Macの委託修理と自己修理のメリット・デメリット

(MACLIFE 97年4月号)

Macが壊れたとき、あなたならどうするだろうか。保証期間内であれば、迷わず正規サービス代理店に修理に出すことだろう。しかし、それが保証期間外で、有償になる場合や、また、オールドMacだったときはどうだろう。どういった場合に修理に出すのがオトクで、どういった場合に自分で部品交換するのが得なのだろうか。

正規サービス代理店に聞く 「オールドMacを修理に出すと?」

修理に持ち込まれるMacに占めるオールドMacは非常に小さい割合です」と語るのは、アップルコンピュータ正規サービス代理店のひとつ、ビット・システム・サービス(株)メンテナンスサービス部技術統括の山田武彦氏である。 「というのは、現行の機種であれば、補修.交換用の部品の入手は当然のことながら容易なわけです。一方で、古い機種の部品というのは、すでに製造していないものなどもあったりするわけです。たとえば、Plusなどの800Kのフロッピードライブがあります。これは現在は製造していない製品ですので、故障部品をドライブ製造メーカーへ送り、修理するといった手間がかかるわけです。また、通産省の通達による製造中止製品の補修用部品保有期限は7年と定められているのですが、本年の9月29日で、Mac PortableやIIx以前の機種の部品保有期限がきてしまい、あとは流通在庫だげになってしまいます。SE/30やIIcxといったあたりが補修部品を入手できる最吉の機種になります。ただ、Appleはパソコンメーカーとしては部品の持ちがよいメーカーで、いまだにApple IIの部品であっても入手可能です。また、弊社はMacの修理を10年間行なってきていますので、オールドMacの修理についてのノウハウも十分に持っています」

もっとも、ビット・システム・サービスでは、修理見積価格が、Macの売価の1/2以上かかるようなときは買い換えを薦めているという。「Macの価格は昔に比べて遥かに下がっていますので、同じ値段ではるかに性能のよいものが買えます。また、修理の基本は、「余計な修理をしない。費用をかけない」という点ですので、「どうしても愛着がある」とか、「金に糸目をつけない」といった方以外には、そう言っています」

気になる修理費用であるが、前述の800Kドライブが42,000円、MacPlusのロジックボードが54,700円ということだ。「ですから、『中古店へ行ったほうががオトクですよ』と言っていますね」とのことだ。また、根強い人気のIIcx/ciなどについても、「ロジックボード交換でIIcxが79,800円、IIciはもう少しします。これらの機種は、5年問のリースパック製品が現在中古市場にたくさん流れていますので、やはりそちらのほうがオトクでしょう」ということだ。

先般話題になった11圧475のパッテリ切れによる起動不良の問題については、「パッテリを外して持ってきていただいた場合は、マウスの交換などと同様の「部品交換」であると解釈して、700円にて新しいリチウム電池と交換しています。ただし、持ってきた電池がまだ十分な電圧のときはそれ以外の原因での故障が考えられます」という対処を行なっている。参考までにLC475のロジックボード交換は、51,700円となっている。

「自分で修理というか、部品交換をするという方もいるようですが、基本的には正規サービス代理店では部品の販売はしていません。というのは、個人での部品交換というのは自己責任が大原*ですが、それでも壊してしまい、部品のせいにする人が必ずいるわけです。修理を受け付けたMacのなかにも「これは自分で手を入れているな」といったものはありますし、そういうMacはすぐにわかります。ちゃんとネジ山にあったドライパーを使って、締めつけ強度も合っている、そういう人であれば個人で部品交換を行なっても大丈夫な人だと言えるでしょう」

Macを長持ちさせるには

故障が起きないようにするには、という問いに対しては、「まずなんといってもMacの前でタバコを吸わないことです。タバコの微粒子はコンピュータにとっては非常に悪いものです。また、コンピュータの前での飲食も避けるべきでしょう。あとは日光の当たる場所、窓際などに置かないということもポイントです。それから、MacPlusにアクセラレータを入れて使用している人がいますが、こういう方は故障するものだと諦めたほうがよいでしょう。また、アクセラレータもそうですが、クロックアップはそれ以上にMacに対して負担をかけます。問違いなく壊れると言ってもよいでしょう」という。パワーアップも程度を考えて行なうことが肝心だろう。

「ほかには必要以上に分解しないということも肝心な点です。フロッピードライブを掃除しようとして分解し、掃除機でへッドまで吸い込んでしまい壊すといった方もいます。へッドはへッドクリーニング程度までにとどめておくのがいいでしょうね」

これらを守れば、「あとは運次第」ということだ。「コンピュータも人間がつくる製品ですから、まったく故障しないというわけにはいきません。どうしても、コンマ何%、あるいは何%かの確率で故障は発生します。ですから、それに運悪く当たってしまうかどうかということになるでしょう」

また、オールドMacに対しては、「最近、Macに限らず雑誌などで古いものを煽りたてている傾向がありますが、基本的に古いMacに最新のものと同じ性能を求めるのは無理があります。まずはそこを認識してください。性能はもちろんそうですが、その他の部分、たとえば画面が歪んでいるので直してほしいといった要求などもそうです。どうしても限界がありますね」

修理問い合わせのポイント

運悪くMacが動作しなくなった。それもどうやらハードウェアの故障らしい、というときは、まずどうすればよいのだろうか。「修理に持ち込むまえに、まず電話で連絡をすることが基本ですね。どのような症状が出ているのかをその際にできるだけ詳しく説明していただければ、故障個所をだいたい絞り込むことができます。また、このときにほとんどの場合、どのぐらいの費用がかかるかもお答えできます上電話での問い合わせのうち、実際に修理を行なわなければいけないものは.その半数以下だということだ。

修理に出す?自分で直す?

修理に出すのがよいのか、それとも自分で部品を交換するほうがよいのかという判断は.だいたいわかってきたかと思う。現行機種はもちろん正規サービス代理店に出すというのがよいだろう。保証期間中なら正常な使い方である限り、修理に余計な費用がかからない。それ以前の機種でも、まだ保証期間中のものやAppleCareなどの補修サービスに加入しているMacであれば、修理に出すほうが間違いはない。また、販売店の保証期間中のものも、購入した店へ修理を依頼するのがよいだろう。

一方で、オールドMacでは、修理見積額がその中古販売価格よりも高額になってしまうことがある。また、前述のように、補修部品の保有期限が今年で切れてしまう機種も出てくるため、今後新しい部品が入手しづらくなってしまうことも考えられる。このような機種では、修理を依頼するよりも、自分で部品を交換したほうがはるかに安くあがる。また、拡張スロットを使う以外の方法で、アクセラレータを搭載したり、クロックアップの改造をしているなど、本体に手を入れていたり、メーカー保証の期間が過ぎてしまったときなどは、「自分で部品を交換する」という選択肢も浮上してくる。.・

部品交換を行う

自分でMac1に手を入れようとする場合、一番忘れてはいけないのは、「壊してしまってもそれは自分の責任である」ということだ。また、「修理」ではなく、あくまでも「部品単位での交換」だということも忘れてはいけない。専門家ならばともかく、一般のユーサーがロジックポード上の部品単位にまで手を出せるとは考えないほうがよい。「フロッピードライブがおかしいからドライブを交換する」、「電源が壊れたようだから電源を交換する」。あるいはロジックボートを交換するといった程度でしか扱うことができない。また、当然のことながら腕に自信のない人にはお薦めできない方法だ。「どうしてもこのMacに愛着がある。もう一度使いたい」といった強い動機と、どこが壊れているかを理解できる知識、そして自己責任の原則を理解している人だけが自分で交換を行なうべきだろう。

中古Macを買うときのポイント

さて、部品を交換すると決めたら、まずはどこかから部品を調達しなくてはいけない。手っ取り早いのはもう一台中古Macを買って、補修用に取っておくという方法だ。 ここで注意したいのは、中古Macの価格はその構成(メモリやHDの容量など)で異なる。自分の必要とする部分を含んだ最低限度の構成を選ぶのが安くあげるコツだ。また、ジャンク屋や中吉ショップでドライブやボードなどを単体のパーツで購入するという方法もある。また、海外のショップでは、部品を販売しているところもあるので海外の専門誌の広告をチェックするのもよいだろう。

参考までに、中古の部品価格では、秋妻原でMacのFDHDは10,000円〜12,000円青後、SE/30のロジックボードが25,000円〜IIciやIIfxといったところが15,000円〜といったあたりで売られている。こちらもメモリやROMの有無などで価格は異なる。


いざというときに慌てないためのMac修理センター一覧

●日本NCR(全国リスト
Apple製品であれば、国内外の購入を問わず、修理を引き受けている。
リスト内にある「クイックガレージ」13店は、年中無休で営業しており、持ち込み修理が可能で、実際に目の前で対面修理を行っている。

●ユニバーサルテクノロジー
米国からのパーツの取り寄せや、アップグレードサービスも行っている。
国内外で購入したApple製品のハードウェアトラブルの修理を行なう。宅配便による依頼では、手数料3、000円(返却送料は実費)とトラブル料金(ソフトウェア5、000円.保証期問外のハードウェアは同社の特別料金)の負担となる。事前に故障・修理内容を書面でFAXまたはE‐mai1で連絡のこと。
他にMacの各種パーツの販売なども行なっている。
〒135束京都江東区古石場3−13−9リバーサイドKONDO‐1
問合せ先●03−3820−1301●FAX.03-3820-1306
●E-mail:support@utc.co.jp  http://www.utc.co.jp/

●ビット・システム・サービス
Mac修理センターの老舗のひとつ。
国内外で購入したApple製品の全ての修理を行っている。
国内外で購入したApple製品のハードウェアトラブルの修理を 行なう。持ち込み修理および宅配便による依頼が可能。宅配便による依頼は、購入時のメーカー外箱と発泡スチロールに梱包して送付する必要がある。このとき.Appleの保証書と.詳しい故障状況を明記して発送する(送料はユーザー負担)。また.事前に電話による問い合わせをすること。修理にかかる時間および費用はこの時見積りを取ることになる。
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