前回は三田洞までやってきていますので、今回はここから濃尾平野の縁を廻って神海を目指します。
木曽川を渡ってから「洞」のつく地名が多くなります。
今回もスタートの三田洞から、椿洞・掛洞・伊洞という地名が出てきます。
三田洞から街中を抜けて農耕地に出てくると、北に畜産センターがあります。
岐阜市が昭和38年に開いた畜産研究施設で、牛・豚・鶏のほか、羊・アヒル・がちょうなど約60種の動物を飼育しています。
一般市民にも開放されていて、敷地の約半分は自然公園になっています。
則松から秋沢の辺りは柿畑が広がります。
岐阜は富有柿発祥の地で、根尾川に沿った本巣郡で盛んに栽培されています。
岐阜の清流といえば前回に渡った長良川が特に有名ですが、揖斐川水系も清らかな水が流れています。
その清流に守られて、きれいな水でしか生息する事のできないハリヨという淡水魚が川内の辺りでは生息しています。
川内にある湯の古公園ではハリヨの生態を見る事ができるよう、園内でハリヨの住める池を設けています。
今回は約22km6時間の道のりです。
大学時代の友人と久しぶりに飲み明かした翌朝は、雨が降っていたこともあり、2度寝してしまい、気がつけば時間は9時近くになっていました。
しかし、昨日距離を稼いでいる事もあってか、焦ることもなく、友人と喫茶店に出掛けてスポーツ新聞に目を通しながらモーニングをゆっくりと食べ、三田洞弘法に送ってもらったときには既に10時になっていました。
こんなにゆっくりしたスタートも珍しい。
しかし、今日はどう頑張っても神海までは無理、交通の便の良い所でエスケープしようという考えなのでこれで良いという判断でした。
朝からしとしとと雨が降り、まずはポンチョをかぶります。
久しぶりの雨中歩行に心も沈みがち。
まずは三田洞弘法をゆっくりと観光です。
本堂で手を合わせ、今日の歩行の安全を祈願します。
雨のせいか人もほとんど無く、のんびりと見て回った後、写真を撮って出発です。
まずは街中を抜け、国道256号を陸橋で渡って学校の前を通ります。
雨は小降りになったり強くなったり。
傘を差しての歩行です。
川を渡り左折の後、街中を山に沿うように右折。
後は細い道をひたすら道なりに進みます。
車道を横切り田んぼの中の道になり、更に進むと再び集落の中に出ます。
椿洞の集落でしょうか。
ここの三叉路にお堂に入ったお地蔵さんが立っていました。
お堂の軒下を借りて休憩します。
このお地蔵さんはなかなか良い雰囲気です。
しばらく休憩していると、目の前をハイカーらしき母娘が通り過ぎていきました。
言葉も交わさず、そのまま素通りしていってしまったのですが、こんな雨の日に物好きが僕の他にもいたことがとても珍しく思えました。
休憩を終えて再び歩き始めます。
集落を抜けて畑から山道に入っていきます。
この入り口の所で、山道から降りてきた男性が
「この先で親子を見なかったか。」
と尋ねてきたので、先ほどの母娘のことを話しました。
有り難うと一言残して、男性は早足に去っていきました。
どのような事情だろうか、良く分からぬまま山道に入っていきました。
椿洞から入った山道は、少し登るとすぐ下りになり、倒木を越えて進むと石谷の集落に出ました。
雨の日だからでしょう、人通りも無く、静かな集落を通り過ぎます。
田んぼの中の道になり、伊自良川を越えました。
ここからは田んぼの中を真っ直ぐに延びる農業道路を歩きます。
雨はいよいよ強く、傘を差してポンチョを羽織っていてもジメジメしてきます。
一般車道を横切り、そろそろ標識が出てくるだろうと予測していたのですが、農業道路の突き当たりである川の土手の造園所のような所まできても標識は見当たりません。
周りには人もいないし、道を聞くこともできない。
仕方ないので一般車道の脇にあった人家まで引き返し、呼び鈴を押して家の方に道を伺います。
家の方はいぶかしげに僕を上から下まで眺めた後(そりゃそうでしょう)、僕の持っていた地図を見て道を教えてくれました。
教えられた通りに突き当たりの土手まで進み、左折して土手に沿って進みます。
車道に出ると、ありましたありました、土手の上に標識を発見!
そこからは標識に従って村山方面へ歩を進めます。
しかし、雨だと周囲の景色も霞んでしまい、行き交う人もなく、ただひたすら歩くだけになってしまいます。
こんな中を歩いてもたいして楽しくないのですが、寄り道がないぶん、距離だけはどんどん伸びていきます。
歩きながら思い起こすのは寧比曽岳での雨中行軍です。
あの時は大変だったなぁ、と泣きそうだった行程も今となれば楽しい思い出です。
集落に入り、そろそろお昼の時間です。
弁当は朝にコンビニで仕入れてきました。
しかし、雨の中で食べる気はしません。
雨がよけられる軒下で腰を下ろして食べたいものです。
と、目の前に出てきたのは大きな車庫のような作業場。
「誠塗装」という塗装屋さんです。
横にあったプレハブの中にお兄ちゃんがいてテレビを見ていました。
お兄ちゃんにことわって、作業場の軒先を借りることができました。
ここでようやく腰を下ろして落着くことができました。
ポンチョを脱いで、靴を脱いで、靴下を脱いで、お弁当を広げます。
ああ美味しい!
良く考えてみれば、椿洞のお地蔵さんのお堂の軒下を借りてから休憩を入れていないのでした。
お弁当を食べてしばらくくつろいでいると、プレハブのドアが開きお兄ちゃんが顔を出しました。
こっちゃ来い、と言われるままに寄っていくと、熱いお茶を入れてくれたのでした。
お礼を言っていただきます。
ああホッとする!
こんな心遣いが雨に打たれて冷え込んでいた体と心を暖かくしてくれます。
そんな感謝の気持ちで頭を垂れて湯飲みを返したのでした。
当初の予定ではこの少し先まで行ってエスケープする予定でした。
しかし、地図を広げて検討するに、このペースならば今日のうちに神海までつけるかもしれません。
それでも到着は18時頃になるのを覚悟しなければなりません。
今後の予定を考え合わせると、少々遅くなっても神海まで行ってしまったほうがベターではないか、との結論に達しました。
よし、頑張って行っちゃおう!
そうと決まれば早速行動です。
靴下を履いて靴を履いてポンチョを羽織り、再び雨の中へ歩き出しました。
一旦車道のトンネル出口に出てすぐに右折します。
工場の脇を通っていきますが、この辺りの標識も電柱に張りついています。
しかし、昨日の芥見で学習済み、しっかり標識を確認して歩を進めます。
則松から川沿いの道になり、北上。
やがて周囲は柿畑になりました。
秋にこの辺りを歩くと柿がたわわに実っていて歩いていても楽しいんだろうな、そんな事を思いながら歩きました。
ルートは車道に出たかと思うとすぐに右折して細い道に入ります。
こんな雨の日に車の往来の激しい車道を歩くのはついらいものです。
細い道を淡々と歩くほうが雨に打たれて少しセンチになっている気分にぴったりきます。
大きな体育館の敷地にある駐車場の屋根を拝借して休憩。
体育館の前に自販機があるのを発見してジュースを購入します。
腰を下ろして煙草でいっぷく、ジュースをあおります。
先ほどもそうでしたが、こんな雨の日は腰を下ろせる軒下が本当に有り難い。
体育館では何かをやっているのでしょう、盛んに声が聞こえてきます。
一息ついて、さて伊洞へ向けて出発です。
バス停のある車道に行き当たり、横切って直進します。
山すそを回り込むようにして車道に出てきました。
ここからしばらくは人家の無い車道を歩きます。
車の往来が少ないことが有り難い。
右前方に集落が見えてきました。
地図によるとルートは集落の中を抜けているはず。
しかし、車道にある標識は集落の中に入らずにこのまま車道を進むように指示しているように見えます。
念のため、集落の方によってみると入り口に文字の消えかかったプラスティックの標識が立っていました。
よかった、一安心して伊洞の集落に歩を進めます。
集落の縁に沿うようにしてくねくね道を進み、元の車道に戻ってきました。
太い立派な車道ですが、この登りはどうも味気がありません。
しかし、今日は雨の日、寧比曽岳の雨の山道を思えば贅沢は言っていられません。
むしろ炎天下ではなく雨の日にここを通れることを幸いとしなければならないでしょう。
このまま川内まではこの車道を歩いていくものだと思いましたが、鹿穴峠を過ぎた左手に山道の入り口がありました。
雨に濡れてぬかるんでいる道ですが、ルートがこちらの山道ならば進まぬわけにはいきません。
幸い落ち葉などの下草がしっかりしている道でぬかるみもひどくはありませんでした。
再び車道に戻ると田んぼに囲まれた川内の集落が見えてきました。
ここまでの経過時間を見るに、標識の行程時間と地図の行程時間とではかなりの差があります。
標識のほうがはるかに時間が短いのです。
そして標識のほうが正しいようです。
例えば、伊洞〜川内間は地図では1:20以上かかることになっていますが、標識だと40分ほどです。
これは助かりました。
これはこの付近の道がかなり整備された(といっても車道として整備されたと言うことです)ことによる、時間短縮なのかもしれません。
川内には14:45到着。
標識に沿って歩いていくと奇妙な標識に行き当たりました。
僕が通ってきていない集落の名前を示しているのです。
ここで、岩村-御嵩間で同道した藤原さんの話を思い出しました。
「標識通りに歩いたら地図と違うルートになってしまったがしっかり元のルートに戻った」
どうやら、ここから支線が延びているらしいのです。
しかし、この標識、西から来た人が見れば迷わず支線に行ってしまうだろうなぁという紛らわしいものです。
紛らわしい標識の写真だけとってその少し先の湯の古公園で腰を下ろします。
ここはなかなか良い公園です。
東屋もあり人も少なく落ち着けます。
なにより、ハリヨという稀少種の魚の生態が良く分かるような半地下の観察ブースがあるのです。
今日は雨だけあって休憩は少ないのですが、その割に良い休憩場所に恵まれています。
さて、腰を上げて神海までのラストスパートです。
ルートは湯の古公園の前の交差点から明谷渓谷沿いに続く車道です。
この道はしばらく渓谷を見下ろすように続いているのでなかなか楽しい道です。
ただし、今日は雨のために水が少し濁っています。
普段はきっと清冽なのだろうなぁと想像しながら歩きました。
いよいよ神海という所で標識通りに歩いていたら工場横の原っぱのような所に出てしまいました。
しかし、標識の指示通りなので間違いないとズンズン進みますが、道が分からなくなってしまいました。
見当をつけて林道のような所を進みますが、どうも不安になって途中の墓地のような所から車道に降りてきました。
そのまま車道を神海駅へ。
当初、早くても18:00頃と思っていた神海到着は、16:00という驚異的なペースになりました。
これも先に話した地図と標識の所用時間の差によるものです。
地図を見て綿密に予定を立てていた場合は、この区間はあっけなくて気抜けするだろうなと思いました。
三田洞までの交通機関は岐阜駅からのバス便です(名鉄岐阜サービスセンター0582-64-1372)。
三田洞を経て石谷のあたりまでは少ないながらもポイントに標識があります。
しかし、農道を突き進み伊自良川のそばまでやってきた所で標識がなくなります。
ここは農道を堤防に突き当たるまで突き進み、左折して堤防の上の道に上がります。
左手に喫茶店が見えてきたら標識があります。
村山では小さな標識が立っているので見落とさないように。
標識のない曲がり角がありますが、わからなくなったらとにかく西へ進みます。
ここの曲がり角は西からやってきたら絶対にわからないと思います。
近くにマコト塗装という塗装屋さんがあります。
僕はここの軒先を借りて昼ご飯を食べました。
西から歩いてきた方はマコト塗装を見つけたら右折してください。
則松の所で標識が朽ち果てています。
ここの標識はどちらを指しているのかわかりません。
ここは西へ進み、川沿いを歩きます。川沿いに標識が出てきます。
伊洞では太い車道を通ってくると思うのですが、ルートは集落の中を通ります。
曲がり角のすぐ近くにあたかも太い車道をまっすぐ行くかのような標識が出ていますが、この斜め向かいに小さなかすれてしまったプラスティックの標識があり、集落の中を進むよう指示しています。
集落の中を進むと坂を登り始めた所に「伊洞峠」を指した標識があります。
西から向かってくると、川内の所で「神海」と「伊自良村」を指した標識があります。
ここはぐるっと見渡すと曲がった先に伊洞を指した次の標識があるのですが、これに気づかないと伊自良村へ向かってしまうこと必定です。
もっとも岐阜県のガイドマップによると伊自良村経由も支線ルートに指定されているようなので、間違いではないのですが、伊洞へ抜けようと思っているのなら、ここの標識は要注意です。
伊洞へはここから南へ向かうことになります。
藤原さんは西へ向かうときに伊自良村を通ったとお話なさっていましたが、きっとこの標識に従ったのだと思います。
ここの標識は「伊自良村155分」となっています。
西からきた方は、「伊自良村155分」を見たら右折した先を見るようにして下さい。
きっと伊洞方面を指した標識が道端に立っているのを見つけることができるはずです。
もう一息で神海というところで、「神海バス停」と「神海橋(吊り橋)」の双方を指した標識があります。
ぼくは神海橋のほうへ進んだのですが、道だか何だかわからない原っぱを突っ切って、変な山道に入ってしまいました。
とちゅうで、どうやらオカシイと思い、お墓の所から車道に出てきたのですが、ここは神海バス停を経由していくほうが安全だと思います。
結局山道は間違いのルートであることが後で地図を見てわかりました。
神海からは大垣へ樽見鉄道が延びています。
三田洞を出るとおそらく神海まで宿泊ポイントは無いと思います。
また、バス便は村山や秋沢の辺りにあります。
この辺りの情報は、岐阜市内に関しては岐阜市観光協会(0582-63-7291)、岐阜市観光案内所(0582-62-4415)へ本巣町に関しては岐阜市観光協会(0582-63-7291)か本巣町建設課(0581-34-2511)へお問い合わせ下さい。