卒論・ディプロマ
    学部卒業論文   「海上都市の構造的研究」
    学部卒業計画   「MARIN CITY」
    大学院修士論文 「都市空間における建築形態」

 

学部卒業論文 「海上都市の構造的研究」 1962年

指導教授   松井源吾 教授
菊竹清訓 講師


 
  序文

こヽ数年のうちに 浮ぶ都市即ち”海上都市“について多くの人々によって討論され新聞、雑誌その他の紙上にて様々の提案が発表されていることは 私達のよく知るところであります。
 しかしながら数ある素晴らしい提案もいざ実現の段階になると様々の問題を生じ、そのまヽにしておけばただ単なる夢物語りに終止してしまうことになりかねないのであります。
 今までの様々の提案はそのほとんどのものが海上都市計画を主体としたものであり他の面よりも具体的なアプローチを試みているものが見当りません。
 今日に到って海上都市の実現可能性を考える場合に、構造面からも具体的な計画を進めて行く必要があります。
 海上都市を構造主体に考えることは、あまりにも多くの要素を含んでいることにより、これもまた非常にむづかしい問題であります。

限られた時間にすべての問題を検討することは不可能であります。
 そこで私達はまず海上都市の計画が提案されている東京湾を対象に考えることにします。
 それは海上都市の実現性が一番大きいということ それから地上の建物と異なり外力として波その他の影響を考えなくてはならないということから、大海と東京湾のような入江とは海象が全く違う故にその地域を限定せねばならないからであります。
 そして構造面からのアプローチの第一歩として 来たるべき都市時代に対応する都市空間の構造とシステムの確立の解決の一つの方向として海上都市の構成要素である“浮基盤”を採りあげます。

この“浮基盤”の構造とシステムによれば都市の必要な空間の転換性が建設・移動・消去にも容易であり、したがって新しい都市計画に際しての住居・工業用地・交易築・港湾施設等の建設は勿論、将来の発展にも効果的に活用されるなど新しいコントロールの出来る都市空間の実現が海上都市における“浮基盤”によって可能となるからであります。

この海上都市の構成単位である“浮基盤”についてはその規模は都市計画的 構造的 外的条件に規制されるが 一応その寸法を200m×200m×10mと定めます。
 この規模は現在の建築技術的にこの程度であると考えられますが 波浪 浮力 潮流その他の外的条件に対して未知であります。
 そこでもう一度この問題を検討し この“浮基盤”の架構の設計を行い合理的な形を提案します。
 それと同時に実現するまでの諸問題について検討し海上都市の構造面からの考察が海上都市計画全体にどのような影響をあたえるかという問題にもふれることになります。
 この論文は例えば波浪、浮力、潮流その他の外力の理論というある構造力学の理論に焦点をあてた論文ではなく 広義の意味において海上都市計画全般に通じているということより“海上都市の構造的研究”と題したのであります。

 

             論文の内容

 東京湾の海象条件(気象庁・海上保安庁・都道府県港湾局)
 浮体の単位
   ・200m×200m×10m の一単位設定
    グリッドとしての都市計画の単位 曳航の可否
 浮体の考察
   ・東京大学地球物理学研究所
   ・フランスの固定浮ドックの波による外力(論文)
   ・波の外力の計算(波動モーメント)
   ・浮体の構造設計
   ・浮体の積算
   ・東京圏の地価との比較
   ・東京湾上の配置計画

              結 論

東京湾での最大波を浮体の長さ200mで波の外力を吸収出来る。
  (波の外力を受ける長さ)
浮体の単位(200m ×200m ×10m)は波の外力の影響等を受ける部分は
  トラス構造、内側の浮体はラーメン構造とする。
地価
  浮体単位を配列して出来た造成床の価格はu当たり27.67円程度で、
  多摩田園都市の市街地の土地価格である。
  また浮体の地下に二層の無償床が出来、副次的な有効利用が出来る。
今後のリアリティのある海上都市への役割
  この浮体による人工土地は陸地の地価と同等であると考えられ、浮体の
  上部構造として建物を建設することにより、採算性に合った海上都市の
  実現に一歩近づけたことを示す。

 

 

学部卒業計画 「MARIN CITY」 1963年

指導教授   武 基雄 教授


 
  論文での研究成果の浮体の上部での街区
   浮体の上部に住居棟等を建設するプロジェクト

土木的スケールの住居棟
   浮体上部にシリンダー状の柱を建て鉄橋のイメージの鉄骨フレームを建設し、
   その中にプリファブリケートされた住居ユニットを取り付ける手法。
   住居ボックスをエネルギー供給のパイプで継ぎ、自由に取り外すことが出来るよう
   ムーバブルにする。(メタポリスムの発想)

ダイナミックな都市景観
   住居のブリッジの下部にコミュニティセンターその他の都市施設を低層で計画し、
   広場及び緑地帯を計画する。造形的には街並みの計画された低層のタウンの上部に
   大きなガーダーに鳥の巣の様な住居を取り付けたダイナミックな都市景観を創る。


 


 


 


 


 

 

大学院修士論文 「都市空間における建築形態」 1966年
         (四谷駅を中心とする四谷地区計画)

指導教授  武 基雄 教授


 
  

一つの建築から数個の建築の集まりと、都市空間における建築群を空間化してゆくための指針として、次の三つの問題を考える。
 1)人間的空間と機械的空間の分離
 2)建築構成方法
 3)計画地域の特性
  これらの問題を具体的に四谷地区を選び、ケース・スタデイを通して考察した。四谷地区計画でそれぞれの問題について次のように考えた。
 1)人と車の分離
 2)オフィスビル・ショッピングセンター・アミューズメントセンターの構成方法
 3)四谷地区は、環状線の中央に位置しており交通の要所である。一方外濠を代表とする歴史的な背景および、国立国会図書館を代表として、教会・学校等の文教施設が多いことから、静かで自然に恵まれた環境にある。

四谷地区計画
 甲州街道とそれに平行に計画したサービス用道路ではさまれた、オフィス・ショッピング・アミューズメント広場を持った新しいプロムナードと、現在憩いの場として人々に親しまれている外濠の土手を持つプロムナードと十字に結びつける。すなわち広場を中心とした都市的魅力のある軸と、旧来の面影を残している自然環境を生かした軸から成っている。

 

四谷駅計画
 二つの軸の交差点に国鉄・地下鉄四谷駅が位置している。車は駅を中心に周囲四本の道路がロータリーを構成しておりそこから車寄せに入る。バスターミナルは別に放射道路および環状道路に一つずつ計画した。鉄道は現在位置として、鉄道駅およびバスターミナルから出てくる人々は、ショッピングおよび文教施設へとそれぞれ二つの軸に誘導されてゆく。駅ビルはオフィスの機能を持っており、濠に窪んだ低いところから聳え立つ二本のツインタワーは四谷駅のシンボルとしてゲイト的な意味を持っている。
 このケース・スタデイを通して意図したことは、都市空間とは、オフィス・ショッピング・教会・住宅・交通機関・・・・と様々なものが折重なった多様で多彩な空間であるが、そこに試みられる新しい試みも、その周囲の環境を生かしつつ、ある秩序のなかに有機的に働くように再生されなければならないことである。

 

トップページ    絵画 トップ    木工作 トップ    著作    リンク