心の研究室バナー


Copyright 1996-2007 © by 笠原敏雄

TOPへ戻る 前のページへ戻る 次のページへ進む

 小中学生のための超心理学入門 3


前世リーディングは信頼できるか

 これまで、生まれ変わりや憑依(ひょうい)の実例を話してきた。君たちの中には、自分の前世に興味を持っている人があるかもしれない。あるいは、すでに誰かにどういう“前世”だったかを教えられている人もいるかもしれない。そこで今回から、“前世リーディング”や“チャネリング”や催眠による年齢遡行(そこう)などの中で出てくる“前世”がどこまで信頼できるかについて話すことにしよう。

 前世リーディングでは、たいてい、多額の金銭が要求される。このようなリーディングで出てくる“前世”は、ほとんどの場合、過去の有名な事件や人物が関係している。戦国時代の有名な武将であったり、ローマ時代の有名な政治家であったりするのだ。前世リーディングを受ける人はほとんどが、このような言葉をそのまま受け入れてしまうが、もう一度、別の“能力者”のリーディングを受けて、どこまで一致するかを確かめようとする人はほとんどいないらしい。

 たとえば、ある女の子が、「あなたは、武田信玄の側室(そくしつ)でしたが、別の側室からねたまれ、いじめ抜かれたあげく、井戸に飛び込んで自殺しました」と言われたとしよう。たしかに、そうではなかったことは証明できないが、だからといって、本当にそうだった可能性がどの程度あるものだろうか。また、ある男の子が、「あなたは、ローマ時代に、クレオパトラ・アントニウス連合軍と戦った、ローマの武将オクタヴィアヌスの片腕だった人でした」と言われたとしても、やはり、本当だともまちがっているとも言えない。とはいえ、本当にそうだった確率(かくりつ)は、ほとんど○パーセントだろう。

 ある研究者は、自分の前世を8人の“能力者”に見てもらったという。どの人も誠実だったし、自分の能力には絶対の自信を持っていた。ところがどの“前世”をとっても、他のものとは全く一致しなかった。同じ時代に、別の場所にいたことになっていたのだ。だからといって、もちろん、他人の前世が本当に読み取れる人がいないとは言えないが、そのような能力があると主張している人たちのほとんどには、そういう能力はないということなのだ。

 “前世リーディング”の他に、催眠(さいみん)により“前世の記憶”をよみがえらせる方法もよく知られている。つまり、誰かに催眠をかけ、だんだん昔のことを思い出させながら、その人が生まれる以前までさかのぼり、それによって前世の記憶を引き出そうという方法だ。

 たしかに、催眠状態の中で、たとえば2歳の時のできごとなどを非常に詳しく、しかも正確に思い出せる人もある。だからといって、本当に前世があるとしても、こういう方法で前世の記憶が出てくるとは言えない。

 催眠状態にある人は、催眠をかけている人の指示にできるかぎり従おうとする。そのため、生まれる以前のことを思い出すよう指示されると、自分の心の中にあることをそれらしく変形して、“前世の記憶”としてしまう。日本史や世界史で習ったことや本で読んだことを材料にして、自分の前世を作りあげてしまうのだ。その結果、“前世リーディング”の時と同じように、有名な人物や事件がそこに登場するか、あいまいな内容になってしまうかのいずれかになる。

 催眠状態にある人のもうひとつの特徴は、夢を見ている人と同じで、ふつうの批判力がなくなってしまっていることだ。そのため、君たち中学生が見ても驚くような、歴史上の誤りが見られることも多い。たとえば、ある本に出ている例では、十字軍の時代にフランス王の飛脚をしていたという“前世”の人物は、ヴェルサイユ宮殿とボルドーの間を往復していたという。ところが、ヴェルサイユが歴史上重要な位置を占めるようになるのは、君たちの知っているように、十字軍の時代よりも4百年以上後なのだ。

 以上の説明で、“前世リーディング”や催眠によって出てくる“前世”がどれほど現実からかけ離れているかがわかったと思う。そういうものと、前に説明してきた子どもの例とは全く違う。前世の記憶を持つ子どもの場合は、記憶だけではなく、生まれつきのあざがあったり、誰からも教わらないのに、何かの技術を持っていたりするわけだが、これも、このような例とは違う点と言える。


TOPへ戻る 前のページへ戻る 次のページへ進む