
平成17年3月作成
3.財務情報の公開
従来より、国または都道府県から経常費補助を受けている学校法人については、私立学校振興助成法の規定により、補助金交付の観点から、所轄庁(文部科学大臣または都道府県知事)に対し、所定の計算書類の届け出が義務付けられています。今回の改正は、補助金の有無に係らず全ての学校法人が、自ら、在学者その他の利害関係人からの請求に応じて一定の財務書類を公開すべきことを規定するものです。これは、学校法人が公共性の高い法人としての説明責任を果たし、関係者の理解と協力を一層得られるようにしていく観点から改正されたものです。また、公開する書類についても、財務情報に加え、学校法人の概要、事業の概要等を記した事業報告書及び監事による監査報告書も対象としています。
(1)学校法人は、毎会計事業年度終了後二月以内に、財産目録、貸借対照表及び収支計算書の他、事業報告書を作成しなければならないこととしたこと(第47条第1項関係)
(2)学校法人は、上記(1)の書類及び監事の作成する監査報告書(以下「財産目録等」という)を各事務所に備えて置き、在学者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないこととしたこと。(第47条第2項関係)
(3)学校法人の理事等が、財産目録、貸借対照表及び収支計算書の他、事業報告書及び監査報告書の備え付けを怠り、または記載すべき事項を記載せず、もしくは不実の記載をしたときには、20万円以下の過料に処することとしたこと。(第66条関係)
この改正により、各学校法人の主体的な情報公開が一層進むことが期待されます。
ただし、不当目的による開示請求への対応やプライバシーの保護の観点から、閲覧の対象者を在学者その他の利害関係人に限定すると共に、明らかに不法・不当な目的である場合や、公開すべきではない個人情報が含まれる場合など「正当な理由」がある場合には閲覧を拒むことが出来ます。
「利害関係人」の範囲については、具体的に次のような例示がなされています。
(1)当該学校法人の設置する私立学校に在学する学生生徒やその保護者
(2)当該学校法人と雇用契約にある者
(3)当該学校法人に対する、債権者、抵当権者
また、「正当な理由」に関しては個別の事例に応じて学校法人において適切に判断すべきものですが、次のような例示もなされています。
(1)就業時間外や休業日に請求がなされた場合等、請求権の濫用にあたる場合
(2)当該学校法人を誹謗中傷することを目的とする場合等、明らかに不法・不当な目的である場合
(3)公開すべきで無い個人情報が含まれる場合
なお、各学校法人の自主的な判断により、求めに応じ財務書類のコピーを交付する事や、さらに進めて、学内報や広報誌等の刊行物に学校法人の財務情報や事業の状況を掲載したり、インターネットのホームページに掲載する事等、より分かりやすい公開内容や方法を工夫し、これらの財務情報を積極的に公開していくことは、公共性の高い法人として望ましい事です。
より詳しい情報をお知りになりたい場合は、メールにてご一報下さい。
参考・引用文献:改正私立学校法Q&A(文部科学省)、私立学校法の一部を改正する法律等の施行について(平成16年7月23日付16文科高第305号文部科学事務次官通知)
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