実験 1
実験前の学習
静的モデルと動的モデル :
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ここの実験では、モータ回転速度を定常的に一定の目標値に制御することについて考える。
[作業1(モデリング)]
まず、モータへの入力電圧とモータの定常的な回転速度出力との関係を表わすモデルを作る作業より始めよう。
実験1では、静特性のモデリングを行う。具体的には、一定入力電圧(u(t)=定数、t
:時刻)とその入力に対する定常的な出力(十分時間がたって、過渡的な現象が終わった後の、時間的な変動が見られなくなった状態)であるモータの回転角速度
dθ/dtの関係をモデル化する。そのために、いくつかの一定電圧を入力したときの応答出力である定常な回転速度を計測し、下表のような結果を得る。ただし、θはモータの出力軸の回転角を表す。
入力電圧 [V] | 1.0 | 10 | 20 | 40 |
回転角速度 [rad/sec] | 0.8 | 7.8 | 15.5 | 31.0 |
この実験データより、入力電圧 u と定常的な回転角速度出力 dθ/dt との間には、線形関係にあることが読みとれるので、比例ゲインとオフセットによるモデルで表現し、
dθ/dt = 比例ゲイン×u + オフセット項、 ただし、比例ゲイン= 0.775 、オフセット項=0
を得る。
[作業2(制御設計)]
モータの回転角速度 dθ/dt [rad/s] を目標角速度 r(t)=定数
に一致させるためのには、上のモデルより( 上のモデルの dθ/dt を r(t) で置き換え、u に関して解く)、 制御則
u(t) = 1.29×r(t)
を得る。この制御は、開ループ制御であり、開ループゲイン(モデルの比例ゲインと制御則の比例ゲインの積)は当然 1 である。
つぎは、回転角速度情報をフィードバックして制御する閉ループ制御について考えてみよう。目標角速度
r(t)から回転角速度 dθ/dt を引いた値を e(t) で表すとき、これは制御偏差と呼ばれるものであり、これの定数倍したものを入力電圧する制御は比例制御と呼ばれもので、制御則
u(t) = Kp×e(t)、 ただし、 Kp :比例ゲイン定数
で表される。制御偏差が生じた場合は、すばやく零へ補正されることが望ましいので比例ゲインKp=12.9 (開ループ制御則のゲイン1.29の一桁大きい値) としてみる。
上で求めた開ループ制御系、閉ループ制御系、制御則を両方用いた開ループ+閉ループ制御系、の各々のブロック線図は次である。
(注)開ループ制御と閉ループ制御の区別:閉ループ制御はモータへの操作量 u(t) [V] を算出するのに目標との偏差情報を用いるが、開ループ制御は用いない。
[作業3(性能評価)]
作業2の各制御を別々および両方一緒に用いた場合の定常偏差(目標角速度
r(t)から軸角速度の定常値を引いた値)を求めると次の表のようになる。ただし、
r(t)=1.0 [rad/sec] の場合である。
制御則 |
u(t)=1.29×r(t) |
u(t) = 12.9×e(t) |
u(t)=1.29×r(t)+12.9×e(t) |
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この結果から、開ループ制御、開ループ制御+閉ループ制御、を行った場合は、目標の回転速度を定常的に得られるが、閉ループ制御(ただし、比例制御のみ)だけの場合は、目標の回転速度を得られていない。
(注)閉ループ制御とフィードバック制御はほとんど同じ意味で用いられる。
[作業4(考察)]
さまざまなシステムや対象は、非線形特性を示すものがほとんどである。しかし、非線形システム理論はあまり解明されていない。そこで、非線形系を線形化して扱うことが良く行われる。そうすれば、良く整備された線形システム理論を活用して問題を解き易くできる。作業1のモデリングにおいても、
非常にかける電圧が小さければ静止摩擦により回転は始まらない。また、非常に大きな電圧をかけると銅線が熱で溶けたりする。よって、作業1で求めた線形モデルは、限られた入力電圧の動作範囲でのみ成り立つものである。
計測器で求めた値は、計測器の分解能により計測精度は限定される。したがって、それらのデータを用いて求めたモデルの精度にも限界がある。したがって、このような不確定性をもつモデルを用いても望みの応答をえられる制御系を設計することが望まれる。