mc_title2Mac Clinic Tips:
ディスク診断・修復ソフトの機能
Functions of Disk Maintenance Softwares


初稿:2000年8月1日

ハードディスクの定期的なメンテナンス

一般のユーザーにとってトラブルは避けたいものだが、パソコンを使用している以上これは避けることが出来ない。トラブルの原因にはいろいろなものがあるが、ハードディスクが原因となる場合が多い。ハードディスクには磁気でデータが保存されているが、データの読み書きを繰り返したり、フリーズした際の強制再起動などを繰り返すことによって、ハードディスク(上のデータ)がダメージを受けることで発生する。ハードディスクに強い衝撃を与えたり、落雷などで強い電流が加わったりしないかぎり、ハード的にハードディスクが損傷することはあまりない。ほとんどの場合は、磁気で書かれたデータが損傷されるものだ。

ハードディスクのデータの損傷は普通にMacを使っていても起きる。これが蓄積すると、データの消失など深刻なトラプルにつながる恐れがある。そうしたトラブルを未然に防ぐためにも、ハードディスクは定期的にメンテナンスをする必要がある。

メンテナンスを行うには専用のソフトが必要になるが、これが以下に紹介するディスクユーティリティソフトだ。ソフトによって機能が異なるので、ユーティリティと呼ぶのがふさわしいが、ディスク診断ソフト、ディスク修復ソフトと呼んでも構わない。Macに標準で付属するもののほか、より強力な市販ソフトもある。これらを正しく使えば、ディスク関連のトラプルはグッと少なくなる。

OS標準の強い味方 Disk First Aid

ディスクユーティリティソフトとしては、市販の「Norton Utilities(ノートンユーティリティーズ)」が有名だが、MacOSにも標準で「Disk First Aid(ディスクファーストエード)」というソフトが付属する。MacOS8.5以降で、Macを強制再起動したときに自動的に立ち上がって「適切にシステムを終了しなかった可能性がある」と警告し、ハードディスクを検証してくれる、あのソフトだ。

昔は貧弱な機能しか持たなかった「Disk First Aid」も、OSのバージョンアップとともに機能を強化し、かなりのディスク障害を検証/修復できるようになった。ユーザーの頼もしい味方だ。

あるファイルを開こうとすると決まってフリーズやシステムエラーが発生する場合は、実はそのファイルの実体ではなく、そのファイルを認識するために必要な「ディレクトリ」という部分のデータ(ファイルやフォルダーの所在をまとめた住所録のようなもの)に異常が生じているケースが多い。そのようなディレクトリ異常を修復してやれば、トラプルが生じたファイルも元通りに使えるようになる可能性が高いわけだ。

「Disk First Aid」は、このディレクトリ異常を検証/修復してくれる。緊急時の修復はもちろんのこと、好きなときに起動して検証/修復もできる。外付けのディスク類にも適用できる。定期的に検証するよう心がければ、ディスク関連トラブルの予防にも役立つ。ただし、すでに重度の障害が生じている場合には対処しきれないこともある。そんなときには、より強力な市販のディスクユーティリティソフトを使うしかない。

不運にもデータが壊れてしまったら

「Disk First Aid」でカバーできないようなディスクの損傷が生じた場合、画面に突然爆弾マークが出てシステムがクラッシュすることがある。もしこれが、Macがハードディスクにアクセスしている最中に起きた場合、心配なのはデータの消失だ。なにしろ作業中のデータだけではなく、ディスク上に保存されていたほかのデータまで読み取れなくなることもあるので、始末が悪い。

しかし、このような「万が一」の場合でもあきらめてはいけない。一見データが消失してしまったように見えても、そのディスク上の領域に新たなデータが上書きされない限り、データそのものは残っている可能性が高い。市販のディスクユーティリティソフトやオンラインウエアのデータ復元機能を使えば、こうした失われたかのように見えるデータを、かなりの確率で取り戻すことが可能だ。

ただし、注意点をひとつ。トラブルが発生したディスクに対し、データを復元する前に、市販ソフトの強力なディスク修復機能を使ってしまうと、場合によってはデータが復元できなくなってしまうことがある。まずはデータ復元機能を使い、無事データが復元できたら別のディスクに保存する。それからディスク修復機能を使うようにしよう。


ユーザーのタイプ別にメンテソフトを使い分け

市販のディスクユーティリティソフトは、基本的に複数の修復機能を搭載しており、製品によって得意分野も違う。「Noton Utilities for Mac」(NUM)はこの種のソフトとしては草分け的な存在であり、機能も豊富で、メンテナンスに必要な機能をひと通り備えている。確かにバランスはよく、幅広いユーザーにお勧めできるものの、すべてのユーザーにNUMが最適というわけではない。他のメンテナンスソフトに目を向ければ、より自分に合つたソフトが見つかるかもしれない。

目下、NUMの一番のライバル製品と呼べるのが「TechTool Pro(テックツールプロ)」だ。最大の特徴は、この種のソフトで唯一ハードの診断もできる点だ。メモリーやCPUをはじめ、ビデオ回路やモデム、周辺機器などの異常を診断してくれる点は魅力だ。

「MacTools Pro(マックツールズプロ)」は、NUMと同等の機能を持ち、古くからMacユーザーに親しまれているソフトだ。データのバックアップ機能を搭載するのが特徴で、バックアップを重視するユーザーにお勧め。ただし、残念ながら現行バージョンはマツクOS9に対応していないので、最新機種のユーザーには向かない。

「Disk Worrier(ディスクウォーリア)」は、NUMのディスクドクターに相当する、ディスクの診断/修復機能のみに特化したソフトだ。機能を絞った分、操作がシンプルで扱いやすい。修復機能の信頼性が高いのも特徴といえる。

シェアウェアだが強力な復元機能を持つ「Data Rescue(データレスキュー)」というソフトも注目だ。

各ソフトが持つ機能をしっかり見極めて、自分にぴったりのメンテナンスソフトを探そう。

Noton Utilities5.0.2
オールマイティな定番メンテナンスソフト

ノートン先生の愛称でもおなじみのノートンユーティリティーズは、マツク用メンテナンスソフトの定番中の定番と言える存在だ。
起動ボリュームの診断・修復をしてくれる「Disk Doctor(ディスクドクター)」、誤って削除してしまったデータを復元する「Unerase(アンイレース)」と「Volume Recover(ボリュームリカバー)」、ディスクを最適化しアクセス効率を上げる「Speed Disk(スピードディスク)」など、ディスクのメンテナンスに必要な機能がワンパッケージでひと通り揃う。ワンクリックでインターネット上のシマンテックにアクセスして、ソフトを自動的にアップデートしてくれる同ソフト独自の機能「Live Update(ライブアップデート)」機能も便利だ。また、シマンテックのウィルス対策ソフト「Norton Unti-Virus ver.6.0」との連携後能も用意されており、オールマイティーなソフトと言える。
但し、MacOSのバージョンとの相性が狭く、アップデータの配付もないため、OSのバージョンアップの度に新しいNUMを購入しなければならないのはユーザー無視のソフトと言わざるを得ない。
<<初心者から上級者まで広くカバー。まあこれがあれば安心>>
シマンテック 12800円)

TechTool Pro2.5.3
ハードも診断できる総合病院

TechTool Proは、ディスク関運の修復機能に加えてハードのチェック機能を搭載している。このため、トラブル発生時のMacの状況を、あらゆる面から多角的に診断できるのが特徴だ。
ドライブ関運の修復機能としては、削除してしまったファイルの復元や、破損したカタログ(ディレクトリー管理データ)の修復、デスクトップファイルの再構築、ディスクの最適化、メディアやファイルの検査などが用意されている。
また、最新バージョンではドライブやボリュームのディレクトリー構造を再構築できるようにもなった。再構築したディレクトリー情報はいったん仮想ボリューム上に展開され、デスクトップにマウントされるので、元のボリュームを言き換えてしまう前に情報を比較・検証できるのがありがたい。
NUMがMacOSのバージョンアップの度に有料のバージョンアップが必要になるのに対し、TechTool Proは無償でアップデータが配付されるのは非常にユーザーにとっては好ましい対応だ。
<<誰にでもお奨め。ハードにも興味がある場合はこれしかない。>>
システムソフト 17800円)

Mac Tools Pro 5.0.1
NUMと並ぶ老舗、パワーユーザーに人気

古参のディスクメンテナンスツールとしてNMUの好敵手の関係だったのがMacツールズプロだ。ただし、MacOS9には未対応なのが残念。搭載する機能としては、ディスク診断・修復ツール「ディスクフィクス」、誤って削除してしまたデータを復元する「アンデリート」、ディスクを最適化する「オプティマイザー」など、NUMに近い内容を持つ。Macツールズプロならではの最夫の特徴は、データのバックアップし作業を自動化する機能「MVバックアップ」が同梱されていることだ。目頃のパックアップまでを視野に入れたメンテナンスソフトはほかにない。また、起動ディスクの診断/修復や最適化を行う際に、最小構成のシステムをRAMディスク上に作成し、そこからMacを起動する「RAMブート」後能もユニークだ。
<<バックアップ重視の、MacOS8.6以前のユーザーにお奨め>>
メディアビジョン 17800円)

Disk Worrior2.0
ディスク検証/修復に徳化した単機能ソフト

Disk WorriorはNUMの「Disk Doctor」に相当する、ディスクの診断と修復のみに特化した単機能ソフトである。
ディレクトリ情報は頻繁に更新されるため、クラッシュなどの影響を受けると誤った情報が蓄積され、これがファイルの破損やディスクのマウント不能などの原因となってしまうことがある。ディスクウォーリアは修復するディスクの内容を参照し、ディレクトリー情報を復元する。その際、元のデータにパッチを当てて修復するのではなく、新たに作り直すため、パッチの重複によってトラブルを二次的に拡大させる心配がない。また、再構築したディレクトリーはいったん仮想ボリューム上に展開されデスクトップにマウントされるので、元のボリュームを書き換えてしまう前に比較・検証できる。
<<安全にディスク修復だけを行いたいパワーユーザー向け>>
亘香通商 9800円)

Data Rescue
優れた復元率を誇るシェアウェア

Data Rescue は、Macの損傷したボリュームの内容を復元することに特化したユーティティだ。Norton Utilitiesはファイルの断片を探すが、Data Rescue はカタログの断片を探すので、データを非常に効率よく復元することができる。復元したデータは他のメディアに保存され、問題の発生したディスクには手を加えない。他の同種ツールが検知できない消失データを見つけだすことができるだけでなく、消失データの元々のアイコン・日付・フォルダ階層に至るまでを復元することができる。同種の市販ソフトとは異なり、機能拡張/コントロールパネルを追加しないので、コンフリクトの心配もない。
Data Rescue39ドルのシェアウエアでSylvain Demongeot氏ホームページ からダウンロードできる。登録するまでは試用版として試用できるが、回復できるファイルは一つに限られる。

ディスク管理ソフトの機能比較
  ディスクの診断 ディスクの自動診断 ディスクの最適化 消去ファイルの復元 ハードウェアの診断 システムベンチマーク ディスクアクセス表示 データの完全消去 起動ディスク 自動アップデート
Norton Utilities 5.0.2 ×
TechTool Pro 2.5.3 × × ×
MacTools Pro 5.0.1 × × ×
Disk Worrior 2.0 × × × × × ×
Disk First Aid × × × × × × × ×
Data Rescue 2.1.1 × × × × × × × × ×


Norton Utilitiesの使い方

トラプルが起きたらとにかくNUMの「ディスクドクター」をかける、というユーザーも多いようだが、何でもかんでも「ディスクドクター」で直せるわけではない。トラブルの種類によって用いる機能も違ってくるのだ。誤った使い方をしてもトラプルは解消しないし、逆に事態を悪化させることもあり得るので注意が必要だ。

Disk Doctor(ディスクドクター)
ディスクの診断と修復

「Disk First Aid」で修復できないディレクトリー関連のトラブルに見舞われたときこそ、Disk Doctorの出番だ。矛盾や欠損を生じているディレクトリにパッチを当て、元通りのかたちに修復してくれる。それだけでなく、媒体(メディア)自体や個別ファイルの不具合を検出し、修復してくれるのは心強い(データ量が多い程、検査には時間がかかる)。しかし、修復を頻繁に繰り返しているとディレクトリー情報がつぎはぎ状態になってしまうため、過度の信用は禁物だ。深刻なトラブルが起きたときはむしろ、データの復元とパックアッブを優先しよう。Disk Doctorは深刻なトラブルを未然に防ぐための、定期的な診断用として活用したい。

Speed Disk(スピードディスク)
ディスクの断片化の解消と最適化

データは常にひとつのまとまりとして保存されるのではなく、ディスク上の空き領域に順次書き込まれる。このため、Macを長い間使用しているとデータが分断して保存される「断片化」を起こしてしまう。断片化が生じると、ファイルを読み出すのに時間が余分にかかり、データの読み出し速度が下がる。このようなとき信はスピードディスクを使って断片化を解消(最適化)しよう。ファイルを整理し、読み出しを高遠化してくれるのだ。Macの使用頻度にもよるが、1、3ヵ月に1回程度を目安にするといいだろう。

Unerase/Volume Recover(アンイレーズ/ボリュームリカバー)
起動ファイル復元

誤ってファイルを、削除してしまったり、クラッシュでファイルが消失した際には、まずUneraseを試そう。それでも消失ファイルを復元できそうにない場合は、より復元能力の強いボリュームリカバーを試す。起動ディスクにあるファイルを復元する場合は、ほかのボリュームから起動しようo

File Saver(ファイルセーバー)
ディスク情報の管理

File Saverは、ディスク上のデータの動きの情報を独自に保持しておくことにより、ディスクの修復やファイルの復元の効率を高める機能だ。頻繁にディスク関連のトラブルが起きるようなら「オン」にしておいたほうがいい。ただし、一部のソフトとはコンフリクトを生じる可能性もあるので注意しよう。

Live Update(ライブアップデート)
ソフトの更新

メンテナンスソフトは常に最新のバージョンをキープしておきたい。特にMacOSがアップデートした場合は、ソフトのバージョンが適合しない場合に使用すると、かえってトラブルを誘発してしまうことがある。この機能を使うと、自動的にシマンテックのホームページに接続し、NUMでアップデートが行われている場合は、アップデートファイルをダウンロードする。1〜2ヶ月に一回程度はライブアップデートを行い、最新のアップデートファイルの有無をチェックしたい。


資料:「MacPeople 2000.7.1」他
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