前回は、雲興寺まで来ていますので、今回は中央本線の定光寺駅を目指します。
雲興寺は森に囲まれた静かなお寺です。この森の裏にはキャンプ場などが整備されています。
雲興寺からひと山越えると岩屋堂に出てきます。
岩屋堂の名前の由来は、大きな岩で出来た洞窟にお堂を設けたところから。
その昔、行基がここの洞窟にこもり薬師如来像他を刻み、そのうちの一体をこの地に安置して岩屋山薬師堂と名づけました。
この一帯は公園として整備されているほか、温泉地でもあります。
岩屋堂の裏山を越え、白岩の里を経て定光寺へ至ります。
定光寺は尾張徳川家の菩提寺として栄えてきた臨済宗のお寺です。
歴史は古く、建武三年の覚源禅師の創建とされています。
本堂は重要文化財に指定されています。
また、このあたりの森は定光寺自然休養林として親しまれています。
今回は約22km8時間の道のりです。
前夜、遅くまで飲んでいたせいで、2度寝をしてしまいました。
おかげで起きたのは7時前。コーヒーとドーナツの朝食を食べて、友人(三家本君)に雲興寺まで車で送ってもらいました。
途中、コンビニを探すなど、ちょっと手間取ったため、雲興寺到着は8:30。
友人と写真を撮り、出発です。友よ、一夜の宿を有り難う。
境内の横から裏山に入っていきます。雲興寺の裏山はすぐに登ることが出来ます。
下りに入ると小川を挟んで小さなキャンプ場が二つ、名前もかわいいどんぐりキャンプ場です。
ここを過ぎるといよいよ本格的な山道です。
前夜の雨で、道は少々ぬかるんでいます。
転ばないように注意しなければなりません。
また、前夜のような雨が降りませんように、このまま最後まで傘をささずに行けますように、祈るような気持ちです。
それはそれとして、ここの道は歩いていて楽しい、とてもいい道です。
名古屋と言う大都市から大して離れていないのに、こんなに緑あふれる道が残っているなんて、東京者にはチョット羨ましい限りです。
一つピークを越えると、大きな看板に出くわしました。
その看板には、”岩屋堂〜雲興寺間通行止め”とあり、ドキッとしました。
迂回路を通るとなると時間がかかるので、ただでさえスタートが遅かった上に迂回路ではこの先思いやられます。
しかし、この看板をよーく見ると、通行不能個所はすでに通り過ぎているのです。
ひとまずホッとしましたが、いったいどこが通行不能だったのか全くわかりません。
看板には「通れました、とってもいい道でした」との落書きも。
推測するに、この通行不能となっている個所は私有地であり、その私有地の中を善意で東海自然歩道を通していたのですが、そこで心無いハイカーがごみを捨てたり枝を折ったり植物を取ったりしたので、所有者がハイカーに警告するために看板を立てたのではないかと思います。
この個所に限らず、どんな道でもマナーを守って歩きたいものです。
前方から嬌声が聞こえてくると思ったら、おばさんのハイカーグループです。
5,6人でとても楽しそうに歩いています。願わくば、もう少し静かに歩いて欲しいものです。
さて、よっこらしょうと坂を登ると林道に出ます。ここからは、岩屋堂まで林道の道です。
人気もなく、静かで気持ちいい。だんだんと高度を下げていくと、"渓谷コース"や"展望コース"などと名付けられた自然探求路のような道が沢山出てきます。
岩屋堂の周辺は自然公園としての整備が進んでいるようです。
林道を下りきったところで、掃除のおばさんに道をうかがい、渓谷沿いに下ります。
岩屋堂公園に到着。一休みです。
さて、このあたりが岩屋堂だと思うのですが、はて、肝心のお堂はどこでしょう。
なんてことを思いながら歩いていくと、ありましたありました。
ちゃんと東海自然歩道のルート沿いにあるのですね。
岩屋堂は、その名の通り大きな岩の下に作られたお堂です。
ここで写真を一枚。そしてお参りをします。
大丈夫とはわかっていても、もし頭の上の岩が落ちてきたらどうしようと一抹の不安が頭を過ります。
奥にある滝も見に行って(滝の名前は忘れました)今度は岩屋堂の裏山に取り付きます。
裏山は結構急な登りなのですが、荷物が軽いせいもあって、また歩き始めて間も無い事もあって、元気に登ります。
ピークには展望台があります。展望台へは下からぐるっと回り込むようにして至ります。
このあたりでお日様が出てきました。ありがたやありがたや。
展望台で瀬戸や尾張旭の町を見渡して写真を撮ります。少し霞がかっていますが、お日様が出てきただけでも良しとしなければ。
ここから小さな流れ沿いに道が続きます。
人気のハイキングコースらしく数名の人とすれ違いました。
目の不自由な方も手をひかれてハイキングを楽しんでおり、元気に挨拶してくれました。
その声が生き生きとして、とても楽しそう。
そう、東海自然歩道は目的地に至るという目標があるだけに、そのことばかりを考えて、途中の道や草花や人との出会いを楽しむことを忘れてしまいがちです。
でも、修行をしているわけではないのですから、この方のように、今歩いていること、吸い込む緑の香り、頬を撫でる風、まばゆい光、そして笑顔の挨拶を楽しまなければ。
そのような楽しみこそが、到達と言う達成感と並ぶ東海自然歩道の大きな魅力なのですから。
道に沿った小さな流れにはコップが置いてあって、どうやら飲めるようなのですが、少しだけ口に含んだだけにしました。
湧き出している水はいいのですが、流れている水は何が流れてくるか分からないので、いまいち不安が払拭し切れないのです。
しかし、冷たい流れは一抹の清涼感を与えてくれました。
小川を離れて高度を上げます。ピークのたもとのベンチで荷を下ろします。
ピークはコースからホンのチョットはずれているのですが、見晴らしがよさそうなので荷を置いて登ってみることにしました。
案の定、素晴らしい見晴らしで、名古屋の方まで見渡せました。写真を一枚撮ります。
さて、歩を進めると、高度を下げて、今度は車道に出てきました。少しだけ車道を歩きます。
家族連れが虫を採っているようです。
立ち止まって声をかけると、幼稚園児らしき男の子が僕の万歩計(テクテクエンジェル)を見つけて、
「このお兄ちゃんもゲームを持っている。」
と大声で言いました。
「そうかー、ボクも持っているのなら、一緒だねー(精神年齢も含めて)」
と受け答えして、手を振って別れます。
車道はすぐに外れて山道に入っていきます。
目の前が開けると、そこが白岩の里です。
そろそろお昼なので、ここらで弁当を広げる事にします。
農作業中のオジサンに声をかけて、水を頂きます。
歩いていると暑いので、ついつい水の消費量が多くなるのです。
「どっから来たァ?」
と尋ねてくるオジサンと少し話して、頑張ってなの声に送られて別れます。
こうした一言二言が、不思議と心に残るものです。
車道に面した神社の長い階段の下に腰を下ろしてお弁当を広げました。
白岩の里が見渡せる良いところです。靴も脱いで、開放感に浸ります。
お日様も顔を出し、長閑な田園風景です。
30分ほどのゆっくり休憩した後、再び歩き始めます。
休憩をした神社の横の山道が東海自然歩道なのです。
先ほどのおじさんの話によると、定光寺まで急なアップダウンはないとのこと。
さて、定光寺には何時頃着けるだろうか、と思いつつ歩いていると、榎戸の集落のあたりで向こうからハイカーがやって来ました。
挨拶ついでに話しかけ、情報収集をします。
この方は、今朝9時前に定光寺を出て来たそうで、ここまで約3時間半かかっているそうです。
同じペースならば4時過ぎに定光寺に着けそうです。
再び車道に出ます。子供を家の前で遊ばせているお母さんがいたので、再び水補給です。
今回は沿道に人家が多くあると予想していたので、大きな水筒は持ってきていないのです。
中平橋を目指して歩いていると、自動販売機発見!中のジュースが飲んで欲しいと僕にささやいています。
よしよし、飲んでやるからネと、自販機の前の地べたに座り、ジュースをグビグビッ!
お日様が照って暑いので、冷えた炭酸のジュースがとても美味い!
タップンタップンになったお腹で再び歩き出し、洗車中のオジサンと話を交わして先へ進みます。
中平橋のたもとから未舗装路に入ります。
この道、いたるところに牛糞(馬糞?)が落ちています。
視線はどうしても足元に向いてしまいがちです。
休憩所のたもとのトイレで用を足し、茶畑の横を抜けて、稚児橋を目指します。
家族連れが来ていて、子供がはしゃいでいました。良い光景です。
稚児橋のたもとのベンチで少し休んでから再び山道に入り、宮刈峠を目指します。
高圧線の下をくぐって峠に出ました。
ここで道が交差し四つ角になっているのですが、標識がいまいち判然としません。
どの方角へ進めば良いのかわからないのです。
荷を下ろして地図を広げますが良く分かりません。
すると、小さな男の子を連れたおじさんが登って来ました。ナイスタイミングです。
道を伺おうと思うと、このおじさんも東海自然歩道のルートが分からなくて下ってしまったということです。
どうやら下りは違うと言う事で、峠にあるトイレの前の道が正しいルートのようです。
ザックをおろしたついでに、このおじさんや子供と少し休んでいくことにしました。
この男の子が可愛くて、ついつい長居して遊んでしまいました。最後に3人で写真を撮って別れました。
後日談ですが、この時の写真を送ったところ、この男の子からお礼のお手紙をもらいました。
そこには、この手紙が初めて書く手紙であるということ、写真を送ってもらって、目が飛び出しそうなくらい嬉しかったこと、これからもおじいちゃん(おじさんはこの子のおじいちゃんだったのですね)と一緒に歩いていこうと思っていることなどが、しっかりとしたひらがなで丁寧に書かれていました。
このお手紙に、また返事を送ったのは言うまでもありません。
ひらがなで、わかりやすいように、心を込めて書きました。
宮刈峠でのこの男の子との出逢いは、偶然の、小さな出逢いでしたが、心に残る大切な出逢いになりました。
おじさんや男の子と別れた後、アップダウンの少ない歩きやすい山道を進みます。
山星山には3時前に到着。写真を撮ってから、山星山を順調に通過し、歩道橋を渡ります。
道が細くなったところで階段を上がり、その階段を上がったところが愛知県労働者研修センターでした。
さて、白岩の里あたりから気になっていた事があります。
ウエストポーチのベルトが取れかかっているのです。
もうそろそろ切れてしまうという時に、研修センターに着きました。
ここならガムテープもあるでしょう。
そこで、研修センターの中に汚いなりで入り込み、お土産屋を見つけて、そこのおばちゃんに荷造りテープを分けて頂きました。
こいつでひとまず補修ができました。
誠に図々しい次第ですが、ここで直しておかないと後で後悔してしまいます。
このウエストポーチも定光寺の駅まで持ってくれれば引退です。
研修センターの駐車場横を通って下ります。
すると、下ったところに高根山の看板。
確かに手前に緩い登りはありましたが、下ってきたところに頂上の看板が出てくると違和感があります。
高根山下で車道に出ずに右折して、定光寺自然休養林の看板のところで車道に出てきました。
さて、出たところは車道が三叉路になっており、ここの標識で少し迷いましたが、向かって右に進んでも左に進んでも定光寺にはつくだろうと、右の道を選んで進みます。
池のある小さな公園を過ぎて、正伝池にでてきました。
出たところにあった大きな案内板で周辺の地理を確認し、池をぐるっと回り込み、定光寺に出ます。
参道の階段を上りお参りします。
これで、今回の行程に区切りがつきました。
ここで時間は4時15分。予想通りの時間です。
さて、渓谷沿いに定光寺の駅へラストスパートです。
このあたり、ずっと標識が見当たらないので、先ほどの三叉路で左を選ぶのが正解だったのかも知れません。
案の定、僕が進む車道と川を挟んで遊歩道が平行しています。
そして、そこには東海自然歩道の標識らしきものも見えます。
厳密に言えば間違えたルートを歩いているわけですが、方向は正しいので、まあいいでしょう。
下りきったあたりで遊歩道と合流し、庄内川に出ました。
庄内川を渡って定光寺駅に到着、時刻は4時48分でした。
到着と同時に頭の上の駅から列車が発車したのでこの時間だけは正確に分かりました。
高尾山を出ていらい、相模湖に至る道中で一度横切った(トンネルの上を通った)中央線に、ようやくこうして再会しました。
高尾山を出たばかりのころは、こうしてここまで歩いてくることなど想像できなかったのですが、今こうして愛知県の中央線の駅に至っているということは感慨深いものがあります。
駅前の商店でビールと切符を購入(切符はこの店で売っています)。
ホームに上って、まずは物陰で着替えます。
それから荷をまとめてビールをグビグビッ!プハーッ!美味い美味い。中央線との再会の杯です。
帰りの新幹線ではズーッと酒を飲んでいました。
今回も、旧友との再会あり、思わぬ出逢いがあり、よい歩行になりました。
雲興寺の境内でルートに迷った方もいるようですが、本堂の左から裏手にルートが伸びています。
小さなピークを越すとキャンプ場が現れます。
岩屋堂へ向かう道で本文にも出てきたように通行止めと迂回路の大きな標識が出てきます。
これに従うか無視をするかは歩く方の判断に任せますが、無視をして突き進んでも問題なく通れます。
この迂回路の看板からすぐに林道に突き当たります。
この林道は左に進みます。
林道をひたすら真っ直ぐ進むのが東海自然歩道のコ−スですが、途中で出てくる自然探求路の渓谷コースの方が面白そうでした。
いずれを進んでも鳥原川には出るはずです。
川に出たら渡らずに川沿いの道を下り公園に出ます。
そして公園の隅にかかる橋で川を渡ります。
そのまま車道を下流方向に少し下り、岩屋堂の看板が出てきたらその看板に従います。
岩屋堂では目のつくところに標識があるので迷わないでしょう。
ここから白岩の里まではほぼ一本道だったと思いますが、標識もあるので迷うことはないでしょう。
また、白岩の里の手前で車道に出ますが、ここにも標識は完備されています。
白岩の里で小高いところを通る車道に上がり、神社横の道を登ります。
ここは神社の参道の階段を登っても一緒です。どうせなら、参道の方がいいかもしれません。
榎戸の集落から中平橋までは車道をまっすぐに行きます。この間で補給をしないと、次は研修センターまで補給個所がありません。
中平橋の手前で右折し未舗装道に入ります。
車道を渡ってから縁にフェニックスの木が並ぶ茶畑で進行方向に迷うところですが、ここは茶畑の縁のフェニックスに沿って進みます(但しこの木がフェニックスかどうかは確信がありません)。
あとは、稚児橋を経て宮刈峠までは迷うことはないでしょう。
宮刈峠の周辺では少々迷うかもしれません。
本文にもある通り、トイレのある地点で四つ角になっています。ここにも標識はあるのですが、指す方向がはっきりしません。
下って車道らしきところに出るのか、トイレの前から続く道を進むのか、二者択一ですが、トイレの前から続く道を進むのが正解です。
ここから研修センターまでは難なく行けますが、研修センターでは次の標識が見えません。
ここは、センターの正面玄関の方へ進み、駐車場と研修センターの建物の間を進みます。
すると、車道を一度横切って高根山につきます。
高根山から車道に出ると、定光寺自然休養林の看板があります。
本文にもある通り、ここは標識が三つあり、出てきた道をさしている標識は除外するとして、その他の二つのうち比較的しっかりと立っている標識は左右どちらをさしているのかわかりません。
これに対し、古い標識は草の中に何とか立っている状態で、こちらを信じるには勇気が要ります。
僕は向かって右を選択しましたが、ここは向かって左に進むのが正解のようです。
定光寺から素直に駅を目指すと車道を歩くことになります。
ここは、一度橋を渡って戻り川沿いの道を進む道を見つけてください。こちらが正しいルートです。
雲興寺までの交通機関は前回の行程を見て頂くことになりますが、その他に雲興寺の裏のキャンプ場からも赤津のバス停へ向かう標識が出ています。
キャンプ場から入ることも出来るようです。
岩屋堂へや白岩へはバス便もあります。しかし本数が少ないので、事前に時刻を確認することをお勧めします(名鉄バス0561-82-7141・JR東海バス0561-21-0489)。
宿泊地点としては岩屋堂に温泉宿が、また定光寺駅の周辺にも旅館があります。詳細は、瀬戸市商工観光課(0561-82-7111)または春日井市商工観光課(0568-81-5111)へお問い合わせください。