Mac Clinic Tips:

MacOS8:安全なシステムアップデートのためのヒント

作成:1997年10月4日

今回のMacOS8の発売に伴い、多くのユーザーがシステムアップデートを考えていることだろう。
システムのアップデートは、通常のアプリケーションソフトのインストールとはかなり性格が異なる。各自のMacには「システムフォルダ」とよばれるフォルダがあるが、この中にはSystem、Finderといった基本ファイルのほか、コントロールパネル、機能拡張、初期設定といったフォルダや様々なファルとフォルダが入っているのが分かるだろう。個々のアイテムは基本的にどのMacでも共通なのだが、システムフォルダの中身の構成はマシンによって異なる。新規に購入したマシンには、すでにMacOSがインストールされているため、ユーザーがこの違いを認識することはない。
しかし、アップデートとなると別だ。MacOS8のCD-ROMは全てのMacに対してアップデートが行えるようになっている。

最近のソフトは「インストーラー」というソフトを使ってアプリケーションやシステムのインストール作業を行う。インストーラーは始めに、インストール先のマシンのハードとソフトのチェックを行う。そしてそのマシンに必要なファイルだけをインストールするようにプログラムされている。しかし、これはあくまでも理想的な姿だ。
実際には、Macを買ったときのまま、いっさい新しいソフトをインストールしていないというユーザーはほとんどいないだろう。新しいソフトをインストールすると、コントロールパネルや機能拡張フィルが自動的にインストールされたり、新たなフォルダが作られることがある。Netscapeを使えばブックマークやキャッシュファイルが保存されるし、電子メールソフトを使えば、メールの中味はシステムフォルダの中に保存される。
このように、しばらく使っているうちに、システムフォルダの中身はユーザーによって全く異なるものになってしまっている。

従って、システムのアップデートというのは、新しいシステムをインストールするだけではすまない。現在使っているアプリケーションがそのまま使えるように、システムを調整する作業が加わるのだ。
インストール作業そのものは決して難しくない。しかし、現在使っているシステムと同じ環境に戻す作業はベテランであっても簡単にはいかない。

今回はMacOS8のアップデートに的を絞り、安全にアップデートするための方法をまとめた。

1.システムアップデートはインストール作業ではない。現在と同じアプリケーションが使える環境を作ることだ。

2.現在のシステムフォルダのバックアップを必ずとる
現在使っているシステムはそれなりに使えているはずだ。アプリケーションもこのシステムで動くことが確認されている。MacOS8に変えたとき、全てのアプリケーションがそのまま使える保証はない。そうした場合は、従来のシステムに切り替えなければならない。
また、MacOS8のインストール作業そのものに失敗したり、システムフォルダのアップデートに失敗することもある。
バックアップは内蔵HDに余裕があれば、単にコピーを丸ごととっておいても良いが、外付けHD、Zip、MOなど外部記憶装置にいれるのが問題ない。

3.MacOS8のインストールにはHDの空き容量が200MB程度は必要
Appleのインストールの手引きにはMacOS8をインストールするためには、メモリが24MB以上、HDの空き容量は200MB必要となっている。しかし現実にはこれだけの空き容量がなくてもインストールそのものは出来る。カスタムインストールを選択して、とりあえずは基本システムだけのインストールならば100MB程度があれば可能だ。
しかし、アップデートは現在と同じシステムフォルダを作ることであるから、現在のシステムからフォントや機能拡張ファイルをコピーすると結局は200MB程度になってしまう。だから、安全なアップデートを行おうと思うなら、HDの空き容量はなるべく余裕を持たせたほうが良い。

4.できる限り、外付けHDかリムーバブル記憶装置を用意しよう。
システムアップデートをやる場合、最も安全なのは外付けHDに新規インストールする方法だ。システムインストール時にはHDのドライバの更新が含まれているが、まれに、これによってHDが読めなくなったりすることがある。内蔵HDがやられてしまうと後の処理が面倒だが、外付けであれば、まだ対応が楽だ。
内蔵HDが350MB以下の少し古いモデルの場合は、外付けHDはマストだと言える。

5.メモリは最低が24MBだが出来るかぎり増やす
MacOS8はMacOS7.6に比べシステムが必要とするメモリが1MB程度多くなる。
しかしMacOS8の場合、処理速度を速めるためにディスクキャッシュをなるべく多くとるようになっている。これはRAMの余裕に合わせて自動的に設定されるが、PowerMacで72MBのメモリの場合は、ディスクキャッシュが2.1MB設定される。それ以外にあわせてシステムが占有するメモリは15-16MBにもなってしまう。
この場合、仮想メモリを使えば、システムの占有メモリは半分程度になるが、一般には処理速度が落ちてしまうので、やなりRAMそのものの余裕を持たせることが必要になる。
MacOS8を快適に動かすには、メモリは48MB位は必要だと考えたほうが良い。

6.MaacOS8のCD-ROMから起動しなくてもインストールは出来る。
Appleの指示ではMacOS8をインストールする場合、まずMacOS8のCD-ROMを入れてここから起動してくださいと言うことになっている。
この方法をとるのが一番安全だし、とりあえずMacOS8の雰囲気を味わうのにもいいかも知れない。一般にはこの方法をお奨めするが、実際には、これでなければインストールできないということではない。例えば現在の起動ディスクが内蔵で、MacOS8は外付けにインストールする場合は、ただ単にCD-ROMをセットして、そこからインストーラを起動することも出来る。

7.システムインストールは「新規インストール」を選択する。
漢字トーク7.5.5とMacOS7.6、MacOS7.6.1のシステムの場合は「上書き」を選択することも出来る。上書きを選択する場合は、必ず従来のシステムフォルダをまるごとコピーしておくことが条件だ。
しかし、この方法はベテランにだけ許される方法で、アップデートの経験が少ないユーザーはやらないほうが良い。
通常は「新規インストール」を選択しよう。
インストール先は、外付けを持っておらず、かつ内蔵HDに余裕があるならばここでもよい。余裕がない場合、インストールに地震がない場合は、外付けを選択したほうが無難だ。

8.「簡易インストール」と「カスタムインストール」はどちらでもよい
「簡易インストール」はインストーラーがインストール先のマシンの種類を自動的に判断して必要なファイルだけをインストールする仕組みだ。もちろんこれを選んでも何の問題もないのだが、何でも間でもインストールしてしまうため、インストール時間がかかること、また多くのメモリを必要とする。もし、雑誌などを読んで、どういうファイルがインストールされるかよく理解している場合は、カスタムインストールで、必要なフィルだけをインストールするほうが賢明だ。
しかし、いずれにしても、インストーラーは天才ではないので、多くの間違いを冒す。デスクトップの機種にパワーブック用の機能拡張ファイルをインストールしたりする。

9.純正でないHDの場合は、ドライバの更新は行われないが、そのままでよい。
MacOS8のインストーラーは、まずインストール先のディスクを検証し、Apple純正のHDであれば(SCSIであれIDEであれ)ドライバの更新を行う。
しかし、Apple純正でないHDの場合は、「ドライバの更新は出来ません。」というメッセージが出てくる。ここで「警告を無視」というちょっと雄のをためらわれる名前のボタンを押すと、インストール作業が行われる。漢字トーク7.5以上を搭載しているモデルであれば、ドライバはある程度更新されているので、そのままでも使えるようである。

10.新規インストールが終了したら、このシステムフォルダを丸ごとコピーしよう
新規インストールで作られたMacOS8のシステムフォルダは全く混ざりけのない純粋なシステムだ。これを保存しておくと、後で何かと役に立つ。システムのインストールには時間がかかるが、HD間のコピーならば簡単にできるからだ。
現在のHD(内蔵、外付け)に余裕があるならば、そこにいれておいても良いが、出来ればZipやMOのよなリムーバブルメディアにとっておくのが良い。

11.HDはパーティションを切っておくと役に立つ
一つのHDの中に複数のシステムフォルダがあることはあまり好ましいことではない。Macは起動するときにまずシステムフォルダを探し回るが、一つのHDに複数のシステムフォルダがある場合、どれを読んだらいいのかが分からなくなるからだ。
内蔵HDと外付けHDに分けるか、内蔵、外付けどちらにしろパーティションが切られていれば、それぞれは独立したHDとして認識されるので、それぞれにMacOS7.6、MacOS8、MacOS8のコピーと複数のシステムフォルダを分けて持つことが出来て、システムの補修や、緊急時の対応がやりやすくなる。コントロールパネル「起動ディスク」を切り替えるだけで、システムを切り替えることができる。

12.HDが1台しかない場合は、"System Switcher"を使う
外付けHDは持っていない、内蔵HDも容量は大きいがパーティションは切っていないというケースも多いだろう。この場合は、一つのHDに複数のシステムフォルダを同居させるしかない。
この場合は、システムフォルダの名前は区別しよう。「MacOS7.5.1システム」「MacOS8システム」といった具合だ。
これらのシステムの切り替えはコントロールパネル「起動ディスク」ではできないので、アプリケーションソフト「System Switcher」を使う。これはMac Clinicの薬局に保管されている。これを起動して、システムフォルダを選択すれば、安全確実に「MacOS8」と今まで使っていたシステムを切り替えることが出来る。

13.MacOS8のシステムフォルダのカスタム化は慎重に
さあ、システムアップデートで一番難しいのが、純粋な「MacOS8システムフォルダ」に今まで使っていたシステム(たとえばMacOS7.6システム)の中味を移動させる作業だ。
システムのアップデートでシステムそのものが動かなくなる、コントロールパネルの設定が出来ない、特定のアプリケーションが動かないといった問題の大半は、この作業の失敗によるものだ。
かなり経験がいる作業だ。

14.まずは「MacOS8システムフォルダ」の全ての書類に色を付ける
どれがMacOS8で新たに入ったファイルかを明確にするために、色をつけよう。
「MacOS8システムフォルダ」を開き「リスト」にする。フォルダは三角マークをクリックした全て開いた状態にする。そして、ウィンドウ全体のファイルを選択(コマンド+A)し、メニューから「ラベル」を選んで、自分の好きな色を付ける。
これは後々、新たな機能拡張等を加えたときも、オリジナルと識別できて便利だ。

15.MacOS8システムと現在のシステムフォルダの両方を開いて比較する
例えば現在はMacOS7.6を使っていた場合、そのシステムフォルダとMacOS8システムフォルダを同時に開く。名前順のリストにすると分かりやすい。
そのウィンドウを左右にならば、異なる名前のファイルがあればそれを7.6から8にコピーまたは移動をする(同じHDの中では移動になってしまうので、一回ごとにコピーをとてそれを移動させたほうが良い)
この方法で、システムフォルダ、アップルメニュー、コントロールパネル、機能拡張フォルダの中身を移動していく。

16.コントロールパネル、機能拡張にはコンフリクトを起こすものがあるので注意
新しいOSでは今まではコントロールパネルや機能拡張で供給されいた機能が、システムそのものに組み入れられたというものがある。この場合は、そのコントロールパネルや機能拡張を入れると、かえっておかしくなる場合がある(無視されるものもある)。
MacOS8ではコントロールパネル「ラベル」はシステムに組み入れらたので不要だ。機能拡張「Object Support Lib」もそうだ。これは移動しないようにしよう。
またサードパーティが供給していた付加機能も取り入れられたものがある。デスクトップ全体をカスタマイズするコントロールパネル「Kakeidoscope」やデスクトップピクチャーを可能にする「Decor」などはMacOS8では不要になった。
また今回のシステムからPPP接続ソフトとしてOpen Transport PPPが正式にサポートされた。そのため機能拡張ファイルにPPPというのがインストールされている。もし、従来どおりFreePPPを使いたいというのであれば、この機能拡張「PPP」は外に出さなければコンフリクトを起こす。

17.初期設定ファイルの移動は最小限にとどめよう
従来のシステムフォルダの「初期設定フォルダ」を開くと無数の初期設定ファイルがあることが分かる。これらの中には単にデモソフトを動かしたときに出来たものも含まれている。初期設定ファイルは、アプリケーションを動かすとき、自動的に出来るものだから、あえて移動させる必要はない。むしろこの際、新しくしよう。
そうは言っても、環境設定の項目が非常に多いアプリケーションや、TCP/IPの設定のように数値そのものが他に記録されていないケースがあるものは、移動させたほうが楽だ。
Nestcapeやイクスプローラのフォルダ(この中にはブックマークやキャッシュも含まれている)、TCP/IP初期設定、PPP Preferencesぐらいはまずコピーしよう。
それ以外のものについては、アプリケーションを動かすたびに、初期設定が解除されていることに気が付くはずだから、それで新たに設定するのが面倒ならば、その度に、その初期設定ファイルを探してコピーすればよい。

18.システムで問題が出たら、カスタム作業に戻る
カスタム化したMacOS8を作動させていたら、何か問題がでることがあるだろう。私のケースで言うと、メニューバーに時計が出ないとか、デスクトップピクチャーが表示されないとかだ。
問題が起きたら、まず、保存しておいたピュアなMacOS8で起動してみよう。それでも同じ問題が出るならば、それはハードの問題と考えたほうが良い。
ピュアなシステムでは問題ないのに、カスタム化したシステムで問題が出るということは、カスタム化に問題があったということだ。
大体は、コントロールパネルや機能拡張にコンフリクトを起こすフィルを入れてしまったためだ。
この場合は、怪しそうなファイルを出していって、再起動を繰り返し、確認するしかない。

19.MacOs8のインストールによって生じる一般的な問題については近くまとめる
何か問題がるばあい、または自分で解決した場合、他の読者の参考にするので、Mac Clinicにレポートを出して欲しい。


(c)Harry Ono 1997