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 著書『人間の精神病理学――自発性を否定する心』

 本書は、私の〈幸福否定〉という考えかたについて、特に人間の“自発性”という重要な要素を中心に、昨今よく耳にする話題を題材にとって、具体的に解説することを目的に書かれたものです。本書は、あるフリー編集者に勧められて執筆を始め、3年ほど前にいちおうの完成をみたものの、この出版不況のため、なかなか出版社が決まりませんでした。2008年9月、旧知の編集者のおかげで、いったん出版が決まり、再校の段階にこぎつけたのですが、まもなく、その出版社の営業部から、内容にまで大きく踏み込んだ要求がありました。しかし、その要求に応じると、出版する意味が全くない本になってしまうので、今回はやむなく見送ることにしました。とはいえ、いつまでも放置しておくことはできないので、このままの形で出してくれる出版社が見つかるまで、電子出版(私家版)という形で、暫定的に公開に踏み切ることにしました。

 次の目次を見るとおわかりいただけるように、本ホームページの連載に肉づけした形になっていますが、実際には、本書を執筆する下準備として、連載という形で公開しておいたものです。ここでは、はじめに、目次、参考文献、奥付と、第4章の冒頭の一部、第7章の冒頭の一部を.pdf ファイルの形でご覧いただけるようにしました。

はじめに
目次
第1章 青木まりこ現象≠フ意味――書店でトイレに行きたくなる理由
第2章 片づけができない、落ち着かない
第3章 締切まぎわの問題――締切近くまで課題に取り組めない理由
第4章 心理的原因を探る 1――単発的な発症
第5章 心理的原因を探る 2――繰り返される症状
第6章 マリッジ・ブルーとマタニティー・ブルー
第7章 子どもの虐待の裏側 1――子どもへの愛情の否定>
第8章 子どもの虐待の裏側 2――母親に対する愛情の否定

参考文献
奥付

 本書のタイトルは、あえて「人間の精神病理学」と銘打っていますが、それは、これまでの精神病理学が人間の生きた心を扱っていないという批判を込めているためです。人間は、生物の中で最大の進化を遂げた動物なので、その心は、類人猿を頂点とする動物のレベルをはるかに超えた特殊性を持っているのです。動物ですら機械的に生活しているわけではありませんから、ましてや人間が、たとえば“快楽原則”などという、単純きわまりない絵空ごと的原理に従って生きているはずはありません。

 本書は、全体が3部構成になっています。本書には、「生活圏」、「芸術圏」という言葉が随所に出てきますが、それは、昭和初期の詩人・中原中也の言葉を借用したものです。本書の「生活圏」という言葉は、要するに人間の動物的レベルで起こる現象を指して使われているのに対して、「芸術圏」という言葉は、生命維持のレベルを超えた人間特有の現象を指して使われています。芸術圏で起こる現象を扱った第1部は、日常生活の中で多くの人たちが自ら体験したり耳にしたりする、ごくありふれた現象を俎上に載せています。自発性が要求されるところに発生するこうした現象は、動物には起こりようがない、まさに人間特有の問題と言えるでしょう。

 第2部では、心因性疾患の原因の探り出しかたを、8例の事例を題材にして、きわめて操作的、具体的に説明しています。ここでは、客観的基準を使って心理的原因を絞り込んでゆく過程を、興味深く読んでいただけると思います。一般の心理療法やその理論では、明確に切り取れる心理的原因が、症状出現の直前にあるとは考えられていませんが、そればかりではありません。心理的原因というものが、このように操作的かつ客観的に探り出せるとは、夢想だにされていないわけです。こうした方法論は、私の心理療法の恩師である小坂英世先生の創見になるものです。この革命的方法論がなかったら、現在の私の考えかたが生まれなかったのはまちがいありません。

 第3部は、人間のいわば動物的側面に発生する現象を扱ったものです。類人猿などのいわゆる高等動物にはその萌芽が見られるようですが、ここでは、主として肉親間の愛情(の否定)に起因するさまざまな症状を取りあげています。動物的側面で起こる問題とはいえ、やはり人間特有の特徴を持っていることがおわかりいただけるでしょう。この方面からの検討を通じても、人間はいかに動物と違うかが、あらためて明らかになるはずです。

 本書は、複雑な経過を辿ったおかげで、4社の出版社の編集者を含め、結果的に総計6人の編集者に目を通してもらっています。このCD−ROMに収録された最終稿は、主としてそのうちの3人の意見を容れて修正したものです。もともとは400ページを優に越える本だったのですが、ひとりの編集者の示唆により、贅肉をできるかぎりそぎ落とし、目次と索引を含めて350ページ弱に絞り込みました。いつもは索引を作るのですが、今回は冊子版と違って検索が容易なため、あえて作成しませんでした。その代わりに、目次を、小見出しまで含めて、いつもより詳しいものにしています。

 なお、ファイル形式は、このまま書籍として出版できる高品質の .pdf ですので、モニターが大きく解像度が高く設定されていれば、画面で大きさを調節して読むこともできますが、印刷して読む場合には、B5版に2ページ分を見開き印刷すると、ちょうどよい大きさになります。

組版 Adobe InDesign CS3 (ver. 5.04)
四六版(128x188ミリ)縦組み
総ページ数 xv+328
17行x44字
本文 13級
使用フォント
  小塚明朝 Pro B, L(本文、大見出し)
  小塚ゴシック Pro M(中見出し、小見出し)
  Times New Roman Regular
  Times New Roman Italic
  Garamond Italic(ノンブル)


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頒価 CD−ROM版1部     1800円
送料 メール便の場合       無料
    Expack500の場合    500円
郵便振替 口座番号:00240-0-49751(口座名 笠原敏雄)


Copyright 2008 © by 笠原敏雄 | created on 12/25/08 | last modified and updated on 1/1/10