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 著書『なぜあの人は懲りないのか困らないのか
――日常生活の精神病理学』

 本書では、一見すると、人間の悪い側面ばかりが、これでもか、これでもかとばかりに取りあげられる。しかしながら、実は、その裏に見え隠れする、それとは全く逆の人間の本質を浮き彫りにすることこそ、本書が目的としているところである。

 人間は、懲りたり困ったりすることを通じて、つまり反省することを通じて、行動を前向きに矯正することを迫られる。ところが実際には、懲りたり困ったりすることがなく、同じ行動が全く矯正されないまま繰り返される場合も少なくない。約束に必ず遅刻するとか、締め切りまぎわにならないと仕事に着手できないとかの不思議な行動がその一例である。

 本書では、きわめて重要でありながら、しかもほとんどの人たちが身近に観察している事実でありながら、心理学者や精神科医などの専門家によって取りあげられることが、これまで皆無に近かったさまざまな現象に焦点を当て、実例を多数引用しながら、そうした現象の根底にある人間の心の動きを検討し、新しい人間観を提唱するつもりである。また、本書に副次的な目的があるとすれば、それは、いわゆる異常と正常の境界線が、現実にはきわめて不明瞭なものであることを、ある程度にせよ浮かび上がらせることである。(「はじめに」より)

 本書は、私の〈幸福否定理論〉を、さまざまな事例を中心にして、主として自覚の否認および反省の拒絶という角度から眺めたものです。本書の旧版『懲りない・困らない症候群――日常生活の精神病理学』は、おかげさまで好評を博しましたが、第三刷が完売になったまま、しばらく品切れの状態が続いていました。その後、再刊を望む声が数多く寄せられたため、タイトルをより一般受けしそうなものに代え、ソフトカバーで新装版を出しました。営業部主導なので、人ごとのようなタイトルになってしまっていますが、懲りない・困らない症候群とは、特定の人のことではなく、人間全体に遍く見られる本性的傾向のことです。内容は誤植を修正しただけで全く同じですが、最後のページに、その後の理論的進展が簡単に説明されています。出版社は同じ春秋社で、xi + 242ページ、定価は1800円+税です。

 右上の表紙をクリックすると、出版社の当該ページに飛びます。ここに、 の pdf ファイルを掲載しておきましたのでご覧ください。


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