いよいよ新年を迎え、本年4月より消費税率の変更をはじめとした改正消費税法が施行されます。
今回の最も大きな改正点は、先述の消費税率の変更と地方消費税の導入でしょう。
すなわち、現行3%の消費税が4%に変更されるとともに消費税額の25%を地方消費税として納付することになるのです。
4%+4%*25%=5%ということで、収める消費税は地方消費税とあわせて5%となるわけです(皆さんも5%になると理解されていると思います)。
さて、この改正に伴いその扱いがどうなるのか注目されていたものがいくつかありました。
その一つに特別地方消費税があります。
特別地方消費税とは、料理店や旅館などを利用するとき課せられる税金です。
料理店等では一人一回の利用料金が7500円を超えるとき、
また、旅館等における一人一泊の料金が15000円を超える場合について3%の税金が課せられます(地方税法113条-115条)。
この特別地方消費税は、平成元年4月の消費税導入時に、それまでの料理飲食等消費税(税率10%、料理2500円以下・宿泊費5000円以下免税)
から移行する形で改正され、現在に至っているという経緯があります。
この特別地方消費税が平成9年4月以降も現行のまま継続されることになると、料理等・宿泊等それぞれの利用料金が7500円・15000円を
超えると8%の消費税が課税されることになり、利用者にとっての負担が大きくなり、それに伴う利用者の減少で関係業界の収益低下が
懸念されます。
観光旅館業者の三団体では、平成8年3月「特別地方消費税は、同じ地方税である地方消費税に吸収し、廃止すべきである」との意見書を関係各機関に
提出して廃止を訴えてきました。
また、厚生省や運輸省もこれを後押しし、廃止の意見をを平成9年度税制改正要望に盛り込んでいました。
一方、観光地を抱える市町村は同税に依存する度合いが大きいため存続を求めていました。
政府与党は、特別地方消費税の問題を平成9年の地方消費税の導入の時期までに抜本的に検討するとしていましたが(平成8年税制改正大綱)
このたび平成9年度自民党税制改正大綱においてその取り扱いが見えてきました。
平成9年度自民党税制改正大綱の特別消費税に対する内容は以下の通りです。
1.地方消費税の創設等に伴い、特別地方消費税については、2000年3月31日をもって廃止する。
2.それまでの間、市町村に対する交付金の交付率を2分の1(現行5分の1)に引き上げる。(H8/12/19日経朝刊)
すなわち、平成12年には特別地方消費税は廃止されるという見通しになったわけです。
また、地方消費税の導入と住民税の減税とあいまって、平成9年度以降、道府県においては増収、市町村においては減収が
見込まれるため、市町村への減収補填の意味合いから税源委譲を行うために交付率の変更が行われます。
特別地方消費税は、本来なら地方消費税の実施と同時に廃止するのが適当と考えられますが、地方自治体の財源が苦しい折、
当面は続けざるを得ないという方向で考えられていたようです。
当初、地方自治体の意向を受けた自治省は2001年に廃止する案を自民党税制調査会に提出したようですが、自民党側は廃止が
遅すぎると判断し、2000年の廃止になったようです。
以下、余談です。 廃止されることは利用者にとっても関係業者にとっても喜ばしいことですが、それまでの3年間は高額の飲食や宿泊については 高い税金を支払わざるを得ないとなると、やはり地方消費税の導入と同時に廃止してもらいたかったというのが本音ではないでしょうか。 地方の財源が苦しいという話も、地方自治体での公金不正流用問題(カラ出張やカラ会議などの問題です)が次々に露になってくると 素直に耳を傾けられないというのが一般納税者の印象ではないでしょうか。皆さんはどのような印象をお持ちですか。
消費税の改正に伴って、この改正に関わる各種の税金の規定が見直されていますが、その中で皆さんに関わり合いの深いものとして
印紙税の関係通達の改正につき見てみましょう。
印紙税は印紙税法の別表第一に掲げる文書につき課されるものです。別表第一には不動産などの譲渡に関する契約書、
消費貸借契約書、運送や請負に関する契約書、手形、株券などの証券などが掲げてあります。
さて、印紙税の課税標準及び税率についても別表一に掲げてあるのですが、課税標準たる課税文書の記載金額の取り扱いについては
平成元年の消費税導入時に問題となりました。すなわち、課税標準は消費税額を含んだ金額で考えるのか否かです。
これについては、「消費税法の施行に伴う印紙税の取り扱いについて」通達(平成元年3月10日付間消3-2)に依ることとされ、具体的には、
第一号文書(不動産の譲渡に関する契約書)、第二号文書(請負に関する契約書)、第十七号文書(金銭または有価証券の受取書)の
三文書については、消費税の金額が区分記載されていることを前提に消費税額を印紙税の課税標準たる記載金額に含めなくてよい
こととされています。
しかし、平成9年4月からの改正消費税においては消費税のほかに地方消費税が加わることから、先述の三文書についても消費税の
金額をどのように区分記載すればよいのか明確な指針が求められていました。
そこで、国税庁は平成8年11月25日付で「『消費税法の施行に伴う印紙税の取り扱いについて』通達の一部改正について」通達を
公表しこの取り扱いを明らかにしました。
今回の改正では、「消費税金額の区分記載」という文言を「消費税及び地方消費税金額の区分記載」に変更しています。これにより、
記載金額として消費税と地方消費税の合計金額を区分記載することにより印紙税上の記載金額から除くことが出来ます。
要するに、@消費税及び地方消費税を意味する文言A消費税及び地方消費税に相当する金額、の二つの要件が明記されていればいいわけです。
たとえば、建物の売買契約書で「契約金額1000万円、消費税及び地方消費税金額50万円」と契約書上に記載されていれば印紙税上の
記載金額は1000万円として考え、1万円を納付すれば(印紙を貼付)いいことになります。「消費税及び地方消費税金額」の代わりに
「消費税等金額」とだけ書いていても、これで消費税及び地方消費税金額を表していると認められることから区分記載として取り扱われる
と考えられます。
ただし、要件@Aのどちらかを欠いて「契約金額1000万円ほか50万円」、「契約金額1050万円、消費税等金額を含む」と書いた場合は
消費税と地方消費税の金額は印紙税上の記載金額に含めて考えられてしまうことが十分予想されますし、「契約金額1050万円、
消費税等5%含む」と書いた場合でもAの要件を満たしていないとして印紙税上の記載金額は1050万円になってしまうおそれがあります。
これは、印紙税法第4条の「課税文書の作成とみなす場合等」も同様ですので注意が必要でしょう。