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in wood

13.牛妻から栗島・大山を経て坂本まで

  1. コース概要
  2. 初夏を告げる鳥
  3. MTB野郎参上!
  4. 幕営地を得る喜び
  5. コースミニガイド

平成9年6月7日(土)

1.コース概要

前回は、安倍川のほとり、牛妻まできていますので、今回はここからスタートです。
牛妻といっても、バス停の正確な名前は牛妻坂下で、新静岡駅・静岡駅から静岡鉄道のバス便が結構頻繁にあるようです。
東海自然歩道は曙橋で安倍川をわたり、油山温泉を目指します。 油山温泉は、その昔今川氏親の奥方であった寿桂尼が湯治をしたところとして知られています。
油山から相沢、栗島を経て谷沢から林道に入ります。 コースから少し外れますが、谷沢から奥長島へ向かう車道の途中に、天明元年(1781年)に建碑された芭蕉の句碑があります。
「駿河路や はなたちばなも 茶のにほひ」
この足久保川の流域は、日本のお茶発祥の地といわれます。 現在の静岡市の地に生まれた高僧聖・一国師が宗の国に留学して帰国の際、茶種を持ちかえり、足久保川流域に蒔いたといわれます。 茶を宗の国から持ち帰ったのは高名な栄西禅師だという説もありますが、ここでは一国師ということにしておきましょう。
谷沢から水見色峠・大山と登ります。大山はNTTの中継所となっており、大きなパラボラアンテナが立っているので遠くからもそれと分かります。
大山からNTTの整備した林道を下ると、一色を経て坂本に着きます。 今回は約24km9時間の道のりです。

2.初夏を告げる鳥

さてさて、前回から一月以上のブランクがありました。 いと麗しき五月に、新緑の美しい茶畑の間を歩きたかったのはヤマヤマですが、仕事がそれを許してはくれませんでした。 結局五月はGWも含めて休みなし。 やっと一息ついたら、もう梅雨の気配が目も前までやってきていました。 梅雨入り前にもう一回歩きたいという願いが通じてか、週末の天気は何とか持ちそうという予報でした。 そこで、6月に入って最初の土曜日に再び重いリュックを背負ったわけです。
例によって例のごとく、品川発4:35の東海道線の始発列車に乗り込み、爆睡のうちに沼津で乗り換え、7:35に静岡駅に到着しました。 静岡鉄道のバス停は駅前、8:00前には牛妻方面行きのバスがきて、乗車しました。
本日は、快晴とはいきませんが、昨日の豪雨が去って、しばらくは天気が持ちそうです。 梅雨入り前ですから、お天気に関しては贅沢は言えません。
Resoret Hotel In Aizawa 牛妻には、8:30着。 早速荷物を背負って歩き始めました。 車中では、ズーッと寝てきたので、用意してきたにもかかわらず朝食を食べていません。 早めに食べようと思いながら、曙橋にさしかかりました。
曙橋で安倍川をわたります。 川面を渡る風が気持ちいい! その川面を盛んに行き交う鳥が見えます。 ツバメです。 そう、季節はもう初夏なのです。 曙橋を渡ったところで、土手におり、階段に腰を下ろして朝食にします。 川面を渡る朝の風を受けながら、鋭角的に飛び交うツバメを眺めながらの朝食もいいものです。
9:00前には再び歩き始めます。油山温泉の道すがら、田植えを終えたばかりの水田が水をたたえています。 油山温泉には9:30着。ここからは山道に入ります。
ガイドブックには、この山道は茶畑の中を通ると書いてありますが、現在は林と薮の中の路。 途中の開けた場所では、お茶の木がありますが、栽培されている様子はなく、荒れ果てた茶畑という感じです。 歩道は、廃屋の軒下を通り、モノレールをまたいで、橋を渡ります。 このあたり、かつて茶畑であった名残です。
油山温泉から30分ほどでピークに立ちました。油山温泉より1.2kmの地点です。
実は、このルート、前回の歩行で、竜爪山から下山して茶畑に出てきたところに「通行止め」とハッキリと書いてあった区間です。 しかし、A沢貯水池の近辺であった野村さんや(野村さんはこの春−平成9年−に東海自然歩道を完歩されました、パチパチパチ!)、このページを見て連絡をくださった同好の志から、しっかり通れるという話を聞いていましたので、不安はありませんでした。 今のところ、通行止めになるような道が崩れた場所はありません。しかし、ピークを越えてすぐに崩壊地が現れました。 なあるほど、こりゃあちょっとひどいけれど、静岡県はきちんと直している。エライ、エライ!
このあたりには、鶴糸の滝という名の滝があるはずですが、どうやら崩壊で無くなった様子です。 単に僕が見落としていただけかもしれませんが。
山道を抜けると、そこには場違いなリゾートホテルがありました。 山道を抜けたところに相沢温泉という温泉があるはずですが、どうやらこのリゾートホテルがそれのようです。 ホテルの入り口には案内板があり、写真を一枚撮りました。

3.MTB野郎参上!

相沢温泉から、舗装路を歩くとすぐに栗島の集落です。 ここを過ぎるとすぐに水見色峠から大山へと続く上りの入ります。 この辺りで水を詰めておきたいものです。 足久保川を渡る相沢橋の上で、若い家族連れを発見! 早速、水を補給したい旨を伝えると、湧き水を教えてくれました。 犬小屋の近くにあるその湧き水で、犬と、家族連れの赤ちゃんに見守られてペットボトルに水を詰めました。
栗島から足久保川を少しさかのぼると、谷沢の集落に入ります。
このページを見て、メールをくださる方が沢山いらっしゃいます。 その中で、やはり東海自然歩道の踏破を目指している同好の志から、谷沢から水見色峠への入り口がわからずに迷ったという話を伺いました。 そこで、僕は谷沢で人に出会うたびに道を尋ねました。 ゲートボールに興じていたおじいちゃんやおばあちゃんも、茶畑のモノレールに乗っていたおじちゃんもおばちゃんも、焚き火をしていたあんちゃんも、皆「2つ目の橋を越えたら登り口がある」と口を揃えたようにいいました。 そこで、谷沢から林道に入って二つ目の橋を目指しました。
二つ目の橋という目標は、分かりやすいと思いました。しかし、川筋は細く、そこに両側の山からいく筋もの細い流れが集まってきます。 道は川に沿って続いているわけですが、川に注ぐ細い流れをまたぐ小さな橋をカウントしたものかどうか迷いました。 とりあえず、小さな橋もカウントするということにして、2つ目の小さな橋の脇から細い道が出ていたので、そこに入っていきました。 しかし、どうも道がヤワで、人が歩いた形跡もほとんどありません。 滑りそうになりながらも何とか10分ほど歩くと、先の道が無くなってしまいました。結局ここはルートではないという結論に達し、また橋まで戻ってきました。
MTB riders しかし、二つ目の大きな橋を渡ってもそれらしい道が出てきません。 道の両側には茶畑が広がるだけで、人影も見当たりません。 間違い覚悟で、どんどん道を進むと東海自然歩道の案内板がありました。 そして、案内板と道を挟んで向かいから、水見色峠へ向かう山道が出ていました。 道には、足久保青年会が標識を出してくれていて、間違い無いという確信が持てました。 この時点で、すでにお昼時。山道に入る前に昼食のラーメンを摂りました。
山道に入ると、道はすぐ尾根に出て、また尾根の片側の木が伐採されていたので、茶畑を見下ろすことが出来、しかも遠くに目指す大山の頂上が見えました。 大山の頂上にはNTTのアンテナが立っているのですぐに分かります。
再び林の中に分け入り、少し歩くと水見色峠に到着です。時刻は1:15。 この峠は木立に囲まれており、少し暗いけれど静かなところです。 ベンチがあるので休憩を取りました。鳥の声だけが時折聞こえる静かな中で休んでいると、朝まで東京の喧騒の中にいたのが嘘のようです。 と、遠くに何やら声らしき音がします。 林業の作業中の人の声かなとも思いました。 その声が徐々に近づいてきます。 と、突然「ザザッ!!」という大きな物音とともに、大山方面の道から大きな物体が飛び出てきました。 思わず「オオウッ!!」と声が出てしまいました。
現れたのは、MTBにのった若者。 しかも、次々と5人も現れました。 こんな山道をよくも自転車なんかで走ってきたものです。 話をすると、名古屋からきたとのことで、何かの雑誌で大山から水見色の集落へMTBで下りるという記事を読んで、俺達もということでやってきたそうです。 途中、何度か転び、自転車から放り出されながらも下りてきたとのこと。 話を聞いていると怖そうですが、彼らの顔は生き生きしていました。 東海自然歩道を歩いているんだという話をすると、凄いですねぇと驚いていました。お互い様です。 写真を撮ってお互いの安全を祈りつつ別れました。
水見色峠から大山までの道は、途中まで見晴らしの良い道が続きました。 尾根伝いの道なのですが、片側が伐採されており、見晴らしはいいし、あちこちにある切り株が「休んでいきなさい」と誘いをかけてきます。 しかし、「大山までの道はきついですよ」とMTB野郎に言われたとおり、林に入ると上り一辺倒の厳しい道になりました。 所々に轍がついており、MTBでこの道を下ってきたことがわかります。 よくもまあ、こんな道を自転車で下ってきたものです。感服しました。 肩に食い込むリュックの重みを感じながら、次のピークまで頑張ろう、この次のピークまで頑張ろうと疲労いっぱいの足を引き摺りあげます。 ところがなかなかピークがきません。 「チクショウ、負けるか、ボケ、カス、アホンダラ、てやんでぇ、馬鹿やろめ!」と訳の分からないことを叫びながらひたすら上を目指すと、ぽっかりと鉄塔が現れました。 3:00丁度、大山山頂に到達しました。

top of Mt.oyama 4.幕営地を得る喜び

大山山頂は、話に聞いていたとおり、見晴らしの良いところでした。 遠くの景色は霞んでいますが、静岡市街から駿河湾までが一望のもとに見えました。 霞んでいなければ、富士山や南アルプス連峰も見えるということですが、残念なことにそこまでは見えませんでした。 ここまで登れば、今日の登りはおしまい。後はひたすら下るだけです。 大山山頂で20分ほど休んで(それでも休み足りないほどへばっていました)、今日の幕営地を求めて下り始めました。
大山山頂までは、NTTが舗装した林道を整備しています。 これは、車で山頂までこれるようにということなのでしょうが、その代わり道がいろは坂のように蛇行して、歩行距離の割には高度が下がりません。 磁石を見ると、東に向かって進んだりして(本当は西に進みたい)なんともいらいらする道です。 それでも、通行止めになるような道よりはましだと思って進みます。 大山は前述のとおり見晴らしの良い山なのですが、人の気配がまったくありませんでした。 こんな道があって、その先にはドライブには最適な見晴らしの良いスポットがあるのに、不思議なことです。 その疑問も、一色の集落の近くにまで下りてきてわかりました。 林道の入り口には、硬く鉄門が閉ざしてあったのです。NTTの関係者以外は立ち入り出来ないというわけです。 また、ウォークガイドによればこの林道の道沿いにはワサビ田が続くと書いてありましたが、それらしきものは一個所でしか見かけませんでした。
一色の集落を過ぎ、そろそろ幕営地を見つけなければなりません。 途中、茶畑での作業を終えたおじさんおばさんに湧き水のありかを教えていただき、水の補給をしました。
「今夜はどこに泊まる?」
「適当な場所を見つけて、テントを張って寝ます。」
「テントを張ってかね。そりゃあ大変だねぇ。いつもそんなことをやっているのか?」
My Sweet Home と、おじさんやおばさんが驚いていたところを見るとこの辺りでテントを張って泊まる人はほとんどいないようです。 しばらく川沿いに下りながら適当な河原はないかときょろきょろしている僕の目に、こざっぱりした公園が飛び込んできました。 公園の脇にチョロチョロときれいで人工的な小川が流れているところを見ると、親水公園のようです。 公園の中には東屋もあって、幕営には最適! しかし、周囲に人家があるので気兼ねしてしまいます。 でも、ここで気兼ねをしていたら、せっかくの場所をみすみす放棄することになってしまうので、ここは一丁お伺いを立ててみることにしました。 まずは、公園の向かいの家にいって声をかけてみました。 中からは誰も出てこなかったのですが、その代わりうまいタイミングで家のご主人が車で帰ってきました。 この公園で幕営しても良いものだろうかと聞くと、
「ここでテント張って泊まるのか?そんなやつ今まで見たこと無いなぁ。もちろんいいけどさ、本当にこんなところで泊まるのかい?」
と、何とか了承してもらえた様子です。
「周りの家にも俺が言っておいてやるよ。でも、明日の朝7時から、ここいらの家でこの公園の草取りをするんだ。それまでに引き払うことが出来るかい?」
もちろんです。翌朝は、早起きして出来るだけ距離を稼ぐつもりです。 何とか、公園で泊まることが出来そうなので、早速テントを張って幕営の準備をします。 すると、小さい男の子が3人こちらに近づいて興味深そうに幕営の様子を見ています。
「こんちは!」
と声をかけると、近寄ってきてテントやらコンロやらを興味深そうに見ています。
「こんなかで泊まるの?」
「そうだよ。」
「怖くない?」
「怖くないさ。」
一番小さな男の子が、テントの中に入り込み御満悦です。
「何か、面白そうだね。」
「君も大きくなったらやってみるといいよ。」
「でも、おらまだ保育園だぁ!」
そう言い残して子供たちは向かいの家に消えていきました。
その夜は、ベンチがあったこともあって快適な夕食時をすごせました。 タイガースが勝ったとラジオで聞いて、安らかな眠りに就きました。

5.コースミニガイド

静岡駅から牛妻への交通は静岡鉄道(株)(054-254-5125)のバス便になります。 駅の北口から結構頻繁に出ていますので、さほど心配は要らないでしょう。
牛妻から曙橋で安倍川を渡ります。道はそのまま真っ直ぐですが、曙橋を渡るとぐっと狭い道になります。
油山温泉から相沢方面へ抜ける山道は、薮の中。長ズボンが良いでしょう。 山道に標識はほとんどありませんが、開けたところに廃屋が見えてきたら大丈夫。 廃屋の軒下を通って道は続いています。
ピークから相沢方面までの間に、通行止めになっていた区間があります。 しかし、文中にもあるとおり、しっかりと補修がされていますので心配は無用です。
栗島、谷沢と道に迷うことはないでしょう。 谷沢ではゲートボール場を過ぎるとすぐに林道への曲がり角があります。 朽ち果てた標識が健気にルートを示していますので、見落とさないように。
林道はすぐに高山方面と水見色峠方面とに別れます。 水見色峠方面の林道に入ると人影はほとんどなくなりますが、山道への入り口には案内板が立っていますので、これを目印にすると良いでしょう。 案内板の道を挟んで向かいから水見色峠へ向かう山道が始まっています。
水見色峠から大山まではとてもきつい道です。覚悟を決めて登りましょう。 その代わり大山の頂上からの眺望は見事です。
大山から坂本まで、道に迷うことはまずないでしょう。 標識が少ないので不安になることもあるでしょうが、大山の山頂付近の分かれ道でしっかり道を確認すれば大丈夫です。
この付近の交通としては、栗島から静岡駅に至るバス便と、坂本からもう少し歩を進めた寺島から静岡駅に至るバス便とがあります。 両方とも静岡鉄道(株)(054-254-5125)です。 宿泊は、栗島付近に旅館が一軒あるという話ですが、詳しいことはわかりません。静岡市観光課(054-254-2111)にお問い合わせください。

坂本−蔵田へ

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