title of this page
ホームに戻ります Autum

1.猪之頭から田貫湖・坂林を経て上柚野まで

  1. コース概要
  2. 怪我の功名
  3. 道なんてない!
  4. 文字どおりの単独行
  5. オアシス発見!
  6. コースミニガイド

平成10年4月11日(土)

1.コース概要

バイパスルートは猪之頭で本線と分離し蔵田で合流します。ですから、バイパスルートを歩き始めるには猪之頭か蔵田からということになります。 僕は近いほうからということで猪之頭から歩き始めることにしました。
猪之頭は富士の湧き水が豊富に流れる地で、養鱒場や陣場の滝などがあります。また、富士川の支流である芝川はこの辺りを水源としています。
猪之頭から田貫湖の間には小田貫湿原があり、公園が整備されています。
田貫湖からはいよいよ本線と完全に分離してバイパスルートは一路南を目指します。 田貫湖は富士山麓の人造湖で、ここからの富士の眺めは絶品です。年に2度、富士山頂から日が昇るときがあり、多くのカメラマンが押し寄せるそうです。
天子の森はキャンプ場などが整備された渓谷のアウトドアリゾートです。
田貫湖から大倉ダム手前までは天子が岳の麓を巻いて歩くルートで、佐折の近くからは登山道が出ています。
バイパスルートは天子が岳の登山口から盲腸線が出ており、原まで続いています。 原のすぐ近くには富士の湧き水が作り出した自然の芸術とも言える白糸の滝があります。
柚野は、清らかな水が流れる里です。 ここには、この水を利用して富士錦酒造という酒蔵が酒作りをしています。 また、江戸時代中期に作られた清らかな流れの土井の川(三区用水)があります。 この用水沿いには、定林寺からはじまり、延命寺、正法寺、妙泉寺、興徳寺、安立寺、蓮成寺、とお寺さんが続いているほか、柚野大明神もあり、用水沿いの道からは富士の美しい姿が拝めます。
今回は約24km7時間半の道のりです。

Map of rute

2.怪我の功名

バイパスルートを歩こう!そう思い立ったものの、バイパスルートがいったいどこを通っているのか大まかなことしかわかりません。 静岡県発行の東海自然歩道のパンフレットには大まかな地図が出ていますが、これでは余りに大雑把すぎて、実際に歩くときには使えそうもありません。 地球儀を見ながら車を走らせるようなものです。 もしやと思い国土地理院発行の2万5千分の一の地図を本屋で見ましたが、本線はしっかり出ているものの、バイパスルートは全く載っていません。
これは、やはり地元市町村に問い合わせるしかないでしょう。 ということで、4月8日にまずは猪之頭のある富士宮市に問い合わせてみました。 富士宮市の観光課に電話をすると、当の職員もバイパスルートに付いては全く知らない様子。 しかしこりゃあルートを明らかにするのは無理かなとこちらが思いかけたときに、その職員の方が
「これはこちらで調べて折り返しお電話します。このルートについては我々も知っておく必要があります!」
とキッパリ!富士宮市偉いっ!電話はすぐにかかってきて、ルートを記した地図を送ってくださるとのこと。 有り難い!
地図が手元に届いたのが4月10日の金曜日。 地図は、国土地理院発行の5万分の一の地図にラインマーカーでルートが示してあるものでした。 この地図を眺めていたらムクムクと行きたい気持ちが込み上げてきました。 そうとなったら居ても立ってもいられません。 夜の7時にそうそうと仕事を切り上げ、渋谷の紀伊国屋書店に走ります。 5万分の一の地図では今一つ判然としない細かい道を明らかにするために、2万5千分の一の地図を購入し、家にとって帰すと早速荷物をまとめ始めました。 荷物がまとまった所で買ってきた地図を睨んでルート検討。これで間違いないだろうというルートを地図上にマーカーで描き、布団に入ったのが夜半過ぎでした。
翌朝は、度々お世話になった品川発4時35分に乗ろうと思っていたのですが、目覚ましを止めて2度寝してしまったらしく(気持ちいいんだ、これが)、次に目覚めたのが4時40分。 こりゃあ参った、今回は取りやめようかと思いましたが、昨夜用意したリュックを見て、やっぱり行かなきゃと思い直し、朝の5時に出発しました。
ところがこれが思わぬ幸運で、5時55分発の静岡行に乗れたのを皮切りに、列車の乗り継ぎはいいわ、富士宮駅ではこの春のダイヤ改正で新たに出来た9時10分発猪之頭行きのバスに丁度乗れるわで、ホクホクしてしまいました。 ちょうど一年前、上佐野へ抜けようと同じルートを猪之頭まで行ったときはこのバス便がなく、白糸の滝までバスで行き、そこからタクシーを使ったのです。 思わぬラッキーに、これぞ怪我の功名とニッカニカで猪之頭農協前のバス停で下りたのでした。

3.道なんてない!

こに地に降り立ったのは丁度一年ぶりです。一年前、僕はここから長者が岳を越えて上佐野に至るべく出発したのです。 その記憶をたどるようにバス停から猪之頭の東海自然歩道のルートまで歩き、集落の外れから今回の行程をスタートしました。 芝川に出て、橋のたもとから今回のルートを模索します。 富士宮市から頂いた地図ではここから本ルートとバイパスルートは分岐することになっているのです。 しかし、橋の周囲をうろうろしてもそんな道は見当たりません。 橋を渡った所の交差点で荷物を降ろして地図を広げます。 そんな僕を見て、交差点から出てきた車に乗っていたお姉さんが声をかけてくれました。 富士宮市から頂いた地図を見せると、このような道は知らないとのこと。 しかし、このようなアドバイスをくれました。
「ここから入っていった所にあるパイオニアの保養所のおばさんが山歩きが好きで良く知っているから、そこで伺ってみたら?」
それは良い情報です。お礼を言ってから荷をしょって歩き始めました。 しかし、途中で川に降りられそうな場所を発見。 取り敢えず芝川に降りてみることにしました。 道なき道を芝川へ降り、川原でルートを模索します。 しかし、川の特性としてカーブの内側には川原が出来るのですが、カーブの外側では川原は消えてしまいます。 芝川は蛇行して流れているので、川に沿って歩くとしても途中で対岸に渡るということを何度もしなければなりません。 川沿いの土手の道も模索しましたが、茨ばかりで進めそうにありません。 3,40分もうろうろしたでしょうか、あきらめて茨をかき分けて上の道に戻ってきました。
仕方ない、再びパイオニアの保養所を目指します。パイオニアの保養所は道沿いにあってすぐ分かりました。 fuji,cherry-blossum,lake.tanuki 玄関先から呼びかけてみます。 すると、奥からおじさんが出てきました。 事情を話し地図を見せると、
「わしもこの辺りの山道は一通り歩いたつもりだが、こんな道はないなぁ。」
とのことでした。やっぱり本ルートを使って田貫湖まで行くのが無難なようです。 おじさんは、この辺りの山道につきいろいろ教えてくれました。 この道を歩くと面白い、こう歩いていけばここに出るなど、今回は使いませんが面白そうなのでそのまま伺いました。 ここで水補給をさせて頂き、おじさんに礼を言って保養所を後にしました。
さて、別荘地帯を抜けて本ルートに戻ります。 ここからはロケハン済みの道、今回も小田貫湿原に寄っていくことにしました。 昨年は少し霞んでいた富士も今回は良く見えます。そして早くもカエルが鳴いています。 一年前と同じ東屋で休憩。先客でいらしたご夫婦と話します。 芝川町の方だそうで、自宅の下をバイパスルートが通っているとのこと。 お役所関係に詳しい方で(もしかしたら市会議員さんなどかもしれません)、芝川町ではバイパスルートの整備のために負担金が出ていて吊り橋をかけて整備しようという話も出たそうです。 しかし、結局は財源不足で何も手付かずになっているとのこと。 今日の目標である上柚野には酒蔵もあるし酒屋もあるという情報も得ました。 酒屋があるとなれば、何としても上柚野まで行かなければなりません!
ご夫婦と別れて田貫湖へ。 11:30に湖畔に立ちました。 一年前は湖畔を目の前にして長者が岳への登りに取り付いたため、湖畔は始めてです。 大勢の太公望達が釣り糸を垂らしています。 少し湖畔に沿って歩き(ここは都会の公園のように整備されています)、レストハウスの前で振返ると、桜と富士と湖がえもいわれぬ美しさを見せています。 思わず居合わせた方にお願いしてシャッターを押して頂きました。
田貫湖の湖畔はとても整備されていて家族連れの姿も目立ちます。 そんな中、ジャージをはいて大きなリュックを背負った僕はなんか浮いています。 湖畔に沿って進み、お昼時にあいているベンチを見つけ昼食にします。 スパゲッティを作っているとバスフィッシャーのお兄ちゃんが二人、僕の傍らでルアーをなげ始めました。 一人は昔キャンパーだったそうで僕の装備に関心を持ったようです。 雑誌社の人と間違われてしまいました。
昼食を終えて再び出発。 田貫き湖の西岸から一般道に出るはずなのですが、西岸から南岸はファミリーキャンプ場として整備されており、一般道に出るための門はすべて閉ざされかぎがかけられていました。 門を越えることも出来ず、柵も乗り越えられず、結局東口のゲートまで回って一般道に出ました。 ここでも、やはり地図のとおりには歩けません。先行き不安が募りました。

4.文字どおりの単独行

一般道を進むと天子の森キャンプ場に出てきます。この辺りはとても整備されたきれいなキャンプ場で、ファミリーキャンプにはもってこいでしょう。 最も僕には縁がありませんが。
天子の森の先のカラオケ屋さんを曲がり(こんなところのカラオケ屋に客がくるのかと疑問を持ちながら)未舗装道に入ります。 すぐに突き当たり再び舗装道に出ました。 天子が岳登山口でバイパスコースは二手に分かれます。 一つは白糸の滝方面へ行く盲腸線、もう一つがずっと南下を続ける本線です。 時間があれば白糸の滝方面へ寄り道することも考えていたのですが、ここまで「道がない!」問題で時間をかなりロスしていますので、本線を突き進むことにしました。 この時既に2:00。
一路山に向かって歩き、オートキャンプ場を越えて、人も車も全く通らない林道に入っていきます。 天子の森を過ぎてから誰ともすれ違っていません。まさに単独行の様相を帯びてきました。
川を見下ろす道端で休憩。靴を脱いで、せせらぎに耳を傾けながら、空を見上げます。時折風が頬をなでていきます。 ううむ、自然の中に居るのだなぁ、と柄にもないことを思いました。
林道を抜けると大倉川ダムに出ました。このダムは調整池の意味合いが強いようで、ダムが見えるのを除けば普通の川とたいして変わりありません。 途中で右にそれ、桜の花の咲く所から坂林林道に入ります。 そのまま歩いていこうかと思ったのですが、林道入り口にあった桜が美しかったので、思い直して入り口に戻り、富士と桜をバックに写真を撮りました。
坂林林道を歩き始めて10分ほどで上下の分岐点にきました。 坂林の集落に至るには林道から下らなければならないのですが、地図から判断するにまだ下り道が現れるには早かろうと判断し、コンクリート敷きの下の道を横目で見ながら上の道を行きました。 少しづつ高度を上げそろそろくだり道が出てきてもよさそうだと思いながら、一つ、また一つとカーブをクリアしていきました。 30分ほど歩いて、なんかおかしいと思い始め、地図を広げて、木立の隙間から周囲の地形を伺います。 どうも稲子へ至る林道を突き進んでいるようです。 やはり先ほどの分岐は下りを選択するべきだったのです。 仕方なく、先ほどの分岐まで戻ります。 明るいうちに上柚野まで着けるか、不安になりますが、死ななきゃいいやぁと勤めて明るく考えます。
分岐に戻ったのは4:00過ぎ。下り始めると看板とトイレが見えてきました。 その看板は、何と東海自然歩道バイパスルートの看板! バイパスルートの看板が立っているなんて、思いもしませんでした。 貴重なこの看板をバックに写真を撮り、しばらく下るとハイキングにきたと思われる家族連れがお茶の最中でした。 挨拶ついでに道を伺います。
集落の外れを通って、大倉川を渡り、畑を横目で見ながら舗装路をまっすぐに進みます。 その後は順調に、千芝寺、観音橋、大倉橋と進み、5時過ぎに当面の目標であった上柚野の交差点に出ました。

5.オアシス発見!


小田貫湿原で出会ったご夫婦に伺った所によると、この辺りに酒屋があるはずです。 取り敢えずはバス停で荷を下ろし、たばこを吹かしながら周囲を見回すと、ありましたありました。 もう少し道を進んだすぐの所に酒屋が見えました。 もう心はうきうき気分。 早速店に入り込み、ビール、ジュース、つまみを買い込みます。 幕営の夜にこれが有ると無いとでは大違い。 酒屋はまさに現代日本のオアシスです。
この周囲には居酒屋などが無いため、この酒屋は一日の労働を終えた近所の有志の酒盛りの場になっているらしく、レジの周りの椅子にはおじさんが2,3人赤ら顔で座って冗談を飛ばしています。 この店の若奥さんらしき人も笑顔で冗談に答えています。 そんな中、僕は、お勘定を済ませながら、この辺りにテントを張るのにいい場所はないか誰彼なく相談しました。 そうだねぇ、とみんなして考えてくれて、あそこは、ここはと皆でひとしきり議論になりました。 すると、その中の一人のおじさんが、俺の土地ならテントを張っていいぞぅと言ってくださいました。 所有者が許可してくれた土地が一番安心です。 取り敢えず場所を伺って、その近辺まで東海自然歩道を歩くことにしました。
バイパスコースは先ほどの交差点を右折し用水路沿いの細い道をたどります。 この用水路は豊富な水が流れており、とても涼しげです。 用水路沿いの道を延命寺まで歩き、ここからコースを外れて工場の向かいの角地へ行きます。 どうやらここらしいという空き地で荷を下ろしたのですが、いま一つ確信が持てません。 道行く人に伺って、どうやらここらしいと確信したのでテントを張ることにしました。 テントを張っていると、先ほど酒盛りをしていたうちの一人が車で通りかかり、ここだここだ、とテントを張っている場所が正しいことを教えてくれました。
その夜はちょっと冷えたので、フライシートを閉じて、テントの前室でリゾットを作りました。 酒をじっくり飲んで就寝。いい気分で眠りに就くことが出来ました。


6.コースミニガイド

文中にも盛んに出てきたように、バイパスコースは道として未完成な状態です。 標識などは望むべくも有りません。 従って、このコースを歩くには事前に地図によってコースをたどっておく必要があるでしょう。 まず、入手すべきは、静岡県の東海自然歩道パンフレット、国土地理院の2万5千分の1の地図、そして富士宮市役所の提供してくれる情報です。 また、僕は歩き終えてから入手したのですが、芝川町で配布してくれる「Four Stages in Shibakawa 芝川町への旅」という観光パンフレットにも、芝川町内のバイパスルートの簡単な地図がついています。
それぞれ、問い合わせ先は、富士宮市役所経済部商業観光課(0544-22-1155)、芝川町役場経済課(0544-65-1111)です。 各役所の方はバイパスルートについて詳細な情報を持っていないようですが、親身に応対してくれますので、私達としても丁寧な態度で伺いましょう。
さて、コースの解説ですが、まず、猪之頭から田貫湖までの道は本ルートを歩くのが無難です。 富士宮市役場から送って頂いた地図ではバイパスルートは芝川沿いに歩いて田貫湖に至ることになっていましたが、まず不可能でしょう。
田貫湖をほぼ半周して天子の森キャンプ場へ向かう一般道にでるのがバイパスルートの設定ですが、これも田貫湖のキャンプ場が一般道への通路をすべて鎖でふさいでいるために、一旦東口ゲートまで行く必要が有ります。 これを避けるためには、キャンプ場に出る前の田貫湖の一番奥まった所に、本当に小さな流れが有りますので、これをたどって、柵をくぐって一般道へ出ることになるでしょう。
天子の森を過ぎると、バーベキュー・カラオケの看板の出ているフォレスパ天子というお店が有ります。 このお店で右に折れ川を渡ります。
しばらく山道を歩くとすぐにまた舗装道に行き当たります。 ここは左折して南下します。
天子登山口に出てきたら、ここで白糸の滝・佐折方面の盲腸線が分岐します。 盲腸線は左折、本線は右折です(ただし、天子登山口へは入りません)。 半分舗装してあるような道を行くとオートキャンプ場の前を通り、砂利道に入ります。 ここでは二つ目のかどを左折します。 道には軽く轍がついており、小川沿いになります。
真っ直ぐ進むと大倉ダムのダム湖(といっても満水になることはほとんど無いようです)、その西岸を進みます。 ダムまでは至らず右に登る舗装路をあがります。
坂林林道の入り口には看板が有ります。 入り口から歩き始めると程なく分岐に出ます。 登り道は未舗装で、下り道はコンクリート敷きです。 ここは下り道を選択します。 下り始めてすぐにトイレと看板が有りますので、これが見えてくればルートはあっています。
真っ直ぐ進むと三叉路に出ますが、これは直進して、細い道を通って川を渡ります。 畑を横目に、しっかりした車道に出ますので、ここは車道に沿って南下してください。 横に墓地があるほうの道です。ここをまっすぐに行けば観音橋で再び芝川に出会います。
観音橋の手前を右折、後は真っ直ぐ進めば上柚野に至ります。 上柚野ではバス停のある交差点で右折します。但しもうちょっと直進すれば酒屋さんがありますので、アルコールをお求めの方は直進してください。
交差点を右折すると定林寺というお寺に出ます。 このお寺の前を用水路(土井の川・三区用水)が流れていますので、この用水路沿いに南下します。しばらく歩けば延命寺に至ります。
宿泊地としては天子の森キャンプ場のバンガローなどが考えられますが、その他に沿道には民宿などはないようです。 白糸の滝まで行けば宿泊施設があるようですが、詳細は先の富士宮市役所経済部商業観光課へお問い合わせください。
さらに交通機関ですが、猪之頭や白糸の滝までは富士急静岡バス(0544-22-3100)を利用することになります。 しかし、ここから先は適当な交通機関はないようです。正確な情報を知りたい場合は、富士宮市役所か芝川町役場に問い合わせるのが良いでしょう。

上柚野ー芝川へ

ホームへ戻ります