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 これまでの出版物――超常現象研究

 これまでの出版物は、おおまかに言えば、私の心理療法やその基本概念である幸福否定という視点に関係するものと、超常現象関係のものとに分かれます。ここでは、超常現象関係の主だったものについて、それぞれを簡単に紹介します。関連論文や関連情報についても、リンクを張っておきましたので、参照してください。ここに収録されていない2,3の共訳書については、翻訳書のページをご覧ください。また、私の心理療法の説明については、これまでの出版物――心理学関係を参照してください。

『超心理学研究』

 おうふう、1994年。A5判、上製函入、424ページ、人名事項索引。定価20,388円。

 超常現象を、“とらえにくさ”という側面から眺めた概説書です。最初は、1989年に同じ系列のブレーン出版から、「超心理学ハンドブック」というタイトル(定価16,480円)で500部出版され、それが完売になったため、200部の限定でタイトルを変えて再刊されたものです。超常現象が実在するとすれば、“とらえにくさ”という特性があることはまちがいありません。しかも、それは、消極的なものではなく、“保有抵抗”と“目撃抑制”という興味深い特性を含め、きわめて積極的かつ明確な特性をいくつか持っているのです。

 私の考えでは、超常現象がもっている最大の特徴は、このとらえにくさ目標指向性のふたつです。批判者には、これらは、いかにも魔術的でうさんくさく見えるかもしれませんが、超常現象の実在を裏づける証拠は、これまで数多く蓄積されており、アメリカ国立医学図書館が運営する PubMed で検索すればすぐにわかるように、LancetAmerican Journal of Psychiatry を筆頭に、欧米の一流医学雑誌や心理学雑誌にも肯定的論文が少なからず掲載されているので、科学者たちもあっさりとは無視できないはずなのです。なお、とらえにくさについては、以下に紹介する別編著(『超常現象のとらえにくさ』)がありますので、参照してください。

 なお、本書の目次は次の通りです。

まえがき
第1章 「科学者」は超心理学をどう見ているか
第2章 ESP(超感覚的知覚)の研究
第3章 PK(念力)の研究
第4章 死後生存の研究
第5章 超常現象の「とらえにくさ」について
第6章 今後の超心理学はどうあるべきか
付録:世界を代表する超心理学者20名
   超心理学の歴史
   参考図書・定期刊行物・研究団体

 本書をもとにして、文庫本として再編集し、講談社(プラスアルファ文庫)から一般読者向けに出版したのが、『超心理学読本』です。ただ今、品切れになっており古書でしか入手できませんが、その「文庫版のためのまえがき」には、次のように書かれています。

 超常現象を肯定する人たちも否定する人たちも、ほとんどが、「あるはずだ」とか「ないはずだ」という一種の信仰に基づいて判断を下しており、超心理学の歴史や研究について深い知識を持ち、それに基づいて、超常現象の研究を公平な立場から眺める人はほとんどいないようです。そのような現実を考えると、超常現象の存在を肯定する方々ばかりでなく、否定する方々にも、ぜひ本書を、批判的な立場からお読みいただきたいと思います。そして、どちらの側からであれ、超常現象の研究に真剣に関心を持っていただけたなら、著者として、それにまさる喜びはありません。

 上の表紙をクリックすると、出版社の当該ページに、『超心理学読本』の表紙をクリックすると、アマゾンの当該ページに飛びます。なお、『超心理学読本』については、Journal of Scientific Exploration, vol. 16 (No. 1) に書評が掲載されていますので、関心のある方はご覧ください。

『サイの戦場――超心理学論争全史』(編著書)

 平凡社、1987年。四六判上製、668ページ、巻末資料、用語集、参考文献。定価3,800円(+税)。

 超常現象の実在にまつわる、昔から続いている論争を、第三者的な立場から眺めようとした編著書です。超常現象にまつわる論争には、他の科学分野では決して見られない奇妙な特徴があります。それは、論争が始まってからすでに100年以上が経過しているにもかかわらず、依然として超常現象実在の有無から離れられないということです。他の科学分野では、絶対に見られないこうした特徴が、超常現象の論争にはなぜ見られるのでしょうか。この点は、実に不思議なことなのですが、そこに注目する科学者はあまりいないようです。

 本書は、欧米の科学雑誌に発表された27編の論文と、わが国の研究者が発表した1編の論文を7部にまとめて収録し、結論部を私が執筆しています。本書は、超常現象の否定論者の非論理性を明らかにし、そうした立場を徹底的に批判するために出版されたものなのですが、当方の趣旨が伝わらないせいなのか、否定論者からの評価が終始一貫して高いのは非常に不思議です。なお、本書の序文は、アメリカのフロイト派精神分析医であった故・ジュール・アイゼンバッドの寄稿によるものです。編者による序文には、次のように書かれています。

 超心理学に対する批判には他には見られない変わった特徴がある。(1)超心理学の門外漢が、(2)超心理学の知識をほとんど持たないまま、(3)非論理的没論理的非難を行なった“論文”が、(4)専門家である超心理学者の審査を(どうやら)経ることなく、(5)一流とされる(もちろん日本ではなく欧米の)科学専門誌に掲載されるなどの例が少なくないことである。〔中略〕この点は、超常現象の有無にかかわらず、きわめて重大な問題である。ところがこの点については、超心理学者や、コリンズやマックレノンをはじめとするごく一部の社会学者、およびマウスコップらの歴史学者を除いて関心を示すことが稀であり、時にはこのような扱いが当然のごとくに考えられる場合すらあるのが現状である。本書では、そうした現実とその理由とをできる限り浮彫りにしたいと思うが、その試みがいささかなりとも成功したと言えるかどうかは、読者の方々の判断に待つ他ない。(本書「序論」より)

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。本書には、Journal of Parapsychology に掲載された次の書評があります。

Hagio, S. (1988). Review: Sai no Senjo. Journal of Parapsychology, 52, 180-181.

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『超常現象のとらえにくさ』(編著書)

 春秋社、1993年。viii +776+61ページ。四六版ハードカバー、36ページの参考文献。人名、事項索引。定価9990円。

『サイの戦場──超心理学論争全史』(平凡社)の続編に当たります。『サイの戦場』では、超常現象に対する批判者の論証の不合理性を浮き彫りにしたつもりですが、それは、本書のためのいわば布石になっていました。本書は、超常現象をとらえにくくしている本質を、世界的な超心理学者たちによる39本の論文を通じて探る試みです。私の依頼を受けて、本書のためにケネス・バチェルダーが執筆し、アメリカの人類学者パトリック・ガイスラーが編集した長文の遺稿(後に『アメリカ心霊研究協会誌 Journal of the American Society for Psychical Research』Vol 88 (2) に転載)も収録されています。

 超常現象が実在しないとすれば、超常現象は実在しないとする批判者の主張は当然のことながら正当であることになり、超常現象の目標指向性ととらえにくさとされるものは、自説を補強する目的で超心理学者が作りあげた妄説であることになる。逆に、超常現象が実在するとすれば、そうした批判者の主張は必然的に誤りということになり、超常現象は目標指向性ととらえにくさという特徴を有し、現行の科学知識の根本的見直しが必要であることになる。しかるに、心霊研究や超心理学がこれまで提出してきた偶発例や実験的研究の報告を見る限り、物理科学的な意味での再現性は乏しいかもしれないが、超常現象の実在は既に証明されていると言ってよいように思われるにもかかわらず、一般の科学者をはじめとする批判者は、超常現象の実在を裏付ける有力な証拠を巧みに回避しつつ、与しやすい証拠をその攻撃目標に設定し、自分の専門領域では決して用いないほどの感情的“論理帝国主義”的没論理(笠原、一九九二、一八四ページ)をなりふりかまわず振りかざし続け、自らの分野の唯物論的アプローチに亀裂が見え始めている現状を見向こうともせず、超常現象の証拠とされるものを依然として拒絶し続けている。いったいこれは、どういうことなのであろうか。よく言われるように、自らの拠って立つパラダイムが崩壊することを恐れているためなのであろうか。(本書「序論」より)

 本書の簡単な目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

 本書は、『超心理学雑誌 Journal of Parapsychology』vol. 57 (no. 3) に書評があり、M. A. Thalbourne & L. Storm (Eds.).(2004). Parapsychology in the Twenty-First Century (pp. 38-62). Jefferson, NC: McFarland に収録されている、アメリカの心理学者ウィリアム・ブラウドの論文でもふれられています。

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『死後の生存の科学』(編訳書)

叢文社、1984年。四六版ハードカバー、vii+342+17ページ。

 イアン・スティーヴンソンの研究を中心に、死後生存(存続)研究の15本の論文を、医学、心理学、超心理学の専門誌から収録したアンソロジーです。以下の目次からわかるように、本書には、各分野の死後存続研究がコンパクトにまとめられています。このような本は、世界中を探しても他にはほとんどありません。

 また本書には、特に日本人にとって興味深い、ビルマで戦死したと主張する元日本兵の生まれ変わりの事例が収録されています。同種の事例は、これまでに二十数例知られているようですが、本例はそのうちの一例です。この論文は、Ian Stevenson on Reincarnation という特集号の中の1編として、Journal of Nervous and Mental Disease という神経・精神医学の一流専門誌に掲載されたもの(Southeast Asian interpretation of gender dysphoria)です。他の収録論文の中にも、JAMA: Journal of the American Medical Association, American Journal of Psychiatry などの一流誌に掲載されたものがあります。その意味で、本書は重要な参考書と言えるでしょう。

 なお、本書の目次は次の通りです。

第一部 科学的研究の歴史
第二部 証拠と確信度
第三部 霊媒の研究
第四部 霊姿とポルターガイスト
第五部 臨死体験の研究
第六部 生まれ変わりと真性異言
第七部 死後生存の理論
第八部 死後生存研究の今後
補章
執筆者紹介・用語集・参考文献

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『霊魂離脱の科学』(編著書)

 叢文社、1983年。四六版ハードカバー、279+15ページ。参考文献

 本書は、肉体離脱体験(体脱体験=Out-of-Body Experience, OBE)に関する9本の研究論文を、主として医学、心理学、超心理学の専門誌から収録したアンソロジーです(「体脱体験の超心理学」という最後の章を私が書いています)。体脱体験は、死後生存研究の一分野なのですが、ほとんどが主観的な体験なので、客観性に乏しく、死後生存を裏づける証拠としては、臨死体験と並んでそれほど強くありません。しかし、この分野でもそれなりの工夫が施されており、その点では、本書に収録された、後にエジンバラ大学ケストラー講座教授となった故ロバート・モリスによる実験的研究(「体脱体験中のコミュニケーションの研究」)がその嚆矢と言えるでしょう。

 本書には、イギリスの科学雑誌『ネイチャーNature』に掲載されたことから、わが国でも一時話題になった SRI の研究者ラッセル・ターグとハロルド・パトーフが、ユリ・ゲラーらの透視能力者を対象に行なった実験の論文("Information transfer under conditions of sensory shielding." Nature, 251, 602-607)も収められています。 後に、スターゲイト計画として知られるようになったアメリカ陸軍の極秘計画は、この論文から始まったとも言われています。なお、本書のタイトルは、少々うさんくさく感じられると思いますが、これは出版社の意向でつけられたものです。

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『心霊研究――その歴史、原理、実践』(監訳書)

 Psychical Research: Its History, Principles and Practices, ed. by I. Grattan-Guiness 技術出版、1984年。B5版ハードカバー、vii + 414 ページ。16 ページの索引。定価 3,800 円

 本書は、イギリスの心霊研究協会が、創立 100 周年を記念して刊行した、超常現象研究のアンソロジーです。執筆者は、ガードルード・シュマイドラー、ジュール・アイゼンバッド、レックス・G・スタンフォード、イアン・スティーヴンソン、ジョン・ベロフ、ハンス・ベンダー、リチャード・S・ブラウトン、ジャン・エレンウォルドをはじめ、各方面を代表する 29 名の著名な専門家です。今、著者たちの名前をあらためて眺めると、大御所ばかりであることに驚かされます。現在、この方面の研究の世界的退潮に伴って、全体として研究者が小粒になってきているので、今後、これほどのアンソロジーが出版されることはないでしょう。まだ邦訳されていない、Handbook of Parapsychology という、やはり分担執筆の 1977 年刊行の教科書的大著がありますが、それを除けば、これほどの本は、これまでにもほとんどないと思います。

 本書は,「編者による序文」にも明記されている通り,専門家向けではなく,入門者や,この方面に関心を持つ一般読者に向けて書かれたものです。これまで日本語でも,超常現象の研究全般に関する図書はいくつか出版されてきました(たとえば,笠原 1994; ベロフ 1986; ラインら 1964)が,一般向けで網羅的なものはほとんどありませんでした。そのような観点からしても,本書の持つ意義は大きいと思いますが,もっと大きいのは,重要な研究であり,さかんに引用されながら,これまで日本語に翻訳されたことのなかった方面の論文がいくつか収録されていることでしょう。それは,ジュール・アイゼンバッドの念写研究であり,レックス・スタンフォードのPMIRモデルにまつわる研究であり,ガートルード・シュマイドラーの“山羊=羊効果”に関する研究であり,ジョン・ベロフの非唯物論的研究です。
 死後生存研究の第一人者であるヴァージニア大学のイアン・スティーヴンソンは,自著の中で本書を,手短に超常現象の研究がまとめられている有用な図書として推薦しています(スティーヴンソン 1990年,404ページ)。いくつかの書評(Rao 1983; Stokes 1983; Weiner 1984; Zingrone-Solomon 1983)でも指摘されている通り,本書の場合も分担執筆の弱点を免れず,重複が多く,執筆水準にばらつきがあるなどの問題もありますが,それよりも,本書一冊に目を通せば,超常現象の研究についてひと通りのことがわかるという利点の方がはるかに大きいように思われます。(本書「訳者後記」より)

 本訳書は、無名に近い出版社から出ているため、一般にはあまり知られていないようですが、上の引用文でスティーヴンソンが述べているように、実際には非常に重要な参考文献であることはまちがいありません。

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『超心理学史』(翻訳書)

 Parapsychology: A Concise History, by John Beloff 日本教文社、1998年。人名、事項索引。四六版ハードカバー、viii+358+12ページ。定価2667円

 イアン・スティーヴンソンと並んで、現代超心理学界の長老格の研究者だった故ジョン・ベロフによる、本格的な超心理学史です。やはりイギリスの心霊研究協会創立百周年に合わせて出版されました。安易な妥協に流れず、これまで得られた証拠をきわめて厳密に検討しています。著者は、本書に寄せた日本語版序文の中で、当時のわが国の超常現象研究について、次のように書いています。

 本書では、福来友吉氏の興味深い研究を簡単に紹介していることを除けば、日本の超心理学についてほとんど触れられていませんが、そのことによって、日本の読者の方々があまり落胆されないよう願うばかりです。福来氏は、世界で最初に〈念写 thoughtography〉という現象に取り組んだ研究者で、その著書は、一九一三年に日本語で、三一年に英語で出版されました(私の書斎にも、その英語版が所蔵されています)。氏の研究に対する関心は、一九六〇年代後半にアメリカで、テッド・シリアス氏が活躍するようになった時点で再び呼び覚まされたわけですが、残念なことに福来氏は、このような禁断のテーマに関心を抱いたばかりに、大変な代価を支払わなければならず、東京帝国大学からの辞職を余儀なくされたのでした。

 日本の超常現象研究には、他にはあまり見るべきものがない、という著者の見解は、著者独自のものというよりは、まことに残念ながら他の海外の研究者とも共通するものなのでしょう。そう考えると、福来友吉の研究がいかに突出したものであったかがわかろうというものです。

 超常現象の実在を裏づける証拠は、歯がゆいばかりに人間の追求を逃れ続けて今日に至っています。その理由が何であれ、また超常現象にどのような立場から取り組んだにせよ、九〇年前にアメリカ心理学の創始者ウィリアム・ジェイムズをして、「心霊研究者は……二五年程度で進歩が望めると考えるのは早計であり、五〇年ないしは一〇〇年を想定しなければならない」(本書二七六ページ)と言わしめた(にもかかわらず同様の状況が、九〇年後の現在でも依然として続いている)ように、それこそが超常現象の特徴なのでしょう。しかし、それは超常現象が存在しないためではないことは、本書を通読すればおわかりいただけるはずです。(本書「訳者後記」より)

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『PSI──その不思議な世界(翻訳書)

 PSI--What is it? by Louisa E. Rhine  日本教文社、1983年。四六版ソフトカバー、361ページ。定価1680円

 有名なJ・B・ラインは、超常現象の研究を一般の科学者にも受け入れられやすいものにしようとして、心理学実験法に範をとり、統計学の第一人者の協力を得ながら、統計学的な実験超心理学の方法論を築きあげたわけですが、本書は、そのJ・B・ラインという夫とともに、半世紀以上にわたって超心理学の研究を続けてきた女性超心理学者が、小中学生向けに執筆した小著の邦訳です。超常現象について経験的にはほとんど知らない者が、文献だけを駆使して書いたものと違って、この分野に通暁した専門家が書いたものなので、一文一文にその経験の裏打ちが感じられます。

 J・B・ラインが、統計的な実験法を好んだのに対して、著者は、偶発的に起こるサイ体験(超常現象体験)に関心を持ち続けました。そのため、本書でも、そうした体験が重視されています。先のイアン・スティーヴンソンも、生まれ変わり型事例に限らず、偶発例全般の研究を重視していました(そうした研究を、たとえば、以下に掲載している『虫の知らせの科学』として発表しているわけです)が、スティーヴンソンが個々の事例を厳密に検証し、それが事実かどうかを徹底的に調べようとしていたのに対して、著者は、偶発例をたくさん集め、それを統計的に分析することによって信憑性を高めようとしていました。

 本書の巻末には、ESPと念力の統計的実験法が、一読すれば簡単に実施できるように具体的に書かれています。ついでながらふれておくと、私はこの日本語版への序文を依頼し、著者から快諾を得ていたのですが、結局それはかないませんでした。その前に逝去されたからです。一般に超常現象の研究者は長命ですが、著者もその例外ではなく、享年は91歳でした。しかも、最晩年に至るまで、新著を発表し続けていたのです。

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『死後生存の証拠』(翻訳書)

 Evidence of Purpose; Evidence of Identity, by Kenneth Richmond; Zoe Richmond 技術出版、1990年。A5版ハードカバー、iii + 287ページ。定価2,200円

 本書は、イギリスの心霊研究協会に保管されている資料を基にして、1938年および39年にロンドンで刊行された Psychical Experiences と銘打たれた双書のうち、死後生存関係の2点の著書を、1冊にまとめて邦訳したものです。夫の Kenneth は、心霊研究協会の運営にもかかわっていた心理学者であり、妻の Zoe は、心霊研究協会で行なわれた実験で被験者を務めたこともある自動書記能力者です。

 Kenneth の執筆になる Evidence of Purpose のほうは、生者と交信してくる存在が、目的や意志を持っていることを示す証拠としての事例集であり、Zoe の執筆した Evidence of Identity のほうは、この世に交信してくる故人が、特定の人物であることを確認するための証拠に関する検討です。いずれも、今なお、死後生存研究の根幹にかかわる重大な問題です。

 本書の目次は次の通りです。

第一部 交信してくる者が、目的や意志を持っていることを示す証拠(Kenneth Richmond)
 序 論
 第一章 夢その他として出現する、意志らしきものを示す偶発的霊姿
 第二章 根拠が明らかにされた意志の存在を示す衝動的直感
 第三章 霊媒を通じて得られた、意志の存在を示す交信
 結 語
第二部 交信してくる死者を、特定の人物と確認するための証拠(Zoe Richmond)
 序 論
 第一章 当人を当人たらしめるものは何か
 第二章
   1 その時その場にいた者には知られていた、描写的証拠
   2 交信者に対する情報が与えられる者には知られていない証拠
   3 代理交霊会
 第三章 様式と文体による証拠――「オスカー・ワイルド」の手稿
 第四章 証拠を大量に生み出す実験――「幽霊の本」
 第五章 隠された物品にまつわる証拠
 第六章 特徴的な知識を持っていることを裏付ける証拠――「レーテの事例」
 結 語
原註・用語集

 本書も、無名の出版社から出ているため、ほとんどその存在が知られていないのは大変残念なことです。しかし、昔も今も、本書のテーマが重要な問題であることはまちがいありません。

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『死後の生命』(翻訳書)

Beyond Death, by R. Almeder TBSブリタニカ、1992年。四六版ハードカバー、261ページ。定価1600円

 本書は、アメリカの哲学者による、死後生存を裏づける証拠について厳密に検証を行なっている著作です。超常現象に強い関心を持つ哲学者は、欧米でも数が比較的少ないので、その意味でも本書は貴重な存在と言えるでしょう。

 本書の目的は、生まれ変わりや死者の霊姿、体脱体験、死者からの通信、憑依などに関する新しい事例研究を行なうことではないし、興味深い事例研究を列挙することでもない。本書の目的はむしろ、このようなテーマに関する、信頼性と実証性の最も高い事例をまとめ合わせた場合、どの程度の説得力を生ずるか、つまり、どの程度の知的価値があるかを評価することにある。〔中略〕そうした事例は、現時点での最強の証拠を提出しているのである。(本書「まえがき」より)

 本書の邦訳を私に勧めてくれたイアン・スティーヴンソンは、本書に寄せた「解説」の中で、次のように書いています。

 アルメダーは哲学の専門家として、多くの懐疑論者をとらえ、心霊現象の比較的有力な証拠を公平に評価するのを妨げる思い込みを明らかにするための訓練を積んでいるし、そのための技術論も手にしている。〔中略〕私見によればアルメダーは、死後の生命の過程が解明できなければ死後の生命の存在を裏づける証拠は受け入れられない、とする論法をみごとに論破している。〔中略〕いかなる形の偏見を持っているにしても、二、三時間で死後の世界の存在を裏づける証拠に関する資料に眼を通したいと万が一考える方が懐疑的な科学者や哲学者の中におられたなら、私としては本書を推薦したい。(本書「解説」より)

 著者は、これまでに集積されてきた、人間の死後生存を裏づける証拠から、物理現象の場合のような再現性はないものの、「現在得られている証拠によって、人間の死後生存に関する確固たる知識が確かに得られる」と結論づけています。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『前世を記憶する子どもたち』(翻訳書)

 Children Who Remember Previous Lives, by Ian Stevenson 日本教文社、1990年。四六版ハードカバー、索引、548ページ。定価2960円

 本書は、前世を記憶する子どもたちのフィールドワークの第一人者であった、ヴァージニア大学人格研究室、故イアン・スティーヴンソン教授の一般向けの概説書です。その中で、生まれ変わり型事例が12例紹介されています。非常に興味深い事例ばかりですが、本書の特徴はそれにはとどまりません。生まれ変わりという概念がどのような意味を持つかについても詳しく書かれており、それに関連する医学や心理学の参考文献も多数掲げられているので、専門家にとっても非常に価値の高い参考書になっているのです。それは、特に第9、10、11章とその註の部分です。

 著者は、心身医学の黎明期に活躍した経歴を持つ、優れた精神科医でもあるので、大量の医学文献の中から、他の研究者が気づかない重要な論文を巧みに探し出し、それを適切に引用しています。それらの文献は、生まれ変わりという問題を離れても、心身問題を研究するうえで非常に貴重な資料になると思います。

 現在の科学知識では、心は脳の活動の結果として生ずるものにすぎないことになっており、しかも人間の個性は、両親からの遺伝と環境というふたつの要因の産物ということになっているため、それ以外の要因が考慮されることはありません。ところが、前世の記憶が本当に存在することになると、その記憶が脳に蓄えられていたはずはないことになります。そうすると、現在の科学知識が教えるように、海馬こそ記憶の座だなどと断定してすませることはできなくなります。そのようなとてつもない結論になるからこそ、この方面の研究はとてつもなく重要であり、したがって、その真偽の確認にはきわめて慎重な態度で臨まなければならないとスティヴンソンは考えるわけです。

 なお、日本でも欧米でも、催眠を用いた“前世療法”が好んで行われていますが、経験を重視する著者は、それに非常に懐疑的であり、本書の「まえがき」でも次のように特記しています。

 遺憾ながら催眠の専門家の中には、催眠を使えば誰でも前世の記憶を蘇らせることができると主張している者もある。私としては、心得違いの催眠ブームを、あるいは、それに乗じて不届きにも金儲けの対象にしている者があるという現状を、特に前世の記憶を探り出す確実な方法だとして催眠が用いられている状況を、何とか終息させたいと考えている。

 そして、著者は、そのために、A case of the psychotherapist's fallacy: Hypnotic regression to "previous lives" という論文まで書いているのです。前世療法の治療者としてわが国でも有名なのは、アメリカのブライアン・ワイスでしょう。ワイスも確かに精神科医ですが、たとえば、著者の生まれ変わり研究の論文は、一流の医学雑誌に繰り返し掲載されている――つまり、著者の厳密な科学的研究法が、専門誌の編集委員たちに高く評価されていた――のに対して、後者の場合は(医学雑誌に掲載された本業の論文はいくつかあるとしても、前世療法に関する論文は)皆無であるという事実をみると、両者の違いは明らかでしょう。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『前世を記憶する子どもたち 2――ヨーロッパの事例から』(翻訳書)

 European Case of the Reincarnation Type, by Ian Stevenson 日本教文社、2005年。四六版ハードカバー、viii+575ページ、索引。定価2,700円

 ヴァージニア大学精神科を長年務めていたイアン・スティーヴンソン教授の、事実上最後の著書です。本書の意義は、中心人物がヨーロッパ人であるところにあります。中心人物がヨーロッパ人であるため、前世の人格が、たとえばナチの強制収容所で惨殺されたユダヤ人であったり、ジャコバイトとして戦ったスコットランド高地人であったり、第二次大戦で撃墜された英国空軍のパイロットであったりと、ヨーロッパの歴史と密接に関係しており、非常に興味深いと思います。著者は、それを可能な限り厳密かつ徹底的に調査し、中心人物の証言を裏づける証拠や、それを反証する証拠も公平に取りあげ、読者自身が判断できるような形で提示しています。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『生まれ変わりの刻印』(翻訳書)

 Where Reincarnation and Biology Intersect, by Ian Stevenson 春秋社、1998年。四六版ハードカバー、xiv+329+14ページ。 カラー図版、人名、事項索引。定価3,780円。

 生まれ変わりのフィールドワークの世界の第一人者であった、ヴァージニア大学精神科教授、故イアン・スティーヴンソンによる、生まれ変わりの実在を裏づける有力な証拠を提示した著書です。これは、生まれ変わり型事例の身体に見られる母斑と先天性欠損の貴重な写真が多数掲載された、総計2300ページほどの全2巻の親本 Reincarnation and Biology を一般向けに要約して出版したものです。親本は専門家向けのモノグラフで、写真はすべてモノクロですが、本書では口絵の写真がカラーになっています。 その中には、奇形としては非常に稀な、驚くべき写真がいくつか掲載されています。本書には、珍しい日本人の事例も一例紹介されています。

 興味深いことに、超常現象の証拠は、信憑性の高い実例が数多く提示されればされるほど、批判者からはもちろん、一般読者からも相手にされなくなる傾向があります。これは、いろいろな意味で非常に興味深い現象と言えるでしょう。

 なお、本書の目次は次の通りです。

日本語版への序文
まえがき
第1章 序 論
第2章 人間の心的イメージと一致する身体的変化
第3章 他者の心的イメージに対応する身体的変化
第4章 前世の創傷と一致することが確認されていない母斑
第5章 情報提供者の記憶により確認された傷痕と一致する母斑
第6章 医学的記録により確認された創傷と一致する母斑
第7章 故人の手術痕その他の皮膚外傷と一致する母斑
第8章 故人の体にあった別種の創傷やあざと一致する母斑
第9章 故人の創傷やあざと一致する母斑
第10章 母斑の予言
第11章 母斑の外見や相対的位置の変化
第12章 故人の創傷やあざと母斑との細部の符合
第13章 母斑とそれに符合するとされる創傷との不一致
第14章 前世に起因するとされる母斑と相関する若干の要因
第15章 前世に関係する母斑の解釈
第16章 先天性欠損を持つ事例の序論
第17章 四肢の先天性欠損
第18章 頭部と頸部の先天性欠損
第19章 体の二ヵ所以上にある先天性欠損
第20章 実験的先天性欠損
第21章 前世に関係した内科的疾患
第22章 前世に由来する可能性のある色素形成の異常
第23章 前世に関係する体格、姿勢、身振り、その他の無意識的動作
第24章 母斑や先天性欠損の一型としての顔
第25章 前世の記憶を持つ双生児
第26章 全般的考察
訳者後記
人名・事項索引

 ついでながらふれておくと、わが国の“懐疑論者”たちには、自力で批判するだけの知識も力量もないため、海外の“懐疑論者”による“批判”を引用して批判したつもりになるという傾向がきわめて強く見られます。その場合、そもそも批判の内容自体も問題なのですが、それを別にしても、批判をしたいなら自力ですべきでしょう。言うまでもないことですが、これは非常に情けないことです。

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『前世の言葉を話す人々』(翻訳書)

 Unlearned Language: New Studies in Xenoglossy, by Ian Stevenson 春秋社、1995年。四六版ハードカバー、iv+325+8ページ。人名、事項索引。定価3296円。

 生まれ変わりのフィールドワークの世界の第一人者である、ヴァージニア大学精神科教授、故イアン・スティーヴンソンによる貴重な貢献です。本書の一部は『アメリカ精神医学雑誌 American Journal of Psychiatry』にも掲載されています。真性異言には、朗唱型と応答型とがありますが、歌や詩のように、決まった言葉を意味もわからず繰り返すだけの朗唱型が圧倒的多数を占め、その言葉の話し手とある程度にせよ筋の通った会話が可能な応答型はきわめて稀であり、それらしき事例はこれまでほとんど知られていません。そして、スティーヴンソンは、そのうちの3例を研究しており、本書には、うち2例(ドイツ語を話すアメリカ人女性とベンガル語を話すインド人女性)が紹介されています。

日本語版序文
序 言
第1部 グレートヒェンの事例
第2部 シャラーダの事例
全般的考察
原註
付録A グレートヒェンを対象としたセッションの書き起こしの抜粋
付録B シャラーダとの対話の記録およびテープ録音からの抜粋した部分の翻訳
訳者後記
人名、事項索引・参考文献

 その三例は、本来の人格とは別の人格が出現し、本人がそれまで知らなかったはずの言葉をある程度自在に話すという点では共通しているわけですが、そのうちの一例は、それなりのきっかけはあったものの自発的に人格変化を起こしているのに対して、残る二例では、別の人格が催眠によって誘発されています。

 催眠により・前世の記憶・が誘発されたように思われる事例としては、後述する「ブライディー・マーフィーの事例」(文献4)が有名であるし、最近でも、シカゴ在住の中年女性が十六世紀のスペイン女性の生涯を詳細に物語った、信憑性の高い事例が報告されている(文献8)。しかしながらスティーヴンソンは、むしろ、催眠によってそのような記憶が誘発される事例はきわめて稀であり、そうした研究を行なううえで催眠は有力な手段ではないとして、自著『前世を記憶する子どもたち』(日本教文社)の中で、催眠を用いた前世記憶の研究や・前世療法・について、かなり強い批判を行なっているのである。(本書「訳者後記」より)

 上の『生まれ変わりの刻印』の説明でも述べておいたように、かなり厳密な検証がされているためでしょうが、本書も、批判者からであれ一般読者からであれ、ほとんど無視されています。上の表紙をクリックすると、アマゾンの当該ページに飛びます。

『生まれ変わりの研究―前世を記憶するインドの人々』(翻訳書)

 Claims of Reincarnation, by S. Pasricha 日本教文社、1994年。四六版ハードカバー、ix+330+19ページ。人名、事項索引。定価2600円。

 イアン・スティーヴンソンの共同研究者でもあった、インドの女性心理学者による、この方面の研究への非常に貴重な貢献です。わが国で翻訳出版されている本は、ほとんどが欧米で出版されたものですが、本書の原著は、珍しくインドの出版社から刊行されています。博士論文をもとにしているため、全体がモノグラフの体裁になっていて、一般読者には取りつきにくいかもしれませんが、非常に興味深い事例が数多く紹介されている、きわめて重要な著書と言えます。

 なお、本書の目次は次の通りです。

第1章 序 論
第2章 これまでの研究の再検討
第3章 今回の研究
第4章 結 果
第5章 考 察
第6章 要約と結論
第7章 最近の研究
第8章 将来の研究の方向
付録A 用語の説明
付録B 中心人物の氏名と事例の発生地
解 説
参考文献・索引

 本書で興味深いのは、第7章に紹介されているシャラーダの事例と、1985 年に発生したスミトラの事例です。シャラーダの事例は、スティーヴンソンの『前世の言葉を話す人々』で詳細に検討されており、生まれ変わり型事例として扱われていますが、スミトラの事例は、それよりもさらに珍しい、典型的な憑依型事例です。ウッタル・プラデーシュ州に住む 17 歳前後の既婚女性が、自らの予言に従って、「死んだ」ような状態に陥ります。呼吸が止まり、脈がなくなったため、家族が葬式の準備をしていると、突然に「生き返り」、しばらくすると、自分はシヴァという名前で別のところに住んでいたが、そこで嫁ぎ先の家族に殺害されたと語り始めます。そして、現在の夫や子どもを拒絶し、自分のふたりの子どものところへ連れて行ってほしいと求めたのです。

 自らがシヴァだとする主張に加えてスミトラは、以前とは全く異なる習慣も示すようになった。自分をバラモンだと名乗り、カーストも高く、教育もある都会的な女性のようにふるまったのである。数名の情報提供者から私たちは、スミトラが一度も学校に行ったことがなく、かろうじて読み書きができる程度にすぎなかったにもかかわらず、蘇生後は、ヒンディー語の読み書きの能力が驚くほど向上したことを知った。〔中略〕
 蘇生後スミトラは、サリーの着方も変え、以前は稀にしか履かなかったサンダルを履くようになった。また、家族の者に対する呼びかけの言葉も変わり、前よりもていねいな呼びかけをするようになった。

 その後、スミトラの存在を知ったシヴァの父親は、スミトラを自宅に訪ね、本人と対面すると、スミトラは、シヴァの父親を正しく見分けたうえ、シヴァがいつも呼んでいたのと同じく「パパ」と呼びかけて号泣したそうです。持参した家族のアルバムを見せると、本人は、そこに写っている 14 名の人物をそれぞれ正確に見分けることができたそうです。なお、この事例は、スティーヴンソンらと共著で、A case of the possession type in India with evidence of paranormal knowledge という論文として発表されています。

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『転生した子どもたち――ヴァージニア大学40年の「前世」研究』(翻訳書)

 Life Before Life, by J. Tucker 日本教文社、2006年。索引、328ページ、四六版ハードカバー、定価2000円。

 2008年に88歳で亡くなったイアン・スティーヴンソンの後継者である、ヴァージニア大学の児童精神科医ジム・タッカーによる最初の著作です。アメリカの子どもたちの事例がたくさん掲載されています。科学的な立場から、一般向けに噛み砕かれた説明があり、非常にわかりやすいものになっています。 序文をスティーヴンソンが書いています。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『臨死体験――生と死の境界で人はなにを見るのか』(共訳書)

 Near-Death Experience, edited by B. Greyson et al. 春秋社、1991年。四六版ハードカバー、x + 404 ページ。索引(第2版から)、定価3,200円。

 本書は、主として、医学雑誌や心理学雑誌その他に発表された、21 編の臨死体験の研究論文を集めたアンソロジーです。1980 年に、Journal of Nervous and Mental Disease という神経・精神医学雑誌に、臨死体験の小特集が掲載されたのですが、その一部も収録されています。ケネス・リング、ラッセル・ノイエス、ブルース・グレイソン、エルンスト・ロディン、ロナルド・シーゲル、カール・セイガン、カール・ベッカー、マイクル・グロッソ、レイモンド・ムーディらが、それぞれの立場から寄稿しています。そのうち、ノイエスやセイガンは、この現象を通常の現象と主張しています。臨死体験のアンソロジー自体が他に存在しないことに加えて、双方の立場からの論文を集めているという点でも、本書は貴重な存在です。なお、「まえがき」は、『あの世からの「帰還」』の著者である、心臓病専門医のマイクル・セイボムが書いています。

 なお、本書の目次は次の通りです。

まえがき
序 言
第一部 臨死研究序説(臨死研究の概要)
  第一章 臨死研究の概要
第二部 臨死体験の諸相(生命を脅かす危機状況に対する心理的反応
  第二章 生命を脅かす危機状況に対する心理的反応
  第三章 臨死体験の研究
  第四章 臨死体験を計測する
  第五章 臨死体験尺度
第三部 臨死体験の理論(死体験の実在性
  第六章 死体験の実在性
  第七章 エルンスト・ロディンの「死体験の実在性」について
  第八章 死後の生命の心理学
  第九章 臨死体験
  第一〇章 ストレスに起因する大脳辺縁葉機能異常の病態生理学
  第一一章 母胎の中の宇宙
  第一二章 出生モデルではなぜ臨死現象の説明ができないか
  第一三章 臨死体験の精神力動
  第一四章 ユング、超心理学、臨死体験
第四部 臨死体験の臨床的側面(臨死体験
  第一五章 臨死体験――臨床医のジレンマ
  第一六章 臨死時の現象と集中治療看護
  第一七章 ラザロ症候群
  第一八章 臨死体験者に対する臨床的関与
第五部 臨死体験の結果として生ずるもの(臨死体験と自殺未遂
  第一九章 臨死体験者と自殺未遂
  第二〇章 人間の死体験
  第二一章 臨死体験者の変容の意味
訳者後記・参考文献
索 引

 著名な天文学者であり、超常現象の否定論者としても知られていたカール・セイガンは、本書に収録された論文の中で、臨死体験を出生時の体験を蘇らせたものにすぎないという主張をしています。それに対して、カール・ベッカー(現、京都大学大学院教授)は、セイガンの「出生モデル」では、肝心な部分が無視されていると反論しています。

 本書は、学問的立場から見ると非常に重要な位置づけを与えられてしかるべきなのですが、わが国では、そのような立場の科学者が皆無に近いため、本書はほとんど無視されて現在に至っています。これは、科学知識の増進という点を考えると、非常に残念なことと言わざるをえません。

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『光の彼方に――死後の世界を垣間みた人々』(共訳書)

 The Light Beyond, by R. Moody TBSブリタニカ、1990年。四六版ハードカバー、256 ページ。定価1,600円。

 本書は、臨死体験を世に知らしめたアメリカの精神科医レイモンド・ムーディによる、臨死体験に関する第3作目の著書の邦訳です。ムーディの著書は、科学的な方法をあまり使っておらず、体験を列挙する以上のことはあまりしていないため、それ自体の重要性は高くないのですが、ムーディの著作に触発された科学者たちが、臨死体験の研究をするようになりました。そして、それが発展して、現在の 国際臨死研究協会 IANDSになったのです。

 本書の目次は次の通りです。

日本語版刊行によせて  別華薫(カール・ベッカー)
まえがき アンドリュー・グリーリー
第一章 死の淵での体験
第二章 変わってしまった人生
第三章 子供と臨死他県――守護天使に会う
第四章 なぜ臨死体験は私たちを引きつけるか
第五章 なぜ臨死体験は精神病ではないのか
第六章 臨死体験の研究者たち
第七章 解 釈
第8章 結び――言語に絶する栄光
参考文献
解説 ジュディス・ミラー
訳者あとがき

 同種の体験については、超常現象研究の一環として既に 1926 年に、イギリスの物理学者 ウィリアム・バレット卿が行なったものがあります。ただし、それは、臨死状態に陥った後ではなく、臨終前の、意識が清明な時点で起こるもの(臨終時体験)です。これは、下に紹介する『人は死ぬ時何を見るのか』の先行研究に当たります。興味深いのは、両者が内容的にほとんど共通していることです。そうすると、臨死体験は、死に瀕した脳が起こした異常体験とは言いにくくなってしまいます。

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『新版「あの世」からの帰還』(翻訳書)

  Recollections of Death, by M. Sabom 日本教文社、2005年、四六版ソフトカバー、xv+392ページ、定価2000円。

 本訳書は、1986年5月に出版されて以来、おかげさまで、順調に版を重ねていたのですが、しばらく前から品切れ状態になっていました。2005年に新版として再刊するにあたり、翻訳も古くなり読みにくくなっていたため、全面的に手を入れて読みやすくしました。

 特にわが国の医師や心理学者は、臨死体験を、脳内の病的現象として説明したがりますが、そのような仮説では実際に説明できないことが、本書をご覧いただくとよくわかると思います。なお、 訳者後記もあらためて書き直しました。そこでは、日本の臨死体験研究史を簡単に振り返り、日本のW科学のありかたWについて検討しています。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『続「あの世」からの帰還』(翻訳書)

 Light & Death, by M. Sabom 日本教文社、2006年。四六版ソフトカバー、376ページ、索引、定価2200円。

 前著『「あの世」からの帰還』から16年後に書かれた、セイボムのきわめて重要な貢献です。世界的な脳神経外科医であるロバート・スペッツラーが執刀した女性患者に見られた顕著な臨死体験などが紹介され、ケネス・リングの研究法に対する鋭い批判があります。キリスト教的な観点から見た臨死体験についても詳細に記されています。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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『人は死ぬ時何を見るのか――臨死体験一〇〇〇人の証言』(翻訳書)

 At the Hour of Death, 2nd ed., by K. Osis, and E. Harraldsson 日本教文社、1991年。四六版ハードカバー、xvi + 370ページ、定価2,600円。

 本書は、『光の彼方に――死後の世界を垣間みた人々』の項でふれておいたように、臨死体験に類縁の“臨終時体験 Death-bed observation”と呼ばれる現象を集め、厳密に検討した科学的研究です。臨死体験を扱った著書はたくさんあるのに対して、臨終時体験の本はほとんどないので、あまり注目されることはありませんが、死後生存研究にとって非常に重要な研究領域だと思います。本書には、『死ぬ瞬間』などの一連の著作で有名な、故エリザベス・キュブラー=ロスが序文を寄せています。

 著者の故カーリス・オシスは、アメリカ心霊研究協会に所属する研究者でした。欧米でも、超常現象の研究に専念できる研究者は、現在はもちろん、当時としても非常に少なかったのです。共著者のエルレンドゥール・ハラルドソンは、アイスランド大学の心理学者で、他にも、先ごろ亡くなったインドの聖者サティア・サイババの研究(下に示す『サイババの奇蹟』)や、生まれ変わり型事例の研究(たとえば、Children who speak of past-life experiences; Personality and abilities of children claiming previous-life memories)で有名な研究者です。

 本書の目次は次の通りです。

序 文  エリザベス・キュブラー=ロス
第二版序文
第1章 死の神秘
第2章 変わってしまった人生
第3章 死後生存という概念は検証可能か
第4章 予備調査――幸先のよいスタート
第5章 死にゆく人間の見るもの
第6章 生きるべきか死ぬべきか
第7章 霊姿――末期患者の見る人間の幻覚
第8章 末期患者の見た霊姿の全般的特徴
第9章 霊姿体験のルーツを求めて T
第10章 霊姿体験のルーツを求めて U
第11章 抑うつと苦しみから心のなごみと安らぎへ
第12章 蘇った患者たち――臨死患者の報告
第13章 あの世の幻
第14章 死の意味
終章 解 釈
付録T 調査票
付録U 集計データ
参考文献・解説・訳者あとがき

 本研究の特徴は、アメリカとインドという、全く異なる文化圏の末期患者に接した経験を持つ、医師や看護師を対象に行なったアンケート調査を集計し、統計的に分析していることです。その結果、双方の文化圏の患者とも、同じような体験をしていることが明らかになりました。たとえば、“あの世”では、祖先や宗教的人物に出会うこと、体験後は死に対する恐怖心が消えることなどです。

 しかし、その一方で、文化的な差異が見られることも明らかになっています。興味深いものとしては、たとえばインドには、同姓同名の患者が、“まちがって”死亡してしまい、“あの世”でそのまちがいを発見されて下界に戻されると、そもそも“死ぬ予定だった”同姓同名の別の患者が、それと入れ替わるように死亡したなどの例があります。しかし、アメリカでは、このような例は見つからないようです。

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『虫の知らせの科学』(翻訳書)

 Telepathic Impressions, by Ian Stevenson 叢文社、1992年。四六版ソフトカバー、397ページ。 定価1,600円。

 イアン・スティーヴンソンによる、テレパシー的印象体験の有名な研究書です。原題の Telepathic Impressions とは、通常のテレパシーとは違って、明確なイメージや出来事が意識に伝わるのではなく、何か漠然とした感じや感覚によって意味内容が伝達されるという偶発的体験のことです。

 本書の目次は次の通りです。

第1章 序 論
第2章 過去に報告されている印象型事例の再検討
第3章 これまで未報告の印象型事例二十三例
第4章 印象型事例の亜型――これまで報告されたことのない十例について
第5章 伝達のプロセス
第6章 印象型事例からみた超感覚的知覚を裏づける証拠の強さについて
原註・参考文献・訳者後記

 著者は、心身医学の黎明期に活躍した研究者でもあるので、超感覚的に心身症状が伝達されたように思われる事例にも深い関心を寄せ、たとえば、次のような事例を紹介しています。これは、ある医学雑誌に報告されたものです。

 患者〔二十七歳〕は、妻との仲が非常に良く、ふたりが仮に離れていて、妻が痛みを感じているのがわからない場合であっても、妻の痛みと同時刻、同一箇所に痛みを感ずる、と主張している。妻が男児を出産中、患者は典型的な擬娩を経験し、その後、妻が産院で子宮疝痛を突発させた時に、後産陣痛を起こしたのである。

 この引用文に出てくる擬娩 couvade syndrome とは、本来の用法では、「妊婦の分娩を真似たり、本当に出産の苦しみを妊婦とともに共有する」という風習のことなのですが、ここでは、妻の身体的状態が、それを知らないはずの遠方の夫に超感覚的に伝達されたという意味で使われています。これが事実であれば、非常に興味深いことですが、著者は、そうしたものも含めて、個々の事例を非常に厳密に検討しています。

 本書は、最初、ハードカバーで1981年に刊行されたのですが、品切れになったため、1992年にソフトカバーで再刊されたものです。

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『トランス』(翻訳書)

 Trance, by B. Inglis 春秋社、1994年。四六版ハードカバー、iv+384+29ページ。人名、事項索引。定価3777円。

 本書は、イアン・スティーヴンソンの勧めを受けて邦訳したもので、精神科医や心理学者の間で名高いアンリ・エレンベルガー著『無意識の発見』(弘文堂)にも匹敵するほどの名著です。ちなみに、他にスティーヴンソンの勧めで邦訳した本には、先の『死後の生命』と、次の『サイババの奇蹟――インドの聖者の超常現象の科学的研究』『錆びたナイフの奇蹟』があります。

 著者のブライアン・イングリスは、歴史、医学、超常現象という3領域を対象に執筆活動を続けていたイギリスのジャーナリストです。英米人の場合、母語だけでほとんどの文献が読めてしまうという、とてつもない利得があるわけですが、それにしても、かなりの時間をかけてさまざまな領域の文献を渉猟し、それをきちんと理解しないかぎり、評価に値する本は書けません。本書は、いろいろな意味で貴重な著書と言えます。その中でも大きいのは、情報源としての有用性でしょう。種々様々な催眠現象、霊媒、共意識、戦争神経症、偽薬効果、多重人格などが、歴史的背景の中で次々に登場するのです。

 本書の目次は次の通りです。

第1章 場面の設定
第2章 神性か魔性か
第3章 探検者たち
第4章 二十年に及ぶ研究
第5章 包囲された唯物論
第6章 戦後の状況
第7章 ふたつのミステリー
第8章 再評価
訳者後記・参考文献・人名事項索引

 本書には、類書がほとんどないにもかかわらず、全くと言ってよいほど注目を受けることがありませんでした。これはむしろ、本書の価値が低いためというよりは、重要度が高い結果として、私の言う意味での抵抗が起こるためであるように思います。

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『サイババの奇蹟――インドの聖者の超常現象の科学的研究』(翻訳書)

 Miracles are My Visiting Cards, by E. Haraldsson 技術出版、1989年 A5版ソフトカバー、452ページ。定価2,700円。

 本書は、先ごろ、莫大な遺産を残して他界したインドの聖者サティア・サイババが起こしたとされる超常的現象を、至近距離から観察したり、そうした経験を持つサイババの信奉者たちへのインタビューを通じて、厳密に検証した、アイスランド大学の心理学者による著書です。サイババが起こしたとされる現象は、ほとんどが念力によるもので、専門的にはマクロPKと呼ばれる現象です。マクロPKとは、肉眼で直接に観察できる巨視的な念力現象を指す言葉です。

 サイババは、一時、掌から出すとされるビブーティ(聖灰)を、手品で出しているという疑いをかけられました。その結果、サイババの起こす現象はすべて不正行為によるものと断定されるようになったわけです。しかしながら、ここには、大きな問題が潜んでいます。ひとつには、著者がその後、手品が疑われたビデオを世界的に著名な奇術師に見てもらったところ、映像が不鮮明で、これだけでは手品かどうかの判断はできないと言われたことです。

 もうひとつの問題は、仮にビブーティを手品で出したという指摘が正しかったとしても、サイババが起こしたとされる他の現象もすぐさま手品によるものと考えてよいわけではないことです。本書には、規模の大きい、実にさまざまな実例が具体的に記述されています。サイババが起こしたとされる現象が本当なら、それは、多様性という点でも規模という点でも、通常の念力能力者による現象をはるかに越え、イエス・キリストの奇蹟に匹敵するほどのものであることになります。ハラルドソンが目の前で見せられた現象も、そのひとつです。

 ハラルドソンは、接見室に呼ばれてサイババと話している時、話の流れで、たまたまサイババが「双子のルドラクシャのように」という表現を使います。ルドラクシャとは菩提樹の実のことですが、その意味がわからなかった著者は、サイババに尋ねます。ところが、何度聞いても納得できなかった著者は、執拗に食い下がりました。まわりの人たちが著者の執拗さに辟易し始めた時、サイババは、右手を軽く握って2、3度振りました。そして拳を開くと、そこに、できたばかりのようにきれいな「双子のルドラクシャ」が載っていたのです。これは、自然界では大変珍しいもので、貧弱なものですら、とてつもない高額で取引されていることが、後に判明します。

 そればかりではありませんでした。サイババは、それを調べさせた後、「あなたに贈り物をしよう」と言ってルドラクシャを両手で包み、軽く息を吹きかけて開くと、今度は、そのルドラクシャに、小さなルビーと金の飾りがついて出てきたのでした(この写真を、私は著者から送られて持っていたのですが、印刷所で紛失されてしまいました。今となっては貴重なものですが、幸い邦訳の初版のカバーの背に、その写真が掲載されています。右の写真がカバーからとったものです。金の部分は、後に22金であることがわかったそうです)。もしこれが手品によるものだったとしたら、サイババが、できのよい双子のルドラクシャをふたつ用意し、そのうちのひとつに金とルビーの飾りをつけておいたうえで、ルドラクシャという言葉に著者がこだわるよう仕向け、偶然を装いながら、予定通りそのふたつを次々に取り出して見せた、と考えるしかありません。ところが、そのようにみごとな双子のルドラクシャは、そもそも自然界では大変珍しいものなのだそうです。

 しかしながら、これは単なる一例にすぎないのです。サイババの周辺では、特にサイババが若いころには、それよりもはるかに考えにくい現象が、日常的にたくさん起こっていたのです。それは、近くから見ていた信者たちの証言ばかりでなく、至近距離から何度となく観察した経験を持つ、ある奇術師の証言でも同じでした。その奇術師は、イギリスで教育を受けたファニブンダという名前の歯科医なのですが、その優れた手腕のため、国際奇術師協会から「リンキング・リング賞」を受賞した経歴の持ち主だったのです。

 ファニブンダは、「この国には、霊性を商売にしており、利己的な目的のために、騙されやすい人間をカモにしようとして手品を使う導師やババがたくさんいる」事実をよく承知していた。そのため氏は「信者の主張するように、本当に空中からいろいろな物を物質化しているのか、手品を使って取り出しているのかを何とか明らかにしたい」と考えた。氏は、疑いを抱きながらサイ・ババに近づいたが、結局は、こうした現象が超常的なものであることを納得するに至った。氏はインタビューの中で、サイ・ババが物品を取り出している場面を何度となく観察する機会を得たことや、サイ・ババと一緒に旅行し、そうした場面を徹底的に撮影したが、インチキを行なっている証拠は見つからなかったことを話してくれた。

 本書には、超常現象であるとしても、他では聞いたこともないほど信じがたい現象がたくさん登場します。しかし、それが信じがたいものであればあるほど、わずかな、しかも不明確な観察からすべてを手品だと却下してしまう態度をとるべきではありません。それは、真の意味での科学者のとるべき態度ではないのです(ちなみに、私から送られた本訳書を、外国出張の際に持参して読んだという、今は亡き高名な国立大学医学部教授は、本書を非常に興味深いと言って感激の手紙をくださったことがあります)。このような現象については、時間をかけた厳密な探究こそが必要なのです。しかし、サイババがいなくなってしまった現在、それを直接に観察することは既に不可能です。だからこそ、サイババが起こしたとされる現象が、その信者ではない、異国の心理学者によって厳密かつ批判的に検証されている比類なき本書は、非常に重要な情報源と言えるでしょう。

 本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。

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【追記】ついでながらここで、邦訳書の作りに関する問題にふれておきます。まことに残念ながら、邦訳書の作りには、かなり大きな問題があります。1989年に刊行された第1版(右上)は、私がゲラを見ていたので、それほどの問題はないのですが、「改定版」と銘打たれて 1993 年に刊行されたハードカバー版のほうは、私の知らないうちに、どういうわけか割付が第1版から完全に変更されていて、市販の本としては信じがたいほどの、見るも無残な状態になっています。そのため、読む際にかなりの違和感を伴う(特に、編集者には耐えがたいほど)と思いますが、文章そのものにはたぶんそれほどの問題はないと思います。

『錆びたナイフの奇蹟――心霊外科医アリゴー』(翻訳書)

 Surgeon of the Rusty Knife, by J.G. Fuller  日本教文社、1985年。四六版ソフトカバー、350ページ。定価1,680円

 本書の著者は、研究者ではなく、わが国では『原子炉災害』『宇宙誘拐――ヒル夫妻の“中断された旅”』『幽霊飛行401便』などで知られるノンフィクション作家です。医学には縁もゆかりもない、アリゴーという愛称を持つブラジルの中年男性は、第一次大戦中に死亡したとされるフリッツという名のドイツ人医師が憑依することにより、ふだんはできない手術が可能な状態になったと言われています。それこそ、とてつもない主張なのですが、アリゴーについては、1971年に自動車事故で死亡するまでに、かなりの科学的調査が行なわれているのです。

 ブラジルの片田舎に住む心霊手術師アリゴーは、消毒もしない包丁やナイフを使って肉や内臓を切り裂いたにもかかわらず、痛みもなければ出血もせず、傷口を縫い合わせる必要もなかった――これは間違いのない事実だ。鋭い声で止まれと命ずると、出血を止めることができたのも事実なら、化膿止めを使わなくとも感染症が起こらなかったのも事実だ。
 現代の薬物学の知識を盛り込んだ最高の処方箋を猛烈なスピードで書き上げることができるのに、小学校は三年しか行っていないし、薬物学の勉強をした経験がないのも事実だし、患者を一目見ただけで病名を正確に診断し、一瞬のうちに血圧を読み取ることができたのも事実だ。
 ブラジルとアメリカの医師団が、アリゴーの治療は本物だと認め、アリゴーの診断や手術の模様を鮮明なカラー映画に撮影したのも事実なら、二十年近くにもわたって、毎日三百人以上の患者の治療を続け、治療費を一切要求しなかったのも事実だ。
 アリゴーが治療した中に、貧しい人たちに混じって、さまざまな国から来た大企業の経営者や有力な政治家、弁護士、科学者、医師、貴族がいたことも事実だし、首都ブラジリアを造りあげ、自身医師でもあったブラジルの元大統領ジュセリーノ・クビチェックが、自分の娘の病気を治療してもらうためにアリゴーのもとへ行ったのも事実だ。西洋の先進国で一流とされる医師や病院から見放された癌その他の難病患者を治したことが、医学的に実証された例があるのも事実だ。(本書、「まえがき」より)

 上述のように、本書は、イアン・スティーヴンソンに薦められて邦訳したものです。スティーヴンソンは、わが国には全く見られないタイプの、きわめて厳格な科学的態度を決して崩そうとしない科学者ですが、そのスティーヴンソンが、科学者にあらざる著者の執筆になる本書の邦訳を私に薦めたということは、本書の真の重要性を認めているためです。それは、医学知識もなければ学歴もないブラジル人男性が、消毒をしないままナイフを“メス”として使い、たくさんの患者たちに劇的な治癒をもたらしたことが、スティーヴンソンから見ても、真剣な注目に値するためなのだと思います。

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『マジカル・ヒーラー』(翻訳書)

 The Realms of Healing, by S. Krippner, and A. Villoldo 工作舎、1986年。四六版ハードカバー、530ページ。定価3,045円

 本書は、アメリカの著名な超常現象研究者とその教え子による、超常的治癒に関する共著です。最初に、こうした“治療”行為は多くの場合、詐欺的なものであるが、その一方で、時として真性な事例も観察されることを指摘しています。続いて、科学的方法を使って行なわれてきたいくつかの実験を再検討し、治癒が超常的な力によっても起こりうることが既に明らかになっていることを確認し、しかるのちに、主としてアメリカ大陸、ブラジル、フィリピンの各地で、可能な限り厳密に観察した心霊治療師について報告しています。

 超常的治療を実用的に使う場合には、現在の医療技術を用いた治療と同程度の成功率が必要になるでしょうが、そこに超常的な力が働いていることを確認するのが目的になる場合には、仮に宝くじ程度の確率でしか発生しなかったとしても、それが真性のものであれば、それだけできわめて大きな意味を持つ現象となるのです。著者たちは、この問題について、アメリカ心理学の創始者であるウィリアム・ジェームズを引き合いに出して、次のように述べています。

 アメリカの心理学を興したウィリアム・ジェームズは、自称「霊能者」や「霊媒」を数名研究した末、大半は明らかにインチキ化、自己欺瞞に陥っていることに気がついた。だがジェームズは賢明にも、カラスは例外なく黒いわけではないことを証明するためには、白いカラスを一羽でも見つければよいという事実を承知していた。結局ジェームズは科学的な実験の対象となって自分の基準を満たしてくれる能力者をひとり探し出したが、フィリピンでもこの場合と同様に、「まったくのインチキ」ばかりではないことを証明してくれる「白いカラスを一羽」、最終的に科学者が探し出すことになるかもしれないのである。(本書、39ページ)

 本書の目次は次の通りです。

序 エヴァン・ハリス・ウォーカー
1 “心霊手術”に対する訴訟
2 実験的に研究される心霊治療
3 北アメリカの四人の治療師
4 ブラジルの霊魂主義と超心理学
5 秘伝の道・直観の道
6 フィリピンの霊魂主義者
7 「癒し」の理論を追う
訳者あとがき
参考文献

 ここで補足的にふれておくと、超常的治療に関する研究は、欧米では医学雑誌に掲載されることが時おりあります。否定的なものもありますが、肯定的なものも少なくありません。それには、たとえば次のような報告があります。

  • Astin, J.A., Harkness, E., and Ernst, E. (2000). The efficacy of “distant healing”: A systematic review of randomized trials. Annals of Internal Medicine, 132, 903-10.
  • Kirkpatrick, R.A. (1981). Witchcraft and lupus erythematosus. Journal of the American Medical Association, 245, 1937.(この短報については、別府真琴「オートポイエーシス」の最後の部分に要約・紹介されています)
  • Dein, S. (1992). The management of illness by a Filipino psychic surgeon: A Western physician's impression. Social Science and Medicine, 34, 461-4.
  • Leibovici, L. (2001). Effects of remote, retroactive intercessory prayer on outcomes in patients with bloodstream infection: Randomised controlled trial. British Medical Journal, 323, 1450-51.
  • Pohl, G, et al. (2007). "Laying on of hands" improves well-being in patients with advanced cancer. Supportive Care in Cancer, 15, 143-51.
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    『実在の境界領域』(共訳書)

     Margins of Reality: The Role of Consciousness in the Physical World, by R.G. Jahn and B. J. Dunne 技術出版、1992年。B5版ハードカバー、xiii + 325ページ、定価3,500円

     本書は、プリンストン大学工学・変則的現象研究(PEAR)グループで長年月にわたって行なわれてきた超常現象の実験的研究を、中心的なふたりの研究者がまとめた共著書です。この研究所で行なわれてきたのは、遠隔視、特に予知的な遠隔視の実験と、もうひとつは、乱数発生器を使ったミクロPKの統計学的実験です。本書は、それらによって得られた結果を、現代物理学の視点から分析しようとした研究書なのです。特に、その後も PEAR で続けられているミクロPKの実験的研究は、超常現象研究史上でも最大級のデータベースになっていることからしても、超常現象の研究に対して、特に超常現象の実在を裏づける証拠という点に関して、きわめて重要な貢献をしていると言えるでしょう。

    日本版序文
    まえがき
    第1部 ベクトル
    第2部 人間と機械の境界領域
    第3部 予知的遠隔知覚
    第4部 意識の波動
    第5部 傾いたベクトル
    付録・原註
    推薦図書
    解説 ハロルド・パソフ
    訳者後記

     遠隔視実験を『ネイチャー Nature』に発表したことで知られる SRI の物理学者ハロルド・パソフ(パトーフ)は、本書の解説(原典は Journal of Parapsychology, 52, 345-50 所載の、本書の書評)の中で、次のように述べています。

     本書は、私が予測できなかった内容を持っている。私が予測したとすれば、それは、PEAR グループによる、意識が関係した変則的現象(サイ効果)の研究の紹介に、その研究を歴史的に位置づける通常の序章と、控え目な結論を引き出したうえでそれが将来の研究にとってどのような意味を持っているかを示唆する、同様に月並みな終章とを付しただけのものにすぎなかったであろう。ところがジャンとダンは、自らの研究からすら離れ、意識と環境がどのような形で相互作用し合っているかについて、さらには、それによって規定される実在の界面にまつわる長い哲学的苦闘の歴史の中にこうした変則的現象研究全般がどう位置づけられるかについても、ある程度詳細に検討している。著者らは、このように密度の濃い本文の 40 パーセントほど(第1部および第5部)を、視野を広げた時のこうした研究の意議に関する、細を穿った哲学的視点の提示にまるまる充てている。私はこの部分を、ふたりが自ら行なった研究の報告と同程度に重要なものと考える。

    【追記1】283ページの原註以降の割付は、奥付を除いて、私自身の DTP によるものなので自分で責任が持てるのですが、本文の部分は、出版社による(本当の鋏と糊も使っている)DTP なので、少々問題があります。

    【追記2】本書には直接関係ないことなのですが、ここで、私の訳者後記で紹介しているトピックにふれておきます。それは、物理学者による超常現象体験のことであり、具体的には、著名な物理学者であったウォルフガング・パウリの体験のことです。ジョージ・ガモフは、1959 年の Scientific American 誌(7月号、74-86ページ)所載の論文の中で、次のように述べています。

     周知のように理論物理学者は、実験装置の操作がきわめて不得手である。事実、手を触れただけで精密な装置を壊すことができるかどうかで、その理論物理学者がどの程度の位置にあるかを判断することができると言われる。そうした基準からすると、ウォルフガング・パウリはきわめて優秀な理論物理学者であった。パウリが実験室に入るだけで、実験装置が壊れたり、故障したり、破壊されたり、火を吹いたりすることがよくあったからである。ケッチンゲン大学にあるジェームズ・フランクの研究所で、ある精密な真空装置が破裂したのも、パウリ効果に起因していた。パウリを乗せた列車がゲッチンゲン駅に到着したまさにその瞬間にその出来事が起こったことが、後で明確に確認されたのであった。(74ページ)

     それならば、現在の物理学的知識を完全に超えてしまうこうした現象の研究を、そうした現象の存在を知っているはずの物理学者は、是非とも真剣に行なわなければならないはずなのですが、そのような物理学者が、本書の著者らを除いてごく一部にしかいないのは、なぜなのでしょうか。

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