前回は設楽町の田口まで来ていますので、今回はここから東海自然歩道の交差点・寧比曽岳を目指します。
設楽町の中心街・田口の町を出ると、東海自然歩道は大自然の中へ分け入っていきます。
寒狭川沿いに少しづつ高度を上げ、大名倉・宇連と集落は続きますが、東海自然歩道は集落とは川を挟んで反対側を通ります。
寒狭川は渓流釣りの盛んな川でアユ解禁の時期には太公望が押し寄せます。
また、田口の先から東海自然歩道は昔の田口森林鉄道本谷線の廃線跡をたどるルートになっています。
この表示は大名倉の先にあります。どうやら廃線跡を歩くマニアにとっては興味津々のルートのようです。
大名倉の集落には縄文時代の遺跡があるようです。
宇連の集落を過ぎると道はいよいよ森の中へ入っていきます。行く手に現れるのは裏谷原生林です。
この石楠花を始め栂・楓などの原生林は段戸国有林になっており、学術見本林として保存されています。
裏谷の集落を抜けると小さなため池である段戸湖が現れます。
この辺りは裏谷高原といわれ、キャンプ地として賑わいを見せる所のようです。
段戸湖を過ぎ五六橋を渡ると、しばらくは人家の無い道が続きます。
原生林を分けて登り詰めると、寧比曽岳山頂に出ます。この山頂が足助や瀬戸を通る本コースと明智や恵那を通る恵那コースの分岐点です。
今回は約21km7時間半の道のりです。
5月1日は僕の誕生日。その日は職場を出るのが予定より遅くなってしまいました。
急いで帰宅し、急いで買い出しに出掛け、急いで夕御飯を作って食べ、急いでリュックに荷物を積み込みました。
本当にせわしない上に、天気予報が良くないせいで荷物にはできる限りの防水を知恵を絞ってしていくので、さらに手間がかかります。
夜の11時にようやく荷物のパックが終わり、そのままリュックをしょって出発。
東京駅に11時半過ぎに到着し、ムーンライトながらに乗り込みほっと一息。
すかさず寝る体勢に入りました。
さすがにGW直前のムーンライトながらは混雑していました。
実は今回は同行者がいるはずでした。
丹沢で同行をしてくれた僕の山の師匠、佐々木君が年頭から参加表明をしてくれていたのです。
しかし、残念なことに諸般の事情で直前になってキャンセルになり、今回も単独行となりました。
豊橋到着は4時35分。ホームで眠い目をこすって頭が覚めてくるのを少し待った後、駅を出て東口へ。
今回は、豊橋在住の東海自然歩道ウォーカーのOHARAさんが車で迎えに来てくださっているのです。
OHARAさんは、「東海自然歩道日帰り継歩」すなわち日帰りの行程を積み重ねて踏破するということにトライなさっている方で、僕は送ってくださるレポートを読ませて頂くたびにその健脚ぶりに舌を巻いてしまうのです。
そのOHARAさんと、今回初めてお会いできるので、これも楽しみの一つでした。
東口のホテルの前ですぐにOHARAさんに出会う事が出来ました。
トライアスロンもなさっていたということで、もしかしたらムキムキマンかなぁと想像していましたが、思っていたより細身の方で、満面の笑みで迎えてくださいました。
こんな笑顔で迎えてくださると、起き抜けの頭が一気にクリアになると同時に、それまで胸にあった今回の行程への不安が少しづつ薄れていく感じがします。
その足でOHARAさんと共にラーメンが美味いという評判の龍鳳へ。
前回、豊橋で飯田線の始発を待った話を、蔵田から家山まで同行してくれた小杉師匠にした所、それならばその間を利用して龍鳳に行くべしとアドバイスを受けたのです。
ここは朝8時まで営業なので、ここでリッチな朝食を食べてしまおうという魂胆です。
これが美味かった。朝から幸せになってしまいました。
幸せな気分を暗くするのが雲行きで、厚い雲が垂れ込め、車に乗っていてもパラパラと降ってきます。
何とか、今日一日もってほしいものです。
東海自然歩道にまつわる話をしながら、前回到達した田口のバスターミナルまでOHARAさんに送って頂きます。
OHARAさんのお話では、寧比曽岳から綾戸に至る道は掘られた溝のような道が多く、雨が降ると川になることもあるとのこと。
天気予報では明日は雨。雨が激しければ寧比曽岳山頂で一日過ごすことも考えなければなりません。
OHARAさんには、田口まで送って頂いた上にオムスビとジャムパンの差入まで頂きました。
バスターミナルの向かいの休憩所にて写真を撮ってから、頭を垂れて見送りました。
ここで荷物を再点検して、トイレにも寄った後、Tシャツになって出発!幸い、雨は降っていません。
前回の到達地点、福田寺まで戻り、ここから今回の行程の始まりです。
下りの山道を抜けて車道を横断、さらに寒狭川の清冽な流れを渡ります。
ここから道はしばらく舗装道路ばかりで余り面白くありません。しかし、所々で目に飛び込んでる藤の花は美しかった。
寒狭川に沿って遡り、途中に会った小さなビルのような建物の会社の前でぱらぱら降って来た雨を感じて早めにポンチョを羽織り、ザックカバーを装着します。
この地点のすぐ先から大名倉までは山道が続きます。大名倉に着く頃には、雨は止む気配を見せなくなり、むしろますますやる気を強めているようで、しっかり降るようになってきました。
さて、この大名倉の前後の山道からは田口森林鉄道といわれる古い軌道の跡を歩きます。
廃線跡だけあってさすがに道の作りがシッカリしています。
橋脚も2箇所ほど残っており、これは知らないうちに「鉄道廃線跡を歩く」になってしまっているなぁと思いました。
寒狭川にはチラホラ太公望がいたのですが、廃線跡を歩くようになってからはその姿も見えなくなりました。
こうしたルートを歩くのは、雨の中とはいえ楽しいものです。
やがて道は川を離れ裏谷見本林という原生林に入っていきます。広葉樹の多い森は人の手が入っていない感じがしてとてもいい。
雨に濡れた新緑もきれいです。
しかし、雨は強さを増し、体はかなり濡れてきました。ベンチでも安らかに休むことが出来ません。
今日の天気予報は曇り時々雨。
しかし、8時過ぎから降り始めた雨は一向にやむ気配を見せません。
雨にぬれた新緑は美しいのですが、見ているこちらがずぶ濡れでは気持ちも沈みがちです。
最後にきれいに整備された道を抜けて、裏谷の集落に着いてようやく舗装路になります。
山道の方が足には優しいのですが、雨に濡れた山道、特に橋や階段は滑りやすくて神経を使います。
舗装路は面白くない代わりに、何も考えずに歩けるので楽です。
裏谷小の横を通り、犬に吠えられて11:50に段戸湖に到着しました。
入漁管理のおじさんに伺った段戸湖畔の広い石張りの東屋に入って荷を下ろします。
もうシャツも靴もグチャグチャです。
幸いザックカバーのおかげでリュックはほとんど濡れていません。
丁度お昼なので、OHARAさんに頂いたオムスビを頬張りながら、シャツを着替え、濡れたシャツなどを脱いで干します。
でも乾きそうに無いなぁ。
一息ついたところで水を補給しようという事で、ペットボトルを抱えて傘を差し、裏谷の集落に戻りました。
が、どこの家を訪ねても人は出てきません。
どうやら皆さん何処かへ出掛けてしまっているようです。
小学校の周りをうろつきましたが、水道はなく、仕方なく水を得る事が出来ないまま戻ってきました。
全く、頭から足の爪先までずぶ濡れで、目の前には水を湛えた段戸湖があるというのに、水で苦労するなんて!
東屋の脇に小川が流れているので仕方なくここで水補給をします。しかし、余りきれいではありません。
寧比曽岳への山道に有るという清水に期待を繋ぎます。
1時半に段戸湖を出発。
今度は少しでも違うだろうという事で傘を差して原生林の中へ入っていきます。
雨は強く、道は滑りやすくなっています。
横目で自然観察路を見やりながら先を急ぎます。
きっと新緑あふれる素晴らしいコースだと思うのですが、それを見ている余裕は有りません。
五六橋を過ぎてかなり歩いても、水場は現れませんでした。
きっと見過ごしてしまったのだろうと、あきらめて先を急ぎました。
しかし、ペットボトルに詰めた水を少し飲むとちょっとすっぱい。
これはモロ雨水です。料理の時にまとめて煮沸しなくちゃと思いました。
寧比曽岳への登りはきついと思っていましたが、それほどでもなく、なだらかに高度を上げていきます。
それに、傘の効果は大きいようで、上半身はほとんど濡れなくなりました。
何度か濡れたベンチで休憩した後、山頂まであと1:20の標識を過ぎて小さな橋を二つ渡ると、その二つ目の橋のたもとに緑の湯飲みが置いてあるのを発見しました。
オヤッ、と足を止め見れば、清水が湧いているでは有りませんか。
喜び勇んでリュックを橋の上に降ろし、橋の下に降りてペットボトルの水を全て詰め替えます。
そして最後に湯飲みで一杯、クゥーッ、美味いっ!
これで水の不安は無くなりました。
元気を取り戻して山頂を目指します。
富士見峠でトイレを見やり、登りで一度派手に転んでから、山頂には3時50分に到着しました。
当たり前ですが誰もいませんでした。
横殴りの雨に中まで濡れた東屋に荷を下ろして、霧に包まれた山頂を見渡します。
とりあえず、屋根の下、今日の幕営地には到着です。
風向きを見て、テントの場所を考えます。
ペグが打てないので、重しとなりそうなものを探すと、隅っこに石に入り口を押さえられた錆びかかった金属の箱が。
もしやと思い開けてみると、やはりそこには書き込み帳、そして一枚の紙片が。
その紙片にはなんと今朝田口まで送って頂いたOHARAさんのメッセージが書いてありました。
OHARAさんは僕を送り届けた後、朝9:00にこの山頂まで様子を探りにやってきたとのこと。
緊急時の避難方法も書いてあります。いや、本当に有り難いことです。
紙片を頭の上にかざして深々とお辞儀をしました。
風を背にしてテントを張って、風の通り道を付けるため窓を開け、荷物を放り込み、着替えをします。
それから夕食までの間しばらくボーッとしていました。
ああ疲れた。
夕食はトマトのリゾット。
チーカマやチーズやピーナッツをつまみにウイスキーを舐めながら山頂備え付けの書き込み帳でも眺めようと思ったのですが、水割りを2杯ほど飲んで知らないうちに寝てしまいました。起きたのは夜半。
風が唸りを上げ、テントが飛ばされるのではないかとヒヤヒヤしながら、書き込み帳に書込みをしたのですが、その後は風の音がうるさいのとテントが飛ばされる不安とで、なかなか寝付けませんでした。
その夜、三河地方には強風波浪大雨雷注意報が発令されていることをラジオで知りました。
田口への交通機関は、JR飯田線の本長篠駅からのバス便になります。
バスの時刻は時刻表にも出ていますし、豊橋鉄道(0532-53-2135)に問い合わせることも出来ます。
田口での宿泊施設ですが、寧比曽岳山頂の書き込み帳によると、奥三河資料館に格安で宿泊できると書いてありました。
その他の宿泊施設もあわせて、詳しくは、設楽町企画課(05366-2-0511)にお問い合わせください。
田口の福田寺の入り口にある田口の標識から今回のコースは始まっています。
細い道を行き細い車道に出てすぐに左下に降りる山道が現れます。
この山道を通って、寒狭川沿いに降りていきます。
太い車道と川を渡って川を右手に見ながら上流へ向かって歩きます。
しばらくは舗装路が続きます。
この辺り一本道ですので、迷うことはないでしょう。
小さなコンクリート作りの建物を過ぎるとすぐに山道に入ります。
ここから大名倉までは未舗装路です。
大名倉で一旦車道に出ますが、すぐまた未舗装路になります。
この辺りに田口森林鉄道廃線跡の表示があります。
ここから廃線跡に沿って歩きます。
とにかく、寒狭川にでてから裏谷原生林に入るまで、川を右手に見ながらひたすら川沿いに歩いて行けば良いコースになっています。
林道を横切り、段戸国有林の表示を見て登ると、裏谷原生林の整備されたハイキングコースのような所に出てきます。
ここから裏谷の集落はすぐそこです。
裏谷の集落は小さく、小さな店が一軒あるようですが、僕のケースのように閉まっていることもあるので、あまり当てには出来ないでしょう。
段戸湖畔に出たら湖を右に見ながら湖岸沿いの道を歩きます。すると東屋が見えてきます。
段戸湖は絶好の休憩ポイント。ここの東屋はコンクリート敷きで立派なので野宿ポイントでもあります。
この辺りには民宿などもあったと聞きますが、今では営業しているのか定かではありません。
(追加情報を頂きました:2000年に豊川市野外センター「きららの里」という宿泊施設がオープンしたそうです。所在地は"北設楽郡設楽町大字田峯字段戸1-1"電話は"05366-2-2555"です。
申込み先は豊川市市民体育課"0599-86-5175"利用期間は5月1日〜11月30日だそうです。)
段戸湖から寧比曽岳までなだらかな登り坂です。
途中、自然観察路が2個所にありますので、時間があれば足を踏み入れてみるのも一興でしょう。
この区間は分かれ道もほとんど無く、標識もしっかりしていますので、迷うことはまず無いと思います。
寧比曽岳の山頂はしっかりした東屋があります。
この東屋は段戸湖と同じ形式で、壁が無く、柵で囲ってあります。
そのため風は防ぐことが出来ません。野宿の場合はこの点だけは考慮に入れておく必要があるでしょう。
また、山頂から一番近い宿泊施設は、恵那コースを降りた所にある”いこいの村愛知(0565-67-2101)”だと思います。
ここは約半年前から予約を受け付けています。
本コースとなると足助まで宿泊施設はないものと思われます。