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平成9年冬税務情報

  1. 連結財務諸表の効果と税制について

  2. 磁気記録による帳簿保存の要望について

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  6. リンク集(Link&Link)

1.連結財務諸表をめぐる状況について(持ち株会社解禁と税制)

@連結財務諸表制度見直しに関する動き
日本の会計原則(正確には企業会計原則)を作成している企業会計審議会(大蔵大臣の諮問機関)は 1月31日に連結決算制度改革に関する委員会を開き、今後の日本の企業会計制度を現在の単独決算重視から 連結決算重視の方向に転換する原案をまとめ、2月7日には 「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書案(公開草案)」をまとめました。 この案によれば、1999年3月決算から順次、連結決算中心への移行が行われることになります。 ただし、この案が拘束をするのは現状では有価証券報告書を作成している企業(主に株式を公開している企業)に限定されます。 しかし、連結決算の影響が株価に反映されることは確実であり、今後の企業決算の流れを変える可能性が大きいと考えられます。 すなわち、子会社や関連会社を持つ企業の評価は連結財務諸表で行うという意識が高まり、株主や銀行を含めた債権者に対する 企業の財務情報提供も連結財務諸表で行うという流れが出てくると予想されます。

A持ち株会社解禁に関する動き
政府与党3党(自民、社民、さきがけ)は、1月23日から持ち株会社解禁に向けて本格的な検討に入りました。また、 公正取引委員会は「事業支配力の過度の集中」を招く場合以外は持ち株会社を認める事を骨子とした独禁法改正案を提出しました。 持ち株会社は、戦後の財閥解体を睨んで独占禁止法の上で全面禁止された制度で、グル−プ会社の株式を一つの持ち株会社 (ホールディングカンパニー)に所有させ、グル−プの経営意志の最高決定権を持ち株会社に委ねるというものです。 しかし、持ち株会社にはさまざまなメリットがあります。
第一に、新事業への参入撤退が比較的容易になることです。これは、M&Aも視野にいれた話になります。
第二に、事業会社では、一つ(あるいは少数)の事業に専業となるため、意思決定が機動的になります。
第三に、各事業に適した組織、内規を作りやすいということです。
このほかにも、創業者一族を安定した地位に就けることができるなど、さまざまなメリットが考えられます。 (もちろん資本の集中などのデメリットもあります。持ち株会社の経営者の手腕一つでグループ全体の浮沈が決まるという怖さもあります)
このようなメリットもあって産業界からは以前から解禁を求める声がありましたし、 ここにきてNTTの分離分割問題やビックバンに備えた制度見直しという要請から再び検討が為されることになったのです。 (2月19日付の新聞各紙によれば内容はほぼ固まったようです)
しかし、持ち株会社の実効を考えた場合に避けられないのが税制の整備です。 現在は各法人ごとに納税をする個別納税方式ですが、持ち株会社制度では個別方式では納税額が多くなってしまいます。 すなわち、利益が出る事業会社からは多くの税金が取られる反面、いまだ利益を生み出さない事業会社は欠損を積み上げていくことになるからです。 一つの会社で多くの事業を抱えている場合には、各事業の損益が通算されるため、納税額が押さえられるのです。
そこで、持ち株会社制度を解禁するなら連結納税制度を導入すべきだというのが、産業界の意見です。 (連合などの労働者サイドからは労使交渉を持ち株会社の役員と子会社の組合との間で行えるように法制度を整備せよとの声が出ています)

B連結納税制度移行への駆け引き 連結納税制度を認めて欲しいと全電通(NTT)がNTT分離分割を前に求めてきました。 分離分割により、分割された各会社により利益にばらつきが出て納税負担が大きくなるとの懸念からです。
しかし、これには財界からの反対意見が相次ぎました。既に株式会社であるNTTにだけ特例を認めるのは不公平であるとの意見です。 これにより、政府はいったん認める方向で合意したNTTの連結納税を撤回し、租税特別措置での対応をしていくとの方針を打ち出しました。 (実質は何ら変わらないと思うのですが)
連結納税を認めるにはまだ難しい問題があります。 まず、納税額が減ることによりただでさえ苦しい国家財政がさらに苦しくなることがあげられます。 さらに、連結納税を行うにはその土壌が整っていないということもあげられるでしょう。 連結財務諸表は上場会社などでは当たり前のことになっていますが、一般にはほとんど浸透していないのが現状だからです。 これは、納税側にも国税側(税務署も含みます)にもいえることです。

以下、私見です。連結納税は当分認められないと考えます。 これは先にあげた連結納税の問題があるからです。 国家財政は立ち直りの兆しが見えてきませんし、連結決算受け入れ土壌の整備にもかなりの時間がかかると予想されます。
しかし、持ち株会社の解禁が実効をあげるためには連結納税への移行は避けられません。 したがって、将来的には連結財務諸表が上場会社だけのものではなく子会社などを持つ全ての会社において必要になる可能性があります。 それでなくても、経営状態を各会社毎ではなく企業グループで把握することには大きな意味があります。 連結財務諸表によって経営を把握するという方法が、今後更に重要視されることは避けられないでしょう。
PS:連結納税はUSAの一部で既に実施されていることを付け加えておきます。

2.磁気記録による帳簿保存の要望について

コンピュータを用いた会計は法人においても個人においてもかなり広く普及しています。 コンピュータを用いれば、会計記録はもちろん磁気データとして保存されることになります。 これら磁気データとして保存された会計記録は、コンピュータ画面の上で容易に検索作業や承認作業ができるため、印刷した帳票書類は重要性が薄くなってきました。 昨今ではペーパーレス会計(帳票を打ち出さないこと)という言葉もよく耳にします。
しかし、既に実現可能な段階に来ているペーパーレス会計も現状では実務として行うことができません。 ネックとなっているのは税制です。
法人税法では青色申告者が最低限備え付けるべき帳簿として、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳、経費帳などをあげています。 このほか、決算関係書類(貸借対照表や損益計算書、棚卸し表など)や、証憑書類(領収書、注文書、納品書など)ももちろん備え付けておかねばなりません。 そして、これらを書類の形で保存しておかなければならないのです。
書類の形で保存するとなると、紙を使用するため経費がかかりますし、保存場所も必要になります。 ですから、磁気記録の形で帳簿が保存できれば納税者の立場からは望ましいといえます。

政府は、平成8年3月の規制緩和推進計画において、電子データによる帳簿保存等を推進項目とし、平成9年度末までに電子データ保存に関する検討を終了し、 できる限り速やかな措置をとることとしています。 これに応えて国税庁では平成8年7月に「帳簿書類の保存等のあり方に関する研究会」を国税審議官の私的研究会として発足し、審議を行っています。 このような動向に、日本公認会計士協会が適切な対応を取るために「会計帳簿の磁気記録化に関するプロジェクトチーム」を設置しており、この度 「磁気記録による帳簿保存等のあり方についての意見・要望」をまとめて関係先に提出したとのことです。
その骨子は次の通りです。
1.帳簿書類の電子データ保存を積極的に推進されることは、我が国の健全な経済社会と会計制度の維持、発展のために望ましい。
2.推進にあたっては、企業の自由なシステムの構築運営を尊重し、法令等が過度のものであったり硬直的なものにならないように配慮されたい。
3.適正な会計情報システムで作成された記録は、媒体のいかんによらず正規の簿記の原則に従った記録、すなわち、適正な会計帳簿としてみとめられるべきである。
4.磁気媒体等による保存については必要最低限の要件を明確にし、税務調査現場での裁量の余地をできる限り無くすようにすることが望ましい。
5.監査証跡の確保、見読可能性の確保、不当な改竄の防止は、税務調査、会計監査の前提条件として重視する必要がある。

電子データによる帳簿保存の問題に対し、日高国税庁長官は日本税理士会連合会のインタビューに対し次のような内容の答えをしています。 1.申告納税制度の下、適正に納税をしてもらうには税務調査は欠かせない。税務調査を行う上で帳簿書類が適正に作られ、一覧性をもって眺められることが必要である。
2.電子データの保存に関しては、帳簿書類の適正性、一覧性の確保という観点とどのように折り合いをつけていくかということになる。

このように、磁気データによる帳簿の保存が国税庁で検討され、民間においても望む声が強いということは、近い将来に実現に向う(実現の範囲はわかりませんが) 可能性が十分にあるとみてよさそうです。
ペーパーレス会計が実務の上でも実現する日はそう遠い話ではないのかもしれません。

「参考文献;JICPAジャーナル1997年3月号、税理士会第1109号」

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up date 20th Feb 1997