丹沢山地に分け入り3日目です。
前回は城が尾峠で力尽きたので、今回は城が尾峠−菰釣山−西の丸−高指山−平野という行程です。
さて、先ずは城が尾峠からですが、ここにも一応水場の表示はあります。
しかし、実際には峠から道志川方面へ20分ほど下らなければたどり着かないようです。
ですから、前回かいたとおり鬼石沢から山中湖畔まで水場はないと考えたほうがよいでしょう。
菰釣山の手前には避難小屋があります。ここを過ぎれば菰釣山まではすぐです。
菰釣山からは富士・山中湖方面に眺望が開けます。
菰釣山を過ぎると道は尾根を伝っていくつもの山を越えるアップダウンの道になります。
山神の峰では山伏峠へ降りる道が別れています。ここを降りれば車道にすぐに出られます。
万が一の時のため知っておいたほうがよいルートです。
高指山の周辺は公園になっていて行楽にもよいところです。
高指山はススキに覆われた山で富士と山中湖が迫力をもって迫ってきます。
高指山から平野へは別荘地やテニスコートの間を抜ける道で、山男には似つかわしくない地帯です。
と同時に下界に戻ってきたことが実感できる地帯でもあります。
平野は山中湖のすぐほとり。
バス停の前にはコンビニエンスストアがあり、コンビニエンスストアの裏に観光案内センターと公衆トイレもあります。
平野からのバス便は富士吉田駅へ出るものと新宿へ出るものがあります。
詳細は富士急行へお問い合わせください(0544-22-3100・03-3376-1111)。
今回は約13km5時間弱の道のりです。
朝の5時、日の出とともに目覚める。
わしらにとっては奇跡的な出来事である。
未だかつてこんなに早起きした幕営があったであろうか。
わしらの幕営の朝は他のテントが全てなくなってから始まるのが常だったのだ。
昨日「明朝は絶対早起きするんだかんね!寝坊したらアカン!」と念を押しておいたのがよかったのかもしれない。
テントから顔を出すと、お隣のおっさんは早くもツェルトを畳んでいた。
日の出がまぶしい!わしらも早速テントを畳んでご来光を眺めながら朝飯を食う。
これが山の生活だよな、本当は。
おっさんは一足先に出発、わしらも朝のお勤めを終えて6:15に出発。
昨日とは打って変わっていいペース!
ちょっと草ぼうぼうの地帯があったが、あとは軽いアップダウンの続くまずまずの道になる。
耳を澄ますと、キツツキからウグイスからホトトギスまで様々な鳥が賑やかに間断なくさえずっている。朝の山は気持ちいい。
途中に3度ほど休憩をはさんで、中の丸を抜けて菰釣山の避難小屋も抜ける。
そして、8時に菰釣山に到着!
ここで、感動的に美しい富士山と山中湖を見る。
大きな雄姿を惜し気もなくさらす富士山と、それを映す山中湖は、長い行程のはてにやっとお目にかかったものだけに、わしらの胸にえもいわれぬ感動を呼び起こした。
わしらは思わずいろんな角度からバチバチ写真を撮ったのだ。
こういうことって、ありますね。
何や知らん、衝き動かされるように写真をバチバチ撮ってしまうことって。
それで、後で出来上がった写真を見てもあの時の感動ほどではなく、何枚も焼きあがった写真を前にフィルムと現像代の無駄を嘆くのだ。
しかし、この時は本当に富士山が美しいと思ったし、やっぱり日本一の山だと再認識したのだ。
山頂からは先を行く昨夜のおっさんの姿が見え、大声を出して手を振った(もちろんおっさんも応えてくれた)。
わしらは、水を飲み煙草を吸いながら、飽くことなく富士と山中湖の絶景を見続けていた。
随分と長いこと富士と山中湖を眺めてから、いよいよラストスパート。
目指すは高指山。ゴールは見えた。
菰釣山からは結構なアップダウンが続く。
一つや二つならたいした事ないのだが、いくつもいくつも続いてくるとジャブをたくさん受けているように段々グロッキーになってくる。
佐々木君と二人、「何でわざわざ山頂を経由する道をひくんやろか?」と話し合う。
ちょっと迂回すれば山頂を巻いていけるのに、道はキッチリ山頂を通るのだ。
わしは、神の川以来右膝に痛みを感じているので、下りが特に堪える。
そんなこんなで、西の丸をあえぎながら通過する。
しかし、道がほぼまっすぐなのが幸いしてか、予定通りに距離が伸びているようである。
高架線の下をくぐり、山神の峰を越えれば高指山はもうすぐ。
大棚の頭ではようやく道が山頂を巻いてくれた。
山頂へと別れる分岐点でリンゴをほおばる。昼には町でご飯が食べれるはずだ。
大棚の頭を過ぎると公園のような敷地内に入ってくる。
ここから高指山まで、公園のようになっているのだ。
目標の高指山はもうすぐのはずだが、目の前の山がそうなのか、今一つはっきりしない。
今登っている山が高指山でありますようにと念じながら登ってみると、何の標識も立っていない。
ウーム、ここではなくもう一つ先の山のようだということで、次の山を目指す。
すすき野原の中を抜ける道をとおり、次なる山へ。
山頂に付くと、あったあったありました。
高指山の標識が。
ここまで来れば丹沢は越えたも同然。
長く、苦しい道のりであった。
佐々木君と思わずがっちりと握手する。
本当にありがとう。
そして、例の如く写真を撮る。
富士をバックに、標識をバックに、それぞれ写真を撮り合う。
時間は午前11時近く。
澄んだ空気の中で目の前の富士は山中湖にその姿を写して圧倒的な迫力で我々に迫っていた。
さあて、感動三連発の最後を締めるのは熱海食堂であります。
高指山まで踏破した我々は、いよいよ人里に下りはじめた。
その前に、わしは例によって高指山から少し下った所にあったベンチの上でジーンズに履き替える。
それを見て佐々木君はブーブー文句をたれる。
かれは、きちんとした山男なので、行きも帰りも山中もおんなじズボンなのだ。
それゆえ、わしだけ一応人里の服であるジーンズに履き替える事につき文句をたれたわけだ。
べつにわしが全く色気の無い着替えをしていたから文句をたれたわけではない。
さて、高指山を下ると別荘地に入る。
この時期、別荘地に来ている人はほとんどいないらしく、どの家も雨戸を閉じている。
どこかで水道を借りて手や顔を洗いたいのだが、これでは借りる事もままならない。
しばらく歩くとテニスコートが現れた。
人気は全く無いのだが、コートの脇に水道が出ていた。
蛇口をひねると水が出る。
そこで、手と顔と頭を洗う。
ようやく生き返った感じで、一心地ついた。
又しばらく歩くと、テニスコートが多くなる。
そしてコートでは、大学のサークルの合宿なのであろう、若い男女が黄色い声を上げながら黄色いボールを追っていた。
白いテニスウェアの間を埃にまみれたわしらがでっかいリュックをしょって歩いていく。
わしら自身も”浮いている”ことをひしひしと感じる。
どうもこの辺りの感じは山からの下り路としては良くないなあ。
途中で、自動販売機を見つけたので、早速ジュースを買ってゴクゴク!
うーん、人里の味がする(昨夜も飲んでいるんだけどね)。
平野に出るとそこは山中湖畔。
湖周道路は渋滞していた。なかなかの人出で、先ほどまで人気の無い所にいたのが嘘みたいだ。
バス停でしばらくバス待ち。この間にわしは葉書をしたためる。
30分ほど待った後、富士急バスで富士吉田へ。
既に午後の1時を過ぎている。今朝は思い切り早かったのでハラぺコである。
電車の時刻だけチェックして駅周辺で食堂を探す。
すると雰囲気のよさそうな(いかにも”食堂”という感じの)食堂が駅前広場から見えた。
その名も「熱海食堂」。
ここで、ビールとカツ丼を食す。
まずは健闘をたたえあい、乾杯の後ビールを流し込む。クゥーッ!沁みるねぇ。
そして、出来立てのホカホカカツ丼が出てくる。
これがデカイ!富士山にも負けない圧倒的なボリュームで我々に迫ってくる。
立ち昇る醤油とみりんと酒の入り交じった匂いが我々の鼻孔を擽る。
たまらずに箸をつけると、舌がとろけるように旨い!
こんなに感動をしているのはわしだけかと思い佐々木君を見ると彼も今にもとろけそうな眼をしてカツ丼を食べている。
念のため聞いてみると、彼も感動の極致にあるようだ。
ああ、何という幸せ。
あったかーい味噌汁とパリパリの御新香とともに我々は幸せのいっぱい詰まったカツ丼をワシワシと食べたのだ。
富士吉田は、2:41発の列車で発つ。家に帰り着いたのは夕方であった。
城が尾峠は一寸した広場がありテントなら5張くらいいけそうです。
幕営するには好適地といえるのではないでしょうか。
菰釣山の手前には避難小屋がありますが、通り掛りに見たところでは結構混み合うようです。
ほかのパーティーを気にしないで自由にやりたいのなら幕営の方がいいかもしれません。
城が尾峠から菰釣山まではまずまずのアップダウンで気軽ではないがしんどくもない程度です。
あまり賑やかなルートではないため草ぼうぼうかと思いきや、それほどでもありません(一部は草ぼうぼうです)。
ただし、我々の歩いた時期が4月の下旬だったということもあると思います。
夏以降に歩く方はご注意あれ。
菰釣山からは尾根伝いの一本道。
本文中にもあるとおり、かなりアップダウンのある道です。
それを除けば問題無く、富士が徐々に近づいてくるため進んでいる事を実感できます。
高指山は、おんなじ様な山が手前にもあるのでお間違えの無いよう。
頂上には高指山である旨の標識があります。
本文では高指山から平野へ至る道を詳しく書いていませんが、自然歩道は湖畔には出ずに太い車道を途中で脇にそれ、そのまま平尾山に登る道に入ります。
平野は山中湖畔東側の交通の要衝で、新宿の高速バスターミナルから京王バス(03-5376-2222)と富士急バス(富士急バスのサイト)が、富士吉田から富士急バスがでています。