事業が動き出したのはいいけれど、入金出金はどうやって管理しよう、帳簿はどうやって付けよう、従業員を雇うにはどんな事に気を配ればいいのだろう、税金はどうやって払うのだろう、登記はほったらかしでいいのだろうか・・・・?事業は営業活動が何よりも大切、けれど内部管理を怠ると事業の存続が危うくなる事態になってしまう事もあります。お父さんが外で安心して働けるように、お母さんはしっかりと家を守っています。張り切って営業活動が出来るように、しっかりとした内部管理をしましょう。
事業開始時の内部管理
1.入出金を管理しよう
仕事が始まればどうしても起きてくるのが入金と出金。これらをしっかりと管理して、2重請求で取引先ともめないように、2重支払で損しないように、資金繰りでショートしないように気を付けましょう。そのためには、銀行を有効に使う事。
| 事業のための資金はまとまった額を銀行預金に入れておく。入金は出来るだけ銀行口座に振り込んでもらい、現金で受け取りをした時には、とりあえず銀行口座に預け入れる。手元の現金は出来るだけ定額で持つようにする。出金したら必ず領収書をもらい現金と一緒に保管しておく。 |
とりあえずはこれだけしてください。これでどんな事が出来るようになるでしょうか。
@預金通帳に大まかな現金の出入りが記帳される
A入金は通帳で確認できる
B手元の現金と領収書を合計すれば定額になるので出金管理と現金管理が出来る
C資金残高は通帳で確認できる
さあ、これで資金ショートの回避と入出金の簡単な管理が出来るようになりました。
注意事項として以下の事を付け加えておきます。
まず、銀行の預金口座普通口座になるという事。従来より利用してきた銀行をメインバンクにして個人事業の資金管理をしようという場合には、その銀行との取り引き実績があるため当座預金の開設も出来るかもしれません。しかし、新規に取引を始める銀行だったり、会社形式で事業を始める場合には取り引き実績が全く無いわけですから当座預金口座を作る事は難しいでしょう。普通預金口座では小切手や手形の利用は出来ませんが、使いなれているという事と、気軽に記帳が出来るというメリットがあります。また、下手に小切手や手形を用いると不渡りを出す危険性もあります。不渡りを出すと信用を失墜してしまうばかりか、不渡りを2度出したら銀行取引停止になってしまい、事業が立ち行かなくなるおそれも出てきます。資金管理に自信が無い時は普通預金口座で始めましょう。
次に、事業用の口座を引き落とし先にしたクレジットカードなどをむやみに作らない事。資金管理にある程度の自信がついてきたらクレジットカードの利用もいいでしょうが、資金繰りの感じをつかむまではやたらに法人カードなどを作らない方がいいでしょう。引き落としは忘れた頃にやってきます。
入金をしたら領収書を発行しましょう。領収書の発行控えは領収済みのハッキリとした証拠になりますし、取り引きの相手方にとっても支払いの証拠が残るので、お互いのためにいいでしょう。
2.帳簿を付けよう
簿記の勉強をした事がありますか?会計ソフトがあればヘッチャラさ!と思っている人は居ませんか?どんなによく出来た会計ソフトも最低限の簿記の知識、すなわち仕訳を知らなければお話になりません。簿記の"簿”の字も知らないという人は、簡単な簿記の本を買ってきて、まずは仕訳の仕組みだけでも分かるようにしておきたいものです。その上で、現金出納帳のような簡単な帳簿を付けてみましょう。もう事業を始めてしまったという人は、仕訳が分かるまでお小遣い帳程度のものは付けておくようにしましょう。
仕訳が分かったら、手書きの帳簿を付けるなり、会計ソフトを用いるなり、それぞれのやり方で帳簿を付けましょう。最低限必要なのは仕訳帳(又は伝票)、総勘定元帳です。
営業期末(会計期末)には決算をしなければなりません。決算整理仕訳をして決算書を作りましょう。これが出来なければ次のステップである税務申告が出来なくなります。
3.税務申告しよう
全ての事業者は儲かったか否かに関わらず税務申告をしなければなりません。サラリーマンは会社が全てをやってくれますから申告などは無縁だったという人も多いでしょう。しかし、事業を起こしたからには、そうは行きません。決算書を基に個人事業の方は所得税の申告書を、会社の方は法人税の申告書を作成しましょう。あわせて、地方税の申告も必要になります。所得税の申告書は、初めての方でも税務署でもらえる手引きを良く読んでやれば何とか作成できるかもしれませんが、法人税の申告書はなかなか手強いものです。自信が無ければ税理士に依頼するのが無難でしょう。税金に関する作業の代行は税理士しか出来ません。ニセ税理士にはご注意あれ。税理士証票の提示を求めるなどして確認しましょう。
4.従業員を採用しよう
仕事も忙しくなってきた、人手がもっとほしい。では従業員を採用しよう!でもちょっと待ってください。従業員を雇い入れるとどのようなコストがかかってくるのか、雇用した時にはどのような手続きが必要なのか、検討済みですか?
従業員を雇い入れた時にかかってくる費用は、給料だけではありません。社会保険料もかかりますし、退職金も積み立てておく必要があります。
社会保険には、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険があります。健康保険・厚生年金は、事業主と従業員の負担割合はほぼ半々、雇用保険はほぼ2:1、労災保険は全額事業主負担です。勤務の経験がある方は、過去の御自分の給与明細を見てください。健康保険料・厚生年金保険料や雇用保険料を差し引かれているでしょう。その金額から事業主がおおむねいくらくらい負担していたのか、あなた一人を雇用するのにどのくらいのコストをかけていたのか予想がつくと思います。この時労災保険の分を少し多めに見積もっておくと良いでしょう。
また、従業員には給料・賞与だけではなく、退職金の支給も考えなければなりません。自社内で積み立てるのもいいですが、中小企業退職金共済事業団というところが中小企業退職金共済という制度を行っているので、これに加盟するのが一番簡単で良いでしょう。掛け金は、最低月額4千円からあります。
さて、以上で、給料・賞与だけでなく、その他のコストが従業員にかかる事がお分かりになったでしょう。真剣に雇用を考えている場合には、それぞれの金額を本などで調べて、きちんとコスト計算してください。
さて、従業員の採用が決まりました。「では、明日からきてください。」だけでいいのでしょうか?採用を決定した場合には、採用通知書や、給与決定通知書を発行するのが通常ですが、その他にも以下の手続きがあります。
まず、社会保険関係で、以前に勤務経験のある人からは雇用保険証、年金手帳を提出してもらいます。これらを添付して、健康保険厚生年金保険の被保険者資格取得届、健康保険の被扶養者届、雇用保険被保険者資格取得届をを社会保険事務所や公共職業安定所に提出します。
税金関係では、以前に勤務経験のある人からは以前の勤務先から源泉徴収票をもらい、給与所得者の扶養控除等申告書を作成してもらい、所得税源泉徴収簿を作成します。
このほか、出金簿、賃金台帳、労働者名簿を作成しておきます。これらの書類は社会保険関係の事務所などで提出を求められる事があります。
さて、準備から開業まで、ざっとこのようなものでしょうか。もちろん業種によっては、このほかの手続きが必要なケースが沢山あるでしょう。
さて、後は頑張ってビジネスを軌道に乗せてください。健闘を祈ります。