![]() EndNote日本語版活用講座(20) How to use EndNote Japanese Edition 初稿:2002年3月2日 目次に戻る日本語論文誌へ投稿するためのスタイル作成日本の論文誌に投稿する場合はその論文誌の書式規定に従わなければならない。 引用する文献が英語だけ、または日本語だけであれば問題はないのだが、一般にはその両方が混在するだろう。 投稿規定を見ると「英語の場合は〜、日本語の場合は〜」と規定している部分がある。 圧倒的に日本語文献が中心で、英語文献は1,2という場合は日本語文献の形式で出力し、後で手で修正してもいいかも知れない。反対の場合は、英語の文献形式で出力して後修正でもよい。 しかし、これではせっかくEndNote5を使う価値が半減する。 論文の引用の書式の体裁を整えるのは結構面倒で、また手で修正するとミスも起きやすい。他人の情報を記載するところだけにミスは避けなければならない。従って、データベースから理想的には全く手を加えないで論文がフォーマットされることが望ましい。 実例をもとにそれを実現する方法を解説する。 1.投稿規定の例 次は高分子化学学会の投稿規定の例である。これを例とした他意はない。ちょうど日英の文献が混在している場合の規定があったから取り上げたまでである。 原文から少し編集しているが、投稿規定そのものは現実のものである。
2.EndNote5で対応できるかを検討する [文中引用] ・マルチ引用の場合は番号を範囲記号「〜」で表示すること求められている。EndNote5にこの機能はあるが、範囲記号は「-」だ。3件以上の引用はほとんどないと思われるので、出てきたら手で修正する。 [論文誌名](原文は雑誌と表記) ・著者名で英語と日本語の区分があるが、既存の「論文誌記事」文献形式を使っても設定は可能である。 ・2名以上の表記で、英語の場合だけ「and」を使うのが対応できるか。 ・欧文誌名は省略形を使わなければならないが、EndNote5には論文名をフルネーム、3つの省略形で登録する機能があるのでこれを利用すればよい。 ・「巻を設けていない雑誌は発行年を巻とする」という規定があるが、別に発行年も記述することが要求されている。EndNote5では「〜ならば〜」や「または」というような条件設定をすることは出来ない。従って、ここはデータの方で巻フィールドと年フィールドの両方に発行年を入れて置くしかない。両方が出力されることなるが、手動で消すしかない。 ・「号が1ページから始まり、通年ページ数がない雑誌は,巻数字の直後に号数を半角( )で囲んで挿入し、その後に半角カンマ・スペースを付し,開始ページ数を書く」への対応は日本独自のものかなり対応が難しい。通年ページがある場合は号のデータはないというのであれば対応は可能だが、号のデータも必ずある場合は対応できない。 [2次引用] EndNote5には2次引用を出力する機能はない。 色々考えたあげく、論文誌の中で空いている「Tertiary Author」フィールドを2次引用として定義することにする。 1次引用文献のこのフィールドに、2次引用文献を「フォーマットしてコピー」(ライブラリからoption+ドラッグするだけ)すれば簡単にデータが作れる。 出力スタイルで「2次引用」フィールドを指定する。 但し、2次引用も書式が投稿規定に合わせなければならないので、投稿先が変わればデータを入れ替える必要がある。 [単行本] ・記載項目に関してはEndNote5の「単行本」と「編集本」で対応できる。 ・版数:日本語の場合は「第1,2,3...版」、英語の単行本の場合は「1st, 2nd, 3rd, 4th... edition」というところが問題。英語と日本語で文献形式を分けないと対応できない。元データの作り方で、英語は「1st, 2nd, 3rd, 4th, ..」と入力する。日本語の場合は、「再版」「重版」「復刻版」「新装版」「改訂版」などの使い方もするため「第1版」「第2版」とフル記述で入力した方がよいだろう。 ・編集者:「英語では編集者が1 人の場合"ed."を記述し、編集者が複数の場合は,"eds."を記述する 。 日本語では,編集者の単数複数を問わず、最終編集者名の直後に"編"を記述する。」でやはり日英で記述が変わる。 EndNote5には条件設定機能はないが、単複の検出機能だけはある。"ed."か"eds."を選択して出力することができる。 ・翻訳者名:ここも同様に日英で記述が変わり、英語は単複で変わる。対応は可能。 ・他の部分は問題ない。 [学位論文] ・オリジナルの「Thesis」形式がそのまま使える。 [特許] ・オリジナルの「Patent」形式が使える。但し、英語版には発明者と出願者の区別がないので、出願者のフィールドを設ければよい。 [学会講演会要旨集] ・オリジナルの「Conference Proceedings」形式が使える。但し「開催年月」ノブ分はデータの方の工夫が必要。「年」フィールドに年月を入力するなど。 [未印刷論文] ・ここで言っているのは雑誌等に既に投稿しているがまだ印刷はされていないものをさしている。通常の「Journal Article」(英語用、日本語用)をそのまま使い、著者名、雑誌名フィールド以外をブランクとする。「年」フィールドに「印刷中(In press)」、「未発表(unpublished work)」と入力すればよい。 これで一応EndNote5で文献形式とスタイルを新設すれば自動化が出来そうなことが分かってきた。 では、早速、実際の新規文献のスタイル作成作業に入ろう。 3.新規文献形式の設定 既存の文献形式そのものでは全ての投稿規定を満足することが出来ないので、新しい文献形式を作ることと、既存の英語の文献形式の一部を修正する必要がある。 (1)日本語文献専用の文献形式を作る 要求されるフィールドを満たすだけならば、既存の文献形式を使うことは十分に可能だが、英語文献と日本語文献で出力スタイルを変えるには、日本語文献専用のテンプレートが必要である。 今回のケースでは、日本語と英語で表記が大きく異なる「単行本」「編集本」については日本語専用が必要である。それ以外は、英語文献形式で管理できる。 しかし、最も使用頻度の高い「論文集」に関しては日本語のものは日本語で管理した方が楽であろう。 従って、今回は、「日本語論文誌」「日本語単行本」「日本語編集本」の3つの文献形式を新たに設定する。 環境設定メニューを選択し、「文献形式」ページを開けると「文献形式を編集する...」というボタンがある。これを押すと文献形式編集画面が開かれる。 残念ながら、EndNote5日本語版はこのページだけは日本語が文字化けしてしまう。「1.5. EndNote5日本語版について」で述べているように、この作業中だけはFont Patchin'などのフォントパッチソフトを起動させておくか、文字化けしたまま入力作業を敢行するかどちらかで行ってほしい。 リスト表示欄を右にスクロールするとUnusedと書かれた列が3つあることが分かる。 自分の研究分野では絶対に使うことのない既存の文献形式を書き換えてもよいのだが、今回はこの未使用形式を使うことにしよう。 このダイアログは一見入力が出来ないリストのように見えるが、入力することが出来る。カーソルを適当なところに置いてテキストを入力していく。 表題欄=文献形式名も含めて下の図のように入力する。残念ながらダイアログはサイズが変更できないのでこのように一覧は出来ないが、全てを入力するとこうなる。 ここでは他の用途で使うことも考え、かなり多くのフィールドを使用しているが、各人不要と考えられるものはブランクにしても構わない。 この編集はいつでも出来、文献データそのものには影響を与えないので、自分で納得できるまで何度かトライしてみるのがよいだろう。 後は「特許」形式のSecondary AuthorフィールドにApplier(出願者)と入力すれば完了である。 「保存」ボタンを押すと新しいフィールドが登録される。 ★注意:今回新たに設定した新規文献形式やフィールド名は、「EndNote Prefs」という初期設定ファイに保存される。「既定値」のボタンを押すと全てデフォールトに戻り消されてしまうので注意が必要である。 (2)データの入力または修正 「文献」メニューの「新規文献」を選択するとデータ入力画面が出る。 メニューの中に今回作成した3つが加わっているので、「日本語論文誌」を選択する。 次のように表示されるはずだ。 EndNote5はデフォールトでは「Journal Article」が開くようになっている。もし、「日本語論文誌」をデフォールトにしたい場合は、環境設定/文献形式画面で、一番上の「規定の文献形式」を「日本語論文誌」に変えればよい。 日本語文献を既に英語の「論文誌記事(Journal)」でデータを入力してしまっているから、全部これを入力しなさなければならないのか、と考える必要はない。 「EndNoteのデータ構造」の章でも述べたように、文献形式は単にフィールド表示を変えるテンプレートにすぎない。 既存の日本語文献に関しては、それを開き、文献形式のポップアップメニューを論文誌ならば「日本語論文誌」に、単行本ならば「日本語単行本」にただ選択し直せばいい。 これで、出力するときは、日本語文献に対しては日本語専用のスタイル指定が出来るようになる。 欧文の論文誌については省略名が要求されているので、これを入力する。 「用語」メニューでまず「論文誌」を選んでおき、同じメニューから「用語の編集」を選ぶ。 論文誌のフルネーム、短縮形を登録する。 4.出力スタイルを作る 「ファイル」メニューの「出力スタイル」から「新規スタイル」を選択する。 次の手順で設定していく。 記述がないページはデフォールトのままである。 アバウト画面では分類、簡単な説明を書く。 スタイル名はファイル名になるが、ここでは設定せず、「ファイル」メニューの「保存」を選び、そのときにファイル名としてスタイル名を指定する。ここでは「Kobunshi Kagaku Gakkai」とした。日本語のファイル名でもよいが、スタイルマネージャのリストで文字化けするので、なるべく英語名にした方がよい。 ここでは文献のページ番号の表示法を設定する。今回の投稿規定では範囲をフルで表示することが求められているので、上図のものを選択する。 論文誌名の表示方法が選択できる。今回の投稿規定では省略形が要求されているので、短縮形1を選択する。短縮形が登録されていない場合は、上位のフルネームが表示される。 文中引用の書式を設定する。 規定は文献番号にかっこを付けたもので、字体は上付き文字だ。 「フィールドを挿入」メニューから「文献番号」を選び、字体を変更する。 ★注意! ここでは「絶対にフォントの種類はいじらないこと」。EndNote5のバグで一旦欧文フォントを選ぶと2度と和文フォントが選べなくなる。 マルチ引用の場合の番号の表示を設定する。 3人以上は範囲にする。規定では「〜」が要求されているが、指定できないので、後で手で修正する。 文献目録の出力書式を設定する。 文献形式は「包括形式」「論文誌記事」(英語用)、「本の一部」(英語用)、「単行本」(英語用)、「編集本」(英語用)、「会議録」、「雑誌記事」。「日本語論文誌」、「日本語単行本」「日本語編集本」を設定することにする。 それぞれの項目は、投稿規定に従い、フィールドと句読点、カッコなどを挿入し、一部のフォントの字体を指定する。 ★注意! ここでも「絶対にフォントの種類はいじらないこと」。EndNote5のバグで一旦欧文フォントを選ぶと2度と和文フォントが選べなくなる。 いくつかの特殊記号が使用されているが、これらの使用法については「新規スタイルの作り方」の項を参照していただきたい。 このスタイルを「保存」し、ライブラリでプレビューを見ると、実際の文献目録の出力を確認することが出来る。 これを繰り返しながら最終的な書式を決定する。上記は完成したテンプレートである。 スタイル設定ではテンプレート以外に共通項目は別のページ設定する。 ここでは複数の著者がいる場合の表示を設定する。 英語と日本語による区別が出来ないので、英語の「and」を残す。出力後これは目立つので容易に消すことが出来るはずだ。 レイアウトとは文献目録全体のレイアウトだ。 文献目録全体のタイトル(Bibliographyとか参考文献)は設定できないので、原稿に自分で入力することになる(WordのCWYWを使う場合は設定できる)。 ここでは投稿規定に従い、先頭に文献目録番号とカッコを付ける。 これでスタイルの定義は終了である。 現実は保存しては、ライブラリのプレビューで確認しながら作業を進める。 思い通りの結果を出すにはかなりの経験が必要だ。 スタイルマネージャを開くと、「Kobunshi Kagaku Gakkai」が表示される。お気に入りにチェックを入れると、出力スタイルメニューに表示されるようになり、CWYWのフォーマットメニューからも選択できるようになる。 4.出力してみる テストとしていくつかの形式のものを出力してみた。 通常の手順で、ワープロを開き、ライブラリーからドラッグ&ペーストで暫定引用を行い、「Kobunshi Kagaku Gakkai」スタイルでフォーマットした。 この例では、手修正が必要なのは、日本語著者の中の「and」を削除するだけである。 ほぼ完璧に引用作業が自動化出来ることが証明された。 投稿規定は非常に細かな規定で、それを理解するだけでも大変である。それを、それぞれの文献に合わせて手でタイプするのは本当に面倒だ。一旦、スタイルを作成しておけば、この苦労からほぼ完全に解放される。 EndNote5の威力を十分に理解することが出来るだろう。 ●高分子化学学会用スタイルのダウンロード 上記以外の文献では、完全には検証していませんので、必要に応じカスタマイズしてご使用下さい。 このテキストの全体ならびに一部を他のホームページへの転載、雑誌等への転載することを禁じます。 リンクは「MacClinic」のトップページへ張る場合は自由ですが、このページに直接リンクする場合は、事前に許可を得て下さい。 (C)2002 ハリー小野(Harry Ono) harryono@mac.com All right reserved |