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 小中学生のための超心理学入門 1


生まれ変わり

 「おれが死んだらおまえの息子として生まれ変わる」 アラスカに住むトリンギット族の老漁師ビクター・ビンセントは、めいに向かって言った。そして、小さな手術のあとを見せながら、同じ場所にあざがあるはずだからすぐに見分けがつくはずだという予言を残し、1946年に死亡した。

 1年半ほどたって、そのめいに男の子が生まれた。その子どもコーリス・チョトキン・ジュニアには、大伯父のビクター・ビンセントが見せてくれた手術のあとと瓜ふたつのあざが生まれつきあった。手術のあとが治ったときのように少し盛り上がっており、両側に、糸の通ったあとのようなものまで並んでいた。

 コーリスが1歳1ヵ月になったとき、母親が名前を言わせようとしたところ、怒ったように「ぼくが誰か知ってるよね。カーコディだよ」と言った。それは、ビクターの別名だった。他にもコーリスは、2、3歳のころ、ビクターの未亡人をはじめ、何人かを自分から見分けたり、ビクターが生きていた間に起こった出来事を言い当てたりしたうえ、髪のとかし方がよく似ていたほか、どもるくせがあり、船に乗ることを好み、宗教心が強く、左利きだった。そのうえコーリスは、小さいころから発動機に興味を持ち、その操作や修理の技術も持っていた。コーリスはそれを、誰からも教わらず、独学で習得したのだ。

 以上は、アメリカの有名な精神科教授が厳密に調査した“前世”の記憶を持つ子どもの一例だ。スティーブンソンというこの教授は、世界中からこのような記憶を持つ子どもの実例をこれまで2000例以上集めて研究している。

 この例ではまず、“前世の人物”が生まれ変わりの予言をしている。そして、その予言通りに生まれてきた子どもには、前世の人物の特徴がいくつか出現する。また、前世時代の記憶も残しているうえに、どうやら技術もそのまま保持しているように見える。

 この例を調査したスティーブンソンは、いろいろな可能性を丹念に検討した末、本当に生まれ変わりが起こったと考えるのが一番当っているのではないかという。本当にこのようなことが起こるのだろうか。

 ミャンマーのある女性は、子どもがおなかにいるとき、上半身が裸で半ズボン姿の日本兵が自分のあとを追い回し、おまえたち夫婦のところで暮らす、といっている夢を何回か見た。1953年、その女性の子どもとして生まれたマ・ティン・アウン・ミヨという少女は、3、4歳のころ、村に飛んできた飛行機を見て「撃たれる」といって泣き叫んだ。少し後、めそめそしていたときに理由を聞かれた少女は、日本に行きたいと答えた。

 その後少しずつ、第二次大戦中その村に進駐していた日本兵だったときの話をするようになった。前世の自分は炊事兵で、村に飛んできた連合軍の飛行機に撃たれて死んだ、というのだ。他にも、北日本の出身で結婚して子どもがいたことや、入隊するまで小さな商店を経営していたらしいことなどを話した。ところが、日本ということ以上に詳しい地名も人名も口にしなかったし、その日本兵の名前も出身地も覚えていなかった。

 マ・ティン・アウン・ミヨは、その一家から見ると変わった行動を示したが、日本兵の行動とは一致していた。ミャンマーの暑さも辛い食べ物も嫌いで、甘いものを好み、魚も半生のまま食べたがった。また、英米人の話が出ると、英米人に対する怒りを表した。

 マ・ティン・アウン・ミヨは、女の子なのに、極端に男性的な態度や好みを示した。小さいころから戦争ごっこやサッカーが好きだったし、男の子の服を着たがり、髪も男児のようにした。小学校からは、女の子にふさわしい服装で登校するよう注意されたが、拒否したため、結局、小学校を退学せざるをえなくなった。

 この女の子の場合には、名前も出身地も所属部隊も覚えていなかったため、前世の人物をつきとめることはできなかった。そのため、前回の例のように、詳しい確認をすることもできていない。とはいえ、スティーブンソン教授の詳しい調査によると、両親の育て方などで、この少女の変わった好みや行動を説明することはできないという。

 このような生まれ変わりが本当だとすると、どういうことが言えるだろうか。現在の科学知識で生まれ変わりを説明することはできないが、それはなぜなのだろうか。生まれ変わるということは、人間の心が肉体の死後も生き残ることを意味するが、では、人間の心とはどういうものなのだろうか。


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