今回は、大井川沿いの家山からです。
家山駅を出て少し歩くと、すぐに野守の池につきます。
ここは、太平記の時代に京の都からこの地に下ってきた夢窓国師を慕って追いかけてきた島原の遊女・野守が、夢窓国師に受け入れられなかったため身を投げた池といわれる所です。
今は、長閑な池に釣り糸を垂れる太公望の姿が見受けられる、のんびりとした池です。
家山の町を過ぎ、林道に伝って歩くと、八垂の滝、市井平と進み、大日山金剛院につきます。
ここは、養老二年(718年)に行基菩薩が開いたとされる真言宗の名刹です。
本堂などは火災によって焼失し、明治と大正になって再建されたものですが、山門は天保年間に建てられたもので、仁王像と共に森町の文化財に指定されています。
金剛院を過ぎると、歩道は杉林の中を春埜山へ向かいます。
春埜山の山頂に位置する大光寺は曹洞宗に属し、御犬様信仰のお寺です。
この寺も養老二年に行基菩薩が彫ったとされる仏像三体を奉安したお寺で、数少ない神仏混合の修験の山として明治政府の神仏分離政策をかいくぐり、往時の形式を今にとどめています。
春埜山を下ると、茶畑の広がる大時の集落に出てきます。
今回は約22km8時間の道のりです。
前回は、小杉師匠と家山まで到達しました。
今回はここから先に歩を進めます。予定では、この3連休で少なくとも天竜市の熊まで、あわよくば愛知県まで入ってしまうことにしています。
いつもどおり、品川発4:35の東海道線でバカ面を晒して寝ながら西に向かいます。
しかし、今回は沼津の手前の三島で下車。
ここで新幹線に乗り換え、静岡まで行き、再び在来線に乗り換え、金谷を目指します。
こうする事によって、一本早い大井川鉄道に乗車でき、出発時間が40分ほど早まります。
40分で、新幹線特急料金980円は悪くない買い物だと思います。
金谷8:10発の大井川鉄道で、家山へ。
金谷を出た時点で、列車はガラガラでした。
そこで、車中で荷物のパッケージを再点検。
ところが、金谷の次の駅、新金谷で年配の方が中心の団体さんが一斉に乗ってきました。
慌てて、座席からリュックをおろし、席を譲ります。
そして、通路に荷物を置いてパッケージの続き。
しかし、この団体さん、落ち着きが無く(概して団体さんは落ち着きがありませんが)、頻繁に席を立って通路を行き来します。
そして僕の方に目をむけ、
「何しているんだろう。邪魔な兄ちゃんだなぁ。」
といった面持ちです。僕がリュックを下ろして席を譲ったおばちゃんは好意的で、僕がパッケージを終わるとニコニコ話し掛けてきました。
おばちゃんたちは井川湖の方まで行って、今夜は寸又峡温泉に宿泊するとの事。
僕が、東海自然歩道を歩くという話をすると、しきりに頑張ってネと激励してくれます。
そのうち、飴は沢山くれるは、他のおばちゃんたちにも捉まるは、いやはや、団体旅行の一員になったような感じです。
家山には8:40頃到着。おばちゃんたちの別れを言って、駅に降り立ちました。
すぐに家山駅を出発。途中、道を尋ねて野守の池の到着しました。すぐにあった公園で水を補給。
ニッチマップでは、野守の池の南岸を通って行く事になっていますが、ウォークガイドでも静岡県のガイドでも東から北岸・西岸を通って、池周の3分の2ほどを廻っていく事になっています。
ここは、後者に従い、北岸を廻ります。
野守の池は緑色をしていて、澄んだ池とは言えませんが、朝から大勢の釣り人が釣り糸を垂らし、のんびりとした感じの良い池です。
標識が現れたので、これに従い野守の池を後にします。
畑の間を通り、すぐに家山川に出ます。
この突き当たりに標識があります。
僕の感覚ではこの突き当たりを右折すると思うのですが、川根町で設けているこの標識は左を差しています。
僕が決めている標識優先の原則から、ひとまず左折して前川橋という橋をすぐに渡ります。
しかし、どうもおかしい。橋を渡りきった所でもう一度地図を見て、標識を見直そうと戻ってきました。
橋の上でおじいさんに呼びとめられ、東海自然歩道ならこの橋を渡らずに川をさかのぼる(右折する)のだといわれました。
「でも、あそこの標識には左折するように矢印が出ているのですが・・・」
「ああ、ありゃ間違えているんだ。」
とんだ標識があったものです。
気を取り直して家山川をさかのぼり、八垂の滝で左折して登りに入りました。
この辺り、ずっと車道を歩きます。
しかし、曲がりくねっていて、そこそこの登りです。
曲がり角で休憩を取っていると初老の御夫婦が追い抜いていきました。
金剛院まで行くそうです。
ここから一時間くらいかと聞かれたので、一時間半くらいは見ておいた方が良いのでは・・と答えておきました。
再び歩き始めて、休憩を取っていた先ほどの御夫婦を追い抜きます。
「ずいぶんと大きい荷物を持っているのねぇ。」
「ええ、テント道具を一式持っているんです。」
「あら、大変ねぇ。」
そう、大変なのですが、まだ歩き始めたばかりで荷物の重さはあまり堪えていません。
しかし、明日・明後日はどうなっております事やら。
茶畑が現れてきて、少し歩くと市井平に到着。
ここから家山の街並みが小さく見えました。大井川水系ともお別れです。
道は市井平の少し先まで舗装されていて、途中で林道になり、歩道は少しだけ山道もかまします。
この辺りは、ずっと林の中の道でなかなか気持ち良い。
しかし、その気持ち良さが吹っ飛んでしまう表示が出ていました。
何と、これから歩く春野町の山中に熊が出るというのです。
そう言えば、昨夜布団に入ってからハタと思い立ち、熊除けの鈴を探した事を思い出しました。
結局、すぐには見つからず、まあいいやという事で再び寝てしまいました。
ああ、あの時見つけて持ってきておくんだった。
参ったなぁ、と思いつつ歩を進めていると、やがて道は下りに入り、大日山金剛院の建物が見えてきました。
大光寺から先、迂回路があって道が二股に分かれているはず。
標識に気を付けて本ルートの方へ進みます。
先ほどのパラボラアンテナを横に見て林道の下りに入ります。
しかし、どうもおかしい。
地図ではこの辺りは山道になっていますし、歩いてきた道のようなカーブは無いと思うのです。
本ルートと迂回路では距離が大幅に違います。
コースタイムも自ずと違ってくるはずで、余程のことが無い限り本ルートを通って行きたいのです。
傷は浅いうちに、と思い大光寺まで再び戻る事にしました。
四度パラボラアンテナを見上げて進みます。
大光寺につき、ひょっとして春埜杉の脇から道が始まっているのではないかと思い春埜杉のたもとまで下りていきます。
杉の周りできょろきょろしますが、それらしき道はありません。
お寺に戻り、玄関から入りました。
するとすぐに御住職らしき方が出ていらっしゃいました。
道が分からない旨を話すと、先ほどの林道でいいのだという事を教えてくださいました。
どうやら、林道工事が進んでルートが変わったようです。
御住職は大光寺のパンフレットもくださり、これを見ていくといいと裏面の地図を示されました(その地図はとても大雑把なものでしたが)。
今度は安心して林道を進みます。
五度パラボラアンテナを見上げて、歩を進めます。
次のポイントの大時には早目に着けそうだったのですが、大光寺周辺でのタイムロスで結局元の木阿弥になってしまったようです。
これは、後日談ですが、御住職に頂いたパンフレットを家に帰って読んでみました。
すると、この大光寺は珍しい寺らしく、明治期から戦前にかけて行われた神仏分離という宗教政策の嵐をかいくぐり、数少ない神仏混合の修験の山として往時の姿を現在にとどめているというのです。
それで、鳥居の謎が解けました。
お寺とは言っても神社の機能も兼ね備えているわけです。
ですから鳥居があってもまったく不思議はないというわけです。
林道は思ったより長く、従来のコースタイムより余計にかかるようです。
大時についたのは午後の5時。
集落を見下ろせる高台から美しい夕日が見えました。
しばし見とれてから、大時の休憩所に入ります。
今日はここで幕営です。結局、熊には遭わずに済みました。
夕食が済んで、休憩所のベンチでウイスキーをなめながら、ランタンの灯かりの下、備え付けの書き込み帳を読みました。
東海自然歩道を歩いている方を中心に、多くの書き込みがありました。
皆さん、さまざまな思いを胸にこの大時の休憩所で足を休め、書き込みをなさっているようです。
昨年の春の欄には、A沢貯水池辺りでお会いした野村さんらしき書き込みもありました。
僕もたっぷり書き込みをしてからテントにもぐりこみました。
家山駅までの時刻はJR時刻表に載っていますので、そちらに譲ります。
家山駅から野守の池まで、ちょっと標識が不備ですが、地元の方に伺えばすぐに分かります。
野守の池では北側をグルッと廻るのが東海自然歩道のルートです。
ニッチマップでは南側をかすめるように書いてありますが、この辺もルート変更があった地点かもしれません。
ここは静岡県のパンフレットを信用しましょう。
池の東側の公園には水道があります。ここで水の補給をすると良いでしょう。
野守の池の周辺には川根町が設置した"walking Kawane"と書かれた看板があります。
この看板に従って行けばいいのですが、家山川に突き当たった時の看板だけは違います。
ここは左手に行くように示してあると思うのですが、右に行くのが正解。
左に行くと(前川橋方面)、大井川に戻ってしまいます。
越地から八垂の滝で左折して市井平まで、車道を歩きますので迷う事はないでしょう。市井平の手前は少し急な上り坂です。
舗装道路は市井平の少し先まで続いています。舗装が切れると林道になり、東海自然歩道は一部山道も通ります。
林道が下りに入るとすぐに大日山金剛院です。ここには、山門方向に少し下るとトイレがあります。
また、ここでも水補給は出来ますが、浄水の流れは細く、それほどきれいでもないので、お寺の方に頼んで頂いた方が良いかもしれません。
平松峠では金剛院からの参道が車道に突き当たり、左右どちらに進んで良いのか分からなくなるかもしれません。
しっかり周囲を見てください。いくつかの看板の後ろに控えめに、しかししっかりと道筋を示す標識が立っています。
正解は右折です。
平松峠では、車道沿いに東屋が、山道の登り口にベンチがあります。
平松峠からは山道。鳥居沢山の登り口までは軽快に歩けます。
登り口は日溜まりとなっておりベンチや案内板があります。
ここからがきつい上りになります。
また、この付近から熊出没の危険性があるようです。念のため鈴などを持って行かれる事をお勧めします。
もちろん唄いながら歩いてもいいですけれど。
大光寺までは道に迷う事はないでしょう。
林道に入ると、すぐに大きな鳥居が見えてきます。これが大光寺の目印。
大時へは大光寺の前の林道をひたすら西へ歩きましょう。
この林道を反対方向に歩くと花島の集落を通る迂回路になるようです。
また、パラボラアンテナの脇から春埜山の頂上に到る山道があると後になって聞きました。
大時の休憩所は、交差点から新宮池方面に少し進んだ高台にあります。集落を見下ろす形で、人家は近くありません。
この休憩所はテーブルがないせいか中が広く、休憩所の中にテントを張れます。
また脇には水道がついていて(飲用には不適のようです)手足を洗うのに重宝します。幕営地としては丸印!
家山を出てから大時までの交通機関については不明です。バスも通っていない可能性が大きいと思います。
宿泊所としては、大日山金剛院(05475-3-2083)で宿坊に泊まる事が出来るようで、大時の休憩所で読んだ書き込みにもここで宿泊してから来たという方が沢山いらっしゃいました。
大光寺では宿泊できないようです。
交通・宿泊についての詳細は、川根町産業課(0547-53-3111)、森町商工観光課(0538-85-2111)、春野町経済課(0539-89-1111)へお問い合わせください。