院長からのメッセージ


.作者略歴ハリー小野(Harry Ono)
東京都世田谷区在住。既婚。東京大学で機械工学を、米国のシカゴ大学で経営学を学ぶ。現在は、機械メーカーの開発センターで、主に海外生産事業の支援活動を業務としている。
コンピュータとの付き合いはアメリカ留学以来で、一度も開発側になったことはないが、ユーザーとして大型、ミニコン、パソコンとかかわりを持ち続けている。
パソコン以外で興味あるもの:オーディオ、TVゲーム、マンガ、写真。映画、オペラ、ミュージカル、ジャズ、登山、スキー、サッカー、野球、駅伝、歴史、心理学、考古学、言語学
メールアドレス:harryono@02.246.ne.jp


Mac Clinic開院にあたり
1996.2.14.
私はAppleIIの時代からの大のAppleファンで、Macintoshのエバンジェリストでもあります。従って、私の周辺もほとんどMacを使っています。Macはとっつきやすいパソコンですが、いざ新しいソフトをインストールしたり、新しい機器をつないだだけでも色々なトラブルが発生し、よく相談を持ちかけられます。Performaユーザーには電話相談サービスがありますが、なかなかつながらないとか、マニュアルどおりの回答しかしてくれないとかの不満があります。世の中には参考書も沢山出ていますが、個別のトラブルには必ずしも対応していません。
このページはそうしたMacユーザーの具体的な悩みに対し、解決策を示すことを目標に開設しました。本来このようなページは初心者に読んでいただきたいのですが、初心者はインターネットにアクセス出来ないという矛盾があります。このページにアクセスできる中級者の方は、初心者のアドバイザーとなって頂けたらと思います。

始めは、Macだけの病院と考えていたのですが、やはりインターネット状のホームページですし、インターネットユーザーの悩みも多いことから、インターネットに関するQAにも重点をおくことにしました。

インターネットにはすでにこのようなページがあるかと思っていたのですが、海外も含めて余り例がないようです。普通はNiftyServeのMacフォーラムやインターネットのNetNewsで議論されることが多いようですが、こういうフォーラムは一部のパワーユーザーに占領されて本当の素人にはなかなか質問しづらい雰囲気があります。
このホームページでは質問も受付、私が答えれるものは答え、そうでないものは掲示板に出して広く皆さんのお智恵も拝借したいと考えています。皆さんの協力をよろしくお願いします。



3カ月が過ぎて
1996.5.5.
このクリニックを開院して約3か月が過ぎました。
あまり沢山の問い合わせが来ても対応できませんので、ほとんど公開せずにやってきましたが、それでも毎日何通かの診療願いが来ます。
その内容は、ほとんどが厄介なシステムエラーや通信が出来ないと言った問題で、私が当初意図していたような初心者で周りに聞く人もいないからというような質問はほとんどと言ってありませんでした。予測していたこととは言え、インターネットは弱者を救う道具というのはやはりまだ幻想だなと感ぜずにはいられません。初心者はインターネットにも近付けず、インターネットにアクセス出来て自分の知りたいホームページが探せる人は中級以上に限られてしまうのでしょうか。
そんなわけで、来る質問は私も経験したことのない厄介な問題が多く大変苦労しています。パソコンのトラブルはハード、ソフトの組み合わせで起きるわけですが、私がもっているものは限られており(ここら辺は専門雑誌やアップル社がうらやましい)、よしんば全く同じ環境が用意できても再現できないものもあるので、一発で解決策を見つけることは出来ません。現物を見ればまだ色々試してみれるのでしょうが、電子メールだけのやり取りでは限界があります。患者さんの中にはうまく表現できない人もいらっしゃいます。従って、どれだけいろいろなところから情報が集めれるかが勝負で、これには随分時間がかかります。まあこういうやり方は、現場を見ずに事件を解決するアガサ・クリスティの探偵のような心境にもなり、うまく解決したときは楽しいのですが、なかなか解決までには至らないものも沢山あります。
このホームページでは、問い合わせに答えるだけでなく、なるべく多くの人に役に立つ情報を残していくことも目的にしていますので、ホームページの更新も行わなければなりません。この更新は、問い合わせがあったものをまとめたものと、ニュースグループで話題になっているもののいくつかを編集して載せるようにしています。MacClinicは科別のページを作成しており、これは多くの方からユーザーインターフェースが良いとお誉めの言葉をいただいているものですが、半面この編集には大変時間がかかります。そのため2週間毎に更新する予定だったのですが、なかなか実現できません。
この程度のホームページの維持に、これだけの時間と労力が必要だとは予測できませんでした。やはり趣味でやるには限界があると感じています。
しかし、一方でやはり困っている人が多いのも事実で、「地獄で仏に会ったようだ」とか「このページを見つけたときは涙が出てきた」と表現される方もいて、続けて欲しいという励ましのお言葉も多数の方からいただきました。特に海外ではMacの情報が少ないため苦労されている方も多いことが分かりました。
Macに対する風当たりが一層強くなってきていますが、Macユーザー維持のために少しでも役立てるのであれば、もうしばらくは頑張ってみようかなと思っていますのでよろしくご支援ください。



1年を経過して
1997.6.1
Mac Clinicをインターネット上で開院して一年以上が経過しました。
初めは、半年から1年くらいは続けてみようと思っていたのですが、こういう趣旨のページは多分に公共性があり、また最近はいろいろな雑誌で紹介されると、ますますやめるのが難しくなっていました。Macを取り巻く環境も厳しさを増しており、ここで手を引くわけにもいかなくなりました。

この一年で私が何を得、何を失ったかをまとめてみたいと思います。

このホームページを始めるにあたり、一つはもちろんボランティア的な活動をしてみようと考えたのですが、もう一つの目的に、自分をインターネットを使わざるを得ない環境に置いておいて、インターネットが本当に使い物になるのかどうかを体験しようというのがありました。
Mac Clinicでは電子メールによる診断を受け付けていますが、本当に色々な種類の質問が来ます。私はコンピュータの専門家でもありませんし、Appleの人間でもありませんので、基本的な知識や経験がない部分があります。従って、それらの質問に答えるには、まず必要な情報を収集することから始めなければなりません。トラブルであれば、自分のマシンで再現してみるというのを原則としていますが、それにしてもハードやソフトの基礎情報を集めなければなりません。雑誌や書籍、または秋葉原に行って実物を見たりもしますが、情報の70%はインターネットで収集しています。
インターネットは情報の宝庫ですが、自分が本当に欲しい情報を得るのはそう簡単ではありません。この一年の活動を通じて、インターネットによる情報収集の能力はかなりついたなと感じます。
また自分としては、インターネットについては、それなりの考えがもてるようになったと思います。

一方で、失ったものも多くありました。最大のものは自分の時間です。もちろん仕事の時間にも全く影響を与えていないわけではありませんが、自分の時間に関していうかぎり、80%はこのために使われているといってもいいかもしれません。家族が寝静まった11時以降が私の時間となりますが、おかげで深夜にゆっくり映画のビデオを見るという楽しみも無くなってしまいました。読む雑誌や書籍はMacやインターネット関係だけになり、この一年間は小説などはほとんど読んでいません。週末もほとんど外出しなくなり、一日中パソコンの前に座ってて、家族から大きなひんしゅくをかっています。月に2、3回定期的に秋葉原に行くことと、本屋でMac関係の雑誌や書籍を立ち読みするのが新しいライフスタイルになってしまいました。

一方で、このホームページをきっかけに、いくつかの雑誌から原稿を依頼されるようになりました。やっている活動が認められることはやはりいうれしものです。インターネットで記事を書くのに対し雑誌の記事を書くのとでは数倍神経を使います。ある意味ではホームページは間違っていればすぐに修正できるという気楽さから多少いい加減なものも載っけているということですが、それがホームページのよいところでもあり、悪いところでもあることを実感しました。雑誌への執筆は自分自身の勉強にもなりますし、生活への刺激にもなっていますので、余裕があるかぎり続けられたらなと思っています。



ブック「MACクリニック」の発刊に際し
1999.6.
秀和システムの編集者からメールがあったのは昨年の12月のことでした。秀和システムという出版社は技術関係の出版社で、最近はパソコンやインターネット関係の書籍で実績を上げているようです。編集者の方は古くからのMacユーザーで、私のホームページに関心を持っていたとのこと。
私は本職の仕事があるため一冊の本を書くだけの時間がないと難色を示したのですが、現在のホームページのカルテをそのまま編集するので、ただ内容を少しアップデートしてくれればよい、というのでやってみることにしました。
書籍の前書きでも書きましたが、ホームページは無料で必要な情報が見れるというメリットがある反面、それにアクセスできる能力がなければならないことになります。パソコンの初心者とか、実際にトラブルが発生すると、インターネットにはアクセスが出来なくなります。その意味で、やはり書籍の価値はあるのだと思います。
また、ホームページでは断片的に必要な情報を拾い読むことになりますが、書籍では全体として読むことが出来ます。全体を読むことによって、Macの仕組みというものや、普遍的なトラブルへの対応が分かっていただけるのではないかと思い、そういう構成にしていただきました。トラブルシューターであれば、もっと項目を分類したほうが良かったのでしょうが、あくまでも「読み物」としてとらえて欲しいと考え、ホームページとほぼ同じ構成にしました。
内容的にはかなり古いものもあり、結局は、ほぼ全部のカルテを書き直しました。ホームページはいくらでも修正が利くので正確さよりも早さが重要だと思うのですが、出版物の場合はそうはいきませんので、正確さを期すためいろいろなことを調べ直さなければなりませんでした。
原稿はPDFファイルで作成されており、Acrobatで修正を加えていく作業でしたので、随分効率は良かったのですが、いかんせん作業を行う時間が限られており、編集者の方には迷惑をかけてしまいました。
パソコンやインターネットは進化の速度が早いため、単行本であっても寿命が短いものです。私それでももっと普遍的なものを目指したつもりだったのですが、商業的にはそういうわけにもいかず、どうしも最新のOSなどへの対応を含めざるを得ませんでした。やはり、この業界は大変だな、スピードが勝負だなと肌身で感じることが出来、ちょっと緊張する体験でした。
唯一の不満は、本の表紙デザインですが、予算がないということで認めざるを得ませんでした。

その後、この本の内容に合わせ、ホームページの方も全面改定しましたので、情報としては同じになっています。
本を購入していただいたユーザーの方、どうもありがとうございました。



Mac Clinic診断の有料化について
1999.11.1
このMac Clinicを開院してから3年半が過ぎました。
Appleも一時期の危機的状況を脱し、iMacやiBookの発表により日本でも着実にユーザーの数を増やしています。何とかして、Macのコミュニティを支えていこうとしている私たちにとっては、本当にうれしいことです。
Macのトラブルを取り扱ったホームページやフォーラム形式のホームページは結構沢山ありますが、Mac Clinicのように直接ユーザーに回答をするという形式のものは他にはないようです。そのためか、開設当初より多くのユーザーから質問をいただいて来てきました。
平均すると1日に10件、年間には3〜4000件ということになります。
一つの質問に対しては、簡単なものでも丁寧に回答すれば20分くらいはかかります。難しい問題、調査や再現実験が必要なものは数時間から数日かかることも少なくありません。
さらに、この活動はあくまでも仕事の合間にやっていますので、仕事が忙しい、または他の私事で忙しいときは対応できなくなります。
結果として、せっかくメールをいただいても回答できるのは数十パーセントで、積み残しばかりが増えていきます。
それだけではなく、せっかく長時間検証をして回答を差し上げても、治療結果はおろか、お礼さえくれないユーザーが非常に多く、虚しさを感じることが少なくありません。
診断を有料化することについては、随分悩みました。本来この活動はあくまでも趣味であり、またボランティアでもあるので、その範囲でやり通したかったのですが、回答が出来なければ読者の期待を裏切るだけになってしまいます。従って、診断依頼の数を減らす方法として有料化に踏み切ったわけです。こうすれば、本当に困っている人だけが質問してくるだろうと考えたからです。
実を言うと、診断を行うにはかなり費用がかかります。個人でただMacを使っているのであれば、それほど頻繁にシステムのアップデートや新しいソフトの導入はしないでしょう。周辺機器の購入も必要ありません。常に情報を得るにはMac関係の雑誌や書籍を購入しなければなりません。ということで、少しはこの活動に対し、経済的な支援をお願いできないかという思いもあります。
送金をするのは面倒なので、1件につき500円の図書券ということにさせていただきました。
よろしくご理解をいただきたいと思います。



5年目を迎えて
2000.2.26
自分でも気がつかなかったのですが、このMac Clinicを開所してから2月で4年が過ぎ、5年目に入ったことになります。
2月のはじめに、突然視力が低下する「原田病」という病気になり、3週間ほど入院を余儀なくされました。1月に中国と欧州に立て続けに出張し、過労がたたったのが原因かもしれません。ステロイドの大量投与により、とりあえずは退院できるレベルにまで回復しましたが、完治するには半年から1年くらいかかると言われています。
今年のMacWorld Expo幕張はちょうどこの入院中だったため参加することが出来ませんでしたが、PowerMac G4やiBookグラファイトが出て、とても盛り上がったようです。つい昨年のMacWorld Expoでは開催そのものが危ぶまれた、それほど日本におけるAppleのシェアが下がっていた、状況から考えると夢のような回復ぶりです。

Mac Clinicのホームページについては、そのような状況下でも常にいろいろな支持を受け、いろいろっ雑誌でも定期的に紹介していただいていますし、コンスタントに来訪者もあるようです(最近はカウンターをつけていないので正確な来訪者数は把握していません)。昨年末には、診断を有料化にさせていただきましたが、多少数は減ったものの、やはりコンスタントに質問があります。特に、シェアウェアの日本語化は非常に高い支持を得ており、われながら、このアイデアは良かったと思っています。

しかし、このような活動は本来はApple本体が行うべきもので、私のような個人がやれるレベルではないし、やるべきではないとも考えることがあります。時間的にも非常に負担が大きく、家族からは常に非難の的となっています。休日も含め、ほとんどパソコンに向かっている毎日ですので、健康にいいはずがありません。目の病気になったことについても、家族や知人はみなパソコンのやり過ぎだといいます。これが原因ではないことははっきりしていますが、自分でもあまり健康的な生活ではないと考えています。
ですから、この活動もいずれ、休止か停止するかなと考えているのですが、その一方で、ユーザーの指示がある以上、簡単に辞めることが出来なくなっているのも事実です。
まあ、あまり無理をせずにしばらくは続けていこうと考えています。



診断の有料化に関して
2001.1.5
診断を有料化して1年が過ぎました。
診断に当たっては、「必ず治療結果を報告して下さい」とお願いしていますが、報告していただいている方は3割程度しかいません。さらに「500円の図書券」をお願いしているのですが、実際に送付していただいているのはその半分程度です。
図書券をわざわざ買ってきて送らなければならないのは、確かに面倒ですし、従って、送る気はあっても忘れてしまったというユーザーの方も多いのかも知れません。
一方で、質問1件が500円は高いと思われている方も多いのかもしれません。雑誌が1冊500円程度で買えることを考えると、確かに高いと感じるでしょうね。
それであれば、質問はしないで、自分で雑誌を買うなり、ネット上で情報を集めれば良いとおもうのです。その方法が分からないとか、それが面倒だからというのであれば、やはり人の作業に対しては対価を支払うのは当然ではないでしょうか。
IBMとかMicroSoftのカスタマーセンターでは1件につき3000〜5000円を必要とします。
どんなに簡単な回答でもメールを書くのに10分以上はかかります。調査があれば1時間くらいは軽くかかってしまいます。もちろん収入を得るために診断を行っているわけではないのですが、敢えて「有料」と書いているにもかかわらず、感謝の意も述べられず、ただで答えて当然というようなユーザーが多いのには、やはり不快感を抱かずにはいられません。
皆さんのご理解とご支援をよろしくお願いします。



最近の活動について
2001.5.10
MacClinicの活動は4つの柱から成り立っています。
(1)メールによるトラブル診断、(2)その内容をカルテにしてホームページで公開、(3)主要なトピックスについては解説記事を公開、(4)シェアウェアの日本語化キットの配付です。
現在、日常的に行っているのは(1)と(4)で、(3)については気の向いたときだけ、(2)に至っては実は、このホームページを開設以来3回しか更新していません。一度は99年に単行本化されたとき、内容をアップデートしたので、まあいいのですが、インターネット部分なんかいまだに96年時点の内容のままです。私自身もこれはどうにかしなければと思ってはいるのですが、非常に面倒な作業のためもうずっと手付かずのままになっています。
ただ、Macのユーザーには古いMacを引き続き使用されている方や、中古Macを購入して使われる片も多いため、古い記事の方がかえって有り難がられることもあります。
それから、このホームページ全体としては、日本語化キットの人気が高く、これは頻繁に更新していますので、いかにもホームページ全体が更新されているような錯覚を与える役目を果たしています。シェアウェアの日本語化は、暇つぶしとしては最適ですし、人々からも感謝され、それにホームページの認知度を維持してくれるので、1石3鳥といったところです。
しかし、そうは言っても、本当はホームページ「Mac Clinic」の中核はカルテにありますので、今年は少しここに力を入れて、ユーザーの期待に応えるようにしたいと考えています。