title of this page
ホームに戻ります Starlight-Bar

17.大時から秋葉神社・秋葉ダムを経て市の瀬まで

  1. コース概要
  2. 早くもお疲れ
  3. 100kgが行く!
  4. スターライトバー
  5. コースミニガイド

平成9年10月11日(土)

1.コース概要

前回は、大時の休憩舎に幕営しましたので、今回はここから新宮池、犬居城跡を経て秋葉神社・秋葉ダムを目指します。
大時から砂川を経て新宮池に到ります。 この池は、和泉平の山頂の新宮神社のそばにあり、竜蛇伝説や長野県の諏訪湖と地底でつながっているという言い伝えのある神秘的な池です。 毎年、7月末にこの池に屋台船を浮かべて花火を打ち上げるお祭りがあります。
新宮池から和泉平・高森の集落を経て不動川に出て、しばらく川に沿って下ると気田川のほとりの若身の集落につきます。 この集落には北遠曹洞宗の古刹・瑞雲院や中世の北遠の領主・天野氏の居城であった犬居城跡があります。 この城は、徳川家康の大軍によって落城させられたとのいわれがあります。
犬居城跡を下るとすぐに領家の集落と秋葉神社下社につきます。
秋葉神社下社から秋葉山の表参道が始まります。 秋葉山は秋葉神社の境内となっており、千古の杉や桧がうっそうと茂った険しい山です。 この山の八合目に明治政府の神仏分離で分離された寺院・秋葉寺三尺坊があり、頂上には秋葉神社上社があります。 また、三尺坊と上社の間には神門があり、この一連の寺社で一番古い建物です。 共に火防の神様として有名で、毎年12月15・16日には火祭りが行われます。 秋葉山に始めて社殿が立ったのは、西暦709年、元明天皇によるものとされています。
秋葉山から下ると、戸倉の集落を経て天竜川にかかる秋葉ダムが現れてきます。 このダムは昭和33年に出来たもので、天竜川の調整池の役割をはたしています。
秋葉ダムを見上げるように吊り橋を渡ると、龍山村の中心地・西川です。 ここには、龍山村総合センターがあり、宿泊も出来る、東海自然歩道のオアシスとなっています。
西川から天竜川の支流をさかのぼると市の瀬の集落につきます。
今回は約24km11時間の道のりです。

dasi 2.早くもお疲れ

昨夜、シュラフにもぐりこんでから遠くに祭囃子の音が聞こえました。どこかでお祭りをやっているのでしょう。 その音を聞きながら眠りに就き、大きな鳥がはばたく音で目覚めました。 毎度のことながら、シュラフが恋しく、目覚めたのは4:30ながら、テントから顔を出したのは5:00でした。
早速顔を洗ってテントを畳み朝食を作り、6:15に出発しました。
まずは次の集落、砂川(いさがわ)を目指します。 朝の空気は気持ちいい。その中を、順調に舗装路を歩き、茶畑が見えてきた所で、道端に提灯がいくつもぶら下げているのが見えてきました。 茶畑を見下ろす民家の側で休憩。 民家からおじいさんが出てきました。朝の挨拶を交わします。 伺うと、やはりこの辺りで昨夜お祭りがあったようです。
「どっから来た。」
「春埜山から下りてきて、昨日大時に泊まりました。」
「ほう、ご苦労さんだのう。」
ごくろう、ごくろう、と言いつつ、おじいさんは家に戻って行きました。
また、しばらく歩くと山車が見えてきました。高砂社と言う神社のお祭りだったようです。 この辺りが砂川と言う集落で、かなり速いペースで歩いてきてしまいました。
道はここから山道に入ります。クモの巣をかき分けながらすぐに新宮池に到着。 朝の新宮池は人影は見当たらず、静かで神秘的でした。 池のほとりの小屋には舟が引き上げられていました。お祭りの際にはこれが池に浮かぶのでしょう。
トイレ休憩をとってから、駐車場の脇を通って舗装路を歩き、和泉平へ。 ここでおばさんに高森の集落への道を尋ねると、畑仕事の手を休めて丁寧に教えてくださいました。 ストリートバスケットに興じる子供たちの脇を通ると、元気よく挨拶をしてくれました。 挨拶をはじめとした人付き合いに関して、田舎の方の方が暖かみを感じるのは僕だけでしょうか。 どうも都会は殺伐としている感じがします。
高森へは登り道かと思いきや、意に反して下り一辺倒。 集落を過ぎて、下りきった所が不動川でした。 不動川に沿って歩き、気田川との合流点が若身の集落。 地図では気田川の手前で犬居城跡へ向かう事になっているのですが、標識はどうやら気田川を渡るようになっているようです。 橋の手前の小さな公園のベンチに座り、リュックを開けてすべての地図を総動員して検討します。 結果、橋を渡り、犬居城跡のたもとに出ました。
標識が出てきて、どうやら間違いはないよう。しかし、どうも標識が意図する所が分からない。 標識では瑞雲院と犬居城跡を指していますが、瑞雲院も犬居城跡も通っていないのです。 ひょっとしてこれは犬居城跡から下ってきた所にある標識なのかな? そう言えば、さっき犬居城跡はこちらと言う車用の標識があったな、と思い少し引き返し、車用の標識に従って左折します。 地図で見た限り、犬居城跡は右手だと思ったのですが、標識優先や、と思ってずんずん進むと町中に入ってきてしまいました。 標識も見当たらないし、こんな時には聞いてみるに限ると、酒屋のおじさんに聞いてみました。 すると、この先に入り口がある、すぐにわかると教えてくれました。 安心して進むと、犬居城跡入り口の石碑があり、ここから入ります。 すると、先ほど見た瑞雲院と犬居城跡を指した標識の所にきてしまいました。 何だ、ここは素直に標識に従って犬居城跡へ向かえば良かったのです。 無駄骨や、と呟き、陸橋を渡って犬居城跡の登りに取り付きました。 この上りが結構きつい。距離はそれほどでもないはずなのですが、ぐったりして体が重いのです。 昨日の疲れが残っているのでしょうか。秋葉山というきつい上りを残してこの状態では先行き不安です。

3.100kgが行く!

犬居城から気田川の蛇行や若身の街並みを見下ろし、展望台を横目で見ながら下りに入りました。 この道が思ったより長く、茶畑に出てきて、領家の秋葉神社下社の前についたのは10:45でした。 参道入り口の土産物屋兼食堂のおじさんが丁度店先で仕事をしていたので、頼んで店先にリュックを下ろさせてもらいます。 軽い身になってひとっ走りお参りをします。 道中安全、病気の友人の全快などなど、しっかりお願いして休憩所の無料のお茶を頂きます。 ほっと一息。ここまではまずまずのペースでしょう。
さて、ここらで水の補給をして行かなければなりません。 何せ目の前の秋葉山の参道は、わずか4km強の間に700m以上高度を上げる急登の道なのです。 喉が渇くだろうし、この後昼飯も作らなければならないし、この後何処に水場があるのか分からないのです。 しかし周りを見回しても公共の水道は見当たらず、先ほどの土産物屋兼食堂のおじさんに水をくれないかと頼みました。 すると、快く承知してくれただけでなく、冷水機の水を入れて行けと言ってくださいました。 きっちり冷えた水をペットボトルに一杯にして、お礼を言って11:15下社を後にしました。
いよいよ秋葉山です。入り口には、神社まで徒歩60分の看板が見えました。 ほんとかね、コースマップでは2時間はかかる事になっています。 もし本当なら嬉しいなぁと思いつつ参道に入りました。
参道はきれいな石畳が敷いてあって、茶店も小奇麗です。 きれいな東屋があったので、ここで靴の紐を締め直します。気合いれにゃあ! 道はすぐに山道になり、人もあまり歩いていません。 本来ならここは表参道のはず。今は頂上付近まで車道が出来たためこの道を通る人は少なくなったようです。 軽装のお兄ちゃんが軽い足取りで追い抜いて行き、みるみるうちに見えなくなりました。 坂はとても急になり、とてもとてもしんどい! 道の脇には標高を示す立て札と2合目・3合目などを示した石碑が建っています。 これを目安に、最低でも15分は歩いてから休憩を入れようと決めました。
足はグタグタに疲れきって、そのうち腹も空腹を訴えてきました。 自分の腹ながら腹立たしく(なんか変な表現だなぁ)思わず自分の腹に向かって叱りつけました。
「足も頭も手も、みんな頑張ってんねん。腹が弱音吐いてどないするんや!」
Mt-akiba しばらくしてからの休憩でカロリーメイトを食べてとりあえず腹をなだめます。 その時に考えました。 今回出発する前にリュックを体重計にのせてみました。 いったいどれくらいの荷物を背負っているのか、聞かれる事があるからです。 20kgを越えていました。これに水2Lを加え、さらに体重を加えると、100kg。 100kgが4km強で700m以上高度を稼ぐ登りに挑んでいる事になります。 ちょっとこれは凄い事だなぁ、と自分のことながら感心してしまいました。 高尾山からここまで歩いてきて、ようやくこの事実に気づいたわけです。
途中、九州から来たと言うゆっくりペースの老夫婦を追い抜きました。 そして、しばらく歩いてから休憩。 追いついてきた老夫婦に水を分けました。
「ああ、冷たくて美味しい!」
そう言った奥さんはとてもいい笑顔をしていました。
もうひと踏ん張りで一気に三尺坊につきました。 フェー!ようやく着いた! 予定では12:30頃着くはずでしたが、12:50分になっていました。 ふもとの看板は大嘘つきやなぁ、と呟き、とりあえずお参りをしました。 ここにベンチ等がある事を期待していましたが、がらんとしてほとんど何も無く、隅っこに2つだけあるベンチは他のグループに占領されていました。 仕方なく階段に荷を下ろし、自販機でジュースを買って飲み干しました。 昼飯をどこで作ろうか考えましたが、一気に頂上まで行ってしまおうと考えました。
登りはじめてすぐに資材を運ぶソリに出会いました。5人掛かりくらいで押しています。 大変だなぁと思いながら挨拶の声をかけると、思わず笑顔が返ってきました。 また、いい笑顔を見る事が出来た、こちらの気分も晴れやかになります。 すぐに山門(神門)が現れ、これをくぐってしばらくすると上方にコンクリートと石の建造物が見えてきました。 ようやく到着!時間はすでに1:30になっていました。 でも事前に計画していたタイムよりいいペースです。
秋葉神社は、立派な石段と豪勢な社殿を持っていました。 まずは浄水で手と口を清めて、社務所で荷物を預かってもらい、石段を駆け上がってお参りです。 さすがに山頂は眺めがいい!
社務所に戻って神官さんと話します。
「とてもきつくて死ぬかと思いましたよ」
「この荷物は何キロあるんだ?」
「20キロ以上あるんです。」
「そうか、体重とあわせて100kgが登るんじゃきついな。」
唖然としてしまいました。高尾山からここまで歩いてきてようやく気づいた事を、事も無げに言われてしまいました。 やっぱり神に仕える方は違うわい、と思いました。


4.スターライトバー

神官さんにスタンプを借りてガイドブックなどにペタペタ押します。 それから、神官さんにお礼を言ってどこかで昼飯を作らなきゃあと歩きはじめました。 階段を下ると、食堂を発見! 作るのも面倒になって、フラフラと食堂に入ってしまいました。 山菜蕎麦とビールを注文。クゥーッ!ビールが喉に染みるぅ!やはり食堂は楽です。
山菜蕎麦を食べ、お茶を飲んで、ホッとした所で出発! トイレに寄って2:00に歩き始めました。今度は下山です。 せっかく苦労して登ったのに、なんかもったいない気がします。 車道をしばらく歩いてから標識に従って山道に入ります。 ここからずっと山道になります。途中、鳥居のある突き当たりで勘で左折してしまい、ちょいとコースから外れましたが、すぐに戻ってきてズンズン下ります。 膝が少し痛んできましたが、チタンテープを貼っているせいでしょう、まだまだ持ちそうです。
民家の軒先を通るようになっていて、念のため丁度出てきた民家の方に尋ねると、確かに東海自然歩道は軒先を通るようになっているとの事。 高台に出て、いよいよ天竜川を見下ろすようになってきました。 僕の祖父母は天竜川の上流の伊那と言う所に住んでいました。 小さい頃から、釣りなどで遊んで慣れ親しんできたせいもあるのでしょう、天竜川というと一段と感慨深いものがあります。
Akiba-dam 4:00に秋葉ダムのたもとの吊り橋に到着。 橋を渡って休憩しました。ついに天竜川を渡りました。 嬉しくて、たまたま通りかかったお兄ちゃんに頼んで写真を撮ってもらいました。 それからしばらく、靴を脱いで煙草をくゆらせ天竜川を眺めていました。
さて、気を取り直して、今度は今夜の寝場所を求めて出発です。 どこかでジュースを、あわよくばビールを仕入れて行きたいと思うのですが、酒屋の看板が見当たらないうちに集落の外れになってしまいました。 そこで一旦戻り、龍山村総合センターの前の自販機でジュースを買おうと財布を出しました。 しかし、1万円札しかありません。仕方なく、総合センターの受付に行って両替をお願いしました。 すると、そこにビール発見!すかさず500mlを購入しました。 さらに自販機でジュースを買って、ビールと共にリュックに詰めて、ウキウキ気分で歩き始めました。
総合センターの受付で両替のついでに伺ったところ、この次の集落の市の瀬にテントを張れそうなポイントがあるとの事。 市の瀬に向けて歩き出します。 市の瀬は案外近くて1時間ほどで到着しました。 途中、軽トラックのおじさんに白倉(市ノ瀬の先の集落)まで行くのなら乗って行かないかと言っていただきましたが、もちろん丁重にお断りしました。 でも、こんな声をかけていただけるのは、嬉しい事です。 踏破という目的が無ければ、迷わず乗せていただくところです。
市の瀬には東海自然歩道歩行者用のキレイなトイレがあり、その前にベンチとテントひと張りくらい張れる砂利敷きのスペースがありました。 ここはいい!ベンチに荷物を降ろして周囲の家に断りに行きました。
「あれまあ、あんな所に泊まるのかね。」
皆さん笑顔で了承してくださいました。 テントを設営するととてもいい感じに今宵の宿が出来上がりました。
トイレの外灯は夜7:00頃まで点いていてゴキゲン! パスタとビールの夕食の後、つまみを食べつつ(つまみだけはなぜか豊富なんだよなぁ)ウイスキーのソーダ割を飲んで星空を見上げます。 今夜も見事な、降るような星空です。 まさに、貸し切りのスターライトバー!
”自分は今、とても贅沢な時間を過ごしているのだろうなぁ。”
煌く星を見上げながら、しみじみそう思いました。

5.コースミニガイド

大時から砂川までは舗装道、砂川から新宮池までは山道です。いずれも歩きやすい道です。 新宮池から犬居城跡のたもとまではずっと舗装道。標識もそこそこ整備されているので迷う事はないでしょう。
犬居城跡への登り口は天竜川方面に向かって左側にあります。 そこに標識がありますので、これにしたがってください。 すぐに陸橋を渡って車道の右手の犬居城跡に登って行けます。
犬居城跡から山道を抜けると茶畑に出ます。ここから領家までは特に迷う事はないでしょう。 領家には秋葉神社下社があり、向かいの駐車場に東海自然歩道歩行者用のトイレがあります。案内板もこの駐車場の隅に立っています。 また、秋葉山に向けての給水ポイントとしてはここが最適でしょう。下社の中には無料の休憩所があり、温かいお茶がいただけるほか、水道もあります。 領家からは遠州鉄道の西鹿島駅へ遠鉄バス(0534-54-2211)が走っています。
秋葉山の表参道になる登り道はとてもきついものです。登り口にキレイな東屋があります。 登り道には標高などを記した標識がついているので目安になるでしょう。
三尺坊につけば、山頂は目の前。山頂からは気田川の蛇行や犬居の街並みなどが見下ろせます。
山頂からは、駐車場を抜けて、しばらく車道を歩きます。 左手に東海自然歩道の標識が現れますので見落とさないように。 しばらくは車道と平行するように、たまに交差しながら下ります。 途中の小さな神社の辺り(鳥居がいくつも立っています)で道が左右に分かれますが、ここは車道から離れないように右へ行きましょう。
しばらくいくと、車道から別れくねくねした下り道になります。 一通り下りきったところで民家の前を通り、天竜川を見下ろす高台の道になります。 ダムが見えてくると左に下りる道が出てきます。東海自然歩道の標識はここを下りるように指示していますが、僕が歩いた時は工事中でほんの一寸回り道をしました。 しかしこの下り道を標識どおりに下ろうが、無視して下るまいが、天竜川に沿って走る道に出ますので結局同じことです。
秋葉ダムの手前の赤い吊り橋を渡ると、龍山村の中心地・西川です。 この街中にある龍山村総合センター(0539-69-0316)は宿泊も出来る東海自然歩道のオアシスです。 僕もここでビールを仕入れました(^o^)。 天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅・西鹿島駅から西川へはJR東海バス(0539-25-4196)が走っています。
市の瀬までは川沿いの道で迷う事はありません。市の瀬は小さな集落ですがここにあるトイレはキレイで立派です。
交通・宿泊についての詳細は、春野町経済課(0539-89-1111)、龍山村産業経済課(0539-69-0311)へお問い合わせください。 文中には書きませんでしたが若身からの不動川沿いや西川から市の瀬の辺りまでバスが走っているようです。

市の瀬−三河大野へ

ホームへ戻ります