これまでの出版物は、おおまかに言えば、私の心理療法やその基本概念である幸福否定という視点に関係するものと、超常現象関係のものとに分かれます。ここでは、超常現象関係の主だったものについて、それぞれを簡単に紹介します。関連論文や関連情報についても、リンクを張っておきましたので、参照してください。ここに収録されていない2,3の共訳書については、翻訳書のページをご覧ください。また、私の心理療法の説明については、これまでの出版物――心理学関係を参照してください。
おうふう、1994年。A5判、上製函入、424ページ、人名事項索引。定価20,388円。
超常現象を、“とらえにくさ”という側面から眺めた概説書です。最初は、1989年に同じ系列のブレーン出版から、「超心理学ハンドブック」というタイトル(定価16,480円)で500部出版され、それが完売になったため、200部の限定でタイトルを変えて再刊されたものです。超常現象が実在するとすれば、“とらえにくさ”という特性があることはまちがいありません。しかも、それは、消極的なものではなく、“保有抵抗”と“目撃抑制”という興味深い特性を含め、きわめて積極的かつ明確な特性をいくつか持っているのです。
私の考えでは、超常現象がもっている最大の特徴は、このとらえにくさと目標指向性のふたつです。批判者には、これらは、いかにも魔術的でうさんくさく見えるかもしれませんが、超常現象の実在を裏づける証拠は、これまで数多く蓄積されており、アメリカ国立医学図書館が運営する PubMed で検索すればすぐにわかるように、Lancet や American Journal of Psychiatry を筆頭に、欧米の一流医学雑誌や心理学雑誌にも肯定的論文が少なからず掲載されているので、科学者たちもあっさりとは無視できないはずなのです。なお、とらえにくさについては、以下に紹介する別編著(『超常現象のとらえにくさ』)がありますので、参照してください。
なお、本書の目次は次の通りです。
本書をもとにして、文庫本として再編集し、講談社(プラスアルファ文庫)から一般読者向けに出版したのが、『超心理学読本』です。ただ今、品切れになっており古書でしか入手できませんが、その「文庫版のためのまえがき」には、次のように書かれています。
上の表紙をクリックすると、出版社の当該ページに、『超心理学読本』の表紙をクリックすると、アマゾンの当該ページに飛びます。なお、『超心理学読本』については、Journal of Scientific Exploration, vol. 16 (No. 1) に書評が掲載されていますので、関心のある方はご覧ください。
平凡社、1987年。四六判上製、668ページ、巻末資料、用語集、参考文献。定価3,800円(+税)。
超常現象の実在にまつわる、昔から続いている論争を、第三者的な立場から眺めようとした編著書です。超常現象にまつわる論争には、他の科学分野では決して見られない奇妙な特徴があります。それは、論争が始まってからすでに100年以上が経過しているにもかかわらず、依然として超常現象実在の有無から離れられないということです。他の科学分野では、絶対に見られないこうした特徴が、超常現象の論争にはなぜ見られるのでしょうか。この点は、実に不思議なことなのですが、そこに注目する科学者はあまりいないようです。
本書は、欧米の科学雑誌に発表された27編の論文と、わが国の研究者が発表した1編の論文を7部にまとめて収録し、結論部を私が執筆しています。本書は、超常現象の否定論者の非論理性を明らかにし、そうした立場を徹底的に批判するために出版されたものなのですが、当方の趣旨が伝わらないせいなのか、否定論者からの評価が終始一貫して高いのは非常に不思議です。なお、本書の序文は、アメリカのフロイト派精神分析医であった故・ジュール・アイゼンバッドの寄稿によるものです。編者による序文には、次のように書かれています。
本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。本書には、Journal of Parapsychology に掲載された次の書評があります。
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『サイの戦場──超心理学論争全史』(平凡社)の続編に当たります。『サイの戦場』では、超常現象に対する批判者の論証の不合理性を浮き彫りにしたつもりですが、それは、本書のためのいわば布石になっていました。本書は、超常現象をとらえにくくしている本質を、世界的な超心理学者たちによる39本の論文を通じて探る試みです。私の依頼を受けて、本書のためにケネス・バチェルダーが執筆し、アメリカの人類学者パトリック・ガイスラーが編集した長文の遺稿(後に『アメリカ心霊研究協会誌 Journal of the American Society for Psychical Research』Vol 88 (2) に転載)も収録されています。
本書の簡単な目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。
本書は、『超心理学雑誌 Journal of Parapsychology』vol. 57 (no. 3) に書評があり、M. A. Thalbourne & L. Storm (Eds.).(2004). Parapsychology in the Twenty-First Century (pp. 38-62). Jefferson, NC: McFarland に収録されている、アメリカの心理学者ウィリアム・ブラウドの論文でもふれられています。
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イアン・スティーヴンソンの研究を中心に、死後生存(存続)研究の15本の論文を、医学、心理学、超心理学の専門誌から収録したアンソロジーです。以下の目次からわかるように、本書には、各分野の死後存続研究がコンパクトにまとめられています。このような本は、世界中を探しても他にはほとんどありません。
また本書には、特に日本人にとって興味深い、ビルマで戦死したと主張する元日本兵の生まれ変わりの事例が収録されています。同種の事例は、これまでに二十数例知られているようですが、本例はそのうちの一例です。この論文は、Ian Stevenson on Reincarnation という特集号の中の1編として、Journal of Nervous and Mental Disease という神経・精神医学の一流専門誌に掲載されたもの(Southeast Asian interpretation of gender dysphoria)です。他の収録論文の中にも、JAMA: Journal of the American Medical Association, American Journal of Psychiatry などの一流誌に掲載されたものがあります。その意味で、本書は重要な参考書と言えるでしょう。
なお、本書の目次は次の通りです。
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叢文社、1983年。四六版ハードカバー、279+15ページ。参考文献
本書は、肉体離脱体験(体脱体験=Out-of-Body Experience, OBE)に関する9本の研究論文を、主として医学、心理学、超心理学の専門誌から収録したアンソロジーです(「体脱体験の超心理学」という最後の章を私が書いています)。体脱体験は、死後生存研究の一分野なのですが、ほとんどが主観的な体験なので、客観性に乏しく、死後生存を裏づける証拠としては、臨死体験と並んでそれほど強くありません。しかし、この分野でもそれなりの工夫が施されており、その点では、本書に収録された、後にエジンバラ大学ケストラー講座教授となった故ロバート・モリスによる実験的研究(「体脱体験中のコミュニケーションの研究」)がその嚆矢と言えるでしょう。
本書には、イギリスの科学雑誌『ネイチャーNature』に掲載されたことから、わが国でも一時話題になった SRI の研究者ラッセル・ターグとハロルド・パトーフが、ユリ・ゲラーらの透視能力者を対象に行なった実験の論文("Information transfer under conditions of sensory shielding." Nature, 251, 602-607)も収められています。 後に、スターゲイト計画として知られるようになったアメリカ陸軍の極秘計画は、この論文から始まったとも言われています。なお、本書のタイトルは、少々うさんくさく感じられると思いますが、これは出版社の意向でつけられたものです。
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本書は、イギリスの心霊研究協会が、創立 100 周年を記念して刊行した、超常現象研究のアンソロジーです。執筆者は、ガードルード・シュマイドラー、ジュール・アイゼンバッド、レックス・G・スタンフォード、イアン・スティーヴンソン、ジョン・ベロフ、ハンス・ベンダー、リチャード・S・ブラウトン、ジャン・エレンウォルドをはじめ、各方面を代表する 29 名の著名な専門家です。今、著者たちの名前をあらためて眺めると、大御所ばかりであることに驚かされます。現在、この方面の研究の世界的退潮に伴って、全体として研究者が小粒になってきているので、今後、これほどのアンソロジーが出版されることはないでしょう。まだ邦訳されていない、Handbook of Parapsychology という、やはり分担執筆の 1977 年刊行の教科書的大著がありますが、それを除けば、これほどの本は、これまでにもほとんどないと思います。
本訳書は、無名に近い出版社から出ているため、一般にはあまり知られていないようですが、上の引用文でスティーヴンソンが述べているように、実際には非常に重要な参考文献であることはまちがいありません。
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イアン・スティーヴンソンと並んで、現代超心理学界の長老格の研究者だった故ジョン・ベロフによる、本格的な超心理学史です。やはりイギリスの心霊研究協会創立百周年に合わせて出版されました。安易な妥協に流れず、これまで得られた証拠をきわめて厳密に検討しています。著者は、本書に寄せた日本語版序文の中で、当時のわが国の超常現象研究について、次のように書いています。
日本の超常現象研究には、他にはあまり見るべきものがない、という著者の見解は、著者独自のものというよりは、まことに残念ながら他の海外の研究者とも共通するものなのでしょう。そう考えると、福来友吉の研究がいかに突出したものであったかがわかろうというものです。
超常現象の実在を裏づける証拠は、歯がゆいばかりに人間の追求を逃れ続けて今日に至っています。その理由が何であれ、また超常現象にどのような立場から取り組んだにせよ、九〇年前にアメリカ心理学の創始者ウィリアム・ジェイムズをして、「心霊研究者は……二五年程度で進歩が望めると考えるのは早計であり、五〇年ないしは一〇〇年を想定しなければならない」(本書二七六ページ)と言わしめた(にもかかわらず同様の状況が、九〇年後の現在でも依然として続いている)ように、それこそが超常現象の特徴なのでしょう。しかし、それは超常現象が存在しないためではないことは、本書を通読すればおわかりいただけるはずです。(本書「訳者後記」より)
本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。
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有名なJ・B・ラインは、超常現象の研究を一般の科学者にも受け入れられやすいものにしようとして、心理学実験法に範をとり、統計学の第一人者の協力を得ながら、統計学的な実験超心理学の方法論を築きあげたわけですが、本書は、そのJ・B・ラインという夫とともに、半世紀以上にわたって超心理学の研究を続けてきた女性超心理学者が、小中学生向けに執筆した小著の邦訳です。超常現象について経験的にはほとんど知らない者が、文献だけを駆使して書いたものと違って、この分野に通暁した専門家が書いたものなので、一文一文にその経験の裏打ちが感じられます。
J・B・ラインが、統計的な実験法を好んだのに対して、著者は、偶発的に起こるサイ体験(超常現象体験)に関心を持ち続けました。そのため、本書でも、そうした体験が重視されています。先のイアン・スティーヴンソンも、生まれ変わり型事例に限らず、偶発例全般の研究を重視していました(そうした研究を、たとえば、以下に掲載している『虫の知らせの科学』として発表しているわけです)が、スティーヴンソンが個々の事例を厳密に検証し、それが事実かどうかを徹底的に調べようとしていたのに対して、著者は、偶発例をたくさん集め、それを統計的に分析することによって信憑性を高めようとしていました。
本書の巻末には、ESPと念力の統計的実験法が、一読すれば簡単に実施できるように具体的に書かれています。ついでながらふれておくと、私はこの日本語版への序文を依頼し、著者から快諾を得ていたのですが、結局それはかないませんでした。その前に逝去されたからです。一般に超常現象の研究者は長命ですが、著者もその例外ではなく、享年は91歳でした。しかも、最晩年に至るまで、新著を発表し続けていたのです。
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本書は、イギリスの心霊研究協会に保管されている資料を基にして、1938年および39年にロンドンで刊行された Psychical Experiences と銘打たれた双書のうち、死後生存関係の2点の著書を、1冊にまとめて邦訳したものです。夫の Kenneth は、心霊研究協会の運営にもかかわっていた心理学者であり、妻の Zoe は、心霊研究協会で行なわれた実験で被験者を務めたこともある自動書記能力者です。
Kenneth の執筆になる Evidence of Purpose のほうは、生者と交信してくる存在が、目的や意志を持っていることを示す証拠としての事例集であり、Zoe の執筆した Evidence of Identity のほうは、この世に交信してくる故人が、特定の人物であることを確認するための証拠に関する検討です。いずれも、今なお、死後生存研究の根幹にかかわる重大な問題です。
本書の目次は次の通りです。
本書も、無名の出版社から出ているため、ほとんどその存在が知られていないのは大変残念なことです。しかし、昔も今も、本書のテーマが重要な問題であることはまちがいありません。
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本書は、アメリカの哲学者による、死後生存を裏づける証拠について厳密に検証を行なっている著作です。超常現象に強い関心を持つ哲学者は、欧米でも数が比較的少ないので、その意味でも本書は貴重な存在と言えるでしょう。
本書の邦訳を私に勧めてくれたイアン・スティーヴンソンは、本書に寄せた「解説」の中で、次のように書いています。
著者は、これまでに集積されてきた、人間の死後生存を裏づける証拠から、物理現象の場合のような再現性はないものの、「現在得られている証拠によって、人間の死後生存に関する確固たる知識が確かに得られる」と結論づけています。
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本書は、前世を記憶する子どもたちのフィールドワークの第一人者であった、ヴァージニア大学人格研究室、故イアン・スティーヴンソン教授の一般向けの概説書です。その中で、生まれ変わり型事例が12例紹介されています。非常に興味深い事例ばかりですが、本書の特徴はそれにはとどまりません。生まれ変わりという概念がどのような意味を持つかについても詳しく書かれており、それに関連する医学や心理学の参考文献も多数掲げられているので、専門家にとっても非常に価値の高い参考書になっているのです。それは、特に第9、10、11章とその註の部分です。
著者は、心身医学の黎明期に活躍した経歴を持つ、優れた精神科医でもあるので、大量の医学文献の中から、他の研究者が気づかない重要な論文を巧みに探し出し、それを適切に引用しています。それらの文献は、生まれ変わりという問題を離れても、心身問題を研究するうえで非常に貴重な資料になると思います。
現在の科学知識では、心は脳の活動の結果として生ずるものにすぎないことになっており、しかも人間の個性は、両親からの遺伝と環境というふたつの要因の産物ということになっているため、それ以外の要因が考慮されることはありません。ところが、前世の記憶が本当に存在することになると、その記憶が脳に蓄えられていたはずはないことになります。そうすると、現在の科学知識が教えるように、海馬こそ記憶の座だなどと断定してすませることはできなくなります。そのようなとてつもない結論になるからこそ、この方面の研究はとてつもなく重要であり、したがって、その真偽の確認にはきわめて慎重な態度で臨まなければならないとスティヴンソンは考えるわけです。
なお、日本でも欧米でも、催眠を用いた“前世療法”が好んで行われていますが、経験を重視する著者は、それに非常に懐疑的であり、本書の「まえがき」でも次のように特記しています。
そして、著者は、そのために、A case of the psychotherapist's fallacy: Hypnotic regression to "previous lives" という論文まで書いているのです。前世療法の治療者としてわが国でも有名なのは、アメリカのブライアン・ワイスでしょう。ワイスも確かに精神科医ですが、たとえば、著者の生まれ変わり研究の論文は、一流の医学雑誌に繰り返し掲載されている――つまり、著者の厳密な科学的研究法が、専門誌の編集委員たちに高く評価されていた――のに対して、後者の場合は(医学雑誌に掲載された本業の論文はいくつかあるとしても、前世療法に関する論文は)皆無であるという事実をみると、両者の違いは明らかでしょう。
本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。
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European Case of the Reincarnation Type, by Ian Stevenson 日本教文社、2005年。四六版ハードカバー、viii+575ページ、索引。定価2,700円
ヴァージニア大学精神科を長年務めていたイアン・スティーヴンソン教授の、事実上最後の著書です。本書の意義は、中心人物がヨーロッパ人であるところにあります。中心人物がヨーロッパ人であるため、前世の人格が、たとえばナチの強制収容所で惨殺されたユダヤ人であったり、ジャコバイトとして戦ったスコットランド高地人であったり、第二次大戦で撃墜された英国空軍のパイロットであったりと、ヨーロッパの歴史と密接に関係しており、非常に興味深いと思います。著者は、それを可能な限り厳密かつ徹底的に調査し、中心人物の証言を裏づける証拠や、それを反証する証拠も公平に取りあげ、読者自身が判断できるような形で提示しています。
本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。
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生まれ変わりのフィールドワークの世界の第一人者であった、ヴァージニア大学精神科教授、故イアン・スティーヴンソンによる、生まれ変わりの実在を裏づける有力な証拠を提示した著書です。これは、生まれ変わり型事例の身体に見られる母斑と先天性欠損の貴重な写真が多数掲載された、総計2300ページほどの全2巻の親本 Reincarnation and Biology を一般向けに要約して出版したものです。親本は専門家向けのモノグラフで、写真はすべてモノクロですが、本書では口絵の写真がカラーになっています。 その中には、奇形としては非常に稀な、驚くべき写真がいくつか掲載されています。本書には、珍しい日本人の事例も一例紹介されています。
興味深いことに、超常現象の証拠は、信憑性の高い実例が数多く提示されればされるほど、批判者からはもちろん、一般読者からも相手にされなくなる傾向があります。これは、いろいろな意味で非常に興味深い現象と言えるでしょう。
なお、本書の目次は次の通りです。
ついでながらふれておくと、わが国の“懐疑論者”たちには、自力で批判するだけの知識も力量もないため、海外の“懐疑論者”による“批判”を引用して批判したつもりになるという傾向がきわめて強く見られます。その場合、そもそも批判の内容自体も問題なのですが、それを別にしても、批判をしたいなら自力ですべきでしょう。言うまでもないことですが、これは非常に情けないことです。
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生まれ変わりのフィールドワークの世界の第一人者である、ヴァージニア大学精神科教授、故イアン・スティーヴンソンによる貴重な貢献です。本書の一部は『アメリカ精神医学雑誌 American Journal of Psychiatry』にも掲載されています。真性異言には、朗唱型と応答型とがありますが、歌や詩のように、決まった言葉を意味もわからず繰り返すだけの朗唱型が圧倒的多数を占め、その言葉の話し手とある程度にせよ筋の通った会話が可能な応答型はきわめて稀であり、それらしき事例はこれまでほとんど知られていません。そして、スティーヴンソンは、そのうちの3例を研究しており、本書には、うち2例(ドイツ語を話すアメリカ人女性とベンガル語を話すインド人女性)が紹介されています。
その三例は、本来の人格とは別の人格が出現し、本人がそれまで知らなかったはずの言葉をある程度自在に話すという点では共通しているわけですが、そのうちの一例は、それなりのきっかけはあったものの自発的に人格変化を起こしているのに対して、残る二例では、別の人格が催眠によって誘発されています。
上の『生まれ変わりの刻印』の説明でも述べておいたように、かなり厳密な検証がされているためでしょうが、本書も、批判者からであれ一般読者からであれ、ほとんど無視されています。上の表紙をクリックすると、アマゾンの当該ページに飛びます。
Claims of Reincarnation, by S. Pasricha 日本教文社、1994年。四六版ハードカバー、ix+330+19ページ。人名、事項索引。定価2600円。
イアン・スティーヴンソンの共同研究者でもあった、インドの女性心理学者による、この方面の研究への非常に貴重な貢献です。わが国で翻訳出版されている本は、ほとんどが欧米で出版されたものですが、本書の原著は、珍しくインドの出版社から刊行されています。博士論文をもとにしているため、全体がモノグラフの体裁になっていて、一般読者には取りつきにくいかもしれませんが、非常に興味深い事例が数多く紹介されている、きわめて重要な著書と言えます。
なお、本書の目次は次の通りです。
本書で興味深いのは、第7章に紹介されているシャラーダの事例と、1985 年に発生したスミトラの事例です。シャラーダの事例は、スティーヴンソンの『前世の言葉を話す人々』で詳細に検討されており、生まれ変わり型事例として扱われていますが、スミトラの事例は、それよりもさらに珍しい、典型的な憑依型事例です。ウッタル・プラデーシュ州に住む 17 歳前後の既婚女性が、自らの予言に従って、「死んだ」ような状態に陥ります。呼吸が止まり、脈がなくなったため、家族が葬式の準備をしていると、突然に「生き返り」、しばらくすると、自分はシヴァという名前で別のところに住んでいたが、そこで嫁ぎ先の家族に殺害されたと語り始めます。そして、現在の夫や子どもを拒絶し、自分のふたりの子どものところへ連れて行ってほしいと求めたのです。
その後、スミトラの存在を知ったシヴァの父親は、スミトラを自宅に訪ね、本人と対面すると、スミトラは、シヴァの父親を正しく見分けたうえ、シヴァがいつも呼んでいたのと同じく「パパ」と呼びかけて号泣したそうです。持参した家族のアルバムを見せると、本人は、そこに写っている 14 名の人物をそれぞれ正確に見分けることができたそうです。なお、この事例は、スティーヴンソンらと共著で、A case of the possession type in India with evidence of paranormal knowledge という論文として発表されています。
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Life Before Life, by J. Tucker 日本教文社、2006年。索引、328ページ、四六版ハードカバー、定価2000円。
2008年に88歳で亡くなったイアン・スティーヴンソンの後継者である、ヴァージニア大学の児童精神科医ジム・タッカーによる最初の著作です。アメリカの子どもたちの事例がたくさん掲載されています。科学的な立場から、一般向けに噛み砕かれた説明があり、非常にわかりやすいものになっています。 序文をスティーヴンソンが書いています。
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本書は、主として、医学雑誌や心理学雑誌その他に発表された、21 編の臨死体験の研究論文を集めたアンソロジーです。1980 年に、Journal of Nervous and Mental Disease という神経・精神医学雑誌に、臨死体験の小特集が掲載されたのですが、その一部も収録されています。ケネス・リング、ラッセル・ノイエス、ブルース・グレイソン、エルンスト・ロディン、ロナルド・シーゲル、カール・セイガン、カール・ベッカー、マイクル・グロッソ、レイモンド・ムーディらが、それぞれの立場から寄稿しています。そのうち、ノイエスやセイガンは、この現象を通常の現象と主張しています。臨死体験のアンソロジー自体が他に存在しないことに加えて、双方の立場からの論文を集めているという点でも、本書は貴重な存在です。なお、「まえがき」は、『あの世からの「帰還」』の著者である、心臓病専門医のマイクル・セイボムが書いています。
なお、本書の目次は次の通りです。
著名な天文学者であり、超常現象の否定論者としても知られていたカール・セイガンは、本書に収録された論文の中で、臨死体験を出生時の体験を蘇らせたものにすぎないという主張をしています。それに対して、カール・ベッカー(現、京都大学大学院教授)は、セイガンの「出生モデル」では、肝心な部分が無視されていると反論しています。
本書は、学問的立場から見ると非常に重要な位置づけを与えられてしかるべきなのですが、わが国では、そのような立場の科学者が皆無に近いため、本書はほとんど無視されて現在に至っています。これは、科学知識の増進という点を考えると、非常に残念なことと言わざるをえません。
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本書は、臨死体験を世に知らしめたアメリカの精神科医レイモンド・ムーディによる、臨死体験に関する第3作目の著書の邦訳です。ムーディの著書は、科学的な方法をあまり使っておらず、体験を列挙する以上のことはあまりしていないため、それ自体の重要性は高くないのですが、ムーディの著作に触発された科学者たちが、臨死体験の研究をするようになりました。そして、それが発展して、現在の 国際臨死研究協会 IANDSになったのです。
本書の目次は次の通りです。
同種の体験については、超常現象研究の一環として既に 1926 年に、イギリスの物理学者 ウィリアム・バレット卿が行なったものがあります。ただし、それは、臨死状態に陥った後ではなく、臨終前の、意識が清明な時点で起こるもの(臨終時体験)です。これは、下に紹介する『人は死ぬ時何を見るのか』の先行研究に当たります。興味深いのは、両者が内容的にほとんど共通していることです。そうすると、臨死体験は、死に瀕した脳が起こした異常体験とは言いにくくなってしまいます。
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本訳書は、1986年5月に出版されて以来、おかげさまで、順調に版を重ねていたのですが、しばらく前から品切れ状態になっていました。2005年に新版として再刊するにあたり、翻訳も古くなり読みにくくなっていたため、全面的に手を入れて読みやすくしました。
特にわが国の医師や心理学者は、臨死体験を、脳内の病的現象として説明したがりますが、そのような仮説では実際に説明できないことが、本書をご覧いただくとよくわかると思います。なお、 訳者後記もあらためて書き直しました。そこでは、日本の臨死体験研究史を簡単に振り返り、日本のW科学のありかたWについて検討しています。
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Light & Death, by M. Sabom 日本教文社、2006年。四六版ソフトカバー、376ページ、索引、定価2200円。
前著『「あの世」からの帰還』から16年後に書かれた、セイボムのきわめて重要な貢献です。世界的な脳神経外科医であるロバート・スペッツラーが執刀した女性患者に見られた顕著な臨死体験などが紹介され、ケネス・リングの研究法に対する鋭い批判があります。キリスト教的な観点から見た臨死体験についても詳細に記されています。
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本書は、『光の彼方に――死後の世界を垣間みた人々』の項でふれておいたように、臨死体験に類縁の“臨終時体験 Death-bed observation”と呼ばれる現象を集め、厳密に検討した科学的研究です。臨死体験を扱った著書はたくさんあるのに対して、臨終時体験の本はほとんどないので、あまり注目されることはありませんが、死後生存研究にとって非常に重要な研究領域だと思います。本書には、『死ぬ瞬間』などの一連の著作で有名な、故エリザベス・キュブラー=ロスが序文を寄せています。
著者の故カーリス・オシスは、アメリカ心霊研究協会に所属する研究者でした。欧米でも、超常現象の研究に専念できる研究者は、現在はもちろん、当時としても非常に少なかったのです。共著者のエルレンドゥール・ハラルドソンは、アイスランド大学の心理学者で、他にも、先ごろ亡くなったインドの聖者サティア・サイババの研究(下に示す『サイババの奇蹟』)や、生まれ変わり型事例の研究(たとえば、Children who speak of past-life experiences; Personality and abilities of children claiming previous-life memories)で有名な研究者です。
本書の目次は次の通りです。
本研究の特徴は、アメリカとインドという、全く異なる文化圏の末期患者に接した経験を持つ、医師や看護師を対象に行なったアンケート調査を集計し、統計的に分析していることです。その結果、双方の文化圏の患者とも、同じような体験をしていることが明らかになりました。たとえば、“あの世”では、祖先や宗教的人物に出会うこと、体験後は死に対する恐怖心が消えることなどです。
しかし、その一方で、文化的な差異が見られることも明らかになっています。興味深いものとしては、たとえばインドには、同姓同名の患者が、“まちがって”死亡してしまい、“あの世”でそのまちがいを発見されて下界に戻されると、そもそも“死ぬ予定だった”同姓同名の別の患者が、それと入れ替わるように死亡したなどの例があります。しかし、アメリカでは、このような例は見つからないようです。
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Telepathic Impressions, by Ian Stevenson 叢文社、1992年。四六版ソフトカバー、397ページ。 定価1,600円。
イアン・スティーヴンソンによる、テレパシー的印象体験の有名な研究書です。原題の Telepathic Impressions とは、通常のテレパシーとは違って、明確なイメージや出来事が意識に伝わるのではなく、何か漠然とした感じや感覚によって意味内容が伝達されるという偶発的体験のことです。
本書の目次は次の通りです。
著者は、心身医学の黎明期に活躍した研究者でもあるので、超感覚的に心身症状が伝達されたように思われる事例にも深い関心を寄せ、たとえば、次のような事例を紹介しています。これは、ある医学雑誌に報告されたものです。
この引用文に出てくる擬娩 couvade syndrome とは、本来の用法では、「妊婦の分娩を真似たり、本当に出産の苦しみを妊婦とともに共有する」という風習のことなのですが、ここでは、妻の身体的状態が、それを知らないはずの遠方の夫に超感覚的に伝達されたという意味で使われています。これが事実であれば、非常に興味深いことですが、著者は、そうしたものも含めて、個々の事例を非常に厳密に検討しています。
本書は、最初、ハードカバーで1981年に刊行されたのですが、品切れになったため、1992年にソフトカバーで再刊されたものです。
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Trance, by B. Inglis 春秋社、1994年。四六版ハードカバー、iv+384+29ページ。人名、事項索引。定価3777円。
本書は、イアン・スティーヴンソンの勧めを受けて邦訳したもので、精神科医や心理学者の間で名高いアンリ・エレンベルガー著『無意識の発見』(弘文堂)にも匹敵するほどの名著です。ちなみに、他にスティーヴンソンの勧めで邦訳した本には、先の『死後の生命』と、次の『サイババの奇蹟――インドの聖者の超常現象の科学的研究』『錆びたナイフの奇蹟』があります。
著者のブライアン・イングリスは、歴史、医学、超常現象という3領域を対象に執筆活動を続けていたイギリスのジャーナリストです。英米人の場合、母語だけでほとんどの文献が読めてしまうという、とてつもない利得があるわけですが、それにしても、かなりの時間をかけてさまざまな領域の文献を渉猟し、それをきちんと理解しないかぎり、評価に値する本は書けません。本書は、いろいろな意味で貴重な著書と言えます。その中でも大きいのは、情報源としての有用性でしょう。種々様々な催眠現象、霊媒、共意識、戦争神経症、偽薬効果、多重人格などが、歴史的背景の中で次々に登場するのです。
本書の目次は次の通りです。
本書には、類書がほとんどないにもかかわらず、全くと言ってよいほど注目を受けることがありませんでした。これはむしろ、本書の価値が低いためというよりは、重要度が高い結果として、私の言う意味での抵抗が起こるためであるように思います。
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本書は、先ごろ、莫大な遺産を残して他界したインドの聖者サティア・サイババが起こしたとされる超常的現象を、至近距離から観察したり、そうした経験を持つサイババの信奉者たちへのインタビューを通じて、厳密に検証した、アイスランド大学の心理学者による著書です。サイババが起こしたとされる現象は、ほとんどが念力によるもので、専門的にはマクロPKと呼ばれる現象です。マクロPKとは、肉眼で直接に観察できる巨視的な念力現象を指す言葉です。
サイババは、一時、掌から出すとされるビブーティ(聖灰)を、手品で出しているという疑いをかけられました。その結果、サイババの起こす現象はすべて不正行為によるものと断定されるようになったわけです。しかしながら、ここには、大きな問題が潜んでいます。ひとつには、著者がその後、手品が疑われたビデオを世界的に著名な奇術師に見てもらったところ、映像が不鮮明で、これだけでは手品かどうかの判断はできないと言われたことです。
もうひとつの問題は、仮にビブーティを手品で出したという指摘が正しかったとしても、サイババが起こしたとされる他の現象もすぐさま手品によるものと考えてよいわけではないことです。本書には、規模の大きい、実にさまざまな実例が具体的に記述されています。サイババが起こしたとされる現象が本当なら、それは、多様性という点でも規模という点でも、通常の念力能力者による現象をはるかに越え、イエス・キリストの奇蹟に匹敵するほどのものであることになります。ハラルドソンが目の前で見せられた現象も、そのひとつです。
ハラルドソンは、接見室に呼ばれてサイババと話している時、話の流れで、たまたまサイババが「双子のルドラクシャのように」という表現を使います。ルドラクシャとは菩提樹の実のことですが、その意味がわからなかった著者は、サイババに尋ねます。ところが、何度聞いても納得できなかった著者は、執拗に食い下がりました。まわりの人たちが著者の執拗さに辟易し始めた時、サイババは、右手を軽く握って2、3度振りました。そして拳を開くと、そこに、できたばかりのようにきれいな「双子のルドラクシャ」が載っていたのです。これは、自然界では大変珍しいもので、貧弱なものですら、とてつもない高額で取引されていることが、後に判明します。
そればかりではありませんでした。サイババは、それを調べさせた後、「あなたに贈り物をしよう」と言ってルドラクシャを両手で包み、軽く息を吹きかけて開くと、今度は、そのルドラクシャに、小さなルビーと金の飾りがついて出てきたのでした(この写真を、私は著者から送られて持っていたのですが、印刷所で紛失されてしまいました。今となっては貴重なものですが、幸い邦訳の初版のカバーの背に、その写真が掲載されています。右の写真がカバーからとったものです。金の部分は、後に22金であることがわかったそうです)。もしこれが手品によるものだったとしたら、サイババが、できのよい双子のルドラクシャをふたつ用意し、そのうちのひとつに金とルビーの飾りをつけておいたうえで、ルドラクシャという言葉に著者がこだわるよう仕向け、偶然を装いながら、予定通りそのふたつを次々に取り出して見せた、と考えるしかありません。ところが、そのようにみごとな双子のルドラクシャは、そもそも自然界では大変珍しいものなのだそうです。
しかしながら、これは単なる一例にすぎないのです。サイババの周辺では、特にサイババが若いころには、それよりもはるかに考えにくい現象が、日常的にたくさん起こっていたのです。それは、近くから見ていた信者たちの証言ばかりでなく、至近距離から何度となく観察した経験を持つ、ある奇術師の証言でも同じでした。その奇術師は、イギリスで教育を受けたファニブンダという名前の歯科医なのですが、その優れた手腕のため、国際奇術師協会から「リンキング・リング賞」を受賞した経歴の持ち主だったのです。
本書の目次については、Webcat Plus の当該ページをご覧ください。
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【追記】ついでながらここで、邦訳書の作りに関する問題にふれておきます。まことに残念ながら、邦訳書の作りには、かなり大きな問題があります。1989年に刊行された第1版(右上)は、私がゲラを見ていたので、それほどの問題はないのですが、「改定版」と銘打たれて 1993 年に刊行されたハードカバー版のほうは、私の知らないうちに、どういうわけか割付が第1版から完全に変更されていて、市販の本としては信じがたいほどの、見るも無残な状態になっています。そのため、読む際にかなりの違和感を伴う(特に、編集者には耐えがたいほど)と思いますが、文章そのものにはたぶんそれほどの問題はないと思います。
本書の著者は、研究者ではなく、わが国では『原子炉災害』『宇宙誘拐――ヒル夫妻の“中断された旅”』『幽霊飛行401便』などで知られるノンフィクション作家です。医学には縁もゆかりもない、アリゴーという愛称を持つブラジルの中年男性は、第一次大戦中に死亡したとされるフリッツという名のドイツ人医師が憑依することにより、ふだんはできない手術が可能な状態になったと言われています。それこそ、とてつもない主張なのですが、アリゴーについては、1971年に自動車事故で死亡するまでに、かなりの科学的調査が行なわれているのです。
上述のように、本書は、イアン・スティーヴンソンに薦められて邦訳したものです。スティーヴンソンは、わが国には全く見られないタイプの、きわめて厳格な科学的態度を決して崩そうとしない科学者ですが、そのスティーヴンソンが、科学者にあらざる著者の執筆になる本書の邦訳を私に薦めたということは、本書の真の重要性を認めているためです。それは、医学知識もなければ学歴もないブラジル人男性が、消毒をしないままナイフを“メス”として使い、たくさんの患者たちに劇的な治癒をもたらしたことが、スティーヴンソンから見ても、真剣な注目に値するためなのだと思います。
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本書は、アメリカの著名な超常現象研究者とその教え子による、超常的治癒に関する共著です。最初に、こうした“治療”行為は多くの場合、詐欺的なものであるが、その一方で、時として真性な事例も観察されることを指摘しています。続いて、科学的方法を使って行なわれてきたいくつかの実験を再検討し、治癒が超常的な力によっても起こりうることが既に明らかになっていることを確認し、しかるのちに、主としてアメリカ大陸、ブラジル、フィリピンの各地で、可能な限り厳密に観察した心霊治療師について報告しています。
超常的治療を実用的に使う場合には、現在の医療技術を用いた治療と同程度の成功率が必要になるでしょうが、そこに超常的な力が働いていることを確認するのが目的になる場合には、仮に宝くじ程度の確率でしか発生しなかったとしても、それが真性のものであれば、それだけできわめて大きな意味を持つ現象となるのです。著者たちは、この問題について、アメリカ心理学の創始者であるウィリアム・ジェームズを引き合いに出して、次のように述べています。
本書の目次は次の通りです。
ここで補足的にふれておくと、超常的治療に関する研究は、欧米では医学雑誌に掲載されることが時おりあります。否定的なものもありますが、肯定的なものも少なくありません。それには、たとえば次のような報告があります。
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本書は、プリンストン大学工学・変則的現象研究(PEAR)グループで長年月にわたって行なわれてきた超常現象の実験的研究を、中心的なふたりの研究者がまとめた共著書です。この研究所で行なわれてきたのは、遠隔視、特に予知的な遠隔視の実験と、もうひとつは、乱数発生器を使ったミクロPKの統計学的実験です。本書は、それらによって得られた結果を、現代物理学の視点から分析しようとした研究書なのです。特に、その後も PEAR で続けられているミクロPKの実験的研究は、超常現象研究史上でも最大級のデータベースになっていることからしても、超常現象の研究に対して、特に超常現象の実在を裏づける証拠という点に関して、きわめて重要な貢献をしていると言えるでしょう。
遠隔視実験を『ネイチャー Nature』に発表したことで知られる SRI の物理学者ハロルド・パソフ(パトーフ)は、本書の解説(原典は Journal of Parapsychology, 52, 345-50 所載の、本書の書評)の中で、次のように述べています。
【追記1】283ページの原註以降の割付は、奥付を除いて、私自身の DTP によるものなので自分で責任が持てるのですが、本文の部分は、出版社による(本当の鋏と糊も使っている)DTP なので、少々問題があります。
【追記2】本書には直接関係ないことなのですが、ここで、私の訳者後記で紹介しているトピックにふれておきます。それは、物理学者による超常現象体験のことであり、具体的には、著名な物理学者であったウォルフガング・パウリの体験のことです。ジョージ・ガモフは、1959 年の Scientific American 誌(7月号、74-86ページ)所載の論文の中で、次のように述べています。
それならば、現在の物理学的知識を完全に超えてしまうこうした現象の研究を、そうした現象の存在を知っているはずの物理学者は、是非とも真剣に行なわなければならないはずなのですが、そのような物理学者が、本書の著者らを除いてごく一部にしかいないのは、なぜなのでしょうか。
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