前回は香嵐渓のほとりで幕営しましたので、今回はここから名鉄の三河広瀬駅を目指します。
香嵐渓は東海地方随一の紅葉の名所として名高い所です。そして、その香嵐渓を抱える足助の街は江戸時代から三河湾の塩を信州に運ぶ中堅地点として栄えた歴史のある街です。
現在でも、全国に先駆けて町並みを保存する運動を始めた街らしく、往時の雰囲気を味わえる所です。
巴川沿いに下っていくと白鷺温泉に至ります。
ここはその昔、瀕死の白鷺が湯浴みをして傷を治したことから、その後数千羽の白鷺が飛んでくるようになったとの謂れがある所です。
巴川を大国橋で渡って大島の集落を抜けて元山中峠を越えます。
越えた所が山中の集落です。
ここの集落の那須一族は、源平屋島の合戦で名を挙げた那須与一の末裔だと言われています。
山中から山道を抜けると千鳥寺に出ます。
千鳥寺から舗装路をたどると勘八牧場です。
勘八牧場は豊田市営の牧場で70haにもなる広大なものです。
乳牛と肉牛が飼育されています。
勘八牧場から降りてくると勘八峡にでます。
勘八峡は矢作川を塞き止めたダム湖を中心に展開した景勝地で、奇岩怪石が両岸から迫り、愛知十名勝の一つに数えられています。
勘八峡を背に猿投グリーンロードを越えると東広瀬の集落に出てきます。
名鉄三河線の三河広瀬の駅を見下ろすように、広瀬城跡があります。
今回は約19km7時間の道のりです。
幕営地は幸いなことに平坦な地面でしたので、巴川のせせらぎを子守り歌に快眠することが出来ました。
足助の駐車場で目覚めたのが5:00。
外は既に明るく、テントの外に出て伸びを一発かまします。
着替えてから早速テント撤収。
したが土なので、テントに付いた土を丁寧に払いながらたたみ、荷造りをして駐車場を後にしたのが6:00。
何せ正式な許可をもらってテントを張っていたわけではないので、周りの人が起き出す前にテントを片づけておきたかったのです。
足助村の中を通って、吊り橋(香嵐橋)を渡り、巴川の対岸に出て、公園の中を歩きます。
こんな朝早くから、もう犬を引っ張って(引っ張られて)散歩している方がいらっしゃいます。
さて、足助屋敷から公園に出るコースは昨日既に歩いていますので、ここはまず、香積寺に行ってみる事にしました。
このお寺の昔の住職さんが巴川沿いに紅葉を植えだして、香嵐渓は紅葉の名所として有名になったらしいのです。
朝の香積寺はひっそりとしていて、こじんまりとして、良い雰囲気でした。
浄水で手と顔を洗って口をゆすいでお参りします。香積寺一人占めでした。
巴川沿いの公園に降りてきて、トイレによって、香嵐渓の石碑の前で写真を一枚。
昨日よりだいぶ水嵩がひいた巴川を見ながら公園を散策します。
そして川岸のベンチに陣取り朝御飯の支度に取り掛かりました。
川には三列に渡ってワイヤーが渡してあり、それぞれに鯉のぼりが沢山連なって泳いでいます。
といっても、今朝は風がほとんど無いので鯉のぼりもまだ睡眠中といった所ですか。
そんな物を見ながら、そして昨日より少しは清らかになった巴川のせせらぎを聞きながら、コーヒーとシーチキンマフィンの朝食をゆっくりゆっくり食べました。
待月橋を渡って7:15に足助を出発。
足助はとても良い街でした。親切にして頂いて良い思い出も出来ました。
ルートはビジターセンターから駐車場裏から回って、再び巴川沿いに出てきます。そして川に沿って下ります。
足助に背を向けて今日の歩行の始まりです。
足助警察、岩神の湯と過ぎて、足助病院の前でポストを見つけたので、昨夜したためた葉書を投函します。
ついでに、病院の中にはいって、看護婦さんに伺って水を頂きました。
白鷺温泉の手前で通行止めの標識があります。
しかし、人は通れそうなので直進します。
これは正解で、途中の工事中の区間は人は歩けるようになっていました。
白鷺温泉の真ん前の駐車場で荷を下ろして休憩します。8:30。予定通りのペースです。
靴を脱いで休んでいると、車がやってきてはUターンをして戻っていきます。
その数が余りにも多いので、田振の方には通行止めの標識が立っていないのかと思ったほどです。
そのわけは再び歩き始めて巴川沿いに出たときに分かりました。
対岸の車道は早くも渋滞していたのです。
渋滞を避けて裏道のつもりで対岸の道路(僕が歩いているほう)へやってきたので、通行止めの標識は見えても諦めきれずに一応工事現場まで車を走らせてきているというわけです。
それにしても、こんな時刻から渋滞するとは、折角のゴールデンウィークの前半が雨にたたられてしまった反動でしょうか。
白鷺温泉を経て田振まで川沿いの舗装路を歩き、田振から田んぼのあぜ道を経て山道に入っていきます。
この道は巴川沿いの断崖の上を通っていて、雑木林の中のなかなか静かな道です。
昨日であった古川さんもこのあたりで幕営したのでしょうか。
しかし、車道から結構入り込んでいる道なのに、こんな所にタイヤが捨ててあったりします。
ここまで持ってくるのも大変だろうなぁと、変なところに感心してしまいます。
大国橋に出て、渡る機をうかがっていたおばあちゃんの手をひくように横断歩道を渡ります。
おばあちゃんは、
「ありがとねぇ、、歩道歩きかい、ご苦労様です、偉いねぇ。」
といってくれました。
何が偉いのか分かりませんが、誉められて悪い気はしません。
新築住宅の集まったところに入り、標識が中途半端な方向を指しているため道の判断に迷いましたが、近所の人に伺って解決。
先に進みます。
元山中峠に入るまでは田んぼ沿いを歩きます。
丁度田植えの時期です。植えられたばかりの苗が瑞々しく風になびいています。
人家の横の細い道を通って元山中峠への登りに取りつきます。
山道に入り、小川のたもとでで道が二手に分かれています。
どちらか迷いましたが、勘で朽ちかけた橋らしきものが架かっているほうの道を選びます。
これは正解。元山中峠にすんなりたどり着き、ベンチで休憩しました。カロリーメイトで10時のおやつです。
元山中の集落に降りてくると、こちらも田植えの真っ最中。
田植えをしている人も、たまに作業の手を休めて大きな荷を背負った怪しげな歩行者を見やります。
どうも働いている人の横をレジャーで歩くのはバツが悪いものです。
すぐにまた千鳥寺へ続く山道に入ります。山道に入ってすぐのトイレでトイレタイム。
一息いれて再び歩き始めます。
すぐに抜けると思われた山道でしたが、なかなか長くて、しかも気持ちのいい結構なハイキングコースでした。
山道を抜けると右手奥に千鳥寺が見えます。
千鳥寺は横目でにらんだだけで、舗装路を勘八牧場へ急ぎます。
牧場入り口の案内板の前で写真を撮っていると、その脇をサイクリストが猛然と登っていきました。
頑張れ、頑張れ、心の中でエールを送ります。
さて、牧場らしき広い所に出てきたのですが、牛、馬、羊など牧場に似つかわしい動物がなかなか見当たりません。
はて、勘八牧場はまだまだ先なのか、それとも牧場は経営難で閉鎖してしまったのか、とおもっていると、遠くに乳牛らしき一団が見えてきました。
牧場には丁度お昼に到着。
変な奴がやって来たと牛が集まってきます。
写真なんか取っていると、ちゃーんと牛がバックに入ってくれるので好都合です。
お昼にしようかとも思いましたが、2リットル入りのペットボトルを足助の街のごみ箱に捨てて来たため、水がほとんど有りません。
まあ、もう少し歩けば食堂が出てくるだろうと勝手に予想し、先に進みます。
勘八牧場を過ぎ、車道に出ましたが、標識が割れていてどちらを指しているか分かりません。
そこで、近所のお宅で勘八峡への道を伺いました。
教えられた通りに歩いていくと、確かに勘八峡に出たのですが、標識も何も無いので何かおかしい感じがします。
愛知県の国定公園の看板を覗くと、どうやら教わった道は東海自然歩道のルートではないようです。
仕方ないのでまた引き返します。
東海自然歩道を歩いていると前置きしたのですが、勘八峡を強調したので、こちらの道を教えてくれたのでしょう。
僕の聞き方がいけなかった。
ルートに戻り、再度、勘八峡に出ます。このあたりで足の裏がしびれてきました。
ここで少し休憩。
ここからはラブホテルの脇などを通り、ひたすら舗装路を三河広瀬へ歩きます。
食堂なんて全く見当たらず、それどころか自販機さえ現れず、三河広瀬に着くまではお昼はお預けになりそうです。
猿投グリーンロード(有料道路)をまたぐ橋でおじいさんが下を見ています。
はて、下では何が起きているのかと、僕もおじいさんの横で、一緒に見下ろします。
何の事はない、おじいさんはこの橋の上で友人と待ち合わせをしていたのであって、何か面白いものが下にあったわけではないのです。
おじいさんとしばらく話して、先に進みます。
すきっ腹をピーナツでごまかしながら歩き、再び水田に出てきました。
おばあちゃんが僕のなりを見て歩道のルートを示してくれます。
広瀬城址にたどり着いたのは午後2時10分。ようやくゴールです。
ここから電車に乗るので、汚れたジャージを脱いでジーンズに履き替えます。
駅前の喫茶店でようやく昼御飯。
ところが、電車が来るまでに20分程度しかないので、一旦注文した味噌カツ定食をキャンセルし焼きうどん定食に変更。
2:47の電車に何とか乗車して、名古屋の友人の家に向かいました。
今夜はこの楽しくも苦しかった3日間の歩行の無事を祝って、友人と祝杯をあげよう。
そんなことを思いながら列車の揺れに身を委ねました。
足助までの交通は、名鉄の西中金駅から(または豊田駅から)名鉄バスになります。
またバス便は岡崎からも出ているようです。
足助では香嵐渓ビジターセンターの横にある広大な駐車場の裏手にルートがついています。
ここを抜けると再び巴川沿いの車道に出てきます。
あとは車道をたどれば白鷺温泉を越えて田振までいけます。
僕が歩いたときは白鷺温泉の真ん前で工事をしていて車両通行止めでしたが、歩くのに支障はありませんでした。
田振から田んぼのあぜ道に入り、あぜ道は山道に続いています。
山道を抜けて大国橋に出るまで、迷うことの無い一本道です。
大国橋のたもとで車道を渡り、左手に進みます。
この辺りの標識は高い所についているので、見落とさないように注意してください。
さて、高い所についている標識に従っていくと住宅地に入ります。
住宅地の中では、標識が一つありますが、これが指している方向が定かではありません。
左に進むと登り坂、右に進むと住宅の裏を通る草の生い茂った路です。
ここは左が正解。
すぐに下り坂になり、田んぼに出ます。
出た所で右折、しばらくして登り坂となる道の方へ左折して、登り坂を登った所で右折です。
すると元山中峠への入り口にでます。
元山中峠への入り口には標識がありますが、これが民家の入り口に立っていて、ともすると民家へ入っていきそうになりますが、民家脇の細い道を進むのが正解。
山道に続いています。
山道に入ると二手にルートが分かれます。
丁度小川の流れている所で、小川をまたぐルートとまたがずに右へ登るルートです。
左のルートには朽ちかけた橋のようなものが架かっていますのでこちらへ進みましょう。するとすんなり元山中峠に出ます。
元山中の集落に入ると千鳥寺をさした標識が出てきます。
微妙に右に曲がっている標識がありますので、これは忠実に右斜め前方向の山道へ入ります。
倉庫のような所の脇を過ぎ、舗装路を横切ってまたすぐに山道に入ります。
この山道を入ってすぐにトイレがあります。
山道はゴルフ場の縁を廻るように続き、ぽっかり開けたベンチのある休憩所を経て千鳥寺の手前へ出ます。
千鳥寺から勘八牧場まで標識はほとんど無いので、不安になりますが、舗装路を突き進んでください。
車道と交わった所が勘八牧場の入り口です。
勘八牧場では迷うことはないでしょう。
牧場を出て鶏小屋の脇を通り、舗装路に突き当たります。かどにアイレディース化粧品の看板が立っています。
ここの標識が割れており、古い標識は朽ち果てて、どちらへ進んで良いのかわかりません。
ここは右へ進みましょう。
すぐに標識が現れます。
勘八峡に出るとすぐに矢作川を離れて舗装路を延々と三河広瀬へ向けて歩く道になります。
この道を抜けると水田になります。
ここでは畦道などがルートになっていて、ちょっと分かり難いかもしれませんが、標識に忠実に進んでください。
最後の小高い丘を上ると広瀬城跡。
そして、三河広瀬の駅はすぐ下です。
三河広瀬の周辺には喫茶店が一軒と広瀬梁がある程度で、宿泊施設はなさそうです。
宿泊は猿投まで出るのが賢明でしょう。
詳しくは豊田市商業観光課(0565-31-1212)へお問い合わせください。