Mac Clinic Tips:
CCLファイルって何?
MacOS8のモデム設定
Why CCL file is needed for MacOS8?
作成:1998年2月5日
Q:MacOS8をインストールして、Open Transpor/PPPでインターネットに接続しようとしたんですが、「モデムスクリプト」の設定が出来ていないとのメッセージがでました。マニュアルを読むと各モデム毎のCCLファイルを選択してくださいと書いてありました。
CCLってそもそも何なんですか?どうしてMacOS8から必要になったんですか?
幸い自分の持っているモデムは「Modem Scripts」フォルダの中にあったからいいのですが、もし無かったならインターネットへの接続はできないのでしょうか?
MacOS8ではOT/PPPが標準になった
インターネットにプロバイダ経由で電話接続する場合は、PPP接続ソフトが必要だ。読者の多くはMacPPPかFreePPPを使っていると思うが、これらはいずれもサードパーティが提供するものだ。MacOS8を簡易インストールするとOpen Transport/PPP(以下OT/PPP)がインストールされるが、これは初めてのApple純正PPPソフトだ。Open Transportの機能をフルに活かすことと、接続の手続きを簡略化する目的で開発されている。
OT/PPPを使うには「TCP/IP」、「PPP」、「モデム」という3つのコントロールパネルを設定する必要がある。「モデム」の設定では使用しているモデムの機種を選択するメニューが加わっている。

このモデムの設定をしないまま、OT/PPPからインターネットに接続しようとすると、「モデムスクリプト(CCL)がインストールされていない」というエラーメッセージが出てくる。

今までFreePPPを使っていたときは、こんな必要はなかったし、どんなモデムでも接続することが出来た。これはなぜだろうか。
PPP接続ソフトとモデムの関係
PPP接続ソフトの主な役割は、モデムをコントロールすることとプロバイダへの接続にある。プロバイダへの接続というのはIDやパスワードの入力だが、重要なのはモデムのコントロールだ。
モデムの役割は、デジタル信号とアナログ信号を変換する基本機能に加え、ダイヤリング、データ圧縮、フロー制御、速度制御などだが、これらの設定はモデム自身ではなくパソコン側から行なわなければならない。モデムの制御にはATコマンドという業界標準のコマンドが使われる。
例えば、トーン式の電話から4321-5678に電話をかけたい場合、PPP接続ソフトの設定で、電話番号を入力し、ダイアル方式でトーンを設定すると、PPP接続ソフトからモデムに対しては、
>ATDT43215678
という信号が送られる。モデムはこのコマンドを理解し、実際のダイアリングを行なうわけだ。
PPP接続ソフトには、これ以外にモデムを制御するための設定を行なう部分がたくさんある。
例えば、FreePPPの設定画面を見てみよう。ここには、ダイアル方式、モデム速度、フロー制御、りダイアル回数、アイドル切断時間、その他の設定をするようになっている。

しかし現実には、これらの設定が難しいのだ。どれだけの人が、自分の電話のダイアル方式や、自分のパソコンのモデムポートの速度を知っているだろうか。フロー制御の設定に至っては、CTSやDTSのどちらかを選べとか言われても、そもそもこれらが何か分からないというユーザーが大半だろう。さらに、初期化コマンドの入力欄というのがあるが、ここまで来るとお手上げだ。
この設定がうまく行かないと、接続できなかったり、十分な通信性能がでなかったり、すぐに切断されてしまったりする。インターネットへの接続は難しいと一番感じさせる部分である。
さて、OT/PPPの登場だ。このコントロールパネルを見てみると、設定はID、パスワード、電話番号だけだ。ダイアル方式の設定はモデムコントロールパネルで行なっているが、ポート速度やフロー制御とモデムコントロールの設定が全く無いことに気づくだろう。

OT/PPPでは複雑なモデムのコントロールを、全てモデムスクリプトとよぶプログラムに任せている。これで、ユーザーはモデムの設定で悩むことなく、インターネットへの接続ができるようになったのだ。
モデムスクリプト、CCLファイルとは何か
OT/PPPはモデムスクリプトがなければ動かない。「PPP」コントロールパネルで接続ボタンを押すと、機能拡張フォルダの中の「Modem Scripts」フォルダにある指定したCCLファイルが読み込まれ、モデムはそのプログラムに従ってコントロールされる状態となる。
モデムスクリプトは一種のプログラムだ。
だから、接続の速度に関しても、1200bpsから始めて2400、4800と指定速度を変えていき、つながる最高のところまで来たらそこで固定するというプログラムを組めば、速度設定が自動化できる。
また、モデムはリザルトコードと言って処理の状況を数字もしくは簡単な英語をパソコンに返す機能を持っているが、これもプログラムの中で分かりやすい日本語に置き換えるということも出来る。
モデムスクリプトは専用のプログラミング言語によってプログラムされる。Macintoshの場合はCCL(Communication Command Language、接続制御言語)という言語を使う。これはAppleがもともと、Apple Remote Access(ARA)を動かすために開発したもので、OT/PPPはこの技術を利用したものだ。
Windowsでもモデムの設定にはモデムスクリプトを使うが、この場合は、単純に「モデムスクリプト」と呼び、Macの場合は、それと区別する意味もあって「CCLファイル」と呼ぶのが一般的だ。もちろん、CCLファイルはWinodwsでは使えないし、Windows用のモデムスクリプトはMacでは使えない。
CCLファイルが無い場合はどうする?
OT/PPPを使う場合は、自分の使っているモデムのCCLファイルが機能拡張フォルダの「Modem Scripts」フォルダに入っていなければならない。MacOS8で簡易インストールされた「Modem Scripts」フォルダには沢山のCCLファイルが収められているが、当然のことながら、MacOS8の発売後に発売された新しいモデムを購入した場合は、そのCCLはModem Scripts」フォルダには入っていない。
なるべくCCLフィルが添付されているモデムを購入するのが好ましいが、そうでない場合は、モデムメーカーがインターネットやニフテイで、CCLファイルをダウンロードできるようにしてくれるのを待つしかない。
それまで待てない場合はどうするか。その場合は、同じメーカーのなるべく似た機種のCCLファイルで試してみよう。基本的な機能は同じなので、すべての性能をフルに発揮させることは出来ないが、ともかく接続できる場合が多い。
CCLファイルが入手できない場合の最良の手は、OT/PPPは諦めてFreePPPを使うことだ。Open Transport1.2の環境下でもFreePPPは問題なく動く。使い勝手という点では、FreePPPの方が機能が上で、複数のプロバイダーを使っている場合などは、これを使うしかない。
ところが最近では、OT/PPPとCCLファイルを使うことを前提としているモデムも出てきた。PHSのデータ通信用のデータカードなどがそうだ。またWinodws専用といっているモデムをOT/PPPで使いたい場合は、自前でCCLファイルを用意しなければならない。
CCLファイルのプログラミングは、モデムの知識と、CCLそのものが理解できれば、それほど難しいものではない。既存のCCLファイルは簡単に開けることが出来るので、その一部を修正するだけで済むことも多い。興味のあるユーザーは、一度CCLファイルの中身を覗いてみてほしい。CCLファイルは「mlts」というファイル形式のため、そのままでは開くことは出来ないが、File Buddyt等でファイル形式を「TEXT」に変更してやると普通のエディターでも開くことが出来る。
本文はMac Fan Internet 98年2月号用に執筆したものです。
(c)Harry Ono