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EndNote日本語版活用講座(16)
How to use EndNote Japanese Edition

初稿:2002年2月28日

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上級編:EndNote5のデータベースの構造




EndNote5はデータベースソフトでもあるので、データの扱いはFileMakerなどのデータベース専用ソフトと全く同じだ。
但し、文献データベースに特化しているので汎用性は制限されている。

新しいスタイルの定義や、書き出し、読み込みを行うにはEndNote5が持つデータの構造を理解しておく必要がある。

一般的にデータベースでは1件1件のデータをレコードと呼ぶ。EndNote5の場合は一つの「文献」が一つのレコードになる。
それぞれのレコードには識別のためレコード番号が付けられる。EndNote5では文献番号(Reference number)というものもあるが、これはあくまでも文献というデータに大して与えられた番号、レコード番号はデータベースとしてのもっと無機的な管理番号であり、同じ場合もあれば、異なる場合もある。

データベースではそれぞれのレコードが持つ属性をあらかじめ決めておかなければならない。属性を入れる場所のことをフィールドと呼ぶ。
FileMakerのような汎用DBソフトの場合は、途中でフィールドを増やすことが可能だ。例えば、名簿管理データベースを作っていた場合、途中から携帯電話番号やメールアドレス等を追加する事が可能だ。
しかし、EndNote5にはその自由度はない。

文献の種類によって属性が異なる。論文誌の場合は「著者、掲載誌、巻号、掲載ページ、発行年」が主な属性だが、翻訳された単行本の場合は「著者、訳者、本の名前、版、出版社名、出版社の所在地、発行年、ページ数、ISBN番号」等が必要になる。
EndNote5では引用として考えられる22の文献の種類をあらかじめ決め、それぞれの属性を決めている。
文献の種類によって同一の属性や類似の属性は共通化できるが、独自の場合は独立のフィールドを設け、最終的に、それら全てを包括できる(最小公倍数としての)フィールドを決めている。
それが以下に示す38のフィールドである。
この中には多少の自由度を持たせるために6つのユーザー定義のフィールドが用意されている。

EndNoteのデータフィールド
フィールド番号 フィールド名
1 Author
2 Year
3 Title
4 Secondary Author
5 Secondary Title
6 Place Published
7 Publisher
8 Volume
9 Number of Volumes
10 Number
11 Pages
12 Section
13 Tertiary Authore
14 Tertiary Title
15 Edition
16 Date
17 Type of WorK
18 Subsidiary Author
19 Short Title
20 Alternate Title
21 ISBN/ISSN
22 Original Publication
23 Reprint Edition
24 Reviewed Item
25 Custom 1
26 Custom 2
27 Custom 3
28 Custom 4
29 Custom 5
30 Custom 6
31 Accession Number
32 Call Number
33 Label
34 Keywords
35 Abstract
36 Notes
37 URL
38 Author Address


FileMakerなどで同様のデータベースを作る場合は、一つ一つの文献カードにはこれら全てのフィールドを作ることになる。
しかし、これでは文献の種類によっては不必要なフィールドが多すぎて、空白だらけになってしまう。データ入力の効率も悪い。
また、フィールド名についても文献の種類によって変わるものがあり、不自由を感じる。

EndNote5はこの問題を解決するために「文献形式」という「穴あきテンプレート」の概念を導入している。
穴あきテンプレートとは、それを換えると必要なフィールドだけが表示されるようになる。
例えば、「単行本」というテンプレートをこの上に当てると「著者、編集者、訳者、本の名前、版、出版社名、出版社の所在地、発行年、ページ数、ISBN番号」のフィールドだけに穴があいており、フィールド名もそう表示される。
「映画」というテンプレートの場合は穴の位置はほぼ同じだが「著者」→「脚本家」、「編集者」→「監督」、「出版社」→「配給会社」のようにフィールド名の表示が変わり、「訳者」のフィールドが「出演者」として使われる。さらにフィールド17に穴があき「媒体の種類」が付け加えられる。

文献形式テンプレートは25(内3つはユーザー定義)種類用意されている。
理解の参考として典型的なものを4つ上げる。

Generic Journale Book Magazine Newspaper
Author Author Author Author Reporter
Year Year Year Year Year
Title Title Title Title Title
Sec Author   Series Editor    
Sec Title Journal Series Title Magazine Newspaper
Place Pub   City   City
Publisher   Publisher    
Volume Volume Volume    
Num Vol   # of Volumes    
Number Issue   Issue Number  
Pages Pages # of Pages Pages Pages
Section       Section
Ter Author        
Ter Title        
Edition   Edition   Edition
Date Date     Issue Date
Type       Article Type
Sub Author   Translator    
Short Title Short Title Short Title Short Title Short Title
Alt Title Alt Journal      
ISBN/ISSN   ISBN    
Orig Pub Orig Pub Orig Pub Orig Pub Orig Pub
Reprint Ed Reprint Ed Reprint Ed Reprint Ed Reprint Ed
Review Review   Review Review
Custom 1        
Custom 2        
Custom 3        
Custom 4        
Custom 5        
Custom 6        
Accession # Accession # Accession # Accession # Accession #
Call # Call # Call # Call # Call #
Label Label Label Label Label
Keywords Keywords Keywords Keywords Keywords
Abstract Abstract Abstract Abstract Abstract
Notes Notes Notes Notes Notes
URL URL URL URL URL
Auth Address Auth Address Auth Address Auth Address Auth Address


これを見れば、フィールドと文献形式の関係が何となく分かると重う。
どの文献形式にも共通するフィールドと特定の文献形式だけに適用されるフィールドがあること分かる。

テンプレートは単に不必要なフィールドを見せなくするだけのものであり、フィールドそのものが無くなるわけではない。
ユーザーがフィールド名を定義すれば、そのフィールドは表示されるようになる。
反対に、他のユーザーはCusom1を定義してそこにデータを入れていても、Custom1を定義していないユーザーが開くとそれは表示されない。

Custom1以上が必須の情報であり、それ以下はあくまでもデータベース管理者が独自に入力するエリアである。
Abstractは論文の要約、Noteはメモ書きで何を入れてもよい。Keywordは文献検索を容易にするために入力するところである。
CustomとLabelは一般にはほとんど使われず、日本の事情に合わせてフィールドを設定する場合に使うとよい。

このテンプレートの考えはなかなか秀逸で、自分の文献がどの種類に属するのか判断できなくても構わない。どの文献形式で入力しても、文献形式を換えてみるとちゃんと表示され分かるだろう。文献形式は文献の分類を行うためのものではなく、文献の種類によって入出力の処理を変更できるようにするものである。
文献形式はデータベースの管理よりも、後で述べる、引用のフォーマットを実現するために必須のものである。

実はこの38のフィールドはユーザーが自由に定義できる。
一番左のフィールド名を全部変えてしまえば、文献管理データベースではなく全く別のデータベース管理に使うことも出来る。しかし、それはあまり意味がないだろう。
文献管理としてEndNote5を使うのであれば、最低、一番左のフィールド名(=フィールド属性)は維持した方がよい。というのも、アメリカの文献データベースからオンラインでダウンロードする形式はこの形式にそって変換されるし、他の研究者間とライブラリを交換することもあるだろうから、データベース構造だけは一致させておく必要がある。

包括的形式のフィールド名

全38のフィールドを持った文献形式を包括的形式という。これはGnericの訳である。先にも述べたさまざまな文献形式の最小公倍数、全てを包括したものという意味である。
包括的形式のフィールド名はそれ自身を使うことはなく、それぞれの文献形式テンプレートを作成するに当たり、目安とするものである。
大体は分かると思うが、一部英語では理解しにくいものがあるので解説する。

# 英語名 日本語訳 意味、用途 他の文献形式で用いられるフィールド名
1 Author 著者 引用文献の著者 編集者、記者、プログラマ、脚本家、出願者など
2 Year 引用文献の発行年  
3 Title タイトル 引用文献の題名 論文名、本の名前、記事名、講演名、番組名、特許名など
4 Secondary Author 2次的著者 著者以外に明記すべき執筆関係者 編集者、監督、手紙の場合の受取人など
5 Secondary Title 2次的タイトル 文献が掲載されている媒体名 論文誌名、単行本名、雑誌名、新聞名、会議全体名など
6 Place Published 出版場所 都市、国名  
7 Publisher 出版者   出版社、大学、研究所、配給会社、特許局など
8 Volume 雑誌では年、本では全集の巻をさす 判例では裁判所名、Web情報はアクセス年で使用
9 Number of Volumes 全巻数 シリーズ文献場合の全巻の巻数  
10 Number 定期刊行物の月や号に当たる番号  
11 Pages ページ 掲載ページまたは総ページ数  
12 Section セクション 掲載誌を更に細分化するとき 新聞の欄、法律の項など
13 Tertiary Authore 3次的著者 2次的より更に関連著者がいる場合 全集本の全体編集者、映画のプロデューサー
14 Tertiary Title 3次的タイトル 2次的より更に関連媒体がある場合 全集本の名称、
15 Edition 印刷の版番号 プログラムのバージョン、法律のセッション
16 Date 日付   発行日、新聞の日付、番組の放送日、会議開催日など
17 Type of WorK 作品の種類 細分化のための付加情報。 新聞記事の種類(投稿か記事かなど)、媒体の種類
18 Subsidiary Author 補助的著者 関係した人を記したい場合 訳者、映画等の出演者、議案の発起人、判例の弁護士など
19 Short Title 短縮タイトル タイトルを短縮表示したい場合  
20 Alternate Title 別称タイトル 一般に論文誌の省略形で使われる 論文誌略称
21 ISBN/ISSN ISBN/ISSN 国際出版番号 報告書番号
22 Original Publication 最初の出版 引用の掲載媒体と異なる場合 法律関係では履歴
23 Reprint Edition 再印刷出版 引用の掲載媒体と異なる場合  
24 Reviewed Item 評論記事    
25 Custom 1      
26 Custom 2      
27 Custom 3      
28 Custom 4      
29 Custom 5      
30 Custom 6      
31 Accession Number 図書番号 図書館で管理用に使用される番号  
32 Call Number コールナンバー 図書の注文に使用される番号  
33 Label ラベル 何の目的で使ってもよい  
34 Keywords キーワード 検索のためのキーワード  
35 Abstract 要約 文献内容の要約  
36 Notes メモ 何の目的で使ってもよい  
37 URL URL 著者、出版社等のURL  
38 Author Address 筆者の住所 Eメールアドレスでもよい  
<表:包括的形式のフィールド名一覧表table_B.html>


文献形式テンプレート

EndNote5で用意されている文献の種類(ここでは文献形式)は全部で22ある。包括的形式とユーザー定義の欄を加えると全部で25ある。
その中には日本人にはなじみがないものもあるのでちょっと解説しよう。

# オリジナル英語名 日本語訳 意味
1 Generic 包括的形式 全ての形式を網羅したもの
2 Journal Article 論文誌記事 学会誌以外に市販の専門誌を含む
3 Book 単行本 一人の著者によって書かれた本
4 Book Section 本の一部 複数の著者によって書かれた本、編集者がいる
5 Manuscript 手書き原稿 一般には未発表・未刊行の原稿
6 Edited Book 編集本 4)と似ているが編集者が引用の対象になるもの
7 Magazine Article 雑誌記事 雑誌の中の記事、論文が引用の対象になるもの
8 Newspaper Article 新聞記事 新聞の中の記事、論文が引用の対象になるもの
9 Conference Proceedings 会議録 学会の講演記録などを引用する場合。会議録が出版されている場合は、4)に分類する。
10 Thesis 未刊行論文 論文誌等に掲載されていないが、学内では発表されている論文など。
11 Report 報告書 政府団体、研究機関などが発行する報告書
12 Personal Communication 個人交信 手紙、電子メールの文章など
13 Computer Program プログラム コンピュータプログラム
14 Electric Source ウェッブ記事 ホームページやFTPサイトから入手した原稿を引用する場合。オンラインと印刷物の両方に記載されているものを引用する場合は、通常は印刷物からの引用とし、論文誌に分類するのがよい。
15 Audiovisual Material 音声映像媒体 ビデオテープ、DVD、CD、CD-ROMなどAV媒体出版物から引用する場合。
16 Film or Broadcast 映画/放送 映画、テレビ、ラジオ番組から引用する場合。
17 Artwork 芸術品 アメリカ特有のジャンル
18 Map 地図 アメリカ特有のジャンル
19 Patent 特許 工業系の論文で特許文書を引用する場合。
20 Hearing 公聴会記録 アメリカ特有のジャンル
21 Bill 法案 アメリカ特有のジャンル
22 Statute 法令 アメリカ特有のジャンル
23 Case 判例 アメリカ特有のジャンル
24 Unused 未使用1 ユーザー定義
25 Unused2 未使用2 ユーザー定義
26 Unused3 未使用3 ユーザー定義
<表:包括的形式のフィールド名一覧表table_B.html>


日本ではEndNoteは医学関係者が中心に使っているようだが、これを見ると、アメリカでは自然化学、人文科学、法律関係を含めほとんど全ての研究分野で活用されていることが分かる。

何度も言うようだが、この文献形式はフィールド表示を切り替える目的で使われるテンプレートとしての目的と、フォーマットを行うときに使用する目的があるが、包括的フィールドの意味さえ守ればユーザーがどう使うかは自由である。

日本で使用する場合でもこれらの分類でほとんどは網羅されると思うが、日米の文化の違いからぴったりしないものもある。
例えばコミックの「ゴルゴ13」の研究をしている場合、引用する文献としては、雑誌、増刊雑誌、単行本、テレビ、映画、ビデオ等がある。漫画の場合はページ以外に「こま」の概念があり、また執筆関係者も原作者と漫画家、編集者、助手などがいるので、「漫画雑誌」または「漫画本」という文献形式を設ける方がやりやすい。

新しい文献形式の作成法については「文献形式の作成」の項を参照していただきたい。

また、例えば論文誌の場合、一般には日本語の論文誌であってもフィールドとしては「Journal Article」がそのまま使える。
しかし、実際に論文を書く場合に引用をする場合、英語と日本語の引用では、文献目録の書式が異なることがある。例えば巻数を表示するのに、英語文献では「Vol.32」と書くが、日本語文献では「32巻」が求められる。
英語の書式のままフォーマットして、後で原稿を手で修正してもよいのだが、出力の違いに合わせて専用の文献形式を用意すればこの問題は解決する。

この方法については「日本語英語文献が混在する引用フォーマットを自動化する方法」を参照していただきたい。





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