お手軽で気持ちのいい趣味ですねぇ。」
とふると、
「そうなのよ、楽しくて!」
と笑いながら応えてくれました。
お二人と別れてルートに戻る道すがら、神社の清掃の方に声をかけられました。
「頑張れよ!」
よしっ、もうひとこえ頑張ろうと、力が湧いてきました。
ルートに戻ると左手にゴルフ場が見えます。
そのゴルフ場の向こうには四日市の街並みとその先に海まで見えました。
人気の無い集落に出てきます。
すぐにまた地道になりました。
切畑の集落を通り、橋を渡り車道へ。
切畑は明るい集落で、人もあちこちに見受けられました。
車道にはダンプが沢山走っています。
そのダンプを2,3台見送ってから、地道へ入ります。
こちらがルートですが、ダンプはこのルートから出てきます。
程なく工事現場の入り口があり、そこを過ぎればダンプの通行もなくなりました。
八風大石を見上げて進みます。
この意志はたいそう大きなもので、昔はこの石の上で寄り合いが開かれたとのこと。
そう聞くと登ってみたくなるのですが、辺りも薄暗くなってきていますし今日のところは見上げるだけにしておきました。
薄暗くなってきた林道を歩きます。
明るいうちならば気持ちよいのでしょうが、日暮れが迫ってきているので早足で歩きます。
日が暮れてしまう前に幕営予定地である三重県民の森まで行かなければ!
再び車道に出ます。
別荘分譲地の看板を右手に見て歩きます。
と、ルートと思しき方面に通行止めの表示。
立派な車道を造成中です。
今日の仕事を終えたらしき土方のお兄ちゃんが箒で掃除をしているので、その兄ちゃんにルートを尋ねます。
すると先に小さく見える標識を指してくれました。
礼を言ってその標識に向かい進みます。
くねくね曲がる舗装車道に入り交差点を右折、車道の真ん中(分離帯)の歩道を歩きます。
ここに朽ち果てた案内板を発見。ここが東海自然歩道のルートであることを示しています。
尾高観音が近いようです。右手に立派な公園が見えます。
これは幕営地としても使えそうだなと思い、少し心が動きますが、三重県民の森はもう少しのはず、もう少し歩を伸ばすことにしました。
尾高観音の参道は真っ直ぐな桧並木でとても気持ちがよい。
そこを歩いて観音様のお堂に近づいていくと何やら厳粛な気持ちになっていくから不思議です。
尾高観音はひっそりとしている六角のお堂です。
簡単にお参りを済ませ、脇の草むらの中の道を通り車道に出ます。
右手に尾高高原家族旅行村の建物が見えます。しかし、建物には誰一人いません。
休日だというのに営業していないのでしょうか?
小さな橋を渡り山の坂道をあがります。三重県民の森に入ったのでしょうか?
それにしては余り整備がされていません。
程なく歩道らしきところに出てきました。
そして大回りをするように歩いて舗装路に出てきます。
ここまで来ると自分が三重県民の森に入ったことを確信できます。
時間は17:00.丁度いい時間です。
展望台があります。
少し寄っていきます。
ここからの眺めは最高!日の暮れた、しかし空だけは明るさの残った街並みが海辺まで見渡せます。
ここで幕営したら夜景は素晴らしいでしょうし、きっと朝日もとても綺麗でしょう。
とても心動かされましたが、水場もトイレも無いため、眼下に見える自然科学学習館へ行ってみることにしました。
建物の営業は既に終了していましたが、目の前に芝生の広場があり水場もトイレも近く幕営地としてはこれ以上望みようも無い環境です。
風除けも考えて学習館の建物の裏にテントを張ることにしました。
その夜は、日本サッカーオリンピック代表のカザフスタン戦をラジオで聞き、興奮覚めやらぬまま眠りにつきました。
西野尻までは三岐鉄道を使ってください。
駅から住宅地に少し入るとルートがあります。
そのルートを東藤原の方へ進むと田んぼに出てきます。
ここが例の石像の場所なのですが、このたもとにある標識はどう見ても田んぼの中の道を進むように指しています。
しかし正しいルートは小川に沿ったもう一本左の道なので、とにかく小川に沿って進んでください。
集落に入りお寺の周辺は迂回路ということですが、比較的標識はシッカリしているので、標識を信じて進んで大丈夫です。
前川橋の手前は僕が歩いた時は工事中でしたが、もう工事も終わっているでしょう。
前川橋を渡って今度は員弁川に沿って進むのですが、渡った所に標識がありません。
ここは地図を便りに川に沿って進んでください。
左手に松下産業の工場があります。
その前の歩行者専用の橋を渡ると東藤原付近の集落に出ます。
この集落の近辺はルートがくねくねしていますが、適度に標識がありますからそれにしたがって進んでください。
一旦鉄道から離れるように進みますが、また畦道のようなところを通って鉄道沿いに戻ってきます。
三岐鉄道をトンネルでくぐる箇所は、情報があればすぐに分かるでしょうが、標識頼りに進んでいると迷うかもしれません。
何せ、この辺りの標識は朽ち果てているものが多く、いまいち信頼性がもてません。
鉄道をくぐるのは車道の脇につけられている歩行者専用のトンネルです。
左手下に現れますから、右の鉄道にばかり目を取られずに、左手にも注意を払って進んでください。
しばらくはずっと舗道で、国民宿舎の少し前から車道下の地道にはいりますが、曲がる箇所も少ないし、国民宿舎までは迷わず行けると思います。
ただし、宇賀渓に寄る場合は、地道に入ってしまうと入り口を通り過ぎてしまうのでずっと車道で行ったほうがよいでしょう。
国民宿舎からは少しだけ舗道を歩き、またすぐに左下手の地道に入ります。ここからは一本道で、迷うことはないでしょう。
また、福王神社への分岐が出てきますが、ここには標識があったはずです。
ゴルフ場を左手に見て、一旦舗道に出ますがすぐにまた山道に入り畦道のようなところから切畑の集落に出ます。
田んぼから出てきて右上手に集落が見えますが、そちらまで一旦坂道を登っていきます。そして集落のところで左折します。
車道を斜めに横切るように林道に入ると程なく八風大石が右手に見えます。
ここまで標識が整備されています。
林道を進むと再び車道に出ます。
ここで僕が通ったときは大規模な道路造成工事をしていましたが、今はもう終了しているでしょう。
予想するに、ここは交差点を直進した後、しばらく真新しい道路を下るように進み、左にて出てくる小さな分岐から舗装車道に入っていくようになるのだと思います。
分岐には標識がありましたが、道路造成の際には抜かれてしまうこともしばしばありますので、ご注意ください。
あとは尾高観音を経て、三重県民の森の手前まで大丈夫でしょう。
三重県民の森への入り口はちょっと草の生い茂った山道をあがるようになっていて、正しいルートなのか一抹の不安を覚えるでしょう。
ここをあがって舗道になれば大丈夫、また間違えていても三重県民の森の中でしょうから適当に進めばきっと舗装路に出ると思います。
幕営地としての三重県民の森ですが、僕が最初に迷った展望台は確かに眺めは抜群ですが、深夜になっても地元の若者が車でちょくちょくやってくるようで、落着いて眠れないかもしれません。
やはり学習館の周辺がよいでしょう。
三重県民の森までの交通機関は菰野駅から三重交通(0592-29-5533)のバスが通っているはずです。
また、途中の宇賀渓や田光までもバス便があります。
宿泊は、国民宿舎以外にあるかどうか分かりません。
詳しくは、藤原町企画課(0594-46-3311)、大安町農林商工課(0594-78-3506)、菰野町企画観光課(0593-93-1211)にお問い合わせ下さい。