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12.大平から西里・竜爪山を経て牛妻まで

  1. コース概要
  2. 痛い足とさわやかな朝
  3. 最後?の富士
  4. 静岡の春
  5. コースミニガイド

平成9年4月27日(日)

1.コース概要

前日に、大平まできていますので、今日はここからスタートです。
大平の集落には静岡鉄道のバスの車庫があり、朝早くからバス便があるようです。 東海自然歩道はしばらく興津川を下ります。 道から少しそれますが、興津川の支流の河内川を少しさかのぼると河内の大石があります。 この石は安政元年の大地震によって出現した周囲60mの大石で、安産の御利益があるといわれることから別名を安産石といい、清水市指定の天然記念物になっています。
西里の集落の付近で、歩道は興津川に別れを告げ、黒川をさかのぼる竜爪山への道になります。 途中には清水市森林公園があり、木製歩道や吊り橋があり、黒川キャンプ場も併設されています。
黒川キャンプ場を過ぎると林道に入り、穂積神社まで林道に沿って上ります。 穂積神社は、竜爪権現を祭っています。 戦前は武運長久の神様として賑わいましたが、戦後には一時廃虚のように荒れ果てました。 しかし、現在は本殿も再建されて、樹齢数百年の杉の巨木に囲まれて静かにたたずんでいます。
穂積神社を過ぎると竜爪山はすぐです。 竜爪山は、薬師岳・文殊嶽の総称で、静岡市を見下ろす山です。 市街から見ると竜爪山が他の山を圧して一際高くそそり立っています。
竜爪山から若山を経由して安倍川に向かい下りていくと、そこが牛妻です。 安倍川の流域には広く茶畑が広がっています。 今回は約20km9時間の道のりです。

2.痛い足とさわやかな朝

夜中に2回目覚めたような気がします。 防寒はしっかりしたので、寒さは全く無かったのですが、地面が少々傾斜していたので寝る体勢がなかなか決まらなかったようです。 しかし、決まってからは熟睡できたので、翌朝にはほとんど疲れが取れていました。 目覚ましでおきたのですが、朝はどうしても布団が恋しくて、しばらく寝袋の中でごろごろしていました。 エイヤッと寝袋から出たのが5:10。さっそくテントを畳み始めます。 外はちょっぴり寒かったのですが、テントの中は暖かくて幸せでした。
change rute ゆっくり荷をまとめて朝飯を簡単に取りました。 そしてこの時、足の裏がかなり痛いということを自覚しました。 昨日から足に痛みはあったので、豆でも出来たかなと思っていましたが、少々の豆なら大丈夫とたかを括っていました。 それが、今朝明るいもとで改めて足の裏を見ると、両足に大きな水脹れが出来ています。 昨日は、足にかなりの負担をかけていたようです。今日は、ペースダウンして足をいたわりながら歩くことにします。 幸い、昨日頑張ったおかげで、今日の行程には余裕があります。
6:15に再びスタート!興津川に沿って下り始めます。 途中に沢から水を引いた水瓶がありました。丁度いいので、そこで顔を洗います。 気持ちいい!
「うひゃぁー」
と声を出して顔を洗い終えて後ろを振り返ると、垣根の間から2つの顔がこちらを見ていました。 目が合うとニコニコ笑って、
「気持ちいいら」
と声をかけてくれました。向かいの家のおじさんおばさんでした。冷たい水も気持ちいいけれど、2人の笑顔も気持ちいい!
川に沿ってしばらく歩くと竜爪への曲がり角に出ました。この時点で7:30。 この先にどれだけ人家があるかわからないので、曲がり角にあった農協で水をいただくとともにトイレを借りました。 準備万端整ってから、竜爪へ歩き出しました。
本日は日本晴れ、体調は昨日と変わらず、喉が少々荒れていますが、体力は十分です。 ただ、足が痛いのでヒョコヒョコ歩きでペースは遅く、休みも多めに取らねばなりません。 出来れば5時前には牛妻までたどり着きたいものです。
黒川という興津川の支流をどんどんさかのぼっていく途中で、対岸に木道が見え、木道に沿ってたくさんの鯉のぼりが並んで泳いでいます。 もうすぐ節句です。そう言えば、この道沿いにはユニークな名前のところが多く、出会いの広場や、ふれあいの里などがあります。
黒川キャンプ場を過ぎると、再び林道に入ります。 この林道も、やはり東海自然歩道の歩行者以外は通行止めになっていました。 しかし、道はほんの少しだけが未舗装で、後はずっと舗装道が続きます。落石もひどかったのは最初だけで、後はほとんど落ちていません。 ですから、歩きやすい道なのですが、距離が長かった。 途中、コース変更の標識が出ており、元のルートは山道だったのですが、新ルートはずっと林道を歩くことになります。 つまり、ずっと舗装道を歩くことになります。 当初、遥か先に見える高い高い山を見上げて、まさかあれじゃあるまい、と思っていたのですが、ぐいぐい高度を上げて結局そのまさかの高さまできてしまいました。

3.最後?の富士

hozumi shrine 林道に入ってからは誰にも会いませんでした。 もちろん車も通りませんから、道の真ん中で大の字で休憩が取れます。 次の目標の穂積神社も、ウォークガイドやニッチマップには「崩れかかった神社」と書いてあるので、誰もいないだろうと予想していました。 穂積神社への最後の上りはちょっとした山道になりました。 その上りに入ると、上に建物が見えてきました。ああ、休憩小屋があると思ったら、その近くに車が止めてあるのも見えてきました。 神社に着いてみてビックリ!人がたくさんいるのです。 穂積神社は予想に反して現役バリバリの神社で、社殿も立派に再建されており、社務所ではお守りも販売しているし、お茶のサービスもありました。 竜爪山への入り口としてハイカーにも人気のようです。 到着は10:35、まずはお参りをして、今後の道中の安全をお願いします。 次に社務所で朱印を発見。300円也を支払って日記帳に押してもらいます。ついでに御神籤も引きました(中吉)。 それから、居合わせた人に写真を撮ってもらったり、お話をしたり。 さすがに静岡までくると「東海自然歩道を東京から歩いてきている」と話すと「ヘェー、スゴイワネ」ってなことになります。 別に誇示するつもりはないのですが、少し気分がいいのも事実です。
しばらく休憩所で涼んでから、再び出発! 竜爪への上りはきついと本に書いてあったので、覚悟していたのですが、うれしいことにきちんとした階段がついていて実に上りやすい。 鉄製・陶製・木製を織り交ぜて、これまで歩いてきた中で一番いい階段ではないでしょうか。 しかも、振り返るとそこには本当に美しい富士山が目に飛び込んできました。
石老山・菰釣山以来、常に目に優しく、心の安らぎになってきた富士山ですが、もしかしたらこれが東海自然歩道の道中では最後の富士山になるかもしれません。 そう思うと、感慨ひとしおです。しばしば休んでは富士を見つめていました。
竜爪山は薬師岳と文殊嶽の総称です。 穂積神社から上ると、最初のピークは薬師岳です。 上り切ったところで富士をバックに写真を一枚撮り、薬師岳の山頂へ。 山頂にはお昼少し前に到着しました。 ニッチマップでは穂積神社から20分ということになっていましたが、とんでもない。50分かかります。 ここでお昼にしようかと思いましたが、後から着いたおじさんが文殊のほうが眺めがいいといいます。 標識によれば文殊まで500m。ニッチマップでは30分ということですが15分もかからないでしょう。 もう、地図の所用時間は当てにしないことにしているので、迷わず文殊嶽へ足を伸ばし、そこで昼を取ることにしました。

4.静岡の春

Mt.monju 薬師岳から文殊嶽へはゆっくりとしたペースの夫婦ハイカーの後ろにくっついて、いろいろ話しながら歩きます。 昔からご夫婦で頻繁に山歩きをなさっているとのこと。最近はご無沙汰だったので、今日は久しぶりの山歩きだということです。
道の途中では、三保の松原と駿河湾がくっきりと見えました。 東海自然歩道を歩いていて初めて目にする海です。 海は、春の光を受けてキラキラと光り、とてものどかです。
文殊嶽の山頂には15分もかからずに到着。 先ほど文殊嶽のほうが眺めがいいと教えてくれたおじさんの隣に座って、ラーメンの昼ご飯を作ります。 おじさんは竜爪への上り口で買ったというおやきをくれました。ありがたくいただいて頬張ります。疲れた体には甘いものがいい。 おじさんはこれから桜峠は下るそうです。 文殊嶽はおじさんの言うとおり、静岡の市街を見下ろす眺めのいいところで、昼ご飯を取る場所としては最適です。 おじさんが先に発った後、しばらく休んでいたのですが、その間、穂積神社からの上りで抜きつ抜かれつしていたハイカーグループと話をしたり写真を撮ってもらったり。 朝から人気の無いところを独りで歩いている時には思いもよらなかった交流が出来ました。
文殊嶽を出発したのが1:10。ここから急な下りが続きますが、膝や足の豆が痛い僕は超スローペースで下ります。 桜峠への分岐まではとてもいい道が続きましたが、そこから若山へ進むと、あまり歩行者がいないらしくさみしい道になります。 倒木も目立つようになりますが、さすがは静岡県、歩くには全く支障が無いように木をどかしてあります。 思親山からの下りで出会った地元ハイカーの言葉が思い出されます。 こうした道も地元の方々の努力で維持されているのだと思い、感謝しながら下りました。
下り始めて2時間半ほどして、急に視界が開けました。 茶畑に出たのです。 急斜面に鮮やかな新緑をつけた茶畑が続き、眼下には安倍川が見下ろせます。 コースは、その茶畑の間を通るようになっています。 このような素敵な道を歩けるのかと思うと、心からうれしくなってしまいました。
今日のゴールである牛妻はもうすぐ。 痛い足を引き摺ってヒョコヒョコ歩きます。 茶畑で作業中の方や、歩いているおばあちゃんに声をかけられます。 山では富士がきれいに見えましたと言うと、そりゃ良かったと笑顔を返してくれます。
4:00に牛妻坂下のバス停に到着。 何とかゴールに辿り着きました。 4:15のバスに乗り、静岡駅へ向かいました。車中ではもちろん爆睡でした。

5.コースミニガイド

大平地区への交通は静岡鉄道(株)(054-254-5125)へお問い合わせください。 大平から、西里までは興津川沿いの舗装道路です。 竜爪山への曲がり角には農協がありますので、目印にしてください。 ここからも舗装道路。結局大平から穂積神社のたもとまで、ずっと舗装道路ということになります。 夏は照り返しがきついでしょうから、夏の歩行にはそれなりの覚悟をしてください。
黒川キャンプ場は小奇麗なところです。利用するには清水市農地森林課へお申し込みください(0543-54-2190)。 文中にもありますが、黒川キャンプ場を過ぎるとすぐに林道に入り、東海自然歩道の歩行者以外は通行止めですが、とても歩きやすい道ですので心配は要りません。 ただ、落石だけはご注意あれ。 この林道でルート変更があります。写真にあるような標識に、旧道である山道は崩壊しているため林道を新道とする旨が書かれています。 距離と時間は少し長くなっているのでしょうが、道は歩きやすくなっていると思います。 また、林道の途中には静岡−糸魚川構造線が露頭している個所もあり、地学的に興味深いものが観察できます。
穂積神社は、文中にもあるとおり、立派な神社です。また、ここから薬師岳への上りも良く整備された階段になっています。 竜爪山への登山は平山という集落から穂積神社へ上ってくるのがポピュラーなコースのようで、ほとんどの方がこのルートを通ります。 薬師岳への上りの階段には、所々に富士が真正面に見えるように切り株のベンチが設けられています。 富士山が見える日には、ぜひこのベンチで休憩をして富士の姿を愛でてください。
穂積神社から薬師岳・文殊嶽への所用時間は地図によりさまざまですが、僕の歩行では穂積神社-薬師岳50分、薬師岳-文殊嶽15分です。 僕は足が痛かったこともありますので、快調に行けばもっと速く着くでしょう。
さて、東京に戻ってから伺った話ですが、文殊嶽の山頂を示す標識の少し脇にポストのようなものがあり、登山者のための書き込み帳があるとの事です。私は気づかずに下山してきてしまいましたが、登山の記録を残したい方は書き込みをしてくるとよいでしょう。
文殊嶽から牛妻までの道も特に問題はありません。標識もしっかりしているので迷うことも無いでしょう。 ただ、この道は昨秋の台風でかなり荒らされた個所らしく、今後も台風などの自然災害で荒れる可能性はあります。 もっとも、この可能性は自然歩道全体について言えますが。
牛妻から静岡市街への交通は静岡鉄道(株)(054-254-5125)のバス便になります。 結構頻繁に出ていますので、さほど心配は要らないでしょう。 牛妻に宿泊施設があるかどうかわかりませんが、どうせ泊まるなら油山温泉まで足を伸ばしたほうが良いでしょう。 油山温泉には温泉旅館が3軒あるそうです。詳細は静岡市観光課へお問い合わせください(054-254-2111)。

牛妻−坂本へ

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