買書日記(12月)   掲示板

12月31日(水)

今年読んで印象に残った本を最後にあげておきます。ずいぶん数が多くなっちゃったな。

太陽の簒奪者 野尻抱介 早川書房 SFの面白さが横溢。

呪われた町 スティーブン・キング 集英社文庫 今更ですが、個人ではなく町が侵略されるというところが新しかったんでしょうね。

日本難民 吉田知子 新潮社 破滅テーマ純文学。

絹の変容 篠田節子 集英社 怪獣小説の傑作。ウルトラQ好きは必読。

歩兵型戦闘車両ダブルオー 坂本康宏 徳間書店 ロボットアニメが好きな人はすごく楽しめると思います。

しゃばけ 畠中恵 新潮社 ユーモラスな日常妖怪時代小説。

マイ・ホーム・タウン 熊谷達也 小学館 これも妖怪小説。

マーブル騒動 井上剛 徳間書店 意外に文学的なテーマが深い。

海を見る人 小林泰三 早川書房 SF短編の良いところを集めた感じ。

カニスの血を嗣ぐ 浅暮三文 講談社ノベルス 嗅覚テーマの幻想ハードボイルド。

眠り人形 向田邦子 文春文庫 ノベライズだから反則だけど、感動したんだもの。

百鬼夢幻 橋本純 光栄 しゃばけ に通じるエブリデイ・妖怪小説。

妻の帝国 佐藤哲也 早川書房 怖い怖い風刺小説。

よるねこ 姫野カオルコ 集英社 なんだかへんてこ。

幻日 福澤徹三 ブロンズ新社 カルトかどうかはわからないけど、正統的な怪奇小説集で嬉しくなる。

ららら科學の子 矢作俊彦 文藝春秋 時代を描く大作。

さよなら 森青花 角川書店 肌が合うとしか言いようがありません。満足。

クチュクチュバーン 吉村萬壱 文藝春秋 純文学の新人賞を受賞したSF怪作。

他には知られていない作品では、ふうてん学生の孤独 長谷川修 新潮社収録の「ヘリウム」という短編がものすごく面白かった他、ムツゴロウの玉手箱 畑正憲 角川文庫が意外に良かった。

また、来年もよろしくお願いします。

(今日買った本:0冊 今月買った本83冊 今年買った本:1401冊)

12月30日(火)

無言劇 倉阪鬼一郎 東京創元社
倉阪鬼一郎といえば、私にとってはあくまでも怪奇小説作家である。最近ではミステリーの装いの本を多数刊行しているのでミステリー作家と見る人が多いのかもしれないが、本質は怪奇小説だと今でも思っている。本書は東京創元社のクライムクラブの1冊として刊行された。
囲碁、将棋、麻雀の施設を持つマンションで繰り返される連続殺人事件の謎を追う構成になっており、探偵役は主人公のミステリー作家の黒杉鋭一郎である。作者とアナグラムではないけれど読みが似ているこの主人公、探偵役としてはいささか頼りないのだが、恐らく著者には名探偵を描こうというベクトルはないか、わざと外しているのであろう。そういう意味で本書は普通考える本格推理としては趣を異にしている。
もちろんプロット的には、途中でそこまでの殺人事件の犯人がつかまってしまうところを除けば普通のミステリーではある。ところが、全体から受ける印象はあまり普通ではない。それは倉阪鬼一郎の内宇宙をミステリーに置き換えた小説とでも言おうか。囲碁、将棋、麻雀は著者の得意とするところであり、それは作中に挟み込まれる棋譜や囲碁の図を取ってもわかる。また、全体をアルファベット26文字の章で分けた構成や、名前へのこだわり、カットアップ的に犯人像と思われる人物と交互に語られることによって描かれるストーリー等は、著者の様式へのこだわりを思わせる。それは著者の俳人としての顔を髣髴とさせるものだ。
解説は著者の小説世界をわかりやすく説明しており理解のしやすいものだ。本格推理小説を求める向きには、ちょっと違うかもしれないが、著者の小説が好きな人には十二分に楽しめる作品である。


 (今日買った本:0冊 今月買った本83冊 今年買った本:1401冊)

12月29日(月)

雑誌を買うのを忘れておりました。
SFマガジン 2月号 桐生佑狩氏が登場。今度出るSF文庫の新刊は伊藤典夫氏翻訳らしい。それは買わなきゃね。
ミステリマガジン 2月号 スタージョン、ランズデイル、マシスン、マキャモンという顔ぶれのウェスタン特集。うーん、これは読みたい。
ユリイカ クマのプーさん特集 これは買わねばなるまい。買い逃している特集も多いんだよね。ユリイカは。

 (今日買った本:3冊 今月買った本83冊 今年買った本:1401冊)

12月28日(日)

届け物。
眞実 成田亨 成田亨遺稿刊行委員会 青森の展覧会を機に纏められた著者の遺稿集。

クチュクチュバーン 吉村萬壱 文藝春秋
表題作と「人間離れ」の2編を収録。表題作は文学界新人賞受賞作。なお著者は「ハリガネムシ」で今年の芥川賞を受賞したのは記憶に新しいところ。さて、本書に収録された作品はいずれも奇想を主にした破滅もので、SFと言ってもさしつかえない。というか、テーマ的にはちょっと昔風ではあるけれどSF以外の何物でもないだろう。クチュクチュバーンはこんな話。世界中に原因不明の現象が拡がっていた。それは人間が突然、別の形態に変化したり、有機物無機物と合体したりし始めたのだ。対処方法はなし。人間たちは状況の中で、ただ待っているだけだった。何を。世界の終わりを。とにかく、人間から突然無数の足が生えてきたり、共食いをしたり忙しいことこの上ない。読者は口を開けて勢いに乗ってただただ読みふけってしまうだけだ。かなりエグイ小説なのであるが、どことなく飄々としたユーモアが感じられることがあるのは、筆致のせいだろう。陰惨さは無い。中篇程度の長さでどういう展開になるかと思ったけれど、最後はそれなりに終わらせてくれた。ビジョンは似たようなシーンがあるので、多分「遊星からの物体X」から影響を受けているのだろうが、そんなことは別にどうでも良くて、こういう小説はどこまで失速しないで書ききれるかであるが、その点息切れすることなく最後まで走りきった印象がある。それに対して「人間離れ」は少し頭で書いているようなところがある。こっちも突然空から降ってきた無数の卵から生まれた緑色の生物と藍色の生物が人間を襲い、その中で生き残った人間たちが人間性を失っていくところを描くという破滅もの。こっちはややテーマ性が見えて頭で書いている感じがして、勢いという点では表題作に譲る。それでも藍色の生物の金色の糞を狙って群がる人間たちとか、あちこちに面白い発想があって飽きさせることは無い。こんな小説(というと語弊があるけれども)で文学界新人賞を取ったということが驚きである。純文学はどうなっちゃっているんでしょうか。逆にいえばこの作品ではあまりにもストレートすぎて今のSF系の賞ではデビューできたかどうかわからない。ちょっとオールドファッションドSFではあるけれど、なかなか面白い小説であった。怪奇小説やSFが好きな人にはお勧めしておきたい。



(今日買った本:1冊 今月買った本80冊 今年買った本:1398冊)

12月27日(土)

家人と共に夕方から家人の友人の家へ遊びに行く。キムチなべで温まる。その友人は武井武雄が好きだったので、昨日買った黒柳徹子の文庫本他をプレゼント。喜んでもらえて良かった。

ヴァージニア・ウルフ短編集 西崎憲編訳 ちくま文庫
恐らく20世紀イギリスを代表する女性作家の短編集。名翻訳家であり、最近ではファンタジーノベル大賞で作家としても名乗りをあげた西崎氏の翻訳・編集になるもの。西崎氏の編集だし、国書刊行会の幻想文学大系でも「オーランド」が採られているようにあながち幻想文学とかかわりが無いわけでもなかろう、と読み始める。短い作品が多いのが印象的だ。恐らくは西崎氏の意図的な編集によるものだと思うが、前半はプロットが存在するものが多く比較的わかりやすい。ところが、後半になると著者の編み出した手法であるところの「意識の流れ」というものが顔を出し始め、わけがわからなくなる。「意識の流れ」というのは意識に浮かぶことを意図的なストーリーにしたがわせること無く、紙に定着させるような手法のように思ったが、どうなのだろうか。もっともそう書いてしまうと「自動筆記」に近づいてしまうような気もするのだが。
とにかく、外部の事象、思考、記憶などが前後のつながり薄く、延々と続くものだからなかなか追いつけないで、字面を追っているだけで精一杯という始末であり、情けないことこの上ない。前衛的な小説を読みなれた人には良いかもしれないが、素人にはちょっと手に余る作品が多いというのが正直なところだ。なお幻想文学との関連で言うと、解説で西崎氏も書かれているように「意識の流れ」という手法では幻想的な方向に近づくことが確かにあるように思う。翻訳そのものは読みやすいものなので、我こそは、というひとはチャレンジしてみてください。


(今日買った本:0冊 今月買った本79冊 今年買った本:1397冊)

12月26日(金)

ちょっとブックオフによってみる。これといって買うものなし。
d新八犬伝(上)(中)(下) 石山透 日本放送協会 
dトットのピクチャーブック 黒柳徹子 新潮文庫 プレゼント用。実はテキストはともかく、武井武雄の挿絵満載の豪華文庫本なのである。

(今日買った本:4冊 今月買った本79冊 今年買った本:1397冊)

12月25日(木)


匣庭の偶殺魔 北乃坂征雪 角川スニーカー文庫
偶然の事故か、それとも確率の犯罪か?―大学内で連続する奇妙な死。記憶を塗り替えられた蘇生屍、あるいは土人形。己の影に怯え続ける男。嵐の孤島を襲う大虐殺。死にたがりのドッペルゲンガー…。逆十字を愛する美しきマッド・サイエンティスト、奥入瀬竜哉が切り裂く謎のヴェールの向こうには、驚愕の、そして戦慄の真実が…。(本書紹介文より)
第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。タイトルがなかなか面白そうなので少し期待して読んだ。結果、それなりに読ませるとは思うが、どことなくなんとなく京極夏彦の小説とキャラクターや雰囲気が似ているところがエピゴーネンのように感じられて気になった。またこのラストは確かに意外性はあるのだけれど、一抹の徒労感を覚えてしまうのも否めない。なお登場人物のネーミングはあまりにもわざとらしいのでは?読み方が難しい変な名前にすれば雰囲気が出るというものでもなかろうに。この本に限ったことではないが、どうも最近そういう傾向があるのが気になっているのだ。なお全体的には紹介文から受けるイメージほど錯綜したり衒学的な趣味がある訳ではなく、ライトノベルの域を大きく逸脱することは無い。好きな人は気に入るかもしれませんが、一般的にはどうでしょうか。


(今日買った本:0冊 今月買った本75冊 今年買った本:1393冊)

12月24日(水)

クリスマスなので、恒例の自由が丘フランス料理店「ラ・ビュット・ボアゼ」。クリスマスメニューにつき入れ替え制で高めなのは仕方が無い。それにしても妙に年齢層が若くなっていたのと、テーブルの間隔が例年に比べると広かったように思う。しばらく来ていなかったのだけれど、スタッフも一新されているように思った。料理はもちろん美味しいのだが、パンが冷めていたのは正直なところがっかりだった。やはり普通の時のほうがサービスは行き届いているのだろうか。ここのレストランに限ってはそうは思いたくないけれど。でも若いソムリエの兄ちゃんが親切で、いろいろワインを試し飲みさせてくれて楽しかったのでプラマイゼロにしておこう。
仕事で遅くなり30分遅刻してしまったのは失敗。自由が丘についた頃にはB生堂もしまっている時間で本には関係ない一日。

(今日買った本:0冊 今月買った本75冊 今年買った本:1393冊)

12月23日(火)

ショートショートで日本語をあそぼう 高井信 ちくま文庫
日本語をネタにした旧作の再録と日本語の誤用をテーマにした新作を交互に配置して、各編に解説を加えたショートショート集。旧作に関しては多くは読んだことのあるものであるが、傑作を集めてあるためそれだけでも充分面白い。でも問題は誤用ショートショートのところ。正直読んでいて冷や汗が出る。こうやって自分のサイトに駄文を書いているものにとっては、心臓に悪いというかなんというか、「あ痛ぁ」というところが多い。中でいろいろな言葉についておかしいところを取り上げているのであるが、普段何気なく使っている言葉でも存外間違いが多いことに本当に驚かされる。もちろん言葉というものは生き物で、時の流れと使う側の人間によってだんだん変わっていくのが当然という部分は確かにあり、それは著者も重々承知の上なのだが、それでも今の日本語のおかしさには不合理なものを感じているのであろう。それは作家という言葉を使う商売であれば当然だと思うし、意識して変形して使う場合はあるにしても、今後も作家の方にはそうであって欲しいと思うのだ。それは巻末にあるショートショートのように、活字媒体から言葉が変形していってしまってはお終いだと思うからだし、正しい言葉を使うことで日本語を守っていくことができるのではないかと思うからでもある。もちろんアマチュアではあっても、変な文章を晒すのは(少なくとも自分にとっては)恥ずかしいことだし、もっとセンシティブに文章は書かなくてはいけない。そう強く感じさせてくれる。
(ただし、ご自身もあえて文中に挿入したと書いておられますが、地の文章中に『(笑)』があるのはちょっと馴染めませんでした。)
落語的でとても面白いショートショートと、まじめな日本語に対する含蓄をうまくブレンドした好著。日常的に文章を書くサイト管理者必読。


ヴァージニア・ウルフは歯が立ちませんでした。今年中に「夜窓鬼談」を読もうとしていますが、なかなか進みません。

kashibaさんの復帰は嬉しいけれど、掲示板を見てマキャモンが読みたくなる。最新作以外は実家だぜ。困ったな。旧ルールからいくと「ナイトボート」からなんだけど・・。

明日はクリスマスイブなので自由が丘です。B生堂は寄れるだろうか。

(今日買った本:0冊 今月買った本75冊 今年買った本:1393冊)

12月22日(月)

会社は休んだのに忘年会のみ出席。

燃えるスカートの少女 エイミー・ベンダー 角川書店
短編集。17編収録。モティーフはファンタスティックなものが多く含まれる。それは逆進化する恋人だったり、文字通りお腹に穴のあいた父親だったり、火の手と氷の手を持つ二人の少女だったりする。短いものが多いため描写や説明は最小限に削ぎ落としており、小説というよりは散文詩に近いようにも思うし、解説にあるように「ユダヤ系」であることからか歴史における過去が影を落としている短編もある。全体を通して感じるのは、不思議さよりも哀しさだったりするのでブラッドベリに近いようにも思うが、センチメンタルな部分は無く肌触りはドライだし、エロティックな部分もあるところは、独自のものだろう。モティーフ的には好みなのだけれど、筆致が合わないのかぼくはまだ自分の中で消化しきれておりません。論理ではなく感覚で文章が書かれているせいかもしれません。だから、合わない人には合わない可能性はあると思います。ただしネットを見ても割合と評価が高いようですし、不思議で哀しい短編が読みたい人はどうぞという感じでしょうか。

いまさら掲示板に書くのは気が引けますので。ここでこそこそと書きますが、安田ママさんお疲れ様でした。同い年ということもありことさらに応援しておりましたが、これからもがんばってください。新刊情報は書店巡回スケジュール上大変重宝しておりましたので、ちょっぴり残念。育児の合間にでも本が読めそうなのはちょっと羨ましい。(うちは子供がいませんので、育児の大変さはさっぱりわかっておりません)

(今日買った本:0冊 今月買った本75冊 今年買った本:1393冊)

12月21日(日)

用事があって横浜へ行くと、あれあれ明日出る予定の本が並んでいるではありませんか。喜んで買う。(昨日反省したのに)
カオス・レギオン02 冲方丁 富士見ファンタジア文庫 家の近所には売っていないんだよね。(売り切れたのかもしれないが) しかし、今年はやたらに著者の本が出ますね。
不思議のひと触れ シオドア・スタージョン 河出書房新社 晶文社のおかげかいまやミステリファンにまで読者層が拡がっているような気もするスタージョン。『ビーナス・プラス・X』も控えているし、なんともまあ喜ばしい時代ではある。
象の棲む街 渡辺球 新潮社 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。山尾悠子を連想するけれども、違うのか?
太陽の塔 森見登美彦 日本ファンタジーノベル大賞受賞。
針がとぶ 吉田篤弘 新潮社 何となくだなあ。
メシアの処方箋 機本伸司 角川春樹事務所 これは期待大。

児童書等も混ざってはいるのだが、とりあえず去年からの目標でもあった年間150冊読了を達成。冊数的には一割は読んだということか。これ以上は読む速度や読書時間から考えて増加は難しい状況ではあるが、これからもたくさん本を読んでいきたい。読みたい本は一生かかってもよみきれないくらいあるからね。

(今日買った本:6冊 今月買った本75冊 今年買った本:1393冊)

12月20日(土)

ラスト・サムライ を観る。
ついでに駐車料金を浮かせるために本を買う。
豆腐小僧 双六道中 京極夏彦 講談社 本屋さん泣かせの版型ですねえ。週刊現代連載。豆本応募券つき。
妖説源氏物語 壱 富樫倫太郎 中公Cノベルス これはちゃんと読むようにしよう。帯に「時代小説ノベル」刊行開始だって。
忍・真田幻妖伝 朝松健 ノンノベル 買いもらし。
一休破軍行 朝松健 カッパノベル 買いもらし。
ラスト・ヴァンパイア ホイットリー・ストリーバー 新潮文庫 宇宙人はいらないけど、ホラー系作品があるなら続けて翻訳して欲しい。といいつつ読んでいるのは「コミュニオン」だったりするのは秘密だ。内容は全く覚えておりません。
バルーン・タウンの殺人 松尾由美 創元推理文庫 増補があるので仕方なく購入。幸い?まだ積読のままだったしな。ところで、裏表紙にデビュー作とあるけれども「異次元カフェテラス」の方が刊行はずっと前ではなかったかな?瑣末だけれども。
ラスト・サムライであるが、渡辺謙が英語しゃべりすぎだったり、細かいところでは首をかしげるようなところもあったにせよ、ハリウッドが作ったにしてはなかなか良く日本を描いているように思った。ノスタルジックに美化しすぎなのは、トム・クルーズの想いでもあろうから大目に見よう。
まあ、よろしいんじゃないでしょうか。ぼくはもういいや。

カードの明細がきてびっくりする。あー調子に乗って新刊ばかり買うものではないなあ。

(今日買った本:6冊 今月買った本69冊 今年買った本:1387冊)

12月19日(金)

文庫を1冊。
魔法使いとリリス シャロン・シン 早川文庫FT 何年ぶりに買うFTなのやら。プラチナ・ファンタジィなるシリーズの最初の1冊。続刊にはプリースト、スターリング、プレイロック等が控えているので楽しみではある。読めるかわからんけど。

刹那のようにせつなく 唯川恵 光文社
著者のイメージは恋愛小説の書き手と言うものだが、これはクライムノベル。主人公も、脇役も基本的には女性であり、著者はあとがきで、書きたかったのは「女のダンディズム」と言っているように、なかなか格好いい。
響子は自殺した娘の敵を討とうと何年も前から掃除婦として働いていた。そんな中敵である社長の息子がアメリカから帰ってきた。ついにその男を手にかける響子であったが、目的を果たした後は呆然として立ち尽くしてしまう。そこを助けたのがユミであった。ユミもまた別の理由で息子を狙って建物に潜入していたのだ。ユミは響子を連れて脱出する。それは二人の逃亡の始まりであった。
女性作家の書く、女の生き様を描くサスペンス小説という意味で、感覚的にであるが桐野夏生を連想した。さすがにキャラクターの描き方や小説の作りは馴れていて、安心してサスペンスに浸れる。短い小説ではあるが、必要にして充分な量で読むものを飽きさせない。ミステリー畑でどのような評価を得ているのか良くわからないのであるが、もっと読まれても良い作品のように思う。
なお長らく文庫にならなかった本書であるが来年早々に文庫になるようなので、唯川恵のサスペンス?と思う人はぜひ手にとっていただきたい。同著者には「病む月」という怪奇系作品集もあるので、今度はそちらも読もうと思う。(いつものように実家でサルベージしなければならないのではあるが)


(今日買った本:1冊 今月買った本63冊 今年買った本:1381冊)


12月18日(木)

久々のクライアントとの飲み会。

ブラック・アンブレラ 山田真美 幻冬舎
巽孝之氏の推薦つきで「夜明けの晩に」で小説デビューした著者の第二作。略歴を見ると壮観で才媛というにふさわしい。インド関係の仕事に携わっていただけではなく、5年もニューデリーに住んでいたということもあり、本書もインドの僻村を舞台にしている。
日本で不倫の関係に終止符を打った繭子はインドの僻村で会社を営む有力者の男のもとへに嫁ぐ。そこは一妻多夫婚の因習が残る村であった。その中で繭子は異端者として見られながらも、夫との生活を育むのであるが、陰には夫の従妹であり愛人でもあった女の眼が光る。
あえて分類すればサスペンス小説と言うことになるのかもしれないが、著者はそれほどエンターテイメント志向は無い様で、本書もどちらかと言えばインドに残る一妻多夫婚を描きたい気持ちがあったようだ。したがって帯の「性の哀歓と命の連鎖を描ききった最高傑作」という惹句のようには思えず、サスペンス風味の異国風俗小説の趣である。ただし、これは私だけかもしれないが、インドを描いているには人物像等あまり思考の隔たりは感じず、少々日本臭くも感じてしまった。面白くないわけではないけれど、多人数の読者に受け入れられるには少し弱いかもしれない。


(今日買った本:0冊 今月買った本62冊 今年買った本:1380冊)

12月17日(水)

新刊書店で買い物。
The END 倉阪鬼一郎 双葉社 小説推理連載。幻想小説らしい。
甲賀三郎探偵小説選 論創社 甲賀三郎は短編しか読んだこと無いし、強く惹かれる作家ではないのだけど、読んでみなくてはわからないからね。

(今日買った本:2冊 今月買った本62冊 今年買った本:1380冊)

12月16日(火)

DOVADOVA 向井豊昭 四谷ラウンド
1933年生まれで1996年に早稲田文学新人賞を受賞してデビュー。それまでは北海道で教員をしていたらしい。その後はユリイカとかにも小説を書いているようだ。
さて、本書であるが、一言で言うと、『うんこ小説』である。ストーリーはあってないようなもので、主人公のある一日を活写したものだ。と、書くと「ユリシーズ」のようだが、そんなことは全然なくて、『うんこ小説』なのである。どこが『うんこ』かというと、全編にわたって執拗に『うんこ』が連発され、それは象徴としても主人公の心情を間接的に表すものとしても描かれる。結局『うんこ』なのだ。
主人公の述懐とかを読んでいると一見私小説かと思われるが、あにはからんや時間軸が乱れたり、十返舎一九の小説の主人公が現れたりとかなり破天荒。また、それらの『変』な部分は小説の中に妙に溶け込んでいるため、マジックリアリズムかいなと思ってしまうあたりは著者の術中にはまっているのかもしれない。結局のところ、本書を読むものは日常の様々な想念の廃棄物といっしょに、最後は『DOVADOVA』と水洗トイレの中に流されていくしかないのである。合掌。アナーキストじじい作家の異色作。


昨日に引き続き新刊を買う。
スター・ダックス 草上仁 ソノラマノベルス 短編集も出して欲しいな。
サイコトパス 山田正紀 光文社 面白そうだけど、読んでいない山田正紀の新刊がたまってきてしまった。
殺しはエレキテル 芦辺拓 カッパノベルス かなり衝動買い気味。
夷狄を待ちながら J・M・クッツェー 集英社文庫 調べたらギャラリー「世界の文学」で翻訳されたものだな。本当なら幻想文学でもとりあげられたはずの「マイケル・K」を読まなくてはいけないのだが、実家で王蟲(紙魚)の肥やしになっているので今度サルベージしなくては。

(今日買った本:4冊 今月買った本60冊 今年買った本:1378冊)

12月15日(月)

ブラック・アンブレラ 読了。

今週はいろいろ欲しい本が出る予定だからな。とりあえず今日顔を出す。
シービスケット ローラ・ヒレンブランド ソニーマガジン われらが奥田さんの訳書。本の雑誌でも堂々2003年度一位を獲得した。
10センチの空 浅暮三文 徳間書店 中篇ですね。
こどもの一生 中島らも 集英社 あとがきにB級ホラーとか書いてあると買っちゃうよ。ご本人の芝居の脚本を小説にしたものらしい。また小説では珍しいことに、著者の作詞・作曲による主題歌CDが付録でついているお徳用。文庫じゃつかないよ。
真夜中の金魚 福澤徹三 集英社 ホラーの旗手の初長編。青春小説ってなっているけど。
二百年の子供 大江健三郎 中央公論社 ファンタジー?そういえば岩波から出していたSFも買っていないなあ。多分全作品の1巻で初期の作品を読んだきりだ。
逃避行 篠田節子 光文社 絶対面白そうな予感がする。
ジャーロNo14 光文社 だんだん読まない雑誌を買うのがむなしくなってきたなあ。おわあ、ナンシー・スプリンガーだと。ミステリーも書いていたのか。目次を見ていて気が付いたのだが、少なくとも日本人作家に関しては、ほぼ全部が連作もしくはシリーズになってしまっているようだ。海外作家の翻訳がそこそこあって、EQ時代から書評が充実しているからいいようなものの、これだといまいち買う気がしぼんじゃうな。
アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎 東京創元社 署名。届いたのを忘れておりました。

(今日買った本:8冊 今月買った本56冊 今年買った本:1374冊)

12月14日(日)

一日自宅にて過ごす。本当は家の中を片付けなくてはならないのにな。

テディ片岡のゴールデン・デラックス テディ片岡(片岡義男) 三崎書房バニーブックス
片岡義男の初期の創作を集めた片岡義男以前の著作。小早川博の解説によれば「マンハント」でコラムを書いたりしていたと言う。また本書に収録された作品の初出は書いていないのだが、これも解説によれば「推理ストーリー」とかに書かれたものと思しい。片岡義男ファンが多いためか、出版部数が少ないのか入手は比較的難しいと思われ、私も未所持で読みたかったので川口@白梅軒さんにお借りしたものである。
収録作品は「2DKテレビの下取り」「春宵一刻価何金」「小説・小説家」「テレビを見た夜」「どちら様がおみえになりました」「あゝ移植大成功!」「空飛ぶ10円玉」「黒いラーメン」「ポーノグラフィカメリカ」「ゴーイング・ノーホエア」「皆殺しの歌」「パサディナ・フリーウェイの大虐殺」「エスキモー・ブルー・デー」の13編。書かれた順番はわからないのだが、割合と作風の変遷が伺える配列で、最初のほうはエロティック中心、途中からナンセンスが入ってきて、最後はエロは消え、残酷味やアメリカンな風合いが作品の主を占めるようになっている。最後のほうのアメリカの風景等は片岡義男になってからの作品に通じるものがあるかもしれない。個人的には中盤の「空飛ぶ10円玉」や「黒いラーメン」等に顕著なブラックでシニカルなユーモアが好みである。著者は再版を許していないのは、あまりに作風が違うためなのかどうか理由はわからないのだが、今読んでも(隠語の使い方等どうしようもなく古びているところは別にしても)、それなりに楽しめる。おそらく他にも作品はあると思われるので、何らかの形で読めるようになると良いのだが。角川文庫で大量に出ていた作品等を読みなれている人にはかなりの違和感があるだろうが、機会があれば読んでみて欲しい作品集。ただし個人的には憑き物が取れた感じで、無理して欲しいとは思わなくなりました。貴重な本をお貸しいただき、ありがとうございました。


DOVADOVA 向井豊昭 読了。続いて山田真美を読むことにする。

(今日買った本:0冊 今月買った本48冊 今年買った本:1366冊)

12月13日(土)

飲み会。
体調が悪かったのだが、言い出しっぺなのでがんばって参加。いつもの中華料理屋でいつものように話して終わる。楽しい時間。
いただいたり代理購入していただいたり交換していただいたり。
推理小説の読み方 中島河太郎 ポプラ社
勝利者ターザン バロウズ 早川文庫SF 残りは「無敵王」「密林物語」「逆襲」のようです。
椿實の書架 先年亡くなった幻想小説作家、椿實の単行本未収録の小品の復刻やビブリオグラフィを中心に令嬢の手で纏められたとても貴重な本。出版社表記はないので、私家版なのかもしれない。
消えた象神 サタジット・レイ くもん出版 サタジット・レイと言えばぼくなどは「ユニコーンを探して」だったりするのだが、これはジュブナイル探偵小説。存在をしってから探していたが縁の無かったもの。第一巻がまだあるので引き続き探索中。と思ったら現役か?

(今日買った本:4冊 今月買った本48冊 今年買った本:1366冊)

12月12日(金)

寄り道。
2000年から3000年まで B・スティブルフォード&D・ラングフォード パーソナルメディア 昔からちょっと欲しかった。古い本だけれどまだ現役らしいのが驚き。
悪魔のハンマー(上)(下) ニーブン&パーネル 早川文庫SF 持っていない気がしている。
天空祭 荻原征弥 青心社

風邪で体調が悪い。

(今日買った本:4冊 今月買った本44冊 今年買った本:1362冊)

12月11日(木)

新刊購入。
中高校生のための現代美術入門 本江邦夫 平凡社ライブラリー なんとなく。
悪魔学大全U 酒井潔 学研M文庫
ミステリア 結城信孝編 祥伝社文庫 おなじみの単行本未収録作品を中心とした女性ミステリー作家の競作集。
ショートショートで日本語をあそぼう 高井信 ちくま文庫 高井さんの新刊。旧作と新作を交互に配置したショートショート集。
観月の宴 ヒューリック ポケミス
逢魔の都市 葉越晶 ムー伝奇ノベル大賞受賞作。
ロサリオの鋏 ホルヘ・フランコ 河出書房新社 海外文学の新シリーズ。帯の続刊にアンジェラ・カーターやランドルフィがあって楽しみなシリーズである。
ミステリーズNo3 千街さんのコーナーではお馴染みの名前が。草野唯雄の怪奇小説家としての側面は意図的に省いたんでしょうね。

(今日買った本:8冊 今月買った本40冊 今年買った本:1358冊)

12月10日(水)

エリ・エリ 平谷美樹 角川春樹事務所
第一回小松左京賞受賞作。本書の前作である「エンデュミオン エンデュミオン」は月が舞台であったが、本作は木星になる。神を探す神父と未来を探す科学者と病んだ精神科医が主要登場人物で、特に神父と科学者のどちらが主人公かは割り切りにくい。それは全体を通したときに一本のストーリーの太い流れを構築するにあたっても、それを阻害する要因になっているように思う。テーマは神であり、宇宙へ進出する人間であるので、まあSFとしては王道中の王道であり、小松左京の名を冠する賞にはふさわしいであろう。しかしながらそのテーマを十分には生かしきってはいないように思った。ファーストコンタクトの部分も含めてこれと言って大きな瑕疵は指摘できないのであるが、どうも読んでいて背伸びをしているというか、地に足がついていない感じが離れないのである。特に神のテーマの部分に関しては、各章の先頭に聖書を引用して雰囲気を出しているが、有機的に物語りにかみ合っているとは思えずどうも未消化な感じがした。石版のところなど、もっと派手に扱った方が全体のつながりが明確になったのではないか。また、神に関してもキリストのことなのか、キリストが見る神のことなのか、超越者としての神の存在なのかが、SF的なテーマとのつながりを匂わせたために最後にきてとっちらかっているように思った。大変な意欲作であると思うが、残念ながらテーマが大きすぎてまとまりと説得力に欠ける小説だった。でも昨今ではこのようなタイプのハードコアSFを書く人がいなくなっているので、今後に大いに期待できると思いますし、本書も小松左京のSFが好きな人は読んで損の無い意欲作です。


(今日買った本:0冊 今月買った本32冊 今年買った本:1350冊)

12月9日(火)

光文社の新刊が出ていたので文庫本を買ってみる。
アジアン怪綺 井上雅彦編 光文社文庫
女を逃すな 都筑道夫 光文社文庫 巻末の新保氏の解説末尾に今後の都筑氏に着たいという意の文があるが、先日訃報があったばかりなので、偶然ではあるが残念なことだ。
闇絢爛 朝松健 光文社文庫 書き下ろし二編を含む短編集。

(今日買った本:3冊 今月買った本32冊 今年買った本:1350冊)

12月8日(月)

駅の本屋に寄るが特に欲しいももの出ていないな。ブックオフにも買うものは何もなかった。

さよなら 森青花 角川書店
『BH85』でファンタジーノベル賞を取った著者の2番目の著書にあたる。雑誌には短編が収録されており、祥伝社の文庫版競作集にも短編がいくつか収録されていて、個人的に好きな作家トップ5に入るくらいえらく気にいっている作家である。なお本書はうすい長編の体裁であるが、実質的には連作短編集に近いので、やっぱり資質的には短編作家なのかもと考えてしまうが、まあそんなことはどうでもよろしい。
内容は自然死によりミイラ化してしまった主人公の嘉兵衛(ひいじい)が、成仏できずにこの世をさまよい様々な人の死と様々な想いを心ならずも見守り、口を出し、しまいには恋にも落ちてしまうというジェントルゴーストストーリーである。
永久に生きつづける人間はいない。したがって人は生きるうちに身近な人の『死』に立ち会う。それは突然のこともあるし、予想のうちのこともあるだろう。そして最後に迎えるのは自らの『死』である。やはりあたりまえかもしれないが死ぬのは怖い。死んだ後はどうなるのだろう。世界はそのまま続いていくのか。この世への想いは断ち切れるのか。断ち切れなかった場合はこの世に想いだけがさまようことになるのか。
そんなことを考えていると、本書もちっとも不思議ではなく、当たり前の話のように思えてくる。アイディア的に目新しさはないのであるが、その分質は要求されるわけで、その点本書はユーモアとペーソスを交えつつ楽々とクリアしており、安心して読めるのだ。瀟洒な装丁で大切にしまっておきたくなるようなそんな作品。ああ、やはりこの人の書くものは本当に好きだなあ。絶賛。


(今日買った本:0冊 今月買った本29冊 今年買った本:1347冊)

12月7日(日)

上野の東京文化会館へキーロフ・バレエを見に行く。演目は「ロミオとジュリエット」。会場を出たのは5時を過ぎていたが、暗くなっての上野公園は独特の雰囲気だな。あまり歩きたくない感じ。
地下鉄から出たときに古書市とかい看板があったので寄ってみるが何もない。何も買わないのもしゃくなので1冊購入。やめりゃいいのに。
d感触 鈴木いづみ 廣済堂
この後、学芸大学の寿司の美登利で寿司を食う。ついでの数件隣のブックオフにも寄る。ワンパターンである。先々週も着たばかりであるせいか買うものがあまりない。
パスカビル家の犬 大沢在昌 講談社 あと二冊。「三銃士」と「白い犬」。
増加博士と目減卿 二階堂黎人 原書房
dジャックと離婚 コリン・ベイトマン 創元コンテンポラリ あちゃあ、持ってた。
綴り字のシーズン マイラ・ゴールドバーグ 創元コンテンポラリ
時のロストワールド ハミルトン 早川文庫SF 既読。
まずは一報ポプラパレスよりU 河出智紀 Jブックス 探求書。あとTを探さなくちゃ。

(今日買った本:7冊 今月買った本29冊 今年買った本:1347冊)

12月6日(土)

届いた本は。
十四匹目の魔族 寺内大吉 東方社
夜窓鬼談 石川鴻斎 春風社 勿体無くも頂戴してしまいました。ありがとうございました。知る人ぞ知る明治時代の怪談の現代語訳。澁澤龍彦や小泉八雲の種本になったりした。訳注、評論も付され充実の1冊。その昔「幻想と怪奇」誌に現代語訳されたり、最近では「書物の王国」にも現代語訳されている。HPで紹介しているように原本も持っているけれども、どうせ漢文なので読めやしないと思っていたので個人的にもとてもうれしい1冊。挿絵が全編収録されているのもうれしい限り。何にせよ今月中に読んで改めて紹介したいと思います。
以下は買い物。
d荒野の太陽 アンドレ・ドーテル 福音館 天澤退二郎訳。
ふしぎな山からの香り ロバート・O・バトラー 集英社 『奇妙な新聞記事』の著者。
聖職の碑 新田次郎 講談社
d花響 稲葉真弓 平凡社 頼まれ物。
第五惑星の娘たち リチャード・ウィルスン 創元推理文庫 既読。面白かった覚えはあるので、再読してもいいかも。
処女惑星 ポール・アンダーソン 創元推理文庫 既読。まったく覚えていないけど、再読はしないかも。
彼方の山へ 谷甲州 中公文庫 山岳エッセイ集。
夜明け前の殺人 辻真先 実業之日本社
停電の夜に ジュンパ・ラヒリ 新潮社 この前文庫になったよね。へんな名前。

カラフル 森絵都 理論社
児童小説でデビューした著者の、これはやっぱり児童書なのかな?
主人公は死んで成仏しかかった少年。変な天使が現れて言うには、生前非常に悪いことをしたので改心をするチャンスを与えるという。どうやらくじであたったらしい。なんだかいい加減な天使だ。でもうまくいけば本当は消えてなくなるはずだったぼくの魂も輪廻の輪にもどれるらしいのだ。やることは死んだ人間に乗り移って自らの悪事を思い出すことだという。気が進まないながらも承諾するぼくが乗り移ったのは、自殺したらしい「小林真」という少年だった。こいつがまた変な野郎で家族も輪にかけて変なやつばかり。で、どうも調子が出ない。しかしだんだんその生活にもなれてきたぼくは、真という少年や家族たちの本当の姿を知ることになる。
対象読者層がもひとつはっきりせず、確かに大人が読んでも十分に楽しめるのであるが、できれば少年少女に読んで欲しい物語。元来がひねくれものなので、こういう話には素直に感動できない質なのだが、なかなかによくできた話であり、素直に楽しめた。いわゆる悪事やそれともなうラストはある程度予測がついてしまうのだが、そんなことはどうでもよく思えてくる小説である。一番気にいったのは、タイトルの意味が明らかになるところ。お読みでなければお勧め。


(今日買った本:11 冊 今月買った本22冊 今年買った本:1340冊)

12月5日(金)

ユートピア リンカーン・チャイルド 文春文庫 「レリック」の著者の片割れ。
ぼくのキャノン 池上永一 文藝春秋 前作から新刊購入。まだ1冊も読んでおりません。
ネジ式ザゼツキー 島田荘司 講談社ノベルス
角の生えた男 ジェイムズ・ラスダン DHC 衝動買い。
幽霊山伏 横溝正史 出版芸術社
失われる物語 乙一 角川書店 装丁が凝ってますね。
燃えるスカートの少女 エイミー・ベンダー 角川書店 ずーっと気になっていたので買ってみる。

(今日買った本:7冊 今月買った本11冊 今年買った本:1329冊)

12月4日(木)

再び買い物。しかし「幻想マーマレード」を二回もだぶらせるかなあ。あいかわらずすごい引きで。

山屋敷秘図 山田風太郎 徳間文庫 
後巷説百物語 京極夏彦 角川書店 
東さんの対談があったので、読んでみたかった「本の旅人」が丁度あったのでもらってくる。それにしても近所に乙一の新刊が無いというのは売れちゃったっていうこと?スニーカー文庫の再録だけかと思ったら書き下ろし短編があるらしいので一応買おうと思っているのだけど。

kashibaさんはぼくみたいにいいかげんじゃないから大変だろうな。性格の違いかもしれないけど、無理しないでお互いにがんばりましょうよ。

(今日買った本:2冊 今月買った本4冊 今年買った本:1322冊)

12月3日(水)

オン書きなので、ちょっと整っていませんが1冊感想を。

ららら科學の子 矢作俊彦 文藝春秋
主人公は学生時代、突発的に中国にわたりそのまま帰れなくなり僻地の農村で農民として30年を過ごす。妻の出奔のあと彼は日本に帰還することを決意する。30年経った日本に降り立った彼が見たものは彼の見知らぬ国であった。
一言で言えば文学版「浦島太郎」であろうか。まず本書は二つの側面があると思う。まずひとつは主人公の生活を30年空白にするという、ある種時間テーマSF的な手法を使用することによって現代の日本の姿を逆照射するという風刺的側面。そこでは主人公の眼が30年前のものであることにとって、より鮮明にその『違和感』を描くことができる。茶髪やピアスをし携帯電話に閉じこもる若者、林立するビル群、そこは主人公(著者自身の分身?)が少年時代に夢見た未来都市とは似て非なるものである。自分が不在の30年のうちに日本はどのような道をたどったのか、それは正しい道だったのか、あるべき姿なのか、そこで過ごし自らその変化に身を置いていたのではわからない部分を主人公の眼を通して著者は訴える。そしてもう一方の側面は、ハードボイルド的な筆致で描かれる主人公の再生の物語。主人公は中国で空白とも言える30年を過ごしているため、あたかも彼の中では時計がとまってしまっているかのような状態だった。しかし彼は日本に帰り、学生時代の友人の助けを得て街を歩き、不思議な少女にめぐり合うことによって、自分と周囲の時間の齟齬を徐々に埋めていく。そしてそれがシンクロした瞬間に、彼の口をついて出るのは「鉄腕アトム」の歌。自らの再生に成功し、再び流れる時間の中で彼が決意する行動はおそらく当然の帰結であろう。それは30年間時間が止まったままだった自らの過去の生活への決着であり、未来へ向かうための通過儀礼だからだ。
なお筆致は終始主人公の眼で見て足で歩くというプライベートアイ小説の伝統を汲んだものだ。1ページ目からいきなり蛇頭等という単語が出てきたときには、そっち方面に流れるのかと思いきや、ミステリー的な側面はあまりなく、思いがけずも文学的な小説であった。特に妹への思いと組み合わせ主人公の心象を追った終盤では強い感動を覚えた。文学的香気あふれる逸品。お勧め。


(今日買った本:0冊 今月買った本2冊 今年買った本:1320冊)

12月2日(火)

読み始めたのは平谷美樹の「エリ・エリ」であるが、読書時間などほとんどとれず、再度PCの復旧作業。
ネット環境の復旧に努めるが、モデムを認識してくれない。USBがだめだ。そういえば昨日、再インストール後にうまく起動せず、BIOSを初期化したんだった。BIOSを調べるとUSBの項目があるが、直してもうまくいかない。よくよく見ていくと単にドライバーが認識できていないらしい。前にドライバーを最新にした時にダウンロードしたファイルが残っていたのでそれでインストールに成功。なんとか認識するようになった。あとはネットの設定であるが、なかなか直らずに難儀した(いまだにIEからの接続ではうまくつながらないのだが)ものの、何とかこの日のうちに接続に成功。しかし過去2年以上のメールとアドレスがまったくインポートできず、ロストしてしまった。bk1のおまけメールを結構もらっていたのだが、なくなってしまったのが返す返すも残念。「アラビアの夜の種族」の外伝が〜。幻妖通信もパー。ほかにもいろいろ取っておきたい個人メールがたくさんあったのだが、悔やんでも悔やみきれない。でもどうにもならないのであきらめるしかないか。

(今日買った本:0冊 今月買った本2冊 今年買った本:1320冊)

12月1日(月)

「さよなら」 森青花 読了。やっぱり大好きだなあ、この人の小説。

本屋で新刊を購入。
地球に落ちてきた男 ウォルター・テヴィス 扶桑社 デイヴィッド・ボウイ主演映画の原作。映画は見ていると思うけど、わけのわからない映画だった気がする。
無法地帯 大倉崇裕 双葉社 

「さよなら」を横浜のドトールで読了し、良い気分で帰宅すると信じられないことにPCが立ち上がらない。セーフモードで立ち上げようとするとシステムファイルがエラーになってしまっているらしい。うーん、困った。起動ディスクを作っていない。買ったときのOSはWindows98だったからだ。だましだましでも立ち上がらないと何もしようがなく、しかたないのでWindows98のディスクで起動してみるが、やはりだめでDOSプロンプトのような状態で止まってしまう。ほかのディスクが見れないかどうか試したがやはり見えないが、何故かCDーROMだけ見えた。いろいろ見るとセットアップディスクが作れそうなプログラムを発見。ためしに動かしてみると奇跡的に動いて、かなり結果オーライであるが4枚のセットアップFDを作ることに成功。これでリカバリーに挑戦。でもそうは問屋はおろしてくれず、今度は修復ディスクがないため、何度か試すがやはり復旧ができない。もう時間は2時を過ぎている。セットアップ画面までたどり着くのに1回10分くらいかかるから時間がかかって仕方がない。覚悟を決め、Windowsの再インストールを決意する。朝の4時過ぎまでかかってなんとか動くようになったものの、明日も当然仕事なので仕方なく就寝。

(今日買った本:2冊 今月買った本2冊 今年買った本:1320冊)